表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さすがに武器を持ってお店に突っ込めば退学にしてくれるよね!ねえ!!  作者: こまこま
第10章、オーストラリア編(ゲームイベント編)
133/221

第133話、エリス「私の容姿は危ない者を引き寄せてしまうんだ」

書きあがりましたので投稿します!

前回の投稿から早い更新なので、確認をよろしくお願いします!

ドーム内は批判と罵声のオンパレード。


「俺達はゲーマーだぞ!」

「そうだ!俺達が身体を動かすなんて馬鹿げてる!」

「ゲーム会社が出資したイベントなんだろ!どうしてゲームに関係ない事をやらせるんだ!」


スポーツとは無縁な身体をした彼等からの数々の批判に対し、金髪サングラスの司会者は無感情な声音で淡々と言い放つ。


『君達に動いてもらう為だよ。太ったのも、痩せ細ったのも、筋肉が足りないのも、そういった人種を矯正きょうせいする為に、このイベントは開催されたんだ』


その答えにドーム内がどよめいた。


『○○撲滅フェスタ。その○○とは、『今の君達』の事なんだ』


ずっと隠れていた○○の意味。それがようやく司会者の口から伝えられた。


『今の君達が原因で、世界はゲームに関わる社会問題にひんしている。それが何か分かるかい?』


ゲームに関わる社会問題。

色々ありそうだが、ゲーマーである彼等の口から伝えられる事はない。


それを見越して、司会者はすぐに答えを言い放った。


『引きこもり』


「っ!?」


鈴子の肩がビクッと揺れた。


『ゲーム依存、不登校、すねかじり、運動不足による肥満、社会不適合者、人格破綻者。これらの増加によって社会はゲームが悪いと印象付けられている』


そして司会者は、過去のニュースに触れ始めた。


『数年前のニュースで、ゲームに夢中になり過ぎた息子が引きこもりになり、その親がゲーム会社に責任があると訴えて裁判を起こしたんだ。他にも─』


仮想と現実の区別がつかず殺傷。


欲しかったゲームが買えず、購入者を殺して強奪。


課金を繰り返して莫大な借金。


ゲームの世界が本当あると思い込み、命を絶てば行けると妄想して自殺。


『どうしてゲームが責められる?悪いのはゲームなのか?いいや、ゲームは何も悪くない』


そう、悪いのはゲームではなく、ゲーム中毒に成り果てた者達である。


『ゲームをけがやからは徹底的に予防治療させる。運動によってね。このイベントの趣旨がそれなんだ』


切実正当な理由と表明。

だったが、それを受け入れられる気愛を持つ者は、この場には少なかった。


「ふざけるなぁあ!だったらやめてやる!ゲームをやめたら困るのはお前達なんだろ!」


「そうだ!ゲーム会社がこんなイベントに出資しているなんて馬鹿げてる!その会社のゲームには一切触れてやるもんか!」


ワーワーと文句を喚く参加者。

だが司会者は動じずに冷静だった。


『ああ、やめてもらっても構わないよ。出資者の方々も、裁判沙汰になるよりは、やめてもらった方が良いと言っていたからね』


「「「「「「なっ!?」」」」」」


『ゲームが理由で事件を起こされたら、会社の悪い影響に繋がりかねない。彼等は快く賛同してくれたよ。悪い子にはゲームをやらせるな!ってね』


その事実に参加者のほとんどが沈黙する。そして顔には絶望を宿した形相が浮かんでいた。


『景品が欲しいなら勝ち取れ。勝ち取れなかったら今までの自分の生活を思い出せ。このイベントに勝ち残れるのは、堕落に溺れず、ゲームと社会を両立してきた人間だけなんだ。それをよーく知ってほしい』


ゲームと社会を両立してきた者だけが、出資会社に受け入れてもらえる。

司会者は会社側を代弁して、その事を伝えた。


『脱落者はすぐに退散。四回目が控えているからね』


第一回なのに三回目。

司会者が最初に言っていた説明の意味がようやく分かった。


脱落者が退散し、参加者を補充。

それを繰り返して、今が三回目なのだと言う。


『では健闘を祈る!詳しいルールは近くの係員に聞いてくれ!』


────。

────。


「何故三人で多目的トイレに?」


「いや〜周囲の視線がギラギラしていたからね。たぶん、参加条件がペアを組む事を必須にしたからだと思うけど──」


エリスが言うのは、係員から知らされた参加ルール。

実技ゲームは選択自由だったが、ペア参加が必須となっていた。


たぶんその条件は、ここに集まった人種に理由がある。


「コミュニケーション能力を試されてるね。友達と訪れた者はいいが、孤独な者には地獄だろう」


根暗人間ともだちいないに対する試練。


コミュ力でふるいにかけ、脱落者を増やす運営側の策略が既に始まっていると予想できる。


「それに周囲のギラついた視線を見ると、広樹くんが狙われていたね」


「あ〜やっぱあの気持ち悪い視線は…」


「君の身体を狙っていたんだろうね」


キモい言い方をされるが、確かにその通りだ。

あの視線は自分に誘いをかける瞳だった。


それは周囲の見た目から判断して、自分が一番スポーツができると思ったからだろう。


「そして鈴子ちゃんと私も危なかった。まぁ具体的な理由が……」


「ぅ……」


「よく耐えたね〜鈴子ちゃん。私達は未成年で小さかったりするから、この機会に下心丸出しで狙われてしまう。とくに鈴子ちゃんは視線に敏感だったみたいだね」


「みんなが…私を…」


「あ〜よしよし。辛かったね〜」


気分を悪くした鈴子の背中を、エリスが優しく撫でる。

それを見て、一つ思いついた。


「エリスは、スポーツが得意なのか?」


「ん、どうしてだい?」


「いや、得意だったらさ。鈴子を頼もうと思って」


「っ!?」

「ほぉ、その理由を聞いても?」


「いや、もしエリスを一人残したらちょっと危ないだろ。だったら女子二人で組んでもらった方が心配ないと思ってな」


「広樹っ…それはっ…」


鈴子が横槍を入れようとするが、エリスを一人にするのは、かなり引けた。

そして鈴子の身をエリスに任せても問題ないと感じてしまう。


「それにエリスは、こう、雰囲気が」


「雰囲気?」


「かなり直感だけど……たぶんできるだろ?」


だって見た目と雰囲気が一致していない。

葉月しょうがくせいくらいの容姿なのに、慣れたコミュ力で自分達に話しかけてきた。


たぶん、ちょっと触れちゃいけない経歴を持っていると思う。

お忍びエリートお嬢様みたいな何かを…


「ほほぉ〜言うね」


少し間があったが、不敵な笑みを浮かべ、エリスは機嫌よく胸を張った。


「ああ問題ない。その直感に叶った働きをしよう。そこそこ自信はあるよ」


その言葉を聞けて安心した。


「じゃあ鈴子、そっちはそっちで任せたぞ」


「…………ねぇ、広樹」


「ん?」


トイレのドアに触れたとき、鈴子の暗い声に呼び止められる。


「逃ゲナイヨネ?」


あれ、ちょっと怖い。


「ああ逃げないよ。最初は逃げようと思ったけど、今は違う」


純粋に楽しもうとする鈴子に変な疑いをかけたんだ。ここで逃げたら罪悪感に追われてしまう。


「だから心配するな」


「本当に?」


心配性だな。


「プロ選手が参加しているわけじゃないんだ。すぐに片付けてくる」


プロ選手がコスプレして、ゲームイベントに参加する筈もない。


運営側が呼ばない限りは…

読んでくれてありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