第123話、榛名(ん?詩織の声にノイズが…)
書きあがりましたので投稿します!
よろしくお願いします!
昨日も投稿しましたので、読み忘れがないようにお願いします!
「─と、イベントは無事に終わりました」
詩織がDNA分解構築(嘘)によって怪物となり、それを広樹が命を賭けて救出。
詩織を抱えて走る広樹の映像を流しながら、知っている事実(私の都合良く)を伝えた。
「次に表彰式の映像ですが……これは別に見なくてもいいですよね!」
予感ですが、絶対に見せちゃいけない気がしました。
「榛名、見せなさい」
「……はい」
でも詩織が怖いです。
私は宙に出した操作盤を使って、空間に浮かぶモニターの映像を切り替える。
そして映ったのは、薄い緑色を輝かせるウェディングドレス。
「…………もういいわ」
「は、はいぃ〜」
ウェディングドレス姿の鈴子が広樹の隣に立った瞬間を最後に、詩織は停止を指示した。
「ねぇ、榛名……此処は仮想空間内なのよね?」
「は、はい。そうですが」
「私の身体はどうなってるの?」
「検査では異常無しですが、なにぶんDNA分解構築の後なので色々と揉めてます」
黒燐の暴走については伏せる。言えば色々と大変ですから。
「異常無しね、なら良いわ」
詩織はベッドから立ち上がり、軽く腕を伸ばしながら、
「此処から出しなさい」
「え、ええ、分かりま─」
『それはいかんよ、姫路詩織』
突然と空間内に響いた声。
この声の持ち主は…
「榛名、この声は誰?」
「詩織の担当医……いえ、一時的な担当研究者ですね」
私は溜息を吐き出しながら、空間内に広がる青空を視線を送った。
「詩織は目覚める事を望んでいます!拒否される言われは無いですよ!」
『だが、彼女の精密検査はまだ完全に済んでいない』
「だったら、覚醒させるだけなら問題無いんじゃないですか?」
『完全に覚醒されては、採取できる筈のデータが失われる可能性もある。今後の為にも出来る限りデータが欲しいのだよ』
うわ〜。本当に最悪です。
本人の意思をガン無視ですか?
出るとこ出ちゃいましょうかね。
「……ねぇ榛名、もう一つ聞かせて」
「はい、何でしょうか」
白いワンピースを揺らした詩織は、私に背中を向けたまま質問を打つ。
「広樹を此処に連れて来れる?」
「…………」
…………あ、ヤバイデス。
私の第六感が叫んでいます。
真実を言ってしまったら恐ろしい事態に発展すると。
「それはちょっと……」
『あの多重能力者だったら、今頃は序列九位とオーストラリアだろ』
「……オーストラリア?」
あ、ほんとヤバイ…
『校長の気が知れんよ。まさか引率者無しで、二人っきりで行かせてしまうとは』
「……二人っきり?」
あ〜あ、これはマズイ。
もう何かが終わった気がします。
いえ、始まったのかもしれませんね。
「……榛名、知っている事を簡潔に説明して。アナタなら私の求める説明をしてくれるでしょ」
ハハ、説明するしか選択肢がありません。
「……序列九位が広樹にお願いして、イベントに参加し旅行券を獲得。そして再びお願いして二人っきりで旅行に行きました」
広樹には黒燐の結晶を提供してくれた恩がある。故に広樹へのフォローを加えて説明しました。
でも事実として、そのままの筈だ。
「まぁ、広樹は優しいですからね。内気な女の子のお願いを断れなかったんでしょう」
「…………ええ、優しいわね。広樹は優しい……ヤサシスギルワ」
あれぇ?なんか声の質が変わったような…ノイズ?
「だからこそ早く会いたいのよ。優しい広樹に救われた私は、彼に出来る限りの感謝を伝えないといけないのよ……ネェ、ソウオモウワヨネ」
ノイズが!言葉の末端にノイズが走ってます!何ですかコレ!
「は、はい!た、た、確かにそうですね!」
詩織!ちょっと此方を向いてくれませんか!?
