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さすがに武器を持ってお店に突っ込めば退学にしてくれるよね!ねえ!!  作者: こまこま
第10章、オーストラリア編(ゲームイベント編)
143/221

第143話、メリル「まさかそんな事ガっ!私達がやっていたのはバスケなんデスヨ!?」エリス「こんな事になってしまうとは…誰がこの光景を予想できたか……」

書きあがりましたので投稿します!

どうかよろしくお願いします!

ホイッスルが鳴り響き、鈴子は小さな握り拳を作る。


日本支部が誇る序列第九位の『誘導改変』。

強化した筋力でボールを高く上げてからの、能力によるゴールへの軌道修正。


他者から見れば、鈴子が行ったのは綺麗な放物線を描いたプロ級のシュートである。

だが、


「…………」


全てを理解していた詩織の瞳は、ドス黒く染まっていた。


そんな詩織を他所よそに、鈴子は満足そうな顔を作りながら広樹に近づく。


「広樹、どうだった?」


「お…おおう、凄いな」


広樹が鈴子を褒める光景。

それが詩織の心に火を灯す。


鈴子そっちがその気ならっ)


そして相手のボールから試合は再開。

ボールを持つのはスキンヘッドの黒人。


ムキムキの肉体をしならせて、リズムカルなドリブルでコートをけ、熟練の動きで豪快なダンクを決め込んだ。


「悪いが手加減は無しだ」


捨て台詞を残して、得点を入れた黒人が去る。


そしてボールはコート外にいるメリルの手に渡った。

勿論、最初にそのボールを送る先は、


「詩織!」


黒いオーラをただよわせる親友だ。

名前を呼ぶと同時に詩織の手にボールが渡され、


「──!」


風を切り裂く様な素早いドリブル。


突如と見せる少女の飛び出すプレイに瞠目する一同。


『ピーー!!』


まばたきする間に、ボールはゴールに叩き込まれた。


はぇえ〜、それにすげぇジャンプ力だな。あんな身長なのにダンクを決めやがったぜ」


「支配人も言っていただろう。あのチームにいる少女達は尋常じんじょうじゃないって。それぞれが姿に見合わない運動神経を持っているぞ」


「ん?男の方はどうなんだ?」


「地味に運動神経が良いらしいが、極めて普通らしい」


「そりゃあなんか可哀想だな。男だけ普通って」



────。

────。



「詩織、目立ってる」


「アンタも同じでしょ」


無感情に声を尖らせる鈴子と、静かに目くじらを立てる詩織がいた。


「バレたらお終いだよ」


「だからアンタも一緒でしょうが」


お互いがお互いのプレイを責め立てる。


方や人体強化と能力で長距離シュートを決め、方や人体強化のみでプロ並みの身体能力を発揮しダンクを叩き込んだ。


他者に戦闘力だと指摘されれば退場は免れない反則ズルプレイ。


メリルが自分達を恐れているのを良い事に、詩織と鈴子は躊躇ちゅうちょなく第三者にバレない範囲内で戦闘力を発揮した。


だが、お互いがお互いのプレイを認める事は決してしない。


「私にボールを渡して…3点取れる」


「私が連続ダンクを決めてやるわよ」


「それでも2点、得点は多い方が良い」


「その分速く動けば良い話でしょ」


互いに一歩も譲らない。

少女達の中にあるのは、得点をみずからの手で取りたい願望だ。


どうして少女達はこんなにも譲ろうとしないのか。


その理由はいたって単純である。


((広樹に良い姿ところを見せたい!))


