第142話、鈴子「大丈夫。これはルール違反じゃないし、一般人でも出来る……はず」
お久しぶりです!
書きあがりましたので投稿します!
どうかよろしくお願いします!
「ハァハァっっ」
とある暗い一室で、男は壁に貼ったポスターを鑑賞しながら息を荒げていた。
「広樹っ、君はやはりっ、イィイっっ!」
ポスターに映るのは、ある少年のバスケユニフォーム姿。
広樹がシュートを打ち出す瞬間を鮮明に映した光景が、ポスターの中に広がっていた。
「ほとんど試合には出ていなかったが俺は見ていたぞ!君は影でコソコソ努力していたのを!人気の無い体育館で君は頑張って練習していた!そこで何度君を影から襲いそうになったかっっはぁはぁ!!」
盗撮写真を見ながら、山本は中学時代の広樹を呟き漏らす。
「表彰式に出る姿も良かった!目立つ活躍をしていなかったが、それでも俺だけはお前の輝きを知っているぞ!この輝きが染み込んだ聖布が証拠だっハァハァ!!」
鼻息を蒸気させる山本は、とある誰が使っていたそのユニホームを──
スーハースーハークンクンチュッチュッムチュムチュペロペロ…
────。
────。
ゾォォ〜〜っっ!!
「ッッ!?」
悪寒が走った。
突如と気持ち悪いナニかが身体の芯を冷やした。
この悪寒は以前にも、確かユニフォームを無くした時に……いや、そんな事よりも今の状況に目を向けよう!
せっかくの得意スポーツだ!俺の好きなスポーツがやってきた!
平均以上、選手未満の運動神経だったが、シュートだけには自信がある。
これだけは誇れる才能を持っていると自負している。
だからこそ、
自分の才能を出せる舞台だからこそ、
はっきりと伝えたい。
「一つだけ言わせてほしい」
円陣を組んで肩を寄せ合う五人。
ツルツルに磨かれた木床に顔を反射させながら、彼女達に注意を促す。
「お願いだから、過度なスーパープレイはやめてくれ」
「「分かってる(わ)」」
詩織と鈴子が答えを返す。だがどうしても心配な気持ちが拭いきれない。
何故なら彼女達は普通ではない。
不法侵入をこなしたり、ゴミ部屋で暮らせる少女達だ。
限りなく信用性の欠ける経歴があって、その言葉が薄っぺらく感じてしまう。
そしてメリルはと言うと、
「は、ハ〜イぃ」
震えながら霞んだ声を漏らしていた。どうやら詩織と鈴子の尋問がまだ抜け切れていないようだ。
だが、先ほどの暴力プレイは控えてくれそうだ。
「ラジャ〜〜」
何故かエリスも了解の声を唱える。
戦闘力を持っている組に伝えた筈だったが、エリスも流れる様に乗った。
適当に答えた?
「で、ポジションはどうするんだい?」
「ん、それは─」
経験者としての知識を役立てよう。そう思った時、
「「とにかくゴールを決めればいい(のよ)」」
エリスの質問に答えようとした矢先、詩織と鈴子の前向き過ぎる方針を唱えてきた。
同じ考えをする辺り、実は仲が良いんじゃないか?
「了解だ」
了解じゃないよエリスさん?
今回の流れは完全に運営側の策略だ。
この試合で試されるのは個人の単純な強さではない。
それらを推測できる根拠が目の前にあった。
そう、待ち構えているんだよ。
屈強な白人と黒人の外国人集団が。
ドォン!と彼等が登場して敗北を悟った。
つまり『運営側が用意したチームに勝てたら、五人全員に賞品を授与』。そうスタッフに宣告された。
サッカーの時にも思ったが、もう完全に運営側は参加者を落としにかかってる。
最後の最後で堂々と運営側から人員を参加させたのが良い証拠だ。
「以前は2対2だったが今は5対5。これは非常にマズイ」
「ん、かなりはっきりと言うが、その理由はなんだい?」
「人数が増えてチームワークの必要性が高まったんです」
ダブルステニスやPKと比べて、今回は人数を増やされ、チームワークの重要性が高まるスポーツとなった。
個人に尖った実力があったとしても、チームワークが無ければ勝敗に大きく影響する。
そして今回のスポーツは『バスケ』だ。
狭いフィールドで素早い動きを必要とし、様々な制限が設けられた球技。
その制限を破らず躱す為に必要なのは、周囲にいる仲間とのチームプレイである。
そして自分達はと言えば、その場で組まされた『即席チーム』。恐らく運営側は『組織されたチーム』を呼び出している。
うん、無理。
白人黒人の混同チームを出された時点でも、敗北フラグが立ってるもん。
いくら詩織達の運動神経が超人並みでも、ルールの厳しいバスケで、この即席チームで運営側が用意したチームに勝てる可能性は乏しい筈だ。
「大丈夫だよ」
ん、鈴子?
「絶対に勝てるから」
一体何を根拠に言っているんだ?
「だって」
うん?
どうしてエリスと視線を合わせる?
そしてなんでエリスは笑顔でこくりと頷いているんだ?
ちょっと待て、凄く嫌な予感がするぞオイ。
「ちゃんと勉強したから」
────。
────。
「なんだあの長距離ロングシュートは!?あんな華奢な女の子が射てるボールじゃねえぞ!しかも入っただとぉおお!!」
試合を覗く野次馬達から賞賛の声が上がる。
うん、試合開始直後にいきなりするとは思わなかった。
もう反則範囲なプレイだ。
通報とかされないよね?かなり心配なんだけど?ねえ?
メリルが目を大きく見開いてるぞ。
オーストラリア支部の前で堂々とやって大丈夫なの!?ねえ!!
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「支配人からの情報通り、やっぱただの子供達じゃねえな」
「開始直後でシュートを入れられるとは──てか、なんでボールを譲ったんだよ?」
「最初から本気を出しちゃ可哀想だろ」
「可哀想になる玉じゃないだろ。アイツらは」
「それじゃあ、今から予定通りに行くか」
読んでくれてありがとうございます!
今回は第106話に出した広樹の過去設定の伏線を一部回収しました!
『(一人で表彰式か……一人はなかったな……)
戦闘学に転校する前にも、入賞者として立った機会があったが、それはチーム全員で。』
ここから始まる展開のために出した伏線なので、頑張って活かそうと思います!
ようやく広樹が活躍できる舞台になりそうです!
ぜひ次話も期待していてください!