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第13話、校長「外見だけが全てじゃない。知っていることが全てじゃない。見た目に騙されてはいけないよ」

ようやく書けました!

コメント、感想、アドバイス、助言、訂正!色々待ってます!!


6月12日に助言をいただき、一部を訂正しました!


6月17日に助言をいただき、一部内容を変更・訂正しました!


6月22日に訂正しました!

「これから屋上に行ってみようか。この建物からなら、戦闘学の敷地がよく見えるよ」


「ええ、お願いします。……校長おっさん


「ああ、うん……エレベーターに乗ろうか」


流しきれない汚れがあった。

広樹は全てを許しきれたわけではなく、その仕返しとして、校長をおっさんと呼ぶことにした。


「この建物は来客者の受付と講師用の休憩室、資料室、保管室、図書館などが設置してあってね、生徒の教室と寮は別にあるんだよ」


校長は建物の詳しい説明を始めた。

エレベーターは外を見渡せるガラス仕様になっており、ガラス天井から射す陽の光が目に飛び込む。


「この建物は五十階建てで、戦闘学の建物の中でも高い方なんだ」


ピンポーンと鳴らし、停止するエレベーター。


「さあ着いたよ」


扉からまず見えたのは青空だった。

横から吹き付ける風で、バランスを崩しかけそうになる。


(これは……)


広樹は目に見える風景に言葉を失った。


「すごいだろ。これが戦闘学だ」


太陽が照らすのは、一つの世界だった。

それは学園というよりは都市に近かったのだ。


広い公園もあれば大きい森もある。

ショッピングモールらしき建造物の近くには、レールを進むモノレールが見えた。

奥まで視線を飛ばすが、どこまでが敷地なのかもわからないほどに、広いと認識させられる広樹。


「改めて説明するよ。戦闘学の敷地内には、雑貨屋や飲食店、レジャー施設、他にもホームセンターなどを完備させている」


言葉を失っている広樹に、誇らしげに戦闘学の説明をする校長。


「自給自足とまでは行かないが、ここは一つの都市として成り立っているほど、設備が整っている」


まさにその通りだった。


「それも、国は戦闘力を持つ者たちを大切にしているからだ。だがね、その分、戦闘力保持者は、戦闘学の外に出るのには制限がかかるんだ」


裕福な暮らしの対価に、政府が要求するのは、国民の安全だった。


「戦闘力保持者は常人とは違う。間違えれば取り返しのつかない事故、事件の原因になってしまう」


真剣な表情で、戦闘力保持者の重要性と責任を語る。


「ここは、戦闘力を制御し、安全な生活を送るためへの訓練場とも言えるね」


そのために『学園』という文字が付いている。

パンフレットにも書いてあった。


戦闘学が用意する進路について。

戦闘学を卒業した者は、政府が運営する企業、組織に所属し、戦闘学敷地外で住む許可を得る。もしくは、戦闘力を失わせる治療を受け、一般の生活に戻る。


これらが主に戦闘力保持者に用意された進路だ。


広樹は校長に視線を合わせ、感じたことを伝えた。


「楽しく暮らせそうです」

(何でもあるじゃん!やっべぇえ!)


裕福な暮らしの対価についての説明を聞かなかった広樹だったのだ。


「そうか。楽しくか…まあ、君がいいなら、良いんだ」

(楽しくか……君なら私達の目を搔い潜って、外に戻ることなど造作もないだろう。出来れば、言葉通りにこの学園で楽しく暮らして欲しいね)


広樹の実力を知っている校長は全てを悟る。

たとえ治療を受けたとしても、彼なら力を奪われずに隠蔽し、外の生活に戻れる。

校長の広樹への評価は高かった。


「じゃあ後は、詩織くんに色々と教えてもらいなさい」


「……は?」


「じゃあ詩織くん、後は任せた」


「はい」


広樹の理解が追いつかないまま話が流れていく。


(えぇ!何!?俺、このヤバイ女と一緒に行動するの!?)


「じゃあ…広樹さん?でいいかしら、とりあえずはこの呼び方で行きますね」


「……分かった」


少し間を置くも、広樹は承諾の返事を返した。


「さっき部屋でも言ったが、彼女が君の案内役だから、今後分からないことがあれば、詩織くんに聞きなさい」


(聞いてなかったぁああ!)