それが少女達の捻じ曲がった願望の根源こんげん


広樹への好印象を勝ち取る為に、少女達は誰よりも得点を稼ぎたかったのだ。


「効率を考えてよ。3点の方がお得だよ」


違う。効率よりも自らが得点を得たいからだ。


「アンタこそ、能力を連続引用していればボロが出るわよ」


違う。バレる心配よりも鈴子に得点を取らせたくないからだ。


「そんなヘマはしない」


「どうだかね。調子に乗って相手のシュートも操りそうだわ。プロ相手にやったらそくバレるわよ」


「良いからボール」


「そっちが私に渡しなさいよ。連続ダンクしてあげるから」


「嫌だ。私が決める」


「いいえ、私が決めるわ」


『ピーー!』


「「!?」」


鳴り響くホイッスルに詩織と鈴子が振り向いた。そこにはダンクを決めた金髪の白人がガッツポーズを見せている。


二人が余所見ヒートアップしている間に点数が『5:4』と1点差に追いつかれた。


「鈴子ちゃん!」


「っ!」


コート外にいるエリスからのパスを受け取って、鈴子は流れる様に長距離シュートを撃ち出し得点を取り返した。


「やっぱり3点の方が良い」


「そう言っても難しくなるわよ」


「?」


「ディフェンダーが来たわ。アンタ専用のね」


「!?」


「HEY」


鈴子の背後に立ったのはちょび髭を生やした黒人だった。

彼が鈴子に付いた理由は長距離シュートを防ぐ為だろう。


「じゃあね。アンタの分も私が活躍してあげるから」


微笑ほほえむ様な醜悪笑しゅうあくわらいを残し、詩織は鈴子から離れようとする。


だが、


「クチャクチャ─」


その背後にガムをクチャる白人がいた。


「…………」


「ご愁傷様しゅうしょうさま、詩織にもディフェンダーが付いたね」


「くっ!!」


「HEY HEY HEY」

「クチャクチャクチャ─」



────。

────。



得点電子版に『13:30』と表示される。


詩織と鈴子がマークされて以降、二人が得点を得られる機会が激減し、容易たやすく逆転を許してしまった。


戦闘力を活用しマークを外すチャンスもあったが、そこからボールを受け取る事が出来ない。


相手達のディフェンス経験の高さと、自分達のチームワーク経験のさが、逆転を許した要因だ。


熟練のディフェンダーをくぐり、仲間からパスを受ける取るのは、息の合わせた事の無いチームには難しい。


人体強化があっても、相手は熟練のテクニックで自分達を翻弄する。

バスケの経験が浅いチームでは、本気を出した彼等からボールを奪うのは困難だと知らしめられる。


『ピーッ!』「ブッシング!」


詩織が無理にボールを奪おうとするも、身体が接触しファウルと宣告される。


「くっ!」


悔しい顔をする詩織。

そして後方にも同じ顔をする鈴子がいる。


相手から幾度いくどもボールを奪おうとしたが、フロントチェンジやロールターン、レッグスルー、バックビハインドドリブル、シュートヘジテイション等々、つちかわれた熟練の技術を十全に発揮され、失敗を何度も繰り返した。


戦闘力を更に活用する手段もあったが、今以上の運動能力を見せれば危険だと察し、詩織と鈴子は控えざるを得ない。


そして、


(うっ、詩織…今はパスは無理デス…)


(鈴子ちゃん、そんなに求められてもボールは送れないんだよ)


メリルとエリスは敵にマークされた詩織と鈴子に頭を抱えていた。


少女達はボールを強く求めていた。


だがいくらパスが欲しいとアピールされても、今の状況では難しい。


無理に出すも、相手にボールを何度も取られてしまっているのだ。


そして更なる悩みがまだある。


(エリスにボールを渡すのも駄目なんデスカ?)


(メリルちゃんにボールを渡しちゃ駄目なのかい?)


メリルがエリスにボールを向けると詩織の目端が釣り上がり、エリスがメリルにボールを向けると鈴子の頬が膨れ上がる。


同じチームの筈なのに、パスを出そうとすれば禍々しい殺気が飛んでくる。


それは何故か──譲りたくないからだ。


詩織から見ればエリスは鈴子の仲間であり、鈴子から見ればメリルは詩織の仲間なのである。


そしてまた、詩織と鈴子は誰にもボールを渡さなかった。


彼女達が生み出す結果は『ゴールに入れる』か『ボールを奪われる』かの二択しかない。


『自分の手でボールを入れたい!』と、そのプレイスタイルが伝えている。


そんな意地の張り合いが詩織と鈴子の間で起こっていた。


(うぅ〜どうすれば…)


(どうしたものか)


詩織と鈴子のワガママに縛られ、メリルとエリスは困り果てる。


仲違なかたがいはしたくない。

その気持ちを根本に置いて、二人は残った逃げ道に目を向けた。


(もう一度…)


(やはり彼しかいないのか)


もう何度目だろうか。彼にボールを送るのは。


やはり安全地帯ひろきしかない。


詩織と鈴子が敵対心を向けない広樹あんぜんちたいに、彼女達はひたすら逃げるしかなかった。



────。

────。



(殺気がヤバイ……)


ボールを受け取るたびに、詩織と鈴子がとにかく怖かった。


詩織かメリルにボールを出そうとすれば、鈴子から鋭い瞳で睨まれる。


鈴子かエリスにボールを出そうとすれば、詩織から鋭い瞳で睨まれる。


うん、とにかく怖い。こんな殺気溢れるバスケは初めてだ。


どうする?どうすればいい?また駄目元でドリブル&シュートで行くか?


