第150話、灯花「あの馬鹿にお仕置きを…」葉月「お見舞いは……メロン」エリス「ハイ!チーズ!」
投稿が遅れてしまい申し訳ありません!
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ピーッ…ピーッ…ピーッ…ピーッ…
規則正しい機械音が鳴り響く病室。一つだけあるベッドの上には、白髪が混じった黒髪の男が一人。
「もう、私は長くないかもしれない…」
酸素マスクに白い息を曇らせながら、校長は胃袋に襲い掛かる痛みと原因に打ちしがれていた。
症状、胃穿孔。胃に穴が開く症状である。
原因、詩織の行方不明。広樹と鈴子の海外旅行。追われる後処理。天乃へのストレス。その他諸々…
「すまない…私にもしもの事があれば…」
死に際の遺言みたく、校長は弱々しい声で言う。
「全ての責任と残りの後処理を光崎天乃に押し付けてくれないか?」
「縁起でもない事を言わないでください。校長にはこれからも元気でいて欲しいと、私は思っています」
椅子に座る黒髪の少女が校長を優しく励ます。
「それに天乃はきっとあの手この手で逃げ回ります。押し付けるなんて不可能ですよ」
「灯花くん……諦めちゃいけない」
「諦めちゃいけない、じゃないですよ」
黒衣灯花。光崎天乃の付き人兼お目付役である少女は、彼の厄介さをよく知っていた。
「私に彼を縛りつける力はありません。頼むなら序列者の方々が良いです」
「序列者、か…」
校長は複雑そうな顔を作る。
「序列者では駄目だ…今以上に大変な事になる」
「そうですか?序列三位のあの方であれば…」
「序列三位か……」
「天乃も、あの方だけは苦手だと言ってました。それにあの方は規律に厳しく、素晴らしい堅物ではないですか。きっと天乃にお灸を据えてくれますよ」
賞賛を口にする灯花。
少女のアドバイスに校長は端末を取り出し、メールを書き始める。
「まあ…そうだね…彼なら恐らく…」
「そうです!きっと天乃を更生してくれます!」
「……送信、と」
ピっ、と送信音を鳴らし、校長は一息つく。
「ものは試しだね」
「私は結構期待していますよ、あの方の説教に」
「…………」
「何ですか校長?いきなり黙り込んで…」
「いや……期待されてるんだな〜ってね」
何か思うところがある校長だが、それを語る事はなく、……ピピっと音が鳴る。
「おっと。早速来たね」
「メールには何と?」
「…………まぁ、普通だね」
そう言って、校長は画面を灯花に向けた。
『了解しました。では、あのバカを探し出し折檻を。折檻方法にご希望があればお聞きしますが?』
「一番厳しく苦しく命乞いを絶叫する痛々しいのをお願いします。後遺症になるくらいのを」
「灯花くんも鬱憤が溜まっていたんだね…」
「鬱憤を超えて癌の元ですよ。正直そろそろ見限って消えたいと思ったりしています」
もう限界なのだと灯花は強く言う。
その意思に答え、校長はメール文に書き込み始める。
『死亡しない範囲以内まで、地獄を体験させてやってくれ』
「これで送信と…」
「ふふふ、これで私の恨み辛みが解消されます」
「本当に溜まっているんだね…」
灯花の黒く濁った瞳。
そこから感じる苦労に、校長は苦笑いを向ける。
「では、見舞いに来てくれて嬉しかったよ。そろそろ自分の時間に戻りなさい」
「いえ、私も来て良かったです」
黒い笑みをしながら、灯花は荷物を持つ。
「では失礼いたします。入院が長く続くようであれば、またお見舞いに伺います」
「いや、そこまで伸ばす気はないよ。仕事が迫ってきたら人体強化で回復するさ。医者には止められてるけどね」
「そうですね。切羽詰まっていなければ、医療機関で治すのが一番ですから。…では」
一礼して、灯花は病室から姿を消す。
そして校長は、
「では、私はもう一眠り」
小さな眠気に身を預け、白い枕に頭を落とす。
だが……コンコンっと、
「ん?」
鳴り響いたノック音に上半身を起こす。
