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さすがに武器を持ってお店に突っ込めば退学にしてくれるよね!ねえ!!  作者: こまこま
第10章、オーストラリア編(ゲームイベント編)
126/221

第126話、鈴子「腐ったアニメ?…………うん、これを注文」

書きあがりましたので投稿します!

少し長めです!

どうかよろしくお願いします!

一日目の朝…


「「眠い…」」


いや、お前の所為だからね…

どうして旅行に来てまで深夜にゲームをやらされたの俺?


「旅行先までゲームはやめてくれ」


「激戦の前の準備運動は大切」


「激戦の前って、意味が分からないんだが……」


「今日分かるよ」


「そうか」


何を言ってるのか分からないが、もうどうでもいいや。

とりあえず朝食を取りたい。

珈琲の一杯でも飲まないと眠気で膝が崩れそうだ。


「朝食はバイキングだったよな?」


「うん、一階の広間で始まってる」


会話をしながらエレベーターに入る。

一階で降り、賑わうロビーを超えて広間に入った。


「高級ホテルだけあって、やっぱ凄いな」


「うん」


豪華なシャンデリアが飾られた天井と、ライトアップされた展示物。

花束と共にテーブルに置かれているのは、色鮮やかな大皿。


「じゃあ適当に取るか」


「うん」



────。

────。



「「ごちそうさま」」


高級料理の味に舌鼓したつづみをうつ。

食べ終わった皿を返却場所に置いて広間を出る。


「それで今日の予定は?旅行中の予定前半は鈴子が決める約束だったからな」


「ちょっとしたお祭りがあるから、そこに行きたい」


「旅行前に調べたのか?」


「そう」


鈴子は端末を操作して、何かをじっくり見る。それを覗き見ようと背後に立つが、鈴子は見られないよう端末を隠してしまう。


「どうして隠す?」


「サプライズだから」


引きこもりからのサプライズ?

予想できないし恐ろしい。


「前にもイベントにいきなり参加させられたんだ。またヤバイものだったら不機嫌になるぞ」


「大丈夫。今回は危ないのは無いよ」


「本当か?牛に乗ったり、牛乳をたくさん飲まされたりするお祭りに参加とか御免だからな」


「そんなお祭りがあるの?」


「前にテレビで見たんだよ。面白かったが、参加したいとは思わなかった」



────。

────。



ホテルから出発して数十分。

大きな草むらが広がる公園で止まり、鈴子が運転手に何かを伝えてタクシーから降りる。


そしてしばらく歩いて、


「なぁ鈴子さん」


「なに?広樹」


「つまりコレは、どういう事だ?」


俺は鈴子に渡されたバッグを突き出しながら言う。


「お前は俺に何を望んでいるんだ?」


「タクシーの中で説明した通りだよ。そこの仮設トイレで着替えてきて」


このバッグに入ってる衣装に着替えて欲しい……これで納得しろと?出来る訳ないだろ。


「何の為に?」


「お祭りに参加する為の条件だから」


条件?

特定の衣装に着替えて、非現実ファンタジーの世界を創り出す的なやつか?


「早く」


鈴子の押し手によって仮設トイレに放り込まれる。


「なぁ、このバッグの中に入ってる衣装って、どんなのだ?」


「…………」


「沈黙はやめてくれ。怖くなってきた」


「普通のだよ」


考え込んだ先の答えが普通…

絶対にロクな物が入ってないだろ!


「いいから、絶対に着替えてきて」


じゃあ、と言い残して鈴子が姿を消す。


「…………」


まぁ、着替えるのは中身を見てからにして、変な衣装だったら返却すれば問題ないか。


そう決めて、バッグのチャックを開ける。


「…………」


あ〜うん。ギリギリ許容範囲だ。

女装でもなければ、着ぐるみでもない。

だが、コレに着替えるのは少し……



────。

────。



「お帰り広樹」


「おう、ただいま」


鈴子は既に着替え終わった格好で待っていた。


俺と同じデザインの学生服だが、何故か鈴子の服も男子用だった。


「どうして鈴子も男子用なんだ?」


「二着セットだったから」


「そうか」


服を買いに行った時もそうだったが、やっぱり鈴子はオシャレに対する興味が薄い。

それは年頃の女子としてどうなのか?