部屋で校長が話していた説明を無視していた広樹は、いつのまにか詩織の案内役を承諾していたのだ。


「とりあえず、敷地を歩きながら色々と説明しようと思うけど、良い?」


「ああ」


(宝くじの件については、もう何も企まないと校長に誓わせた。ならこの女も同様のはずだ)


部屋で誓わせた約束を思い出し、この女が宝くじを奪おうとしないことを考え、一緒に行動しても大丈夫と判断した。


















「今私たちが歩いているのが第一区」


頬に謎の赤みを出し、歩きながら説明をする詩織。そして気になったことを広樹が質問する形になっていた。


「戦闘学には第八十区まであってね。それぞれの区には独特の雰囲気、施設があるわね。」


「……ん、校舎と寮は第何区にあるんだ?」


「第三十区に校舎…って言うよりは高等部の敷地ね。で、第三十五区から第四十区までが、寮が密集して並んでいるわ。あと寮とは別に、マンションや家とかもね」


「ん?家があるのか?」


「ええ、学生以外にも戦闘学の敷地に住んでいる人がいるわ」


戦闘学の住民割合は、戦闘力保持者七割、その他三割。

ほとんどが戦闘力を保有しているが、戦闘力を保有していない一般人も住んでいるらしい。

外から派遣された教師やその家族。また点在する施設や店の関係者などがそうだ。


「最近だと、農場を作る話が立ち上がっていてね、農家の知識を持つ人を住まわせる案が出ているわ」


「それができたら、本当の自給自足の都市ができるわけだな」


「そうみたい。ちなみ、この案を立ち上げたのは、序列者……学生なのよ」


「序列者?」


「ああ……序列者って言うのは、学生の中でも総合能力が高いトップ十人の事ね。まあ、色々と権限が貰えて、第二位が権限を使って案を出したのよ」


序列者の説明を受け、広樹は一つの考えが生まれた。


「その序列者ってどれくらいの権限があるんだ?」


「ん〜、考えたこともないわね。でも、噂だけど第一位が政府に口利きして貰って、何かをして貰ったとかは聞いたわね」


(すっげぇええ!えっ!何!セレブが使う特別なカードみたいな物じゃん!めっちゃ欲しいぃい!)


広樹の中は『欲望』がほとんどを占めている。それも宝くじの当選番号を確認してからの成長だったりする。広樹は改めて序列者の好待遇を好ましいと思った。


「トップ十人になるにはどうすればいい?」


「……」


「ん?どうした?」


詩織が黙ってしまい、広樹に疑問が生まれた。そんな中、詩織は切羽詰まっていた。


(やっぱり聞きに来たぁあ!?校長から序列入りさせるなって言われてるのに!?)


詩織は校長からお願いをされていた。

広樹に権限を持たせないように序列に興味を持たせるなと。早速約束が破綻になることに詩織は汗を流していた。


それでも、答えなければ何をされるか分からない。詩織は心の中で校長に謝り、広樹に知っていること教えた。


「戦闘力の総合評価と任務の貢献度、……それと人間性ね」


詩織は最後に余計なものをくっつけて説明した。


「戦闘力の総合評価ってのは?」


「戦闘力は測定することができてね。その評価が高いほど、戦闘力の大きさと精度が良いのよ」


「……そうか」


(序列の質問を辞めてくれた?……)


詩織は内心喜んでいた。これ以上聞かれていたら、精神が持ちそうになかったからだ。広樹の序列への興味が失せて良かったと思った。


だが、実際は違った……


(測定なんかあるのぉおお!?やっべぇええ!俺、測定されたら一発アウトじゃん!?)


広樹も焦っていたからだ。自分に戦闘力がないことを自覚している彼にとって、測定は処刑と同じだった。


(ガチでどうするっ?測定日だけ休んで誤魔化すか。でも、そしたら序列者を目指せねーしっ……)


思考を回し続ける広樹の顔を見た詩織は、精神をズキズキさせていた。


(あの顔は何、色々と考えているみたいだけど、もしかして序列入りのことを考えてるの?)


