表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/221

第124話、詩織「何を犠牲にしてでも、私は──」

書きあがりましたので投稿します!

今回は少し長めです!


前回の話を読んでいない方がいれば、ぜひ読んで欲しいです!

よろしくお願いします!

「……んっ……何が」


意識がボヤけながら覚醒する。


そうだ。私は詩織に殺されて……


「早く鎮静剤を投与しろ!」

「駄目です!バイタルが落ち着きません!」

「脳波が異常数値を指しています!」

「一体何が起こっているのだ!」


あぁ〜、なにかマズイ状況で私は目覚めたのでしょうか…

私が意識を取り戻した事は内緒に─


「っ!?緑川榛名!貴様は彼女に一体何をしたのだ!」


気づかれちゃいました。

何をした、って何ですか?


何もしてませんよ。逆に殺されましたからね私。盗撮を繰り返していた事への仕返しなのかも知れませんが、あまりにも酷い経験をしました。


「色々と言いたい事がありそうですが、私に時間をいてて良いんですか?」


「クッ!?」


私の言葉を聞いて、白衣男は背後に向き直った。

そこにあったのは、


「っ……これは……どういう事ですか」


なんなんだコレは?

そこにあるのは詩織が入ったポッドの筈だ。

透明の液体に全身を浸からせ、何本ものコードに繋がれた詩織が入っていたポッドの筈なのだ。


だが、


「黒い液体?」


透き通っていた液体が真っ黒に染まり、中身の様子が目視できない。

何が起こり今に至ったのか。

それはこの場にいる誰もが理解し得なかった。


「しお…り?」


私は精神が定まらないまま、染まったポッドに近寄った。

中にいる詩織の状態を早く知ろうと、私は自然とポッドに触れてしまう。


バァン!!

「!!?」


ガラスが響く。


真っ黒に染まった液体の奥から、広げられた手がガラスを突いた。


パキパキッ─!!


張り付いた手を中心に、蜘蛛の巣を連想させる罅割れが広がり始めた。


「な、なにが…」


──『…………ぁぁ』


「っ!?」


液体の中で詩織が呟いた。

目を開け、口を動かし、手を内側から貼り付けながら、詩織は瞳に微笑みを浮かべた。


バキバキバキバキッ!!


液体が床に漏れ始める。

遂にポッドの耐久力に限界が訪れたのだと、濡れた足元が証明した。


そして──詩織はガラスをやぶり──


────。

────。


「……ん……何が……」


「起きたのね。榛名」


「詩織?」


また私は意識を失っていたらしい。

段々と感覚が安定して、何が起こったのかを思い出す。


そうだ。詩織がガラスを破って、いきなり黒い何かが飛び出して…


確か触手みたいな何かが……あれ?


「し、詩織?これはいったい?何をして─」


「私は単純な命令を出しただけなんだけどね……殺してはないわ」


そこに広がるのは無残な姿となった研究者達。

黒い触手が下から上に伸び、大人達を直立不動に立たせていた。


「癖なのか、習性なのか、私の能力は彼等を下から襲ったのよ……まぁ、命に別状は無いみたいだから、気にしなくても良いわね」


「下半身がヤバい事になってますよ!?」


「大丈夫でしょ。全員男だったんだから」


R18指定な光景が広がっていた。

詩織から伸び出た触手らしき黒い影が、白衣男達の秘部区域デリケートゾーンを貫き、何も語らない骸の像を建てていたのだ。


予測していた通り、詩織の能力は大きな変化を遂げていた。


「それよりも榛名。彼等の秘密を適当に撒いておきなさい。そうすれば何も言われないでしょ」


「いえいえ!完全にアウトでしょ!反省室直行ですよ!」


「……榛名、今のアナタの状況、分かってる?」


あれ?そういえば身体の感覚が……ちょっ!?


なんで両手両足が触手で吊るされてるんですか私!!


「私のお願い、聞いてくれないかしら?」


「ぇ、なっなっなっ!?」


太腿ふとももの辺りに生温かい感触があります!

これって完璧にアレですよね!


「詩織!私は女ですよ!男はセーフでも女はアウトです!」


「ええ、男はセーフで女はアウト。分かってるじゃない」


「そう言う事じゃないですよ!」


「…………」


サワッ


「っ〜!!?詩織ぃ!」


太腿を触手が撫でてきました!もうR18指定シーンまで秒読みじゃないですか!


