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さすがに武器を持ってお店に突っ込めば退学にしてくれるよね!ねえ!!  作者: こまこま
第10章、オーストラリア編(ゲームイベント編)
141/221

第141話、エリス「喧嘩するほど仲が良いと言うが、この二人はどうなのかな?」

書きあがりましたので投稿します!

よろしくお願いします!

「パンデモニウム……ね」


「怒らないの?汚名で呼ばれたのに?」


平然とする鈴子の態度に、詩織の中で疑問が生じる。普通であれば怒る筈だと思っていたからだ。


「フッ…怒らないよ」


そして鈴子は微笑ほほえみながら言う。それはまるで、小さな悪巧みをしようとする少女の顔つきで。


「もう私には…その汚名はそぐわない」


「そぐわない?それはどういう意味?」


「そのままの意味…私はもう…パンデモニウムじゃない」


その発言に詩織は溜息を吐き出す。そして思い出すのは鈴子の部屋事情だった。


「あのゴミ部屋に住んでいて、よくそんな事が言えるわね。まさか、お掃除代行サービスにお願いした?……いえ、引きこもりのアナタが他人に部屋を触らせる訳ないか」


「絶対に触らせないよ…他人にはね…フッ」


「っ、さっきから『フッ』って言ってるけど、何が可笑おかしいのよ?」


鈴子の繰り返されるいきに、詩織はイラついた声音を作る。

だがそれに鈴子は動じず、何かを待ちわび、楽しむ少女の顔をやめない。


「可笑しいよ……だって」


「?」


一瞬広樹を横目でチラ見して、再び詩織の方に視線を向ける。

その動作を詩織ははっきり捉えていた。


「私の部屋はもう…ゴミ部屋じゃないから」


「…………へ、へぇ〜〜、掃除したんだ?」


唾を飲み込んでから詩織は言葉を返した。やや受け入れ難い事実が飛び込んだからだ。


「プロモーションに参加した意欲もそうだけど、やっと自分の生活習慣の間違いに気づけたのね」


苦笑いを浮かべ、嫌味を込めながらも、詩織は称賛を言葉を送った。


「でも、よく掃除なんて出来たわね」


「フッ……フフッ」


「?」


詩織の言葉を前に、鈴子は突然と顔を下に向けて小さく笑い出す。何も知らない詩織の言葉一つ一つが心をくすぐり続け、それが我慢の絶頂に達したのだ。


「詩織……確かに私の部屋は綺麗になった…でも、私が掃除をしたんじゃないよ」


「っ?どういう事よ」


「こういう事」


そして鈴子の両手が、近くにいた彼の片腕をガッチリ掴み取る。広樹の右腕である。

その姿に詩織の瞳が大きく開いた。


「まさかっ!」


「私の部屋は…綺麗だよ」


「クッ!……っ…………」


鈴子の言葉ひだねが、詩織の精神かやくに火をつけた。


だが、一歩踏み込んだところで、詩織は高ぶる気持ちを必死に胸の内に抑え込む。


「どうしたの?殺気が消えた…」


火に水をひっくり返した様な、静まり返った殺意。その姿に鈴子は疑問を持った。


「…………ええ……そうね……消した。ちょっと私にも考える事があるのよ」


悔しさを宿しながらも、何か別の側面に考える顔つきで、詩織は平然とする仕草を見せる。


「考えるよりも先に手を出す。今までの私がそうだったから、今改めて整理すると分からなくなる」


「…?」


独り言を漏らすを詩織を見て、鈴子は不可解な気持ちを抱く。


数日前に船で戦った時の詩織と、今目の前に立っている詩織が、同一人物ではないと思えたからだ。


何かが違う。姿が同じでも、その中身が異なっていると直感した。


「……整理すると、分かるものね……フッ」


「っ?何を笑ってるの?」


鈴子ではなく、次に笑ったのは詩織だった。

それは先ほどに鈴子が見せた微笑みとそっくりで、詩織も悪巧みを思い付いた子供の様に笑っている。


「ええ笑えるわ。だってアナタがさっき言った事実が、どうしても笑えてしまうもの」


「それはどういう事?」


「こういう事よ」


詩織の視線が広樹に向いた。

そして淡々と質問をする。


「ねえ広樹、鈴子の部屋を掃除したのは本当?」


「え……ああ、本当……だな」


迷った口振りながらも、広樹は事実を証明する。それに詩織の笑みが増す。


「じゃあもう一つ……『鈴子の部屋を見てどう思った?』」


その言葉に鈴子が瞳を大きくする。その質問の意図を読み取ったからだ。

そして広樹は正直な気持ちを呟いた。


「『人間の住める部屋ではない』……と思ったよ」


「フッ!」


「っ!?」


詩織は勝ち誇った表情で鈴子を見下ろした。


「清々しい気持ちだわ。私は汚名に相応ふさわしい姿を見られてないけど、アナタの方はバッチリ見られているじゃない」


「くぅっっ!」


「綺麗に掃除されたとしても、『パンデモニウム』は広樹の記憶の中で永遠に生き続けるのよ!」


「詩織ぃぃっっ!」



────。

────。



ちょっとしたキャットファイトを見ている気がする。

詩織ベンガル鈴子マンチカンだろうか。もし猫にしてみたらそう見えるかもしれない。このキャットファイトを猫にしてみたらきっと可愛いな。猫だけに。


ア○ルバンカーも気になるが、詩織の言っていたパンデモニウムは何となく想像できた。いや思い出してしまった。


(記憶の中で永遠に生き続けるのは確かだな。あの部屋は絶対に忘れられない)


それが純粋な感想だった。

大量のゴミ袋、汚れた容器、脱ぎ散らかった衣類、埃臭い布団、異臭を放つその他諸々……


……忘れよう。覆い被さった鈴子の記憶も含めて、頑張って忘れよう。


(それにしても…)


何故ここに詩織がいるのだろう?

