第118話、校長「本当は行かせたくない……だが鈴子くんの異臭誘導を受けるのは」
書きあがりましたので投稿します!
今回は短めです!
よろしくお願いします!
「改めて聞くけど、どうしてイベントに出場したんだい?あの時は頼まれても行かないと言っていたと思うが」
「色々とあって、断れず…」
思い返せば、過去の俺がどれだけ浅はかな人間だったかよく分かる。
寿司屋で生徒証を見せてとお願いされ、説明もなく参加登録。
鈴子の事をもっと注意深く見ていれば、今回の一連は起こらなかっただろう。
「……じゃあ、鈴子くん」
「はい」
校長は落胆した瞳で鈴子を見る。
「時間も押してるから簡単に聞くよ。君は何故オーストラリアに行きたいんだい?」
「遊ぶ為」
「だったら戦闘学の敷地にも娯楽施設が点在しているだろう?そこでは駄目なのか?」
「嫌」
「理由は?」
「オーストラリアで…コアラと触れ合いたいから…」
「…………はぁぁぁ」
校長が長いため息を吐き出す。
分かります。俺も何度もため息を吐きましたから。
「正直に言うと、君達を海外に出すのはとても難しいんだ」
「ムッ」
鈴子はおもむろに右手を挙げた。
何をしようとしてるの?
そして校長はどうして鼻をつまんで?
「やめてくれ。もう既に手配は終わってる。流石に出発当日に駄目とは言わないよ」
その言葉を聞いた鈴子は右手を下げた。
どうやらその右手の意味は、校長だけが知ってる何かだったらしい。
「そろそろ車の準備も整う。忘れ物の確認は済ませたかい?」
「大丈夫です」
「うん」
「それは結構。それと─」
校長は机の上に置かれたカードケースを開け、
「鈴子くん、オーストラリアでは日本語の学生証は不便だから、コレを使いなさい」
「ん」
鈴子に渡されたのは、詩織が以前に見せてくれた学生証に似ていた。
漆黒の光沢を輝かせる序列者専用の学生証。
そして鈴子が受け取ったソレには、情報が英文で記載されていた。
「それと広樹くん」
「へ?」
俺にも渡されました。漆黒の光沢が輝くカード。
え?どういうこと?
「念の為にね。この学生証は様々な施設と団体で融通が利くから、もしもの時は使いなさい」
「あ、はい、分かりました」
貸出用でした。
英文で色々と書かれているが、まったく読めない。
そして鈴子さん?
「ッ、ッ、ッ」
背伸びをしても見せませんよ〜。
なんか興味を抱いているみたいだけど、それを焦らしたい俺がいる。
鈴子の視線を避ける動きで、学生証を上げ下げ右左したのち、ポケットにしまい込む。
「広樹、見せて」
「なんか嫌だ」
「ッ!ッ!」
「ちょ!?取ろうとするな馬鹿!」
実力行使に出た鈴子を振り払い、校長に視線を向けて、
「校長、質問が一つあります」
「ん?何かな」
「俺達は観光に行くんですよね?」
「その筈だが?」
「…武器、必要ですか?」
キャリーケースと共に持って来たシルバーケース。
その中には戦闘学が用意してくれた装備一式と、博士から頂いた武器が入っている。
それは全て校長の指示によるものだ。
「非殺傷用だけど、常備していて欲しいんだ。海外は物騒だからね」
日本と比べてオーストラリアの治安がそんなに低いのか?
「ああ、それと向こうでは、なるべく騒ぎを起こさない様にね」
「起こしませんよ。ただの旅行ですよ」
「それでも注意しておいてくれ。……それと、オーストラリア支部が接触してくる可能性があるんだ」
「オーストラリア支部?なんで?」
俺に代わって鈴子が校長に質問した。
確かに気になる。
旅行目的で訪れた自分達に、どうして向こうの支部が接触を図ってくるのか。
その質問に校長は、俺達二人をジト目で見た。
「鈴子が広樹を持って来たら、大人達はどうすると思う?」
あれ?質問の意味が分からない。
そして何か単語のニュアンスが変だったぞ?
カモとネギ?そりゃあ、
「鍋に入れる」
鈴子が模範解答を言った。
それに校長は「そうだね」と一言漏らし、俺達の肩に手を置いた。
「人間はあの手この手で罠にはめて、自分達の鍋に入れるだろう…………つまり言いたい事は、絶対に鍋に入らず帰って来てくれ」
「「は?」」
校長の言っている意味が分からない。
鈴子も意味が分からず疑問の声を漏らしていた。
え?本当に何を伝えたいの?
オーストラリア支部に何かされるの俺達?
鍋に入れられてグツグツ煮込まれるの?
「絶対に捕まるんじゃないぞ」
捕まる?
校長は何を恐れているんだ?
そんなにもオーストラリアは危険な国だったっけ?
「ヘックしゅ!?…ん〜、詩織がワタシの噂でもシテルのデショウカ?」
彼女は大量のコアラを愛でながら、髭を生やす大人達に銃口を向けていた。
「動かないでクダサイネ。密猟者の行き先はロウヤデス……ア、日本語は分かりませんデシタネ!ハハハハッ!」
オーストラリア支部の序列者は、片言の日本語を発しながら、遠くにいる友人を思い出し笑っていた。
読んでくれてありがとうございます!
もう少し後の展開で、最後に登場した海外の序列者の出生を説明する予定です!どうかよろしくお願いします!
久しぶりの再登場です!