「冗談ですよね!私にこんなアブノーマルなプレイ!笑えませんよ!」


「じゃあ私の言う事を聞いてくれるわよね」


「え、そ、それは…」


サワサワ…


「分かりました!なんでもしますから止めて下さい!」


「分かれば良いわ」


触手には勝てませんでした。


逆らえばいろんな意味で私が終わっていたかもしれません。

だったらと、私は彼等の弱みが入った端末を取り出して、作業を始めます。


「詩織…今頃なのですが…さすがに今の格好は少々…」


「榛名だけだから気にしないわ」


「風邪をひきますよぉ」


かなり扇情的な姿だった。

治療を受けていたのだから当たり前だが、ちょっと色々と見えているので、同性である私から見ても恥ずかしい感情が浮き出ます。


「終わりましたよぉ〜」


「なら行きましょう。もう此処に用は無いわ」


「ちょっと待って下さい!その格好で外に出るつもりですか!?」


「ん?…………確かに駄目ね」


良かったです!まだ詩織の中に常識が残されていたみたいです!


「では、この施設から服を拝借して─」


「これで良いわね」


「え─?」


どういう事ですか。

ちょっと目を離した隙に、詩織が黒いワンピースを着込んだ姿に。


「違和感はあるけど支障は無いわ」


「詩織、その服は?」


「私の能力よ。それよりも早く行きましょう」


「ちょっと待っ─」


バァン!


「なんで天井を破壊しているんですか!?」


「通気口から行くのよ。外は監視カメラがあるからめんどくさいのよ」


判断能力の低下……もうヤバイです!


だったらこの部屋の監視カメラはどうするんですか!

今も私達の映像は記録されて……破壊されてる!?


「この部屋の監視カメラは破壊済み。私の暴走の原因は全て、この施設の研究者の責任にするから」


「はぁ!?」


「私の暴走は彼等のデータ採取が原因。そういう事にしておくのよ」


詩織が大変恐ろしい事を言っています。

確かに悪い秘密はありましたが、その報いにしては過ぎた行動だと、


「悪い事は何もされなかったみたいだけど、色々と見られていたみたいだし」


「でも!それはしょうがない事で─」


手術や健康診断でも老若男女問わず脱衣は常識だ。

それで怒っているのだとしたら変な話である。


「私が怒っているのは身体を見られた事じゃないわ。見られていた時間よ」


「時間?」


「私を縛り付けていた時間。彼等は私の意識を取り戻す事よりも先に、データを採取する事を優先していた。そうよね?」


「まぁ、大体そうです」


「もし意識を回復させる為に動いていたら、もっと早く起きれたかもしれない。だから許せないのよ。私の時間を奪ったコイツらが」


それでア○ルバンカーよろしく。男の尊厳を奪ったのか。

ちょっと可哀想に思えてきました。


「ついでに都合の悪いデータも改ざんよ。何をやっても、彼等の秘密を握ってるアナタが有利だから」


もう悪魔です。詩織が悪魔となって帰ってきました。

もう、別の精神が乗り移っていると言われても、信じてしまうレベルです。


────。

────。


ズルズル─


「なんかナメクジみたいですね〜」


匍匐前進ほふくぜんしんよりは速くて楽よ」


私達を包み込んだ黒い物質が前に進む。楽ではあるが、生柔らかい感触が肌をくすぐって微妙な感想しか出ません。


「それにしても、一体どうなってるんですか?色々と変わり過ぎでしょ、詩織の能力」


黒くて硬い突起物を出現させるだけだった能力が、今や触手になって破茶滅茶な事が出来るようになっている。

もう元の能力の原型が色彩にしかないです。


「元々は細胞の塊だったのよ。それが今回の事で操れるようになった」


「もしかしてそのワンピースも」


「布に似せて作った薄い細胞よ」


もう何でも有りと言わんばかりに、詩織は能力を使いこなしています。

だが、こんな短時間にそこまでの操作性を身につけられるのは不可解だ。

それに気になる発言をしていたのを思い出す。


「私が目覚めた時に言っていた、『命令を出した』や、『癖なのか』『習性なのか』とは、どういう意味なんですか?」


「言葉の通りよ。私は能力に簡単な命令を出して操ってる。簡単に説明すれば『自動化』よ」


「『自動化』って。では、この物質は…」


「『私達を運んで、野外に繋がる場所まで進みなさい』そう命令したわ」


つまり詩織の操作は関係ない。

この能力は詩織の指示に従って、自律的に動いているという事だ。


「予感はあったのよ。私から量産された細胞なら、本体を守る為に生まれた生命体である事。生命体だからこそ自律的に動く事が出来る……さながら赤血球や白血球かしらね」


「つまり、この能力は独立した意識を持っていると」


「どうかしら……でも、『私を縛り付ける装置を破壊しなさい』、『外にいる外敵のみを無力化しなさい』って命令してさっきの現状を作り出したのだから、それなりの判断能力は備わってると思うわ」


もしも命令の内容にある『外敵のみ』の『のみ』が無かったら、私の秘部区域デリケートゾーンは…………考えただけで恐ろしいです!