鈴子は来る事を察していたと言うが、全く予想もつかなかった。


実は仲が良い?

船の戦いの時も喧嘩っぽく会話していたが、もしかしてお互いをよく知り合う仲なのではないかと思えてきた。


「広樹くん広樹くん」


「何ですか、エリスさん」


「ん?敬語?」


「いえ、もうこっちの方が落ち着けて…たぶんこの中で立場が一番弱いの、俺ですから」


但し、鈴子は除く。ゴミ部屋の主人であり、ゲーム依存者の彼女だ。

凄い部分を見た後だと恐縮してしまう自分がいるが、それでも駄目な部分が印象強い。


「それで何ですか?」


「ああ、このも広樹くん達の友達なのかい?」


「ええ。姫路詩織よ、よろしくね」


その質問に答えたのは、鈴子から視線を離した詩織である。


「実はこのと遊びに来たのよ」


そして握られたのは金髪青瞳の少女の右手。

オレンジ色の運動着を身に纏った、メリル・キャンデロロだった。


「ね、メリル」


「そ、そそ、そうデスネー!ハ〜イ!詩織と遊びに来まシタ!」


謎の殺気がメリルを包み込んでいる。

何故かそう見えた。


「本当に私は詩織と会場に来ました!リアルにバイクを炎上させてデース!」


ん?バイクを炎上?

メリルさんアナタは何を言っているのですか?


「なので内守谷さん!私は何も企んでいまセン!詩織の存在がアリバイデス!」


「…………」


考え込む素ぶりを見せる鈴子。

曲げた指であごを持ち上げながら、ジィィ〜と詩織を見る。


「確かに……詩織が不利益ソッチに関わる事はない……」


「大体予想がつくけど、もしメリルが不利益ソッチを企んでいたら、私の手で矯正するわ」


「ヒッ!?」


「メリル・キャンデロロ……もし何か企んだら……私もヤルから」


「ッッ!!?」


メリルの顔から大量の汗が流れ落ちる。目の前にいる二人の言葉が、彼女の精神力をズキズキと限界まで削り尽くす。


「勿論デス!私は安全!良い子デス!何も悪い事をしまセンヨ!」


必死の弁明を叫ぶメリルにちょっとだけ同情する。

だって怖いもん。詩織と鈴子は。二人が組むとテロリストだって逃げ出しそうだ。

ベンガルとマンチカンって表現したけど、実際は喧嘩で大型客船を沈没させちゃう少女達だからね。そりゃ怖い。


「「…………」」


「本当デス!信じてくだサイ!どうしてオーストラリア支部なだけで疑われるんデスカ!そんなのオカシイデスヨ!間違ってマス!」


ああ、ちょっと本当に可哀想に見えてきた。

怖いけど、止めに入った方がいいのかな?

横から見ても、詩織と鈴子の眼の色が怖い。あれでジッと見られたら記憶トラウマに残りそうだ。


「ああ……詩織、鈴子?」


「「何?」」


「何でもないです」


「「そう」」


ごめんメリル。俺には無理だった。

心の中で謝るから、そんな命乞いをする瞳で見ないでくれ。

俺には荷が重過ぎる。


この世にこの二人を止められる人間なんて、いない──


「あの〜、ちょっと宜しいでしょうか?──ヒッ!?」


いきなり声を掛けてきた運営スタッフが、言葉の端で悲鳴を漏らす。

だがすぐに姿勢を正して、改めて口を開く。

そして詩織と鈴子も耳を傾けた。


「次のゲームの準備が整いましたので、ご案内をさせていただきます」


ゲームと聞いて一つ予想してしまう。

今自分が着用しているのは、運営側が用意してくれた運動着。

勝負サッカーに勝った後から、運営に着続ける様に言われていたのだ。


だからゲームと言われても、電子系ゲームじゃなく実技スポーツ


そして此方にいるのは、詩織、鈴子、メリル。

……あれ?詰んでる?


エリスは分からないが、もしあの三人の誰かを相手に戦う事になったら確実に終わる!


メリルがヤバかったもん!相手の顔面をわざと狙って気絶に追い込んだからね!


入賞者って何人までなんだ!?

もし二人以内だったら確実に死ぬ!

あの三人の誰かと当たったら、俺は絶対に棄権する!今決めた!


「それともう一つ、次のゲームに参加するのは、この場にいる五人のみです。他の部の方々は棄権しましたので──」


死んだ……

読んでくれてありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!

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