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さすがに武器を持ってお店に突っ込めば退学にしてくれるよね!ねえ!!  作者: こまこま
第10章、オーストラリア編(ゲームイベント編)
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第127話、メリル「カラーコンタクトレンズが痛いデス!」

お久しぶりです!

書きあがったので投稿します!

どうかよろしくお願いします!

「ん〜〜」


「何見てるの?メリル」


「ん、日本のアニメですよ。日本語版で日本語を勉強中です」


メリルが答えると、少女はメリルの隣に立って、彼女が見つめているタブレットに視線を向けた。


「確か、日本支部の友達の為に日本語を…………何これ?」


「日本のアニメですよ」


「いや、そういう事じゃなくて」


疑問の見当違いに、少女はメリルが見ているアニメを指差して、


「なんで女子高生がビームを出したり、武装したり、世界が変化したりしてるの?」


「そういう世界観なんですよ」


「へ、へ〜、あ、あとさ、英略の意味が分からないかも…何を言ってるこの子達?」


「呪文ですよ。これを唱えて世界を変化させたり、武器を出したり、技を放ったりします」


「…………は?」


「言いたい事は分かります。でもそういう世界があるんですよ」


白けた顔をする少女に、メリルはきっぱり言った。


「ハードル高めのアニメを選びましたが、少し考え物の作品ですね。これは」


「じゃあ別の作品にしたら?」


「でも面白いんですよこのアニメ。勉強よりも鑑賞意欲の方が勝っちゃいました」


メリルの言葉に少女は納得した。


「ストーリーにハマっちゃったんだ。……でもさメリル」


「ん?」


少女はメリルの顔を見て言う。


「ヒロインの真似をして、眼帯を付けるのは止めようか」


「では」


メリルは眼帯を外し、


「この瞳に宿る漆黒やみの─!」

























「本日はよろしくお願い致します。オーストラリア支部総責任者、ジェシカ・ウィリアムス」


「ええ、此方こそよろしくお願い致します。調査官様」


お互いが笑みで見つめ合い、友好な関係が間に見える。だが実際は違った。


「今日の調査は今後の運営に大きく左右します。取調べ内容は分かっていると思いますが」


「はい。私達が子供達に戦闘力保持を強要している件についてですね」


オーストラリア支部で一つの問題が発生している。


それは戦闘力保持の強要。


戦闘力を手放したいと希望する子供達の要望を取り下げ、無理に支部に在籍させ続けている。

その事実がオーストラリア支部にはあった。


「既に此方わたしたちは認めております。今回の件、本当に申し訳ありませんでした」


頭を下げるジェシカの前で、調査官は心中で訝しげな感情を抱いていた。


「いえ、研究者達が独断でやった事だと聞いております。上に立つ者でも、全てを把握する事は不可能。深く気にせずとも、私達は全てを考慮した上で厳正な処分を下します」


外面ではジェシカを慰める調査官の姿がある。

だが、


(本当に研究者達の独断だったのか?)

