第122話、鈴子「ホテルは、広樹と同じ部屋?それとも別々?」
書きあがりましたので投稿します!
よろしくお願いします!
オーストラリアの空港に到着した俺達は、長い列に並んで審査を待っていた。
「なぁ、入国審査で翻訳機を使ったらアウトか?」
いや、本当にどうなんだろ…
「ん……全部、I'm sorry. that's a secret.って答えれば……たぶん通る」
「なんで謝った?」
流暢に言われたが、アイムソーリーだけは聞き取れた。
「もし無理だったら…黒い学生証を提示すれば何とかなる」
黒い学生証の影響力。
非殺傷でも危険物に引っかかりそうな武装を、俺達は持って来ている。
なら色々と引っくるめても黒い学生証を提示して、それっぽいを言葉を言えば通るかもしれない。
「じゃあそれで」
行ってみるか…
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「本当に通れたな〜。で、鈴子さん?」
「ん、何?」
夕陽が景色を薄く染める中、俺は今抱いている疑問を指で摘みながら言う。
「なんで俺達は黒縁サングラスを着けてるんだ?」
「校長から渡された小道具の一つ……別のがいい?」
「いや、どうして着けさせられた?」
「オーストラリア支部から隠れる為……テロ対策に注視してる場所だけでもって」
指名手配?
いやいや、鈴子は序列者で顔写真が拡散されているかもしれないけど、俺は要らないんじゃないか?そして余計に怪しまれてると思うぞコレ。
それに話を聞くと不安が一つある。俺は黒い学生証の入った財布に出して、
「黒い学生証を提示した時点で、オーストラリア支部に伝わってるんじゃないか?」
「対策してるか……そういう仕組みが無い……と思う」
「校長が色々と織り込んでいると?」
「たぶん」
確かに危険物の持ち込みを融通してもらった時点で、手を打っていてもおかしくない。
「じゃあ行こう広樹……もう全部決まってるから」
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夕陽が沈み切り、綺麗な星々が輝く夜空が広がっている。
「「でかい…」」
裕福層が利用しそうな高級ホテル。
白く大きな建物が、横にも縦にも長く建っている。
いや、学生である俺達が入ったらアウトな場所だろ此処。
「鈴子が選んだのか?」
「校長に任せた」
「本当に無料?」
「無料」
嬉しいを通り越して腹が痛くなってきた。
え、本当に此処に入るの?
絶対に場違いな気がするんだけど。
「セキュリティーが強固なホテルを選んだって言ってた」
「どうしてだ?」
「オーストラリア支部からの使者対策だって」
「そんなになのか…」
オーストラリア支部からの接触をどれだけ恐れているんだろう。
別に会ったとしても、俺達から何もしなければ良いだけだよな?
「さすがに不法的な接触はしないだろ」
「大人達の事情は知らない……でも」
鈴子は背中に背負ったシルバーケースに触れる。
「喧嘩を売られたら全力を尽くす」
オーストラリア支部の皆さーん!逃げてくださーい!
今此処に追尾可能スナイパーがイマスヨー!
「誰にも邪魔させない」
「序列十位の治療は私達が請け負っているのだがね」
「無理矢理奪ったんでしょう。本来なら特別病棟にいる筈です」
「彼女はDNA分解構築で暴走したのだ。今は元の姿に戻っているが、まだ安全かは不明なのだよ」
偉そうに物事を言う白衣男に、榛名は敵視を向ける。
最悪です。ようやく目覚めさせる段取りが済んだのにコイツは、
「早く目覚めさせてどうする?身体に大きな負担は無いのかね?」
「寧ろ意識を失っている方が負担になりますよ。機械にずっと入れていても良い事なんてありません」
「研究データが取れるではないか。眠っている今でしか採取できないデータもある」
ああ、最悪です。本音が出ましたね。
「彼女は色々と未知だ。それを深く調べられる機会はそう来ない。彼女の治療を最優先に行いながら、出来る限りのデータを取るのが合理的な考えだと思うがね」
「確かに一理あります……でも、詩織の了承が取れていない事に反対です」
「了承を取ろうにも彼女は眠っている」
「だから起こそうとしてるんじゃないですか」
「だが、本当にその治療は安全なのかね?」
ああ、これは譲らない気です。気持ち悪い無限ループです。
コイツと話していると頭が痛くなってきます。
もうコイツが隠している秘密事を全て暴露してやりましょうか。
侵入した際にネタは掴んでいるんです。
「身体に意識を取り戻さないままぁ、詩織くんと話してみるのはどうだい」
私の背後から鶴の一声が出る。
「私の弟子が考えた治療法を応用すればぁ、仮想空間で彼女の意識と話せる筈だぁ」
「くっ…!」
「擬似塊を開発した榛名くんを信用してくれないかい?」
「…………貴方がそう言うのであれば」
白衣男は悔しそうな声音で下がる。
「ありがとうございます博士!」
ふっ!命拾いしましたね!
博士が何も言わなければ、私がアナタの秘密を大声で暴露してましたよ!
「出来るのは口添えだけだぁ。後は君次第だよぉ」
「大丈夫です!ちゃんとやってみせます!」
「ああ、頑張りなさい」
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『姫路詩織の意識摘出』『成功』
『空間の設定』『完了』
『意識の回復』『成功』
──意識、覚醒します…
青い空と草原が広がる世界の中心。
そこに置かれた白いベッドの上で、彼女は瞼を震わせた。
「なんで……私が此処に」
「それは詩織が無茶をしたからですよ」
読んでくれてありがとうございます!
第100話の伏線を回収できそうです!久しぶりの詩織登場の予感です!
次回は早めに更新する予定です!
ぜひ次話も読みに来てください!