第125話、校長「君の武器を使っていたあの頃が懐かしいよ」博士「お互いに歳をとったねぇ」
書きあがりましたので投稿します!
今回の展開では、いくつかルートを考えたのですが、ギャグ度高めのルートを選択してみました!
よろしくお願いします!
「あのー詩織…これは試作機で…それに人を乗せる構造では…改造ですか?」
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「下手したら死にますよ……強力なGで内臓が潰れて……」
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「人体強化?それでも撃墜される可能性が……」
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「あ、でも証拠が残って……」
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「絶対に証拠は隠滅して下さいよ!生きてたらですが!」
「久しぶりだね博士」
「ああ久しぶりぃ、名前では呼ばないんだねぇ」
博士が親しみ篭った笑みを向けるのは、同じ感情を宿した笑みを作る校長だった。
他者がいない校長室で二人きり、彼等は向かい合わせに座っていた。
「昔からのあだ名で呼ばせてくれ。友人と半年振りに直接再会したんだ。いいだろ?」
「連絡だけだったからねぇ。じゃあ僕も校長と呼ばせてもらおうかぁ」
「はははっ、ではコーヒーを」
「ありがとう」
校長が部屋隅にある珈琲メーカーを使い、二つのコップにコーヒーを注ぐ。
「それで用件は?お互い忙しい身だ。何か大事な用で来たんだろう」
「いやぁ、実は急に予定が消えてねぇ。暇だったから訪れたんだぁ」
「暇って、他にやる事はないのか?」
ソファーに戻り珈琲を差し出す。
博士が一口付けた後から、校長も一口付けた。
「無いねぇ。本来なら一日縛られる筈だったんだけどぉ……ちょっと追い出されたんだぁ」
「ゥッ!?」
驚く事実を聞いて、校長は口を覆いながら咳き込んだ。
「ごほっ!博士を追い出した!?権威を強く持つ博士を。そんな馬鹿な真似をする奴が…」
「まあズカズカと余所者が来たんだぁ、嫌な気持ちを吐き出されてもしょうがないねぇ」
「……まぁ、博士がそう言うなら、私は気にしないが……」
「気にしない、かぁ……そうでもないよぉ」
溜息を吐き出す博士。
「何かあるのか?」
「いやぁ…………今君ぃ、ストレス溜まってないかい?」
「…………おい、まさか」
「君を悩ませる事だよぉ」
それを聞き、校長はソファーに座りながら項垂れた。
「広樹くん達をオーストラリアに行かせているのに、また更に厄介ごとが……」
「心中を察するよぉ。だがぁ、たぶん、恐らくぅ、まぁ……大丈夫だろう」
「大丈夫と言うまでの迷いはなんだ?もう率直に答えを教えてくれ」
覚悟を固め、校長は真剣な表情で博士に問う。
そして博士は数分前の記憶を思い出し、
「じゃあ──」
『ピピピ!ピピピ!』
「「……………………」」
突然と響き始めた呼出音に、二人の大人が沈黙した。
「呼んでいるよぉ?」
「あ、ああ」
博士に促されて、ようやく動き始める校長。
部屋に置かれた受話器を掴み、
「どうした?」
『はい!第四研究施設から緊急を要する連絡が届いています!繋げてもよろしいでしょうか!』
「ああ頼む」
仲介者の操作により、通話先が移り変わる。
第四研究施設は確か、詩織くんが預けられている……
『ぁっ、っ、こ、こ、校長ぉぉ!』
「っ!?」
聞こえて来たのは男の苦しむ声。
嗚咽を吐く声音に校長は瞳を震わせた。
「な、何があった!」
『ぁっ、ぁぁ、い、いえ、少しトラブルがありましてぇっ…ォォッ』
「トラブルだと!?まさか詩織くんに何かあったのか!」
『ォォォォッ!……いぇえッ、なんとォォッォォオ、言いますかぁぁォォンッオオ!』
「さっきからのオオオオとはなんだ!一体何が!」
『もぉぉォォオ!ぉぉ申し訳ありませんンッんっ!じっ、実はっォオオっん!判断を見誤りましシェェ!』
苦しみながらも、何かを躊躇している言い回しをする。
だが、彼は次にはっきりと言った。
『ひ、姫路詩織が暴走し消息不明になりました!ァアンッ!』
「──!、な、な、な、どう言う事だ!!」
『イえ!じっ、実は色々とありましテぉぉォオオ!私達の責任ですウウンッ!ん!私達が無茶な実験調査をしィ、彼女の精神を暴走にぃぃイグゥ──』
ブツッ──。と、喘ぎ声を最後に通話が途切れた。
そして、静かにソファーに座る白衣の男に視線を移す。
「…………博士、まさかと思うが」
「察っしたよぉ、そしてやはりかぁ……あぁ、榛名くんは大丈夫だろうかぁ」
ケロっと博士が言い放つのは、予感に対する肯定の返答。
それに校長は表情を爆発させて机を叩いた。
「最後まで残っていてくれよ!大変な事態になったじゃないか!」
「おぉ、昔の喋り方に戻ったねぇ〜」
「戻ったねぇ〜じゃねえよ!」
怒声を叫びながら、校長は受話器を操作しようとする。
だが、
「ァ!?痛っっ!」
