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さすがに武器を持ってお店に突っ込めば退学にしてくれるよね!ねえ!!  作者: こまこま
第10章、オーストラリア編(ゲームイベント編)
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第147話、詩織「中等部以来かしら?こういう事をするのは」鈴子「覚えてないよ。でも、やらなきゃいけないなら、やる」

お久しぶりです!

書きあがりましたので投稿します!

どうかよろしくお願いします!

三人の作戦はいたって単純だった……





「広樹くん、さっき君を押し倒した彼と仲良く戻って来たが、どういう事なんだい?ギスギスしたりするだろう?」


「いえいえ、スポーツに接触や事故を付き物なんで、ちゃんと謝ってくれて、仲直りしましたよ」


エリスの疑問に軽い雰囲気で答える広樹。

その言葉にメリルが笑顔を見せる。


「それは良かったデス。これで心置きなく試合が続けられるマスネ……ん?広樹、右手に持っているその紙は何デスカ?」


「ああ、これは彼の連絡先で、困った事があれば相談に乗ってくれるって、今回の慰謝料しゃざいりょうとして貰いました」


貰ったばかりの名刺を見せながら、ルーカスとの間に結ばれた関係を伝えた。


その事にエリスとメリルは、


「本当に彼は良い人だね。出会ったばかりの少年にそこまで優しくなれるなんて、それも戦っている相手にだよ。ドラマみたいだ」


「スポーツは国籍も文化も関係ありまセンカラネ。フィールド内では敵デスけど、外に出ればスポーツで競い合った仲間デス。きっとこの後も良い関係になれると思いマス」


ベタ褒めである。

エリスとメリルがルーカスを高く賞賛し、広樹もそれに乗った。


「そうですね。本当にカッコいい人でした。スポーツが得意で、すぐに謝ってくれて、自分の連絡先まで教えてくれて、そして─」


そしてソレを強調して言う。


詩織と鈴子の心に届かせる目的ねらいで……


「チームメンバーに限らず、相手チームとも仲良く出来るルーカスは、人間として大きく見えました」


そしてエリスは、


「広樹くん、チームメンバーと仲良く出来るのは当たり前だ。そこは当たり前なのだから褒めなくて良いだろう」


メリルも、


「チームメンバーと仲良く出来るのは当たり前デス。そんな当たり前の事が出来ない人間なんていまセンヨ」


最後に広樹も、


「確かにそうですね。当たり前の事を言ってました──」


ボコ殴りである。

陰口の連続射撃である。

仲間割れをしていた詩織と鈴子に、精神的ダメージを三人で与えたのである。



────

────



「ようは矛先を向けられない様にしたい。その為の口車作戦だ」


「でも、それで本当にうまく行くんデスカ?友好の大切さを伝えても、あの二人が仲良く出来る光景が見えまセンヨ」


「俺も、あの二人は犬猿の関係くらい仲が悪いですよ」


エリスの考えに納得しない広樹とメリル。

だがエリスもその意見に同意だった。


「分かってるさ。だから二人は組ませない。いや組めないか。つまりは私達が中継役になるんだ」


エリスが残る後半戦の戦い方を説明する。


「今回の口車であの二人の間の摩擦が少し減らせる筈さ。この三人の間だけのパス回しくらいは許容してくれるだろう」


「それじゃあ詩織と内守谷さんは抜きって事デスカ?それはなんでも……」


「ああ、勝てないね」


詩織と鈴子を抜きにして、あの外国人チームに勝てる見込みは薄い。


メリルの心配に、エリスは「当然さ」と言葉を続ける。


「だから均等にあの二人は使い分ける。簡単に言えば、不公平を作らない様にボールを渡すんだ。勿論、差別のしないパス回しをね」


「それって…私が内守谷さんにボールを出すって事デスカ?」


恐る恐ると聞くメリルに、エリスは頷く。


「出す。そして私も詩織ちゃんにボールを出す。これで二人が機嫌を悪くしたら、本当に手の付けられない我儘わがままって事だね」


諦めた口調でエリスは言う。

つまり、これで無理だったら、


「その時は諦めよう。もう他に思いつかない。犬猿の関係よりも酷かった、混ざらない水と油の関係だったといさぎく諦めよう」


「「…………」」


広樹とメリルは押し黙った。


「まずは詩織ちゃんに私がボールを出す」


「エリスがボールを出せる相手は、広樹か内守谷さんのどちらかだけデシタカラネ…」


「おかげで弱点そこを狙われたよ。だが、これからはその縛りを捨てる」


相手が狙いを定めていた弱点。

それはエリスとメリルが、ボールを出せるコースが制限されていた事である。


だが次の初手では、その裏目をとって得点を奪う。


試合が始まってからの、初めての『エリスから詩織へのパス』。


「詩織ちゃんへのパスが成功したら、次は鈴子ちゃんにパス。それを繰り返しながら、私達も狙えるところを狙う」


詩織と鈴子だけに得点を取らせるのではなく、自分達も出ようとエリスは伝えた。


その考えに広樹とメリルは頷く。


「じゃあ、逆転を目指して行こう!」


エリスが一喝し、三人はベンチに座る少女達の方へ向かった。



────。

────。



試合が始まってすぐ…


『怖い……』

コート内にいる全員がそう思った。


その視線の先には、詩織と鈴子が静かに立っている。


だがそこにある雰囲気は、前半戦と打って変って静黙せいもく


声も出さず、呼吸音も聞こえない。


ただあまりにも静か過ぎるその姿が、敵味方関係無しに不可解に感じさせていた。


(静か過ぎマス……怖いデス……どうシマスカ?エリス)