「Hi Japanese boy.You look sick」

『よう日本人少年。顔色が悪いぜ』


ボールをゆっくり突く中で、金髪を輝かせる白人がゆっくり近づいてきた。

翻訳機越しだが、彼の小さな声はネイティブで鮮明に聞こえる。


「ちょっと仲間がヤバくて」


「やっぱあの嬢ちゃん達だよな?」


「分かるんですか?」


「ああ。なんとなく状況は察せるぜ」


ニヤニヤしながら彼は言う。


「嫉妬に燃える嫁達ヒロインたちの痴話喧嘩だろ?」


「……は?」


一瞬理解が遅れた。何を言っているんだコイツ?


「日本の高校生は彼女が複数いるのが常識なんだろ?それも色々な属性があるんだったか〜」


おい、ちょっと待て。

そんな常識があるわけないだろ。

お前の言う高校生はどこにいるんだ?


「お前のチームは凄いよな。たぶんだが、『活発系』『クール系』『外人系』『ロリ系』だよな?多種多様の属性に囲まれたハーレムチーム。もう最強としか言えないわ」


おいなんだハーレムチームって。活発系?クール系?外人系?ロリ系?


誰だ?誰の事を言っているんだ?ちょっとそこのところ詳しく聞かせてもらおうか?


「クゥッ!日本の高校生は羨ましいぜ!見取みどりじゃないか!誰が本命なんだ?ん?」


ちょっとイラときた。

そしてバイオレーションが近い事に気付いた。

ボールを手にしてから24秒が経てば、相手のボールになってしまうルールがある。


時間はもう少ない。だから限度めいいっぱいまでフェイントをかけて──


「で!で!本命は誰なんだ?ん?ん!」


「くっ!」


フェイントをかけてシュートを放とうとしたが、彼はふざけた言葉を漏らしながらもディフェンスを徹底していた。


すっごい圧迫してくる。そして遊ぶ子供の様な動き回りだ。


「そろそろバイオレーションだな」


狙ってた!?


本当にヤバイ!もうタイムオーバーだ!とにかくボールを出さないと!


詩織と鈴子はマークされていて不可能!だったら残りの二人に!


よしっ!メリル!お前に決め─


『絶対にコチラに投げないで下さい!』


肩を震わせながら涙目でそう訴えかけるメリルがいた。


なんだよオイ!逃げんなよオイ!!


くっっ!だったらエリス!君に決め─

ちょっと待てぇえ!?何やってんのエリスぅうう!?


『これが私の秘めたる能力──『マチョリズム・プロテイン』だ!』


なんで敵のん前で独特の決めポーズ!?


えっ必殺技なの?その背後に立ってる外人はエリスが出現させた能力体みたいな設定ナニかなの?


そんなアニメみたいなシーンは今は求めてない!


『マチョリズム・プロテインの能力は──』


駄目だ!このコートにパスを出せる相手が誰もいない!


もう自分でボールを放つしかない!無理にでも!


(駄目元でのステップバックシュートを!)


フェイントを限界までかけてから、背後にバックステップで飛び上がる。


そしてシュートを放ろうとするが、


「やらせるかよ!」


相手も飛んだ。


(やっぱ無理だぁああ!?)


高い!とにかく高い!


バックステップと合わせて背後に飛んだが、相手も前方こっちに向かって大きく飛んできた。


そして片腕を頭上に伸ばしきり、シュートコースを完全にさえぎられる。


(前が何も見えねぇえ!?)


巨大な体格が正面を塞ぎ、日本人と外国人の差を実感させられる。


高校時代でもこんな体験はした事がない。


そこには日本人にはない外国人の『ディフェンス』があった。


だが待て、ちょっとこれは──!


