第14話、詩織「最初の自己紹介が肝心よ」
書けました!!( ^ω^ )
ついに学園生活に突入です!(*≧∀≦*)
今後も面白くできるように頑張ります!!
感想とコメントめっちゃ待ってます!
こうした方がいいんじゃない?などのアドバイスや、ここ間違っているよ、などの助言や応援メッセージなどなど待っていますので!
よろしければ!貰えると嬉しいです!!
6月23日に助言があり、訂正しました!
「おはようございます」
「……おはよう」
まだ明るくない空を背に、制服姿の少女は笑顔で挨拶する。
そして、挨拶された者は、突然のインターホンで起こされて機嫌が悪かった。
(今何時だと思ってんだ?)
時刻は五時三十分。
空は夕方の様な色をして、今も寝間着姿の広樹を照らしていた。
「えっと、なんのよう?」
「一緒に登校しようと思って」
「……それでも早過ぎじゃね?」
(二度寝してー…)
早過ぎる来訪に怒りを覚える広樹は、再びベットに戻ろうと、断りを言おうと考えていた。
「確かに早すぎたわ……広樹が良ければだけど、中で待たせてもらっても大丈夫かな?」
(ワクワクし過ぎて我慢できなかったとは言えない)
詩織は広樹の初登校をとても楽しみにしていた。
それが原因なのか、誤ってアラームを早い時刻にセットし、早い時間に起きてしまい、溜まる気持ちを抑えきれず、広樹のインターホンを押してしまったのである。
(……家に入れろと言うのか?)
広樹は内心嫌がっていた。普通に考えたら可愛い女の子を家に入れることはとても嬉しい。
だが、そこにいるのは人の頭を破れたザクロにできる可愛い女の子だ。
(入れたくない……でも、不興を買ってザクロされるのも……)
結果的に詩織を家に入れることにする。フローリングの廊下を進み、広いリビングにあるソファーに彼女は座った。
「まだ眠そうね。ごめんなさい。…私のことは気にせず寝て良いわよ」
(やっぱり早過ぎたわ)
「……じゃあお言葉に甘えるよ。七時に起きるから」
(どの口が言うんだ)
不満を抱く広樹だったが、眠気に勝てず、寝室に戻ることを決めた。
目覚まし時計の独特な音に起こされる広樹。上半身を起こし、目をこすりながら立ち上がる。
時刻は七時。
(ああ、出たくね〜)
制服に着替えながら、リビングにいる女に嫌悪を抱く。
しかし、出なければ何も出来ないと、扉に手をかけた。
「何やってんの?」
(良い香りがすると思ったら……)
「朝食を用意したわ」
リビングのテーブルに用意されていたのは、お茶漬けだった。
「お茶漬けは食べやすくて、病気の予防にも繋がるのよ」
「ありがとうな」
(お前が早く来た時点で、病気になりそうなんだからね)
文句を考えながらも、広樹は椅子に座り、お茶漬けに口をつけた。
(……意外に美味しいのがムカつく)
美味しいのは当たり前だった。
詩織が用意したお茶漬けはインスタントではなく、手を加えた具材と厳選したお茶を合わせた、オリジナルお茶漬け。
詩織は広樹に喜んでもらおうと頑張って作った一品。
(手を止めずに食べてるってことは、美味しいってことよね!よっしゃぁあああ!)
詩織は食べている彼の姿を見て、有頂天になっていた。
「ごちそうさま」
「お粗末様」
作ってくれたことに礼を言う広樹。
今回は過去のことを考えず、朝食の礼を素直に伝えた。
「それで、何時に出る?」
「始まりの号令が八時四十分だから、八時前に出れば良い具合ね」
今は七時四十分。準備はすでに終わらせてある。
広樹はさらに、今後の自分の予定を聞いた。
「担任が広樹の紹介を行うから、その前に職員室を訪れるように言われているわ」
広樹の案内役として、詩織はちゃんと仕事をしていた。
今後の予定も全て知らされ、広樹のサポートをするように言われていた。
「では、そろそろ行きましょう。早いことに損はないわ」
「分かった」
(お前に無くても、俺に損があることに気づいてね)
広樹は、詩織を自己中心的な少女だと認識し始めていた。
それでも、世話をしてくれることに不満を言うことも出来ず、黙って従うのみである。
徒歩とモノレールで約三十分。
場所は三十区、戦闘学高等部。
広樹の前には大きな白い建物があり、道には同じ制服を着た生徒が歩いている。
広樹は始めて来た場所に、すこし緊張していた。
「綺麗な校舎だな」
(野球ドームみたいな建物も見えるんだけど)
「校長が専門業者に頼んで、ちゃんと管理しているのよ」
(国の金をいっぱい使う校長パネェーな)
校長のすごさを身に感じる広樹。改めて自分が校長と呼ぶ人物の影響力を知った。
(俺のいた高校とは、天と地の差じゃねえか)
「じゃあ行くわよ。職員室まで案内するから」
「おう」
足を止めて、圧倒感に浸っていた広樹は、詩織の言葉を合図に歩き始める。
しかし、歩き始めて間もなく、視線を感じ始めた。
「……?」
(見られてる?)
