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第157話、メリル『広樹?どうシテ?ドウシテ私を見捨テタンデスカ?』ルーカス「着いたぜ広樹。まず最初の目的地だ」

書きあがりましたので投稿します!

よろしくお願いします!

「っ、んん?…此処は?」


青く澄み渡った大空と、綺麗に咲き誇る花畑が広がる世界。

そこで俺は目を覚ました。


「確か、ルーカスさんのタクシーに乗って……それから……どうなったんだ?」


記憶を探るが思い出せない。


「……でも……綺麗だ」


思い出さなくても良いんじゃないか?と、目の前の光景が心にささやいてくる。


桃色の蓮の花が、赤色の彼岸花が、白色のユリが、綺麗に咲き誇る花達かのじょたちが、


『此処には怖いものなんてないよ』

『今まで怖かったね、でも安心して』

『私達は広樹が大好きだから』


そう言ってくる。

そして周囲で舞い踊る蝶々も、


『私達が広樹を守るからね』

『これからは此処で幸せになろう』

『広樹だけの清純ハーレムだよ』


そう歌いながら、段々と蝶々が少女の姿へと変わり、俺の両腕に絡みついてきた。


ああ、ヤバイ…

女の子ってこんなにも柔らかかったのか?


「あ、ああ…俺は」


まるで魂を縛り付けていた肉体が、運命のことわりに従って幸福と溶けていくみたいだ。


そうか、此処が俺の居るべき世界だったんだ。


俺は今まで、酷い悪夢を見ていたんだな……


『広樹〜!こっちも楽しいデスヨ〜!』


聞き覚えのある声音が耳に届く。

そして遠くを見れば、そこには大きな川があり、その向こう岸に彼女がいた。


「メリル?どうして此処に?いや、それよりも此処はどこなんだ?」


『そんなのアトデスヨ〜!まずはそこの川を渡ってkiッてくだsaッーイ!そうsuッれば全部教eッマスヨ〜!』


メリルが呼んでる。だが不思議と足が動かない。


何かが変だ。

メリルの声に混ざって雑音ノイズが聞こえてくるのは、俺の耳がおかしいからか?


『何シテルんdeathデスカ〜!早く来ないtoッ、楽しい事は全部、私が独り占めしちゃいマスヨ〜!早kuッ〜!早kuッ来てくだサ〜イ!』


何かがおかしいっ、そして怖いっ!

俺の直感が危険信号を発令している!


「メリル!そっちは駄目だ!早くこっちに戻って来い!じゃないと戻って来れなくなる!そんな気がするぞ!」


『戻って来れなkuッなる?何でdeathデスカ?戻る必要なんてないんdeathデスヨ〜!こっちは天国ゥdeathデース!だから広樹にも味わって欲しいんdeathデスヨ〜!』


ヤバイヤバイヤバイ!?

これはいくらなんでもヤバイ!!


「い、いやっ、嫌だ……俺はそっちに行けないっ」


『広樹〜怖がらないでくだサ〜イ!何か勘違いをしてまsuッヨ〜!本当にこっtiッは天国で気持tiッいいんdeathデース!だから〜早kuっこっちに来るdeathデース!』