「あ、やべっ」


瞬間、呟きを漏らしながら外国人かれはこう思った。


(慌てて飛び過ぎちまった!?)と。


駄弁っていた所為か、子供だからと油断したからか、相手が慣れていない低身長の日本人だったからか、彼は誤って無調整なブロックに走ってしまった。


慣れない相手ひろきに足元が狂い、空中で重心が大きく前寄りに向かってしまう。


そしてその着地する場所には当然──


「グホォ!?」

「ウァッ!?」


広樹の顔面が汗ばんだ胸板に埋まり、そのまま背後に倒れ込んでしまった。


『ピーーーーッッ!!』


審判が甲高いホイッスルが鳴り響かせる。


呆然と静まり返るコートと観衆。


詩織も、鈴子も、メリルも、エリスも、覆い被せられた広樹に沈黙の一途だった。


「大丈夫か!?」


審判の声に外国人がその場から直ぐに立ち上がる。


「あ、ああ!それよりもオイ!大丈夫かお前!」


彼が心配の声を向けるのは、彼が覆い被さり倒れ込んでしまった広樹にだ。


2mを超える巨体に押し潰されて、無傷でいられるとは思えない。


さっきまでのふざけた空気を打ち消して、彼は真面目な表情で広樹に手を差し伸べる。


「……っ!、つっ〜!…ああ、大丈夫…です」


後頭部に手を当てながら、震えた足で立ち上がる広樹。


その酷い顔色を見たスタッフが、広樹の身体を見回した。


「大丈夫ですよ…ちょっと頭がフラつきますが…」


「後頭部を強く打ったんだね。切り傷は無いようだが…フラつくのなら休憩を入れて検査をするが」


「いえ問題ありません…どうせあと数秒で1クォーターが終了します。その時に自分で確認するので」


もうすぐ訪れる休憩タイム。

試合は2クォーター制で、最初の1クォーターの終わりが間近だった。


「それよりも…一応、ファウルなんですよね?」


「あ、ああ」


「じゃあ続行をお願いします」


広樹の言葉に審判は迷う。


このまま続けてもいいのか、検査を優先するか、


だが答えを出すよりも先に、広樹が鈴子にボールを投げ渡した。


「シュートはお前が適任だ」


そう言った広樹の姿を見て、審判は『分かった』と漏らして試合の続行を宣言した。


シュート妨害でのファウルでは、フリースローの権利が与えられる。そして今回は3Pだった為に3本シュートが打てる。


ルール上では審判がボールを渡すのだが、その部分は特別に流され、広樹から受け取ったボールを鈴子はそのまま使わせてくれた。



────。

────。



結果、シュートは3本とも綺麗に入った。


そして試合は再開。

点数差が以前と大きく離されている。


「…………っ」


ボールを持つ外国人が躊躇ためらった顔つきでボールを打ち突ける。


広樹へのファウルが原因なのか、向こうは先ほどまでに見せていた積極的なプレイはせず、ゆっくりとした控え目なプレイへと方針を転換。


そして偶然か、広樹の目の前にボールを持った相手が立ち止まった。


「さっきは悪かったな」


「いえ、気にしてないです」


広樹の真っ白な返答に、ファウルをしてしまった外人の精神をグッと痛める。

本来なら許されない事だが、今回だけはと全身の力を緩めた。


「っ!」


横を通り過ぎようとしたところで、広樹の片手がボールを捕らえた。


そしてボールを掴んでシュートモーションに入る。


(今回だけは)


邪魔はしないと、彼は静かに静観せいかんし、そのシュートの結果を見送る事にした。


そして──



最悪の事態となった。



────。

────。




彼がフラついている。


後頭部を押さえている。


何故?

なんで?

どうして?

何も分からない。

分からない分からない分からない分からない分からない──


彼がファウルをかわさなかった理由も、淡々と弱いプレイを続けている事実も、後頭部の痛みを意識している素振りも、何もかもが分からなかった。



──なんで…?



詩織と鈴子に思考が一致する。

一致し、瞳の光が段々と抜け堕ち、深い虚無へと色を変えた。


そこに映るのは広樹を押し倒した『害悪』。


どんな会話をしていたかは知らないが、彼は終わりに広樹を押し倒し、広樹の身体を不浄な体液あせけがおかした。


あの汗だらけの巨体が広樹の全身を一方的に蹂躙しおかしたのだ。


地につくばらせ、彼の顔に汚液を塗りたくった。


その光景が二人にとって許せずにいられなかった。


手段は多いにある。あの害悪を懲らしめる方法が。


(『黒槍出現ブラック・アペアランス』で…)

(『誘導改変インダクション・マダフィケィシャン』で…)


2秒あればヤレる。

本人にはバレるが、周囲にバレなければ良いと自制心を崩壊させる。


何も語らせず昇天させ、最悪の地獄ひとときを味合わせる。


そうだ。ヤッてしまおう。ヤラなければ気が済まない。


広樹を汚した罪は万死に値する。


だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!だから!