周りを歩く生徒が自分達に視線を向けているのに気づき、広樹は詩織に問いを投げた。
「あのさ、見られてないか?」
「ああ、やっぱり気づくわよね。……多分私が一緒にいるからだと思うわ」
「どういうことだ?」
原因が彼女にあると聞いても要領を得ず、再び言葉を飛ばす。
「自分で言うのもなんだけど、私はみんなから慕われていると言うか……」
「ああ、大体分かった」
「話が早くて助かるわ」
要するに戦闘学で高い実力を持ち、見た目が良い詩織に視線を飛ばしていたのだ。
しかし、自分にも視線が飛んでいると気づく広樹。
「私が男性と一緒に行動するのが珍しいのでしょうね。今までになかったことだから」
(つまりは好奇心ってことか)
改めて全てを理解した。感じるのは興味を抱いている瞳。木の陰にいる女子のグループも顔を赤く染めて自分たちを見ていた。
「靴は履き替えず、そのまま校舎に入るわよ」
上履きを使わず、土足で入室するスタイル。大学の雰囲気を思わせられながら、広樹は建物内に入った。
視線を感じながらも、歩きを止めずに進み、少しして詩織が立ち止まった。
目の前にはタッチ式の自動ドア。
「ここが職員室よ」
そう言い、詩織は職員室の扉を開けた。
「失礼します。一年Aクラスの姫路ですが、天草先生はいらっしゃいますか?」
詩織の声に、この場にいる全ての教師の目が自分たちに向いた。
(この注目度はヤバイだろ…コイツの人気は教師にもあるのか…)
広樹はこの場の雰囲気に驚愕する。
しかし、実際はその視線の原因は広樹にあった。
(あれが校長の言っていた…)(透明化の能力者を取り押さえた…)(複数の能力を持っている…)(誰にも気づかれずに、外で生活していたなんて……)
すでに校長から広樹の情報が持たされている。
ここいる全員が広樹の力に畏怖を抱き、少なからず注意をしていたのだ。
そして、詩織の言葉に立ち上がった一人の女性が歩いて来た。
「詩織ちゃん!案内ご苦労様!」
ポジティブに詩織を労う女性。
そして、その瞳は詩織から外し、広樹に向いた。
「あなたが荻野広樹くんね!ようこそ戦闘学高等部へ!私はあなたを歓迎するわ!担任の天草愛です! 」
明るい笑顔と声で自己紹介をする天草先生。
高身長のスレンダー体型。スポーツタイプな人だと感じさせる。そして広樹は….
