第120話、鈴子「機内は飲食無料……Beef or fish……広樹はどれが好き?」
書きあがりましたので投稿します!
『そして報告です』
今日の朝に第119話を投稿しました!前回の更新から期間が短かったので、読み忘れがないようにお願いします!
PーPーPー!
「あ、すみません…財布が」
「ハハハ、次からは注意してね」
PーPーPー!
「……ゲーム」
「ハハハ、ちゃんと手荷物に入れてね」
「良いご旅行を〜」
検査員のお兄さんの笑顔に、俺は会釈で気持ちを返した。
手荷物検査でつまずきながら終えて、俺達は係員と話し合う天草先生へと足を向けた。
「ではよろしくお願い致します」
「確かに承りました」
飛行機への武器の持ち込みについての最終確認をしていた。
『黒い学生証』と『戦闘学教員』、この条件を満たして『武器の持ち込み』が可能になる。
今回はオーストラリア支部と関わらない事から、この場で天草先生が往復分の持ち込み許可を頼むとの事だ。
これで天草先生の仕事は終了である。
「じゃあ広樹くん、鈴子ちゃん。私が付き添えるのは此処までだから、くれぐれも気をつけてね」
「はい」
「うん」
「観光で行く分には安全だと思うけど、日本ほど治安が良い訳じゃないわ。だから、もしも悪い人達に絡まれたら─」
天草先生は真剣な瞳で、
「殺しちゃ駄目よ」
先生……俺達の事をなんだと思っているんですか?
『当機はまもなく離陸致します。今一度、お座席のシートベルトをご確認ください』
シートベルトのサインが点灯し、機内アナウンスが流れる。
その指示に従って、シートベルトをカチリと締めた。
「鈴子は海外に行った事とかあるのか?」
「中等部の頃に二回……戦闘学の都合で」
「危ない都合か?」
「危なくない……発電所建築の手伝いだった」
「建築?……それにも使える能力なのか?」
銃弾を方向を操作したり、
視界から床を歪ませたり、
謎の変な球体を生み出したり、
それが俺の知るの鈴子の能力だった。
……うん、分からん。
詩織との戦いを思い出しても、誘導改変の具体的な説明が言葉にできず、能力の本質が掴めない。
そんな事を思ってる中で、鈴子は顎に手を置きながら、
「建築には触れてない……放射線の流れを操作して、最終的な安全点検をしただけ」
「放射線…」
そんな危険物を操れるのか?
誘導改変ってもしかして危険な能力?
「もしかして、巨人詩織に放ってたのって……」
「放射線も含めた色々な集合凝縮物……何を含んでいるかは……ん、たぶん説明に三十分くらい使う……聞く?」
「いやいい、今の説明だけで頭がパンクしそうだ」
想像を超えた事実に、全部を受け止めるのは難しかった。
これが序列者が持つ実力なのかと、改めて実感した。
だがそれが序列九位の能力なら、序列十位は……
「だとすると、詩織の能力は……」
「とても地味……広樹の気持ちは分かるよ」
鈴子が俺の思考を先読みし、そして、
「でも違う……黒槍出現は地味じゃない」
「地味じゃない…?」
否定し、鈴子は真剣な声音で詩織の能力を語った。
「見た目は『黒い棘を生やす』だけに見えてるけど……その本質は凄く複雑なの」
序列者の権利を使い、許される限りの方法を用いて『黒槍出現』の弱点を探し出した鈴子は、その事実が載っている最新の研究資料にも目を通していた。
今から語るのは、戦闘学の幹部達と序列者のみが知る情報だ。
「『黒槍出現』の本質……あれは『生きた』何かだった」
「い、生きた?」
「無機物に見えるけど、あの棘は細胞の塊で、細胞分裂と脈拍が確認された」
鈴子の説明が段々と鮮明になる。
詩織と戦っていた時の声音を取り戻し、鮮明な説明が鈴子の口から紡がれる。
そして理解が追いつけない。
あの黒い棘が生きている?
じゃあ詩織は今まで生み出してきたモノの正体は……
「身体から見えない謎の粒子を出して、それを地面に植え付けて生え伸ばしてる。極端に言うと詩織は苗木を生み出す『母樹』で、生えた黒棘は『子樹』なんだよ」
「な、なんか想像が追いつかないな…」
「謎の粒子は放射線と同じ様に大抵の物体をすり抜けられる。必要なのは詩織が『認識』して『発芽信号』を送る事」
物体をすり抜けられる粒子を生み出し、生きた物体を繁殖させる。
地味だと感じていた能力の中身を聞き、心臓の鼓動が速くなる。
だが待て、だったら気になる事がある。
「なぁ鈴子、前に詩織と戦っている時に─」
イベントの最中に、鈴子は詩織の視界から床の光景を歪ませて、能力の発動を防いだと言っていた。
だが、粒子を種にして黒棘を生やしているのなら、その粒子を他の場所に飛ばせば良かったのではないか?
その疑問を口にすると鈴子は掌を出して、そこに歪みを作り出した。
「これは光子と水分と電磁波を混ぜて作った集合体。私が操作で主に可能なのは『軽い非生物』に属するモノ。詩織が生み出す『生物』の操作は……試さないと分からない」
『主に可能』、つまり生物も操れる可能性がある。
だが、能力で生み出された生物を、自分の操作領域に取り込む事が可能だったのか……
それらの不安点を切り、鈴子は確実な方法で詩織の能力を防いだのだ。
「操作と言っても何でも出来る訳じゃないよ。もっと単純な─」
「すまんストップ。聞いておいてなんだけど、色々聞きすぎて少し混乱してる」
「ん……黒槍出現の説明も?」
「まだあったのか…でもすまん。かなり疲れた」
少し時間が必要だと、鈴子に謝って脳を休める。
「能力って、凄いんだな」
「広樹も持ってる」
「あ、あー、そうだな〜」
あれ?俺っていつから能力持ってる設定になったの?
人体強化のみが使える設定だった気がするんだけど?
だが、うん、怪しまれてないなら良いのか?
…………別に良いか。怪しまれていなかったら。
「Would you like something to drink?」
「What kind of soft drinks do you have?」
そして鈴子の英会話能力が羨ましいと思いながら、外の夜景を見つめた。
読んでくれてありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!