そして扉に向かって「どうぞ」と一声かけ、ガラガラと開かれた。
「っ!?……君が見舞いに来てくれるとは」
「…………」
「少し混乱しているよ……それはともかく、ありがとう。来てくれて嬉しいよ」
校長が微笑みを向けるのは、白髪を伸ばす小さな少女。
「……メロン……切る」
「ああ、食べよう。葉月くん」
葉月は持参したメロンを丁寧に切り、部屋にあった皿に盛りつけた。
「ん…」
「ありがとう。貰うよ」
差し出された皿に手を伸ばし、メロンに刺さった爪楊枝を一つ取る。
「美味しいねこのメロン。何処で買って来たんだい?」
「ん…」
「ん?…その手は?」
無言で手を差し出す葉月。
それに疑問を持った校長が、その意味を聞いた。
「……欲しいものがある」
「欲しいもの?」
「校長の『専用IDカード』」
「ブッ!?」
葉月の突然の要求に咳き込む校長。
「私のIDカードを何に使うつもりなんだい?あれは君が考えているよりも貴重な物なんだよ」
「…………」
視線を逸らす葉月。
「……調べたい事がある。でも私の…第一位の権限じゃ…全部は無理」
「その調べたい事とはなんだい?」
「…………」
「では渡せないね」
出来れば協力したかったと思う校長だった。
だがIDカードにある力は、日本支部のトップにしか持つ事が許されないモノ。
今回ばかりは厳しくならなければと、校長は心苦しくさせながら真っ直ぐ断った。
「すまない、こればかりは本当に厳しいんだ」
「…………」
「今回は諦めてくれ。もしそれが無理なのであれば、その調べたい事とやらを教えてほしい」
「…………」
「ん?…葉月くん?」
「…………そろそろ」
「ん?……っっ!?」
視界が急激に捻れ込む。
身体の感覚が一瞬で消え去り、意識が朦朧に包まれる。
そして…
「…………」
「…………」
病室から声が消え去った。
────。
────。
「んっ……ん?」
深く眠っていたのだろうか。
そう思いながら上半身を起こし、病室を見回す。
「…………ん?」
校長は何かしらの違和感を感じた。
そしてまず目に入ったのは、病院に持ってきた私物である。
「……特に荒らされた形跡はないか」
ひとまず安心する。
「だが…この違和感」
次に目に入ったのは貴重品を入れておく為の金庫。
ベッドから立ち上がりその中を確認する。
「……金庫は…何も変わっていないな」
金庫を閉じて、周囲をゆっくり見回す。
「……甘い匂い?」
微かに感じたのは果物らしき匂い。
「どうしてこの匂いが…」
記憶にない。この匂いが部屋にある経緯、それは一体なんだと探る。
「確か…部屋に誰か」
ぼやけた記憶にまず出てきたのは、黒髪を揺らす灯花だ。
だが、彼女からこの匂いを感じ取った記憶がない。
であれば、灯花以外の要因がある筈だ。
「灯花くん以外が訪れた?……でも誰が『ピピっ』ん?」
机に置かれた端末から受信音が鳴る。思考を一度中断し、再びベッドに腰を下ろした。
「っ!…………ふぅ〜〜」
そこに記された名前に校長は頭を痛くした。
「統括長…」
戦闘学のトップ。戦闘学総統括者。
自分の上司であり師匠。そんな相手にも関わらず、どうしても頭が痛くなってしまう。
そこにあるのは強い抵抗感だ。
「……はぁ」
その抵抗感を我慢して、送られてきたメールを開く。
そして目に入ったのは添付された画像データ。
「画像データ…のみ?」
開けば文章の無いメールで、あるのは画像データのみ。
だがそのメールから感じるのは、胃を痛める程の嫌な予感。
開きたくない。
だが開かなければ後々悪い方へ進む気がしてならない。
ならばと覚悟を決めて──画像を開いた。
「ゴフッッ!?」
画面に映る五人の顔を見て、校長の胃は再び崩壊した……
読んでくれてありがとうございます!
第11話で、葉月が詩織のお見舞いにメロンを持ってきた事があったので、またお見舞いだったので使ってみました!
これからもよろしくお願いします!