(うむ。胸無し高身長は置いておいて、顔は好み)
いろんな意味で冷静に分析していた。
その顔は冷静を装っているが、中身では立派な欲望にまみれていた。
「はい。これからよろしくお願いします。天草先生」
「うんうん!じゃあ詩織ちゃんはそのまま教室に向かって。私は広樹くんと後から向かうから!」
「分かりました。じゃあ広樹、また後でね」
そう言い残し、詩織は職員室から退出。彼女の姿が見えなくなるのを見届けて、改めて話を再開させた。
「じゃあ、これからの流れを説明するわね!」
「はい」
「広樹くんは、詩織ちゃんと同じAクラスに入ることになっているわ」
高い声で詳しい説明を始める天草先生。
「クラスの生徒数はあなたを含めて四十名。後で広樹くんの自己紹介を始めるから、みんなからの質問の準備をしておいてね!」
「分かりました」
「それから」
天草先生の説明を聞き続け、これからの準備を始めた広樹だった。
「姫路さん!あの男の人は誰なんですか!?」
「仲良く歩いていましたよね!」
場所はAクラスの教室。
現在、詩織はクラスの女子たちから質問攻めにあっていた。
その理由は、朝の登校を見られたからである。
「彼は転校生です。校長のお願いで彼の案内をしていたのです」
最低限を押さえて、余計な説明をはぶいた詩織。広樹の家の隣に住んでいることは、変な混乱を起こすと判断し、余計な情報はカットしていた。
「それってもしかして!複数の能力を持った男性のことですか!?」
「あなた!それをどこで!?」
一部の人間にしか知られていない情報を知られていることに驚き、声を上げる詩織。
「噂になっていますよ。何でも犯罪組織の戦闘力保持者を取り押さえたとか!」
「教師たちが要観察人物として扱っていると!」
「前例にないすごい人物だと!」
噂が広まっていた事実に言葉を失う詩織。確かに今までにない前例だ。誰かの口が滑り、広まることも当たり前に近い現象だった。
詩織はため息を混じらせて、質問に答えた。
「ええそうです。彼は能力を複数持っています。私もその取り押さえた現場に居合わせましたから」
「「「やっぱりですか!」」」
女性陣たちのボルテージが上がりを見せる。それに乗せられ、教室全体に広樹の話が伝染していった。
「念のために言いますが、彼に極度の接触はやめてくださいね。試すような真似は一切禁止です」
「「「は〜い!」」」
クラスの委員長的な雰囲気を出す詩織は、この場にいる全員に注意を促した。
「それとアクション映画が好きな男ども!もし一人でも、彼に漫画であるような戦いを挑む真似事をしたら連帯責任で……わかっていますよね」
クラスの男性全員の声が止んだ。
そして一人、勇気を振り絞った勇者は、彼女に質問をした。
「……したら、どうなるのでしょう?」
その質問に明るい笑みを見せながら口を開く。
「私の能力は知っていますよね」
「…はい。知っています」
「男子全員……私の能力で尻の穴を拡張します」
「「「「「「「マム!イエスマム!」」」」」」」
絶対にちょっかいをかけないと、男子陣全員の心は一つになった。
「そろそろ四十分です。席に座りなさい」
詩織の合図に全員が席に戻る。
クラスの雰囲気はワクワクが抜け切らない者もいれば、拡張を恐れている者もいた。
そして教室の扉が開き、二人の影が入ってきた。
「よーし!みんな座ってるね!いや先生嬉しいよ!えらいえらい!」
いつもながら、ポジティブな雰囲気を放つ先生。その雰囲気は、この場にいる全員が好きだった。
そして、話していた話題の人物に全員が凝視する。
「はぁーい!じゃあ早速だけど、転校生がやってきました!はい!拍手ぅうう!」
パチパチと手を叩く音が鳴り響く。先生の独壇場といった場が作られながらも、彼の自己紹介が始まった。
「初めまして、荻野広樹です。まだ、分からない事もありますが、早く馴染めるように頑張っていくつもりです」
高さがある壇上の上で、広樹は教室に行き渡る声で挨拶をする。みんなの反応はそれぞれだったが、多かったのは好奇心に満ちた反応だった。
「よし!じゃあ質問が多いと思ったから、適当に私から彼の説明をするわね!その後が質問ターイム!!」
質問の多さを気にした天草先生は、あらかじめ広樹のプロフィールを作成して、説明しようと考えていた。
「荻野広樹くん。一般の高校出身で、昨日戦闘学にやって来ました。身長は一七五センチ、体重は六五キロ。血液型はO型。両親は旅行していて、高校生から寮生活を始めたそうよ」
プライバシーの保護はどこに行ったのか。天草先生は次から次へと広樹の説明をしていく。
(ポジティブ過ぎだろ)
改めて、活発的な先生だと理解した広樹は、先生の流れる説明に圧倒されていた。
「はい!とりあえず私からの説明は以上ね!では!質問ターイム!先着五名ね!よーいどん!」
先生の言葉を皮切りにドッと音を立てて、一斉に手を挙げる生徒たち。ほぼ全員がその手を挙げていた。当然のごとく詩織も背伸びをして挙げていたのだ。
「うわーお!!人気者だね広樹くん!」
「はい、俺も驚いています」
(何じゃこりゃ!みんなコミュ力高すぎだろ!)