「ん?腹を押さえてどうしたぁ?」
「くっっ!さ、最近色々と面倒が続いて……胃薬の世話になってっ痛っ!」
「お互い苦労するねぇ〜。薬は何処だい?」
「そ、そこの引き出しだ」
校長が指差した棚に向かい、博士は引き出しから薬を取り出した。
「すぐに──」
『ピピピ!ピピピ!』
「すまない、連絡みたいだぁ」
「先に薬をっ!」
「もしもしぃ」
「おい!」
校長に背を向けて端末を耳にする博士。
連絡をしてきたのは、自分が主任として受け持っている施設からだった。
『博士!大変です!』
「ん、何かあったのかい?」
『実は!新開発中の物資輸送型ミサイルが保管室から消えました!』
「なっ!?」
記憶から物資輸送型ミサイルを掘り起こす。
それは危険地帯に食料や武装などの物資を、最速隠密に送り届ける為に開発されたミサイルだ。
戦闘力の研究成果を注ぎ込んだ機能。
ステルス搭載。特殊粒子の噴射による高速推進能力。
衛星すら捉えるのが難しい、日本支部が誇る最新鋭の新型ミサイル。
『監視映像の照合から、緑川榛名と姫路詩織が奪取した模様!』
「……」
『見る限りですが、榛名は姫路詩織に怯えていた様子でした!恐らく何か訳が』
「もう大丈夫だぁ…連絡を切るよ」
『え?ちょっ─!』
ブツッと、博士は端末を切った。
そして、
「はぁぁ、詩織くんは今、冷静な判断能力を失っているみたいだねぇ」
「あ、ぁあ、してる。精神がっ、崩壊しているらしいっ、だから薬を早く」
「ゴクゴク…ん」
「ちょっと待て!どうしてお前が飲む!」
「私も胃が痛くなってきてねぇ……イタタ……」
「お、俺にも薬を!」
とある太平洋の海上で…
『これより、新型迎撃システムのテストを始める』
それは新型兵器の実地テスト。
ミサイルを海上で発射し、それらを新型の観測装置で発見し、弾道弾迎撃ミサイルで撃ち墜とす。
それが今日の軍人達に与えられた仕事だった。
「衛星の調子はどうだ?」
「新型探知システム、問題ありません」
「今から飛んでくるのは発射炎を放出しない特殊ミサイルだ。故にいつ発射されても分からず、新型システムがミサイルを探知するしかない」
ステルス性能を持ちながら、特殊粒子の噴射によって作られる推進力を利用する特殊ミサイル。
それが今から向かってくる。
「ミサイル、計八発を無事に発射しました!」
「衛星の新型探知システムに反応あり!成功です!」
「おお!!」
探知の成功。
それを聞いた全員が歓喜する。
「これで国の安全性がより硬くなった!新たな防衛装置の完成だ!では迎撃を開始せよ!」
「はい!これよりミサイルの迎撃に──!?なっ!!?」
「ん、どうした?」
一人の部下が大きく戸惑いを見せ、部屋にいる者全員が彼を見た。
「異常発生です!探知したミサイル数が計九発!計九発!」
発射されたのは計八発の筈だ。
そしてレーダーに捉えられたミサイルは計九発。
つまり一発多い。
「装置の誤認か?」
「分かりません!しかし、一発だけが他の八発を置き去りに……追加報告!観測室から飛来中のミサイルを確認!規格外の情報を検知!」
「此処までの侵入をっ、どうして今までレーダーに反応が無かった……まさか新型か!」
「もう間もなく迎撃エリアに到達します!」
「くっ!全艦に通達!迎撃ミサイルで全て撃墜せよ!一発も逃すな!」
その指示によって、海上に浮かぶ全ての艦が動く。
「迎撃ミサイルの発射を確認!…………なっ!?対象のミサイルから発光弾および妨害波らしき信号を確認!こちらの迎撃ミサイルを無力化されました!」
「ミサイルから発光弾に妨害波だと!?あり得ない!では何故あのミサイルは飛び続けていられるのだ!?」
どちらもミサイルに大きな影響を与えてしまうものだ。
そして両者同じ不具合に見舞われるはずであり、それがミサイルに搭載されているのは本来ならあり得ない。
なのにコントロールを失う筈が、あのミサイルだけは一直線に飛び続けている。
「……人が操縦している可能性は?」
「「「「あり得ない!!」」」」
一人が漏らした思考に、全員が否定の声を上げた。
笑えない冗談に誰もが怒鳴り散らす。
「マッハ20を超えているのだ!内臓が潰されて絶命する!それにミサイルだぞ!誰がそんなモノに乗るか!」
「間も無く迎撃エリアを超えます!」
「っ!?此方も新型だ!戦闘学から預かった新型迎撃ミサイルを準備!直ちに発射せよ!」
「し、しかしあれは試験段階途中で」
「全て私が責任を取る!直ちに発射せよ!」
「りょ、了解!」
────。
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「観測室から通達!誘導ミサイルの撃墜に成功!九発全てを一掃し、一発残らず海上に落ちました!」
読んでくれてありがとうございます!
考えた移動手段の中から、今回は『ミサイル』を選びました!
飛行機に忍び込むのも良かったのですが、広樹に会う為ならどこまでするか!無茶ぶりを発揮する詩織を書きたかったので、今回の展開にしてみました!
後々に謎のミサイル問題を解決する予定です!
ぜひ次話も読みに来てください!