でも今は流して、本題に入ろう。


「鈴子。この衣装ってか、この学生服は一体なんだ?」


「学生服のコスプレだよ」


俺達は黒を主張した学生服を着ている。

たが、学生服だからこそおかしい。


「どうしてお祭りで学生服なんだ?」


お祭りに参加する為の衣装として、学生服は間違っている筈だ。

非現実的ファンタジーな世界観を持たせる衣装でなければ、世界を壊すだろう。


「それで十分、今から向かう世界に入れるから」


「今から向かう世界?」


「タクシー待たせてる」


そう言われて引っ張られる。



────。

────。



「あーーまあ世界観はピッタリだな、此処は」


照りつける太陽の真下には、長蛇の列が伸びていた。


そこに並ぶ人間全員が、異世界風な衣装とメイクを被っている。


それを見て、俺が今着ている衣装の正体が掴めた。


「何処のアニメだ?それともゲームか?」


「知らない。でも日本で指折りのアニメだってコメントされてた」


「俺は鈴子も知らないアニメの学生服を着させられたのか……」


段々と状況が掴めてきた。

このお祭りの全貌は、昔の文化や宗教に関わるお祭りじゃない。


もっと現代的なものだった。


「テレビで見た何処かのイベントを思い出したよ。いや、此処の方がヤバイ。天と地くらいの差があるぞ」


「このイベントの参加条件は、アニメゲームのコスプレが必須だった」


「その参加条件を作った奴、絶対に裏で笑ってると思うぞ。それと参加者人口が多過ぎだろ。汗臭いし、脂肪率も高いぞおい」


骨つきチキンを食べてるデブもいれば、メイド服を着たデブ、軍人服を着たデブ、魔法少女服を着たデブもいる。


なんだ此処は?デブパラダイスか?

色んなデブが勢揃いしていて帰りたいんだが……


「鈴子、俺は今、かなり帰りたい」


「私も帰りたいけど、駄目」


「こんな場所で並んで、何が目的なんだ?」


「あの大きなドームに入ったら分かるよ」


鈴子が指差したのは白い巨大ドーム。

その入口に向かって長蛇の列が伸びていた。


「脂肪率が高くて、俺の死亡確率も上昇しているんだが?」


完全なサウナ状態だ。なにせ横三人並びでギチギチ密集列。


俺が真ん中で、右に鈴子、左に魔法少女衣装のデブ男。

前列と後列もデブ男、デブ男、デブ男。

肉厚と蒸気で蒸し鍋だ。


そして持参した飲み物も尽きて、倒れるのも時間の問題である。


「じゃあ、あっちの列に並び直す?」


「ん?」


鈴子が視線を促した方向には、もう一つの列があった。


パソコンをいじるモッサリメガネもいれば、ロボット衣装を着るモッサリメガネ、戦隊ヒーロー衣装を着るモッサリメガネ、エイリアン衣装を着るネッチョリメガネ……


別の意味で行きたくない!

少年心丸出しのメガネのオンパレードじゃねえか!


「まだ並んだばかりだから、移動できるよ」


「いや、本当に待ってくれ。なんだこのマニアックでかたよった長蛇の列は。この先に何が待っているんだ?」


「夢と希望だよ」


「夢と希望を追いかけそうな奴等が集まってるもんな!でもおかしいんだよ!色々とかたより過ぎんてるんだよ!絶対にロクなイベントじゃないだろコレ!」


暑さの限界で思考が沸騰する。


マニアックな衣装で飾られたデブ男とメガネの熱帯牢獄サンクチュアリに囲まれているのだ。


おかしくならない方が変だろ。


「そう言われても……これは国が多額の援助をしているイベントだよ」


「ブっ!?はぁ!?嘘だろ!?」


信じ難い事実がぶち込まれて、余計に頭に熱が篭る。


国から援助されてる?

何の冗談でこんなイベントに力を入れてるんだオーストラリア!