やっぱり序列入りを考えているのかと、詩織は焦った。


(辞めさせなきゃっ…)


詩織は決心を固め、広樹に序列入りを辞めさるよう促そうと決めた。


「広樹さんは、序列入りを考えてるの?」


汗をかき、緊張を瞳に宿しながら、広樹に質問をした。その答えをどう断ち切るか、詩織は精一杯考えていたのだ。だが、予想は裏切られた。


「いや、俺は序列入りを考えていないよ」


「えっ?」


「権限も欲しかったけど、俺の戦闘力なんかで序列者になれるわけないよ」


(いやいやいや!?なれるよ!複数の能力を持ってる時点で、戦闘力もヤバイはずだからね!)


心の中で詩織は、広樹の言葉を全面否定していた。

能力とは、戦闘力が高い者に発現する法則があった。

彼が能力を複数持っていると疑っていなかった詩織は、広樹の戦闘力の数値が高いと知っていた。


(でも、これなら……)


しかし、結果として広樹が序列入りを目指さないことを聞いて、校長の約束を守りきれたとホッとしていた。話題を切り替えて、次の話を始める。


「じゃあ早速だけど、次はあなたの部屋に行こうかしら」


「ああ。そろそろ確認しに行こうか」


普通に会話をしているが、広樹の中では……


(序列入りよりも、ここでの生活だ!)


広樹は必死に測定を誤魔化すと決意していた。序列者になるのに戦闘力の測定が必須であれば、それを拒否し、ここでの安定生活を優先することに決めたのだ。


(バレたらさよなら?そんなこと絶対しないね!ここで俺は国の金で生活をする!)


それが広樹だったのだ。




















モノレールステーションに着き、詩織は広樹にあるものを渡した。


「広樹さん、これを」


渡されたのは学生証のカードと手帳だった。そして、彼女は自分の手帳を開き、中を広樹に見せた。


「手帳の中に学生証を入れておくの。これが戦闘学の生徒である証になるから大事にしてね」


言葉に従い、広樹は学生証を手帳に入れた。


「あと、この学生証にはチップが埋め込んであってね、学生証を持っている私たちは、敷地にある公共移動設備を何でも使えるのよ」


詩織の言葉に内心驚く広樹。


(マジで天国じゃん!)


今までに体験したことのない待遇に嬉しさを感じていた。


「ここからモノレールに乗って、第三十区まで移動。そこにあなたの部屋があるわ」


校長から知らされていた情報を話した詩織は、ゲートに足を向けた。


「それじゃあ、行きましょうか」


詩織に先導され、ゲートに手帳をタッチして駅に入場した。


















車内に揺られながら、詩織と広樹は座席に座っていた。


「そういえば、詩織……でいいのか?」


「構わないわ」


改めて彼女の呼び方に迷っていたが、広樹の提案に詩織は首を縦に振った。


「詩織は何年生なんだ?」


「あなたと同じ高等部一年よ」


「そうか」


広樹は詩織の学年を聞いた。自分と同じ学年ならと、広樹は詩織に一つ提案をした。


「ならさ、『広樹さん』って呼び方やめにしないか?同い年だったら呼び捨てでいいよ」


「……なら改めて、広樹って呼ぶわね。」


広樹の提案を受け入れた詩織は、緊張をした面持ちで広樹の名前を呼んだ。


そして、広樹は同い年と聞いて、一つの疑問が生まれていた。


「あのさ、気になったんだけど、俺たちって同じ学年だよな?」


「そうね」


「さっき、お前の学生証を見たとき、俺の学生証と少し違うデザインだった気がするんだが?」


「……ああ、伝え忘れていました」


詩織は今になって、ある説明を忘れていることに気づき、丁寧な敬語を口にした。


「まずは自己紹介ですね。高等部一年の姫路詩織。戦闘学の序列は十位です。デザインが違うのは、序列者用の学生証だったからですね」


学生証を見せながら、自己紹介と学生証の説明をした。


そして……


(序列者だったぁああ!)


顔には出していないが、広樹は心の中で叫んでいた。

戦闘学の生徒数は数万人いることを知っていた。つまりは……


(この女が数万人のトップ十の一人なのぉおお!?)


改めて、自分が相手をしていた女の立場を知った。そして、恐怖が蘇った。


(戦闘力の評価が高い!つまりはめちゃ強いということですよね!?身体を強化出来るとか聞いたし!)


つまりこの女が本気で人の顔面を殴れば、落ちたザクロみたいになると、広樹は理解した。


(いっっっやぁぁあああああ!?)


