表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さすがに武器を持ってお店に突っ込めば退学にしてくれるよね!ねえ!!  作者: こまこま
第10章、オーストラリア編(ゲームイベント編)
138/221

第138話、詩織「行けぬなら、みんな倒して、ホトトギス」

書きあがりましたので投稿します!

どうかよろしくお願いします!

『──やん〜で〜れの〜、かな〜た〜へと〜』


「ん?鈴子?」


鳴り響く着信音に、その電話の主が誰なのか察する。


きっと向こうも試合ゲームが終わったのだろう。そう思いながらスマホを取り出して、画面に映し出された名前を見る。


「広樹?その曲は?」


そこから流れる独特の歌が、メリルの興味を引いたみたいだ。


「ああ、斉木に……友達に勧められた曲なんだ。ちょっと設定してみた」


「どこかのアニソンみたいデスネ」


「アニソンなんだよ。ちょっと前に『今のお前にピッタリだ』って言われて……俺ってアニメ好きに見えるのか……?」


少し落ち込む。

斉木とアニメの話をした事はない筈なのに。


イベントの終幕後にした連絡かいわも──


──『なあ、お前の好みってどんな娘なんだ?部屋に閉じこもる根暗っじゃないよな?な?』と、


何故か女性の好みを聞かれたくらいだし……


なんでこの歌を勧めてきたのか、もっと理由を問い詰めていれば良かったと今になって考える。


今日の夜にでも連絡して問いただそう。ついでにオーストラリアに旅行している事も教えてやろう。

お土産も頑張れば渡せそうだ。買って帰ろう。


『──脆弱ぜーいじゃくの、き〜みに〜』


「っと…」


長く待っている鈴子に悪い。

メリルに『すまん』と断って背を向ける。


「もしもし……ああ、無事に終わった──」



────。



「やんでれ?なんでしたっケ〜、聞いた事のある様ナ〜、う〜ん?」


やんでれ?病んでれ…ヤンデレ?


確か日本アニメで聞いた事があった言葉だった。


広樹は『ヤンデレ』という何かが好きなのだろうか?