広樹のAクラスに対する評価が上がっていた。最初は馴染めるかどうかに不安があったが、たった今、その不満が嘘のように消えたのだ。
「じゃあ!はい!一番目はあなたね!」
天草先生が指した女子生徒が立ち上がる。
「はい!それじゃあ、彼女はいますか?」
……一瞬。この場にいる全員が、詩織のいる方から、大きな殺気が飛んで来たように感じた。
「あー、うん。二年以上付き合っている彼女がいるよ」
……また一瞬。茶髪ロングヘアーの第十位の方から、今までにない黒いオーラの波動を感じたクラスメイトたち。彼女の周囲からゴォォォという文字が見え隠れする。
「『俺の彼女はこの娘だけ』っていう、アプリの中にね」
その一言で、殺気とオーラが消滅し、広樹以外の全員が胸を撫で下ろす。そして、その一言に反応した複数の男子陣がいた。
「ああ!俺もやってるよそれ!俺の彼女は歩美ちゃんだ!」
「俺もやってるぜ!アリスちゃんが俺の嫁な!」
一発で数人の男の心を掴んだ広樹。俺の彼女自慢が始まったのか、広樹も言葉に反応を返した。
「俺の彼女はエルだ」
「「おお!」」
「さっそく仲良くなれたのは良いけど!そろそろ質問タイムを再開して良いかな!」
友情が深まりつつあった男子陣だったが、天草先生は横槍を入れた。
質問は再び開始され、流れるように進んだ。
「趣味はなんですか?」
「ラーメン屋散策かな。戦闘学の敷地にもラーメン屋はあるの?」
「好きな映画は?」
「SF系が好きだよ。最近だと、未来から来た人間が主人公と戦う映画を観たね」
「最近買った、高い買い物は?」
「夏物の服だな。そろそろ暑くなるから、涼しいのを買ったよ」
みんなが一番気になる質問を避けていた。
それは能力についてだった。だが、その質問をしてしまったら、質問攻めが起こり、詩織が線引きした極度の接触に触れると判断し、辞めていたのだ。
質問が進むにつれ、最後の一人に差し掛かった。そして、手を挙げる生徒の中でも異様な雰囲気を放つ人物がいた。
当然のように…
(天草先生!さっきから私の視線に気づいていますよねぇえええ!)
天草先生はわざと詩織からの視線を無視していた。
その方が面白いと考える天草先生の出来心だったのだ。
(うわー、すっごい見てくるわね詩織ちゃん。一周回って怖くなってきたな〜)
「はい!じゃあ最後は詩織ちゃんね!どうぞ!」
呑気なこと考えている天草先生は、やれやれと感じて、最後の一人として詩織を指名した。
「はい」
(キタァァぁあ!!)
ようやく待ち望んだ時が来たと、詩織は心の中で爆発していた。
「では、チームを組むとしたら、どういう人と組みたいですか?」
「…?、チームって?」
自分の理解できない質問に対して、広樹は思考を回したが、返答できる言葉が見つからない。そんな時、横から天草先生が詩織に言葉を投げかけた。
「詩織ちゃん、分かっていて質問したでしょう」
「今のうちに説明した方が良いと思った結果です。興味だけで彼と組みたがる人は大勢いますから、早めに教えた方が良いですよ」
「それもそうね」
詩織の言葉を受けて、天草先生は広樹に向き直り、『チーム』について説明した。
「チームって言うのはね、まとめると仕事仲間よ。つまり」
聞くと、『チーム』とは生徒自身が自主的に組み合う共同体のことであり、人数は二〜五人で組まれることが多い。
チームで任務を行い評価を残せば、チームメンバー全員の評価に繋がるので、チームを組む生徒は多いとのこと。
「まあ、説明はこんなものね!はい!返事をどうぞ!」
わかりやすく説明してくれた天草先生から視線を外し、広樹は詩織に返答するために向き直った。
「常識人だ」
(お前とは真逆の存在だよ)
「分かったわ」
(つまりは私ね!)
相変わらず心の声が噛み合わなかった二人。
そして、最後の質問が終了して、一限の説明に入った天草先生。
「じゃあ一限は筋トレだから、ジムに移動してね!」
(やっぱり普通の高校とは違うのね)
体育だったら理解できたが、筋トレと言われた時点でここが戦闘学だと、改めて知った広樹だった。
今後ともよろしくお願いします!!♪───O(≧∇≦)O────♪