でもこれで納得しました。


何故、意識が戻っていないのにも関わらず、彼等の作業に抵抗が出来たのか。


それは仮想空間内で命令を出し、現実世界で能力が自律的な行動を成した事に他ならない。


……な訳ないでしょ!

まだ説明が足りません!


「どうやって目覚めたんですか?下準備だけはしましたが、まだ本格的な治療はしてないんですよ」


「……そうね。じゃあ説明する前に聞くけど」


一呼吸置いて、詩織は疑問を放つ。


「私が昏睡状態におちいっていた原因はなんだったの?」


詩織の言葉に、私は自分が知り得た原因と治療法を説明する。


「暴走によって戦闘力をつかさどる脳細胞が疲労による能力の低下、それで脳に大きな負荷がかかっていたみたいです。故に、黒燐の結晶コアの細胞を再現図モデルにして、詩織の脳に活性治療を施そうかと至りました」


詩織から摘出したサンプルはたくさんあるが、詩織と共に暴走を見せた黒燐の結晶に勝るものは無い。


誰もが脳細胞の支障だと考え、過去のサンプルを基に治療をしたが効果はなかった。

故に原因不明の昏睡状態と判断された。


だが本当は違う。

詩織の『黒槍出現』は、黒燐の『黒槍出現』と情報交換を繰り返して最適化と進化を遂げたのだ。


だから以前のデータと今のデータが絡み合わず失敗した。


故に最新のデータを持っている私だけが、早期的に詩織を起こす事が出来た筈だった。


「で、どうして起きれたんですか?」


質問に答え、次は詩織の番だと言葉を投げた。


「昏睡原因は分からなかったけど、仮想空間内で思考する時間が生まれたから、大体の予想は建てられたわ」


詩織が語るのは、詩織が行った予測と実演だった。


「昏睡状態の主軸は脳の不調。その発生原因は能力の暴走による負荷が大きかったから」


ほとんど正解だ。

詩織はあの短時間で、見せられた映像と説明を材料に一つの答えを導き出した。


「恐らく戦闘力に関わる脳細胞が限度を超えた活動で疲労し、脳自体が意識を覚醒させる分の余力を発揮出来なかった…………だからおぎなったのよ」


おぎなった?」


「私の能力の正体は知っているわよね」


「それは細胞の……っ!?まさか」


「賭けね。あの時の私は冷静じゃなかったから」


「脳細胞は正常に動かなかったんですよ!!治療させる為の発動が出来たとしても操作不能で滅茶苦茶に──」


「だから賭けだったのよ。自律的に動いてくれる能力でも、不正常な状態で私の望む結果を作り出せるか分からなかった。もしかしたら癌細胞しっぱいみたいな結果にもなり得たのかもね」


「最悪です。では今も脳の中で能力が働いているのですか?」


「もう働いていないわ。元の構造に戻すように働いてもらったから…………あれよ。脱臼した骨を元の位置に戻してくれたみたいな」


「ジョークみたいな言い方してくれてすっごく安心しましたよ馬鹿!!」


身近に感じる詩織が帰ってきました。

かなり危険な行為をしたが、無事で何よりだと心の底から思います。


「でも精密検査をしなければ後々に響きます。今からでも─」


「そんな時間は無いわ」


「へ?」


「ねぇ榛名」


サワッ…


ハハハ……私の玉肌お尻に嫌な汗が出てます。

何をしようとしているんですか詩織さん?


「私のお願いを聞いてくれるかしら?全部私の暴走を理由にしていいから」


つまり、彼等の責任にするって事ですよね。

分かってます。なんでも聞きます。ちゃんと協力します。


だからお尻をサワサワしている触手を早く退けてください!背筋ならぬ尻筋に寒気が走ってますから!もう限界です!


そして詩織!一つ伝える事がありました!


「詩織、一つ言わせてください」


私達は今、詩織の能力によって通気口を移動している。だがそれは、


「出口までの経路……分かってます?」


「…………」


────サワサワサワッ!!


ちょ!?やめ!待って!何八つ当たりしてるんですか!?

わわわっ!?ヤバイです!それ以上は本当に──

読んでいただきありがとうございました!


今回はいろんな意味で危険なシーンをたくさん書きました!もしかしたら一部修正する可能性がありますので、どうかよろしくお願いします!


前回と前々回の話で、施設の研究者を悪いイメージっぽく書きましたが、その末路の為の伏線として書いていました!


これからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