何やら声音と内容が合ってない気がするのですが!
今いったいどんな表情を……いえ!やっぱり遠慮します!見るのも怖いです!
「どうしても、私を此処から出す訳には行きませんか?私自身が強く希望しても」
『君は自分の立場を再認識した方が良い。DNA分解構築からの生還者は初なのだ。校長は多重能力者に救出の詳細を聞かなかったらしいが、君に関しては別だ』
彼はとにかく詩織を逃さない気だ。
でも詩織の心に火を灯した張本人が、それを言っていたら世話が無いですね。
『しばらく此処にいてもらうよ』
「…………ねぇ、榛名。貴女の事だから」
既に答えを知っているかの様に、詩織は振り向かずに言う。
「隠し事くらいは掴んでいるんでしょう」
ハハハ、全部お見通しですね。
はい。もう色々とデータをコピーして、彼の弱みは握ってます。
声に出さなくても知っているなんて、さすが詩織です!
「私を盗撮してるアナタだからこそ、きっと色々やってると思ったわ」
謝ったら許してくれますか?
あれ?いつから気付いてたの?
どこまで知ってるの私の事?
「貴方達が私を出さないと言うのなら、私は貴方達に頼らないわ」
「詩織……あのー!博士ー!そこにいる男にまた口添えしてくれませんかー!」
私は現実世界にいる博士にお願いする。
ちょっとでも貢献しないと、盗撮の件で何かされそうで怖いです。
だが、
『彼なら席を外してもらったよ。後は弟子に任せると言い残してね』
「くっ!」
言いくるめて何処かに行かせましたね!
『君もそろそろ覚醒して部屋から出て行ってもらうよ。此方にも予定があるのだ』
頼みの綱が留守……
さすがの私も言葉を詰まらせます。
このままでは彼の言う事に従う事になる……滅茶苦茶嫌悪感です!
『今の』詩織を外に出さない事については、『今の』私は賛成です。
それは愚かな彼が広樹の事情を説明したからに他なりません。
でも、詩織を出したくない私がいるのと同時に、彼に従いたくない私もいます。
ああ!もう滅茶苦茶です!
でも、外にいる男の言いなりになるしか、私達の道は──
「榛名…『隠し事を掴んでいる』…確かに聞いたからね」
「詩織…?」
「もう何でもいいのよ……広樹に会えれば……ナンデモ」
──ERROR!
ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!
─『何をやって─!』─
ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!
─『意識を切断し─!』─
ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!
─『駄目です!コードが─!』─
ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!ERROR!
「榛名、アナタは先に起きてて…すぐそっちに向かうから」
「し…おり?」
聴覚を麻痺させるほどの強烈なアラートにも関わらず、私は今の詩織から目が離せなかった。
白いワンピースの隙間から黒い影が生まれ出る。
液体と気体が混ざった様なソレは、詩織を護り包むかの様に浮かび、詩織が右手を広げるとソレは其処に収縮を始めた。
「私と違って今のアナタの場合は、仮想体を絶命させれば起きれるでしょ──大丈夫、痛みを感じさせる暇も無いから」
ザァ!ズバァ!──!!
一つの人型が細切れとなって草原を舞う。
本人が事実を理解する暇も無く、詩織は一つの肉体を容赦無くバラバラの肉塊へと変貌させた。
「しお─」ズバァ!
最後の一つ。紅色をした小さな塊に一斬。
「…………アァ」
黒い影が膨張し渦を巻く。
大津波の様に草原を包み込み、世界の終わりを告げるが如く地面と空が崩壊する。
「ハヤク……ハヤク」
黒い世界の中心で少女は『吐く』。
身体から黒い影を。
口からは願望を。
少女は長い髪を搔き上げて、崩壊し赤黒く染まった大空を見た。
「──イマ、会イニ行クカラ」
読んでくれてありがとうございます!
詩織さん覚醒開始です!
盛り上げていきます!
次話も早めに投稿します!どうかよろしくお願いします!