第145話、エリス「軌道修正しないと駄目だね。それと一般人に戦闘力を使用した事への罰も考えないと…」
書きあがりましたので投稿します!
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彼が鮮血を流した瞬間と同時に、第1クォーター終了のブザーが鳴り響いた。
そして脇目も振らずに彼が走り去った後、残った者達が以後どうなったのか……
「ひっ!?」
恐怖で顔を歪めたメリルがいた。
そこには奈落の底の様な瞳をした詩織と鈴子がいる。
その恐怖を抱かせる瞳が、仲間であるメリルを一歩二歩と後退りさせる。
「ん?んんっ!?」
詩織と鈴子が歩き始めた。
その方向には広樹を押し倒した金髪の彼がいる。
(ま、まさか!?)
彼女達がしようとしている事が容易に想像できた。
仕返しだ。
序列者二人による処刑時間だ。
これまでの事を思い出せば、詩織と鈴子が広樹に強い好感を持っていると察しがついた。
まさかとは思ったが、己を立場を忘れて一般人に暴挙に走るとは予想していなかった。
だが、今の二人の瞳を見て確信した。
彼女達は確実に一般人を殺ル気だ。瞳を見れば分かる。
生ぬるく回りくどい事は一切無しに、真正面に葬るつもりなのだ。
(と、止めないト!)
でなければ大変な事になる。
オーストラリア支部だけでは処理できる範疇を超えてしまう。
「ふ!二人とも!ちょっ──」
「「?」」
「…………何でもないデス」
負けた。
あの瞳を見てしまったら何も言えない。
それ程までに彼女達の瞳は黒かった。
もう自分には打つ手が無い。そう思った時、
「何をする気なんだい?」
「「っ」」
詩織と鈴子の手を引っ張って止めたのは、白髪を揺らす小さな少女。
「エリス、手を離して」
「怪我をしたくなかったら手を離しなさい」
「悪いが離せない。離したら乱闘が起こりそうだ」
「「乱闘なんてしない(わ)」」
二人が口を揃えて言う。
「「するのは蹂躙 (よ)」」
エリスの言葉を無視して、二人は幼女を引きづりながら前に進み出す。
「一度冷静になろう」
「「……」」
「暴力はいけない」
「「……」」
「喧嘩は駄目だ」
「「……」」
詩織と鈴子は黙り続けた。
そんな二人にエリスは小さく溜息を吐き出して、
(コレで行こうか…)
悲し気な瞳で訴えかける。
「広樹君が怪我をしたのは、君達二人の所為じゃないか」
「「ッ!?」」
エリスの冷淡な声音に二人は足を止めた。
「君達の所為で広樹君にしかボールを渡せなかったんだ。どうして協力してくれなかったんだい?」
今までに見せなかった厳しい瞳で、エリスは二人を責め立てる。
「君達の勝手なプレイがチームの足を引っ張り、広樹君が怪我をしたんだ」
淡々と言い募る。それに込められるのは怒り、呆れ、そして蔑み。
二人はその言葉に何も言えなかった。
「私が監督だったら追い出してるよ。君達の様な自分勝手な選手はね」
「「っ…」」
「広樹君の怪我の原因は君達にある。それなのに…」
エリスが視線を伸ばす。
そこには遣る瀬無さを顔に浮かべた彼がいた。
「君達が彼を責めるのかい?」
金髪の彼は広樹が消えた出入り口を見ていた。その瞳に感じられるのは、広樹への強い心配だと直ぐに分かる。
「すごく心配そうな顔をしている。今から走り出しそうな……走り出したね」
「「っ……」」
出入り口に向かう金髪の彼。
その姿を見て、詩織と鈴子の瞳に光が蘇る。
────。
────。
「ん?」
「どうした?」
「いや、あの日本人が吐いた血が見つからなくてな」
「は?そんな訳……」
コートを見回したが、そこに汚れは一切見つからない。
「本当に消えてる。だってさっきはあんなに…」
「俺達の見間違いか?」
「いやいや、確かに鼻と口から血を出している瞬間を見たぜ」
「じゃあ床まで血が落ちなかったって事か?」
────。
────。
「ハァッハァッ!ちょっとすまん!」
彼は通路にいた人間に声をかける。
「ここにジャージ姿の日本人が通らなかったか?」
「い、いや、見てないが…」
「くっ!すまん!」
小さく肩を叩いて走り去る。その繰り返しで彼は広樹を探し回っていた。
そして曲がり角で、一人の少女と目が合う。
「っ!?君はっ」
その容姿に彼は見開いた。何故ならその少女は今コートに…
「君が探している日本人なら、そこのトイレにいるよ」
「あ、ああっ!ありがとう!」
恐らく自分の記憶違いだったのかもしれない。
きっと彼女は広樹を追いかけて、一緒にコートから消えていたのだ。
目の前にいる少女を見て、彼はそう推論づけた。
「じゃあ、私は行くよ」
そう言い残し、彼の前にいるエリスは歩き去った。
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