(出すしかないさ。じゃないと絶対に負ける……だがその前に)


エリスが視線を向けるのは、離れた位置にいる広樹にだった。


「っ!っ!」


ボールを持つ広樹が、相手ディフェンダーに圧迫されていた


(完全に捕まってるね…)


(そして私達も…)


エリスとメリルも同様にマークされ、エリスにパスを送る手段が完全に途絶えていた。


エリスにボールを渡すには、そのまま直接パスするか、メリルを中継してパスするかの二択しかない。


だが広樹、メリル、エリスの三人がマークされた以上、それは困難となった。


(詩織と鈴子にはほぼノーマークデスカ……でもそう考えマスヨネ。広樹がボールを持っている以上は……)


(試合が始まってから、広樹くんは一度も詩織ちゃんと鈴子ちゃんにボールを出していない。それが裏目に出たか…)


(私やエリスのパスよりも、あの二人は広樹からのボールがほっし過ぎてイル。そのおかげでずっと大苦労デス)


片方どちらかに出そうとすれば、もう片方に強く威圧される。それで広樹くんはずっとパスが出来なかったからね)


広樹がパスを出せるのはエリスかメリルのみ。

前半戦に続けて、後半戦もそれを貫くしかなかった。


(このままじゃあ…)


パスコースは塞がれ、ボールを持つ広樹が捕まっているこの状況。

この場を打開する方法を思考するが、一筋の可能性すら見つからない。


(無理にでも動いてマークを外すしか)

(ボールを受け取れる位置に移動スレバ)


タイムオーバーが迫る広樹。


あと数秒で相手のボールになってしまうところで、メリルとエリスは少しでもチャンスを作ろうと、靴音を鳴らしてコートを駆ける。


「「っ!」」


だが、当然相手ディフェンダーにく手をはばまれた。

キャリアと体格の差から、そのマークを外す事が出来ない。


そしてタイムオーバーになる……


その時だった。


「広樹…」


鈴子が一言呟いた。


そして人差し指を伸ばす。


「っ!?」


その意図を考えたが無理だった。


(((詩織に指先を向けた!?)))


詩織を指差している鈴子の姿を見て、三人は驚愕する。

それは相手チームも同じだった。


「くっ!?」


相手チームの一人が動く。

その方向には詩織がいる。

彼は鈴子の意図を読んで、とっさに行動に走ったのだ。


だがそれよりも、

彼が詩織に向かうよりも先に、


「詩織!」


広樹は詩織に投球した。


詩織コイツに投げれたのかよ!?」


ボールを奪えなかった相手が驚きを吐き出す。


パシっと音を鳴らす少女の手。

そこに収まったボールを見て、詩織が瞳を光らせる。


「させるか!」

「行かせねえ!」


走る詩織の前に立ち塞がったのは、二メートルを超える二人のブロッカー。


「…………」


その場で停止し、詩織はシュートフォームのポーズを取る。

そして地面を蹴って飛躍した。


(俺達の方が高い!絶対に通らねぇ!…なのにっ!?)

(なんだっ、この悪寒は!?)


長髪の影に隠れた詩織の光る瞳。

それを見たブロッカー達は、恐怖に似た危機感を抱いた。



(ああ届かないさ。詩織ちゃんのボールは決してゴールに入らないだろう──でも違う)



全員がその一瞬に視線を取られる中で、唯一エリスだけがソレを見た。


詩織の背後、詩織の真後ろにいる存在をだ。


「フッ」


詩織は空中でシュートフォームを解き、ボールを持った腕を大きく回す。


上から下へと右腕を回転させ、、運動着ズボンを掠めながら背後に向かって橙色の直線を描いた。


それはフェイントを使ったバックパス。


(鈴子に!?)

(内守谷さんに!?)


(((((ノールックパスだとぉおお!?)))))


広樹とメリルだけじゃない。相手チーム全員も驚愕した。


詩織が放ったのは、遠くにいる鈴子へのバックパス。

だが普通ただのバックパスじゃない。


詩織は背後を確認せず、会話もせず、打ち合わせを見せず、遠く離れた位置にいる鈴子にパスを放ったのだ。


パシっ!!


そしてそれを鈴子はしっかり受け取った。

まるで理解していたかの様に、綺麗にボールが鈴子の両手に収まったのだ。


(ああ、この光景は良い。私が考えていた結果よりも断然に輝いているよ)


飛躍する鈴子を見つめながら、エリスは口元を緩めた。


詩織と鈴子によるノールックパス。


息の合わなかった二人が見せた、息が通じ合わなければ出来ないコンビプレイ。


その瞬間にエリスは笑わずにはいられなかった。



「中等部の頃以来?それとも初めてかしら?私とアナタが組むのは」


「知らないよ…過去に組んだ事があったとしても…わざと忘れる…絶対に」



大きな曲線を描いたボールが、白いネットに音を鳴らす。

そして二人は静かに呟きながら、お互いに片手を打ち鳴らし合った。


「酷いわね。でもきっと思い出すわよ。アナタが思い出したくない体育の時間とかね」


「だったら…この試合に勝って…すぐに忘れる」

読んでくれてありがとうございます!


初めて詩織と鈴子が手を取り合った瞬間かもしれないです!


ぜひ次話も楽しみにしていてください!

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