「『○○撲滅フェスタ』…とある社会問題を解決する為に計画した今年初のイベントだって」


「○○?その〇〇って?」


「私にも分からない。でも、何をするイベントかは知ってる」


「それは?」


「サプライズだよ」


最後まで内緒の姿勢を見せる鈴子。


だが内緒はこの際どうでもいい。とりあえず暑さと肉厚がヤバイ。


「やっぱ別の列に並び直させてくれ。出来る限り肉厚が少ない所で…」


「じゃあ、あそこは?混ざっていてミックスだよ」


鈴子が教えてくれた列を見る。


女学生服メガネ男、魔法少女服痩せ男、クマの着ぐるみ男、ロボット…、エイリアン…、ナース…、ビキニアーマー…………


…………もういいや、あそこで、


「じゃああっちの列に行くぞ」


「うん」


俺達は並んでいた列から離れ、別の列の最後尾に向かった。


途中で飲み物を確保して、改めて列に並ぶ。


「さっきよりは大分だいぶマシになれたな」


肉厚から解放されて、少しは楽な気持ちになれた。

向こうよりは、こっちの方が断然良い。


「でも、なんで所々で列がかたより過ぎてるんだろうな。並んでから意識したが」


到着して直ぐに並んだ列が、偶然にも肉厚列だった。


「言い方は悪いが、似た体格同士がくっついてないか?」


「誇りを持つ変態は別として…………他の人は自分の印象を薄くする為だと思うよ」


「薄くする為?」


何を薄くすると言うのだ。

薄いどころか分厚いじゃないか。


「私には分かる。影で生きてきた者の気持ちが」


「暗い部屋の影な。カッコよく言い直してるけど、俺には分かってるぞ」


「それで怖くなっちゃうんだよ……外に出て、誰かに見られる事が」


「実体験だよな、それ…」


そこまで気づいているのなら、もっと早く治してくれよ……


「自分の姿を見て影口を言われると考えてしまう……だから隠れるんだよ。目立つ場所の中に」


「目立つって、目立つ存在に近づいたら余計に目立つんじゃないか?」


変な話である。

目立ちたくないのなら、薄い場所にひっそり隠れるものだろう。


「自身を目立たなくするんだよ?……分からない?」


「?」


俺の疑問的な表情に、次に鈴子は確信を突く。


「自分よりも遥かに目立つだれかがいれば、その影にいる自分は薄くなれる……つまり視線の誘導、『ミスディレクション』を使ってるんだよ」


「ミスディレクション?」


え?じゃあ自分よりも目立つ誰かの近くに寄って、自分の印象を薄くしているのか?


軍人服を着た男が、魔法少女服を着た男の側にいた理由がそれか。


「そこまでして並ぶのか……なぁ、この先には本当に何があるんだ」


「夢と希望……直ぐに分かるよ」


いや、分かりたくもない。

分かったら別の世界の住人として仲間入りしそうで怖い。


「なぁ、本当に帰らないか?後ろに誰も並んでないうちに出たいんだが」


熱帯牢獄サンクチュアリはもう御免だ。


さっき並んでいた時なんて、鈴子がいる右隣りからしか風が通らなかったんだ。


周囲全員が外国人であり、羨ましいほどに身長が高い。平均身長が低い日本人には辛い環境なのである。


「鈴子、ちょっと真ん中に並ばないか?」


「絶対嫌だ……私が倒れる」


この調子で断られる。

他人に囲まれたくないと言うのだ。


「じゃあ能力で暑さを解消できないか?誘導改変で」


能力の説明を聞く限り、風を誘導する事も出来ると思った。


これでもう少しマシになれば、


「出来ない」


「ん?どうしてだ?」


「戦闘学の規則……敷地外での戦闘力使用は禁止」


「…………そりゃそうか」


超人的な身体能力を発揮する戦闘力者。

その力は使い方によっては、一般人を傷つける事もある。

だから禁止されてもおかしくない。


「でも、コッソリ使う奴もいるんじゃないか?」


「使えないよ。私みたいな万能型の能力が無いと……これを見て」


鈴子は端末を開いて、写真に写った『腕輪』『ネックレス』『指輪』『ピアス』を見せた。


「本来なら敷地外に出たら、発動検知装置を持っていないといけない。これがその写真」


「発動検知装置?」


「戦闘力の発動を検知して、大きな警報を鳴らして周囲に伝えるアクセサリー……外したら近くの政府機関に信号が送られてバレる」


そんな装置があったのか。

だが、俺はその装置を渡された覚えがない。


「そして私と広樹は特別……私は音波や周波数を遮断できるから、警報も信号も無意味……だから私は特例規則に従ってる」


「特例規則?」


「戦闘力を私利私欲の為に使ったら、他者よりも重い処罰をもらう……それが私と戦闘学が交わした決まり」


だから能力を使えなかったのか。

軽い気持ちで風を頼んだが、予想よりも重過ぎる理由だった。


…………でも待て、じゃあ俺は?


「俺に渡されてないのは?」


「必要無いって言ってたよ……個人によって、渡されない人もいるから」


「だが、渡されない理由が俺には無いぞ」


戦闘力を持っていない事がバレていれば、渡す意味は無い。だがバレていれば戦闘学から追い出されている筈。


つまり、どう言う事だ?


「たぶん──」


鈴子は次に、自分の知っている情報を伝えようとする。


校長から渡された広樹の経歴。

銀行の件、校長の鑑定回避の件、海外での任務の件。


それら全てをかんがみて、広樹には発動検知装置を持たせても無意味なのだと分かった。



「広樹には─「すまないが、隣を失礼してもいいだろうか?」」



鈴子の言葉を切って、背後から声が届く。


しかも英語ではなく、日本語だ。


突然の母国語に考えるよりも先に、俺と鈴子はゆっくりと身体を回して後ろに振り返った。





「ああ、日本語は得意なんだ。日本に知り合いがいてね」


なんだこの白髪ロリは?

読んでくれてありがとうございます!

これからも頑張っていきます!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 高級料理(の味に)に舌鼓(をうつ)。 ()内の言葉が抜けてます。
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