あれ、なんでまた彼が近づいてきているの?


広樹に近づいて何をする気なの?


またその汚い巨体で、広樹の身体を汚し犯す気なのか?


そんな事は許されない。


またあんな光景は見せられたくない。


広樹があの汚らわしい巨体に包まれる最悪の光景が。


二度も広樹を犯させてなるものか。


今から潰そう。


彼を昇天させよう。


彼に地獄を見せてやろう。


──そう思っていた矢先だ。


広樹は難なく相手からボールを奪い取った。


そしてシュートを打とうと構えを見せた。


だが、打てる筈のシュートが打たれない。

シュートが打たれなかった代わりに、広樹の身が激変した。



────それは真っ赤な血だった。



鼻と口から血を吐き出す広樹がそこにいた。


嗚呼…


広樹がよごされた。


あの男が広樹をオカした。


きっと広樹は優しかったのだ。


優しくて、戦闘力を使わず、正々堂々と戦っていたのだ。


そんなにも綺麗でとうとかった広樹が、


正々堂々と戦闘力に頼らなかった広樹が、


何故こんな姿にされたのか?


ああ、嗚呼、アア、あ嗚呼ァア──


((ユルサナイ))



────。

────。



ヤバイ!気持ち悪い!


後頭部を打った衝撃と顔面に張り付いた相手の汗が、見事なコンビネーションで体調を悪化させていた。


腹が、胸が、喉が、口が、そこをつたって何かが来る。


まずい!これはまさか!


「さっきは悪かったな」


話しかけないでくれ!もう本当にヤバイ!大惨事まで秒読みだから!


でもそんな申し訳なさそうな表情をされると返事を返さずにはいられないじゃないか!


「いえ、気にしてないです」


よし!もう早く抜き去ってくれ!どうせプロ級のドリブルからボールを奪えるテクニックなんて持っていない!

だから早く!


早く休憩タイムで休ませてくれ!


ん!?


なんだその遅いドリブルは!?なんだその中途半端な足踏みは!!

今回の試合で一番隙だらけじゃないか!


こんな取ってくださいと読めるドリブルは、完全に自分への罪滅ぼしだと分かってしまう!


ここで取らなかったら余計に気にされるかもしれない!

だったら!


「っ!」


チョロ過ぎる。簡単に取れてしまった。

だが今はドリブルできる状況ではない。


そしてパスを出そうにも、今立っている場所からでは出せるコースが無い


だからシュートだけだ。今の自分に残された選択肢は。


(くっヤバイっ、喉に来た!?)


ボールを構えて膝を曲げた瞬間、その時が訪れた。


ああ、なんで飲んでしまったんだろう。

数十分前に自分が飲んだ飲料水を思い出してしまう。


深い赤色をした『野菜ドリンク』。


それが揺さぶられた脳と顔面に受けた汗によって、胃の底からさかのぼって来たのだ。


このままでは吐き出してしまう。


駄目だ!

それだけは駄目だ!

試合中に吐いたら色々と終わる!


こんな大衆の面前で吐いてしまったら、しばらくトラウマになる!


止めなれければ!こらえなければ!

歯を食いしばり、喉穴を引き締めろ!



────────あっ、鼻に繋がる器官に入って、


「ブホォッッッッ!!?」


鼻と口から真っ赤な野菜ジュースを噴出させた。


滅茶苦茶最悪だ!

とにかく顔を覆え!

ジャージでも何でも使って嘔吐物を防げ!

読んでくれてありがとうございます!


今回は第136話の『野菜ドリンク』の伏線を回収しました!これで試合の終了ルートが出来上がりました!ぜひ結果を楽しみにしていてください!


広樹と外人さんの会話がちょっと長かった気がしますが、その瞬間だけ『二人の世界』に入っていたと思ってくれると嬉しいです!

無理がありそうなら少し変更するかもです!

どうかよろしくお願いします!


これからも頑張っていきます!

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