これが調査官の本音だった。


研究者達の独断だったとしても、それはジェシカによる強い精神的圧力が故の結果だったのかもしれない。

また、ジェシカ自身が嘘をつき、指示を下していた可能性もある。


故に調査官が訪れた理由は、その真意を確認する事にあった。


「では、資料の閲覧と各所員との面談をさせて頂きます」


「はい、既に準備は整えております。此方へ」


大きな扉を開け、白い模様で飾られた廊下に調査官を誘導する。


ジェシカと調査官の他に、オーストラリア支部の関係者が二名。この四人で廊下を歩く。


スタスタと無言の空気が続き、ジェシカは隣にいる調査官に視線を向けた。


「…………よろしければ、談話でも致しませんか?無言で歩くのも虚空こくうと思いまして…」


「……そうですね、私は構いません」


一息吸って、調査官はジェシカの提案に乗る。


「私個人の興味なのですが、アイリ・エデルマンの事についてです」


それは少し前の合同任務。

闇組織WDCによる戦闘力者集団拉致事件。

その重要人物として扱われていた少女の名前に、調査官は目を見張った。


「意識が回復した子供達の中で、彼女だけが戦闘学に残ったと聞きました。その理由が気になりまして」


「確かに、詳しい内情は共有されていませんでしたね」


彼女が残った理由は『能力の保持』が目的である。

戦闘力は戦闘学で教養を受けなければ、保持が認められない。

入学しない場合は強制的に治療を受けさせられ、戦闘力を手放させる規則が徹底されている。


「『戦闘力を保持し続けたい』。彼女はそれを強く希望して戦闘学に残りました」


調査官の答えに、ジェシカは疑問の表情を顔に出した。


「保持ですか…しかし、あの忌々しい体験をしてもなお、どうして…」


「まだ明確には分かっていません。本人の事情を説明するなら…『無意識』と言いましょうか…」


「無意識?」


「『保持し続けたい』、本人はその一点張りで詳しい理由は言ってくれませんでした……いえ、言えなかったと私達は推測しました」


「説明できない…つまり、本能がそうさせた」


「ええ」


無意識。本能。

それが今のアイリ・エデルマンが持つ『能力保持』の理由。

それを知ったジェシカは、その上で次の疑問を口にした。


「確か日本支部に転入させる予定と聞きましたが…アイリちゃんの年齢は」


「ええ、日本支部は中等部からなので、年齢からアイリちゃんを転入させるクラスは有りません」


アイリ・エデルマンの年齢は『九歳』。

そして日本支部は中等部(十二歳)からしか無く、アイリ・エデルマンが属せる場所は無かった。


「なので特別クラスの設置、もしくは飛級での転入。その二つで日本支部は検討しているそうです」


「そうなのですか……でしたら」


ジェシカはやや口端を歪ませて言う。


「他の支部でも良かったと思いますが…例えば私達の支部。此処は初等部から存在し、安全面を考慮した教育課程の元で、英才教育を施しておりますから」


「…………ええ、それは私も一理はあると考えております」


日本支部と違い、オーストラリア支部は初等部からある。

世界各国に点在する戦闘学の各支部には、独自の文化と課程を形成して作られており、オーストラリア支部も日本支部とは違う面を持っていた。


「正直言ってしまえば、アイリちゃんも同年齢の友達と一緒に入られたらと思っています」


「でしたら」


「しかし、ペ──んんっ…失礼」


「?」


「しかし、統括長がお決めになった事です。彼の方はアイリちゃんの安全面を最優先して、日本支部に転入させる事を決めました」


「安全面ですか…」


「ええ、あの場所は本部と並ぶ程に、『ある意味で安全』ですから」


意味深い言い回しを前置いて、調査官は日本支部を語る。


「現在残っている大人達の序列者、それを遥かに超えた実力を兼ね備える子供達が日本支部にいます」


「……あの規格外達ですね」


ジェシカも何かを悟った顔つきで、調査官の言葉に同調した。


「序列一位から序列九位。姫路詩織も逸材ですが、あの九人だけは遥かに別格の存在……彼等が暮らす巣窟そうくつに手を伸ばす者達がいれば、即座に根絶やしでしょう」


九頭のライオンがいる鉄檻に無知な子鹿を入れる様なものだ。

即座に撃ち倒され、お縄になるのか必至だろう。


「更に日本支部は統括長が育てた弟子が運営しております」


調査官の言葉に、ジェシカは前回の報告会に参加していた一人の日本人を思い出す。

ストレスで白髪増加の一途を辿る一人の男。


「統括長の正体を知る、数少ない人物の一人……」


統括長の容姿、性別、年齢、能力、あらゆる情報が秘匿されていた。

戦闘学を束ねる存在であり、巨大な影響力がある人物。

その弱みの一切をさらさない様、徹底された情報秘匿を成していた。


故に統括長の正体を知れるのは、大きな信頼を持つ者のみ。

その一人こそが日本支部総責任者だった。


「故に彼処あそこ何処どこよりもまさっています。きっとアイリちゃんも安全に暮らして行けるでしょう」


「……そうですね」


調査官の結論に、ジェシカは納得するしかなかった。

アイリ・エデルマンは一度攫われてしまった過去がある。


その失敗を鑑みれば、本人の快適さよりも、本人の安全性が重視される。


彼女が戦闘力を保有し続ける条件こそが、日本支部の在籍なのだと、統括長が唱えているのだと自然と理解し得た。


「『プロモーション』。それが終わればアイリちゃんを日本に移送される手筈でしたが、もうお済みに?」


「いえ」


調査官は一言否定を言い、