目の前にザクロ生産機がいることに気づき、広樹は精神を崩壊しかけた。学校で追いかけられたときの記憶が蘇った瞳には恐怖を写していた。


(だっだっっ大丈夫だよねぇぇえええ!?もう学園長室で話は片付いたしぃぃいい!もうこの女が俺を狙うことはないはずぅうう!)


自分に自己暗示をかけたが、抜け切らない気持ちを胸にし、出来る限り気持ちを落ち着かせた。


そしてモノレールが駅に停車した。


「ここで降ります。ここから歩いて十分ぐらいの位置に、あなたの部屋があるマンションがあるわ」


「ああ」


「?」


震えた声で精一杯の返事を返す広樹に、詩織は?印を頭に出していた。




















「このマンションね」


オレンジとホワイトのタイルを混ぜ合わせた外観を持つ三十階建てマンション。

一階に中庭完備、屋上には共有スペースがある高級マンション。そのマンションを目の前にした広樹は……


(キャアッッッッホォォォォオオオオ!!)


嬉しさのあまり、内心発狂していた。

それは、先ほどの恐怖を忘れるほどだった。


(ここに住めるの!?マジフィーバァァアアアアだよ!!)


今すぐ全裸になって腰ふりダンスをしそうな勢いで、広樹の精神は頂点に上がっていた。


「校長からは、心置きなく生活してほしいと」


「ああ、校長にありがとうって伝えてくれる?」


「分かったわ」


広樹は改めて校長に感謝を伝えたいと思った。


「では、入りましょうか。受付の人に顔を覚えてもらっているから、窓口の前を通れば、ロック式自動ドアを開けてもらえるわ」


詩織の後ろをついて行く形で、広樹も後に続いた。


自動ドアの先に見えたのは広いフロア、陽の光が入り込むように作られた空間には、柔らかそうなソファと観賞用の絵と植物が飾ってあった。


「この先にエレベーターがあるから、それに乗って二十階までいきます」


広樹の部屋は最上階にあった。きっと眺めがいいだろうと期待しながら、エレベーターに乗り込む。


あっという間に二十階に着き、少し進んだ先で詩織が立ち止まる。


「……ここね。この鍵と広樹の持っている学生証のチップでドアのロックが外れるから」


扉は鍵穴と電子キーの二重になっていた。詩織が広樹にシルバーの鍵を渡し、開け方を説明した。

そして、広樹はドアを開けて中に入る。


「広樹の荷物はもう届いているから、よかったら片付け手伝うわよ」


ちゃっかりと一緒に入ってきた詩織の言葉に広樹は不満を感じた。


(このザクロ生産機を部屋に入れろと?)


広樹の中で詩織の名前が『ザクロ生産機』になっていた。だが、断るのも怖く、部屋の入室を許したのだ。


綺麗なフローリングの通路を進む。

構造はベランダ付きの3LDK。窓から差し込む光が、白い壁に反射して、広々とした空間をより綺麗に見せていた。


(俺……絶対にここから出ないぞ……)


すでに悟りを開いた顔をした広樹。彼の精神はすでに壊れて、ここに根をはることを決めていた。


「……」

(校長も本気ね……)


この部屋は校長が尽力して広樹に提供した部屋だった。

広樹を戦闘学に長く居座せるため用意した最高の空間。

詩織は改めて校長の覚悟を再認識していた。


「本当に届いてるな。じゃあ、手伝ってくれ」

(本当は触れさせたくないよ。ザクロの赤汁がつくかもしれないし)


内心でとんでもないことを言っている広樹は、詩織に言葉を飛ばした。


「できる限り頑張るわ」

(広樹の私物を触る……ウヘッ……)