「無理だ!すまんメリル!俺は……!」


『……へ〜、そうdeathデスカ、そうなんdeathデスカ?そうなんdeathデスネ』


「メっ、メリル?」


『deッ!デデッ、デ、death、アッ、オッ、ハハッ、ゴォォグゥ、ゥ────』


な、何だこれは…


突然とメリルの姿が変貌し始めた。


綺麗な長髪の金髪が朽ちるようにくすんだ白髪へと色を堕とし、着ていたオシャレな私服がボロボロの布切れと変わっていく。


そして白髪に隠された顔が、向こう側にいるメリルの顔が、俺の瞳に鮮明に映り込んだ。


『ヒィロォギィイイイイーー!!』


「ヒィィィイイ!?」


そこにはおぞましい少女の顔があった。


瞳がない。あるのは黒く染まったクレーター。


歯がない。あるのはボロボロに砕かれた鋭い岩歯。


耳も、鼻も、唇も、瞼も、頬も、全てが千切られ無くなっていた。

顔中の穴という穴から赤い血が、破れ焦げた皮膚には蛆虫うじむしが沸いている。


今のメリルは完全に向こう側の住人に成り果てたのだと、心の奥底から察した。


「にっ、逃げ─!」


『私を見捨テダァノニィ!私を置イテ行ッダァノニィ!私を生贄ニシダァノニィィイイイイ!』


メリルの叫びと共に、透き通った川が禍々しい血色へと姿を染める。視界にあった花畑が枯れ落ち、腐った大地が広がりを見せた。


そこには花も蝶々も少女達も全てが腐り果て、破けた底からいっぱいの蛆虫うじむしを吐き出した。


『逃がしまセンヨォ!絶対に帰らせまセンヨォ!広樹は私と永遠にこの世界にいるんdeathデス!だからこっちに来るんdeathデス!』


「逃げないとぉおお!」


走り出す。今までにない恐怖を背中に感じながら、無我夢中で腐った大地を全力で走った。


『なんで逃げるんdeathデスカ?逃げないでくだサイヨォ!一緒にこの世界で幸せになりまショウ!ネェ広樹!広樹ったら!広樹?広樹ぃ!広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹広樹ぃいい!ヒィロォギィイイイイイイイイイイ!!』



────。

────。



「おゔぉおぉぉぉおおおっっ!」


「おー!目覚めたか!そして開口一番に吐くって」


目覚めて最初に見たのは排水溝だった。

俺が吐いている姿を見て、隣で身体を支えてくれているルーカスが苦笑いを浮かべている。


夢だったのか?あの世界も、あの少女達も、あの花畑も、あのメリルも。全てが夢で、現実に戻って来たのか?


…………ああ、嗚呼!良かった!夢から帰って来れて本当に良かった!


「あ〜、…これはやり過ぎちまったか?」


うん、その通りだよルーカスさん。


三途の川に行く夢を見たからね!やり過ぎた所ではなくて、行く所までイっていたからね!


安全設計されたジェットコースターでは味わえない、死を隣り合わせにした絶叫スピード体験をしたんだからね!


そりゃあ胃の中のモノくらい簡単に出ちゃうよ!死に迫る悪夢くらい見ちゃうよ!


「おーい、大丈夫かー」


「全然っ、大丈夫っ、じゃないですっ、よ!」


「あー、なんかすまん」


謝罪感が薄い顔だ。遊び心のあるお兄さんの顔だ。

そんな苦笑いを浮かべているルーカスさんに、やや黒い気持ちが浮かび上がるのは、俺の心の狭さの所為か?


いや、こんな体験をすれば、誰でも何かを思う筈だ。


「それで着いたぜ。まずは此処が目的地なんだろ?」


「え、ええ……おぉゔぉぉおおおおっ!……はぁっ、はぁっ」


これで出るモノを出し切った。


「ゥッ……すみません……清掃員さん」


汚物が撒かれた排水溝を見ながら、後で掃除してくれる清掃員に謝罪の念を抱く。


そして顔を上げると、そこには高級感ある建物があった。


「じゃあ…ゥッ……買って…きます」


「おう、俺は待ってるぜー」


「…………」ジ〜


「ん……広樹?なんだその瞳は」


言葉で言うのはちょっと罪悪感があるから、視線で訴えているのだ。


『代わりのタクシーを呼びますので、もう帰っていいですよ』と。


もうあんな危ないのは真っ平御免だ。


「…………心細いのか?じゃあ一緒に行ってやるよ」


そうじゃないですよ!この映画あるある運転手!


「で、どんな『スーツ』がご希望なんだ?」


「クっ…………一番安くて…すぐに買えるモノです」


悔しながらも、店に訪れた理由を言う。


「今日一日だけ着られればいいので」


「贅沢だなー。やっぱり次に行く場所に関係するのか?


「はい。そこではドレスコードがあって、私服だと跳ね返されるみたいなんで」


その為にまず、目の前にあるスーツ専門店で買い物をする。


「金はあるのか?旅行に来てスーツを買うとか、普通は無いぞ」


「……カードがあります」


「お前…まさかブルジョワか?」


戦闘学からの支給金と報酬金が振り込まれているカード。

その額を考えれば、スーツを買うくらい容易かった。


「じゃあ行ってきます」


吐き気も消えてようやく歩き出す。

そして背後には当然の表情でついて来るルーカスが、


「選んでやるよ!カッコいいヤツを!」


「……」


「おいおい、本当に悪かったって……ほんとすまん」

読んでくれてありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!

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