「今回の開催中に予想外の事故があり、後処理に追われているそうです。その影響で移送は延期に成らざるを得なくなり」


「予想外の事故?」


「詳しい事情はまだ未発表になっています。情報が固まり次第、各支部に情報共有するとの事です」


統括長から知らされた言葉を、そのまま伝える調査官。

その言葉にジェシカは新たな疑問を言う事は無かった。


「私からもいいですか?」


「ええ、どうぞ」


次に疑問を放ったのは調査官の方だった。


「オーストラリア支部に在籍している序列者、『メリル・キャンデロロ』さんについてです」


それは前回の合同任務に参加した、詩織を気にいる一人の少女の名前である。


「彼女の事で、他支部と揉めているそうですね」


「ええ、私の困り事の一つです。メリルが純粋なオーストラリア人だったら良かったのですが……」


「他国の血が混ざっている……」


「ええ……悪い言い回しになりますが、メリルが低能だったら、向こうは面倒言ちょっかいを言わなかったと思います……メリルは向こうが欲しがる才能を持っていますから」


「確か『振動粒子バイブレーション・パァーティクル』でしたね。震動する特殊粒子を生み出し、自在に操る能力」


「はい。色々と燃費の悪い能力ですが、あの能力には大きな研究価値があります。故に他国の研究機関が欲する訳です」


メリルの能力の価値。

それは世界的にも高く、大きな可能性を秘めるものだった。


「しかし、出生地はオーストラリアであり、オーストラリア人の血も入っています。戦闘学の規則にのっとれば、何も言われない筈なのですが……」


ジェシカは額に手を当てながら、苦虫を噛んだ様な顔で言う。


「やはり震動粒子バイブレーション・パーティクルが貴重らしく、無駄な話し合いを続けております……」


自分のストレスと言わんばかりに、ジェシカは大きな溜息を吐き出した。


「しかし、メリルよりも研究者達が求めている戦闘力者がいる」


研究機関の話題から、ジェシカはある事実を記憶から掘り返す。


「世界中の研究機関が、彼女の能力に涎を垂らしているのが容易く想像つく」


「世界中の研究機関?……ああ、日本支部の……」


「序列は九位ですが、その能力と操作性能は様々な研究分野で応用が効く」


日本支部の序列九位。

世界中が欲する少女の価値。それはメリルを遥かに凌ぐものだった。


「我が支部にも同一の能力を持つ生徒はいますが……日本の序列九位と比べるまでもなく」


「あれは一種の奇才と評価されていますからね。同一の能力でも、あの操作性には誰も敵わない。その上で発動範囲が数千メートルを超えている訳ですから」


「一度会ってみたいものです。出来れば、我が校に在籍している『誘導改変インダクション・マダフィケィシャン』に御教授を願いたいくらいです。まぁ無理でしょうが」


「日本支部があの娘を外に出すのはあり得ないでしょう。もしそんな事をするのなら、日本支部総責任者の思考を疑いますね」


「ええ、まったくその通りです」


軽い冗談を言い合う二人。

最初の腹の探り合いに似た雰囲気が薄まり、本心からの笑みが顔にこぼれていた。



ピピピ─!ピピピ─!



後方を歩いていた付き添いの一人の端末が鳴る。


「失礼します」

「ええ」


ジェシカに断りを入れてから、付き添い人は端末を耳につけた。


「ああ……今此方いまこちらに…………ああ…………はぁ!?」


付き添い人の驚き声に、他の三人が目を見張った。


「あ、ああ。分かった。直ぐに伝える」


連絡を切り、付き添い人は神妙な瞳でジェシカに向き直った。


「どうしたの?」


「はい!地域情報連携課からの報告です!っ……しかし」


付き添い人は調査官を見て、口を迷わせた。


「……問題ないわ。伝えて」


一呼吸置いてから出したジェシカの許可に、付き添い人は言い放つ。


「A地区の空港から報せが届いたそうです!報告義務は無かったのですが、先方が念の為にとの事で!」


どうやら空港からの知らせだった。

念の為として考えるのなら、報告するか迷う案件なのだろう。


重大性が低い報告なのだと、ジェシカと調査官は感じ取った。


「まったく調査官様が来訪している時に……本当にすみません」

「いえいえ、私は不愉快とは思っておりません。どうぞ最後まで」


ジェシカと調査官が笑みを交わして、改めて付き添い人の顔に向き直った。


「それで、報告内容は?」


「はい!実は─」


どうせ小さな案件なのだと思っていた。

だが、


「昨日の午後に日本支部の生徒が本土に入国しました!更に二人のうち一人が『例の生徒証』を係員に提示したそうです!」


…………。

…………。


「「…………ん〜?」」


「更に監視カメラの記録が届けられ、解析したところその二人は照合確認が取れました!日本支部序列九位の内守谷鈴子と、前回の合同任務に参加していた例の多重能力者であるとの事です!」


…………。

…………。


「「はぁああああ!?」」

読んでくれてありがとうございます!

伏線が一つ立ちました!

オーストラリア支部が介入してくる予感です!

ぜひ次の展開も楽しみにしていてください!

これからも更新頑張っていきます!

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― 新着の感想 ―
[一言] ヤンデレアナルバンカーの詩織さんと天才バカの榛名さんがそろそろ現着するんじゃないか
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