詩織の内心も、とんでもないことになっていた。



















「この夏物の衣類は全部クローゼットにしまってくれ、春、秋、冬物の衣類はダンボールの状態でクローゼットに突っ込めばいいから」


「わかったわ」


二十個以上あったダンボールが片付いて行く。

人手が一人増えるだけでも、かかる時間が大幅に違うことに気付かされた広樹。


「ん?この荷物は?」


広樹は身を覚えのない荷物を見つけた。一つは白いダンボール、もう一つはシルバーのアタッシュケースだった。疑問に思った顔をしていた広樹に気づき、詩織は口を開いた。


「それは、校長が用意してくれた物資ね」


「校長が?」


「ええ、さっき伝えていたけど、戦闘学の生徒として必要なものが入っているの」


その言葉を聞き、広樹は白いダンボールから開けた。


「制服と教材、それと靴か」


中に入っていたのは黒を主張にした制服と勉強教材が入っていた。オマケのように、数枚の白のワイシャツと靴もあった。


「ん?なんか肌触りが違うような…」


「特別仕様だからよ。みんなも同じのを着ているわ」


疑問に答えた詩織。

広樹は特別仕様の意味を問いたださずに、気になっていたアタッシュケースに手をつける。

中に入っていたものは


「……これは何?」


「ベレッタM92、米軍も採用している、信頼度が高い拳銃よ」


「……これは?」


「戦闘学仕様の防弾チョッキ。制服の素材にも使っているわ」


「……これは?」


「コンバットナイフね、使いどころが少ないから持っていても意味はないわ」


「……これ?」


「治療ケース、麻酔から針まで色々と入ってるわ」


「……」


「それは通信用の小型無線機ね。」


すでに言葉を発することをやめていた広樹。

初めて目にしたものに、混乱をしていたのだ。


「なんでこれがあるの?」

(これから映画に出演しろと?)


棒読みながらも、広樹は詩織に質問をした。


「えっと……広樹には必要なかった?」

(そうよね、複数の能力を持っている広樹には武器なんて必要なかったかも……)


「いや、………とりあえずもらっておくよ」

(何か忘れているような……)


「うん、わかったわ」

(まあ、持っておいても損はないしね)


広樹は戦闘学のことをちゃんと理解してなかった。斉木に教えてもらったことも忘れていたのである。

唯一彼の頭にあったのは『国の金生活』の文字だけだったのだ。


戦闘学は警察・自衛隊とは別に作られた特別組織である。

戦闘学は国・政府・企業などから仕事を受けて、戦闘力を駆使し貢献をする。


広樹はこれを完全に忘れていた。




















日が沈みかける頃。


「片付けも終わったわね」


「ああ、助かったよ」


善意で手伝ってくれた詩織に対して、広樹はちょっとだけだが心を開きかけていた。


「いいのよ。私が案内役だし、これからも頼ってくれて構わないわ」

(……ムフフ)


百パーセントの善意を持っていなかった詩織は、今後も困ったことがあれば、手伝うと返事を返した。


「学校は明日からだったよな?」


「ええ。ここから三十分くらいで着くわ」


「そうか。じゃあ明日からもよろしくな」


「ええ、こちらこそ」


夕焼けの光が差す部屋で、改めて挨拶を交わし合う2人。


「じゃあそろそろ帰るよな。マンションの外まで送るぞ」


「いえ、通路まででいいわ」


詩織は返事をして、玄関に向かって歩き出す。

そして、通路に出て。


「じゃあまた明日ね」


「おう」


そう言って詩織はエレベーターのある方向に歩き出した。


が、すぐに立ち止まり、隣の部屋の前で鍵と学生証を取り出した。


鍵を鍵穴に差し込みひと回し、電子版に学生証を触れさせ、ピッという電子音を鳴らし、扉のロックが外れる音がした。


「じゃあね、お休みなさい」


その一言を残し、彼女は隣の扉の中へと姿を消していった。


(ザクロ生産機ぃぃいいいいいいい!!)


広樹は、今日一番の言葉にならない悲鳴を暗くなった夜空に打ち上げた。


















ご飯を食べ終え、お風呂から上がった広樹は、寝室に備え付けてあった広いダブルベッドに身を預けた。


(今日は疲れた〜)


今日一日でどっと疲れが出た広樹は、ようやくのくつろぎタイムを得ていた。


(明日から初登校だ。なんとかボロを出さないようにしないとな)


今後の身の振り方を考える広樹。

白いシーツの肌触りを確かめるように指を動かしていた。


(今日はもう寝よう。明日のことも、これからのことも起きてから考えよう)


そう決めて、電気の明かりを弱くし、枕に頭を預けた。


「……ん?」


顔に妙な感触があることに気づき、電気をつけた。


「髪の毛?」


なんでベッドに髪が落ちていたのか疑問に思った広樹。


(前の住人のか?)


深く考えるのをやめ、ベッドの横にあるゴミ箱に入れた。


そして再び電気の光を落とす。

これからも読みに来てくれると嬉しいです!!

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