「……後で詩織に聞きまショウカ」


広樹が電話をする背後でボソッと呟く。


彼女ならきっと知っているだろう。そんな予感がとてもする。


そしてここで一旦この興味は胸に仕舞おう。

とりあえず状況確認をする。


・イベント会場からの退場を無事回避。

・広樹が演技を継続中。

・広樹の演技に便乗して本音をかたらず、自然の流れで共に行動。


よし、ここまでは大丈夫。それと次のシナリオも考えられた。


・詩織と接触して『詩織と遊びに来てたんデスヨ』と打ち明けて、偶然の再会を演出する。


詩織と広樹は仲が良い筈。詩織は彼に絶大な信用を寄せて、彼は詩織に気遣う態度を見せていた。


崩落した施設内で『何か手伝う事はないか?』と詩織を気にかけていた。その光景から関係は良好だと推測できる。


「これでプランは完成デスネ」


早く詩織に連絡しよう。

彼女のことだ、きっと既にゲームを終わらせて広樹達の捜索を続けているに違いない。


詩織の番号を開いて、呼び出しボタンを押す。


「……ヤンデレ〜」


違う。もっとテンポがゆっくりで、そして暗く…


「ヤン〜デ〜レの〜、かな〜た〜へと〜」


さっそく頭に染み付いた。

新しく覚えた歌を口ずさみながら、詩織が連絡に出るの待ち望む。


そして数秒、


「……詩織?……詩織!」


見えたのは人間要素を思わせない黒い怪物。その中に詩織がいる事は、メリルだけが知っていた。


「詩織ー!こっちデ〜ス!……ん?」


詩織が背中を向けて遠ざかっていく。


「詩織〜!『──もしもし、メリル』Wowワオ!」


端末から聞こえたの声に肩を跳ねらせる。

忘れていた。詩織に声を送っている最中も、スマホから詩織を呼び出していたのだ。


『色々と聞きたい事があるけど……その前に、ゲームに勝ってくるわ』


あれ?なんか怖い…


「そ、そうデスカ。まだ終わってなかったんデスネ…」


『心配しないで。大丈夫だから。すぐに終わらせてくるわ』


「が、頑張って下サイネ〜」


『ええ頑張るわ。頑張る目的がもう一つ増えて……手加減無しでヤれそう』


「し、詩織?」


『──を見てると、頭が痛くて、胸が苦しくて、ギスギスしてムカムカして、全身から力が込み上げてくるのよ……』


最初の声が聞こえなかった。だが、段々と詩織の声音に違和感を感じさせた。


『だから勝ってくるわ。そして必ず、そっちに向かうから』


「は、は〜イ。わ、分かりマシタ〜…」


「じゃあね。メリル」


ブツッと、スマホから音が途絶える。


底知れぬ恐怖があった。詩織の言葉一つ一つに怖いナニかを彷彿させた。


その正体に気づけぬまま、メリルはスマホをポケットにしまう。


そして振り向くと、そこにはまだ会話中の広樹がいた。


「分かった。じゃあ待ち合わせ場所で」


広樹も電話を切って後ろに振り向いた。


「これから友達と待ち合わせるんだけど……」


彼は言葉を詰まらせる。きっとこの後の言葉は私が言わないと進まない。メリルはそう思って口を開いた。


「一緒に行ってもいいデスカ?実は知り合いが別の人と組んだみたいで、終わるまで暇なんデスヨ」


「それじゃあ」


詩織とは逆の方向へと、メリルは足を向けた。



────。



そして数十分後の後日談……ではなく、二度目の後事談である。


「おい!男三人が泡を吹いて倒れたぞ!」


「なんだあの日本人少女は!敵味方関係なしにぶっ倒しやがった!」


選んだのはバレーボール。


能力で作った筋肉細胞きぐるみを脱ぎ去り、色香を感じさせる運動着姿でコートに立った。


2ゲーム先取のルールで試合は開始。

それがたった1ターンで勝負は決着した。


「あの少女!相手のサーブをレシーブしたかと思えば!」


「味方の顔面にストレート決めて頭上に打ち上げやがった!」


詩織の放った豪速球ごうそくレシーブが、待ち構えていた味方の頭部を直撃。

味方の鼻血が染み込んだボールがネット上に高く飛んだ。


「そして爆音を轟かせた殺人スパイク!目にも止まらないボールが相手の一人をエンドラインの外に吹き飛ばした!」


「そしてボールが少女の頭上に跳ね戻って来たのが運の尽き!」


二人目の鼻血が染み付いたボールが詩織の真上に飛来する。

そして詩織はバックステップを踏んで、最適な距離から高く飛ぶ。


「そして二度目の殺人スパイク!既に背中を向けて逃げていた男の後頭部に直撃!倒れた男から血の池が今も広がっているぅぅう!」


「コートが血と泡の地獄だ!誰か!医療班を呼んでくれぇええ!メディィイックゥウウウ!!」


恐怖と悲鳴を背にしながら、詩織は染まった瞳で歩き出す。


敵も味方もない。欲しかったのは確実な勝利のみ。その為なら誰であろうがにえにする。


そんな意思を感じさせるたたずまいに、誰もが一人の人物を思い出し、心の中で絶叫と共に震えていた。


(((に、日本から!第六天魔王がやって来たぁああ!!)))


ゲームにも登場する残酷無慈悲の大武将、織田信長。

その禍々しい姿を、歩き去る詩織の背中に幻影として浮かんでいた。

読んでくれてありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 『──やん〜で〜れの〜、かな〜た〜へと〜』 悲しみの向こうにいくあれですよね? いつも細かいパロディ楽しませてもらってます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