第117話、榛名「馬鹿は馬鹿でも、友達の為に頑張れる馬鹿ですよ」
書きあがりましたので投稿します!
すみません!今回はかなり重要な話だったので、少し時間をかけて書きました!
今回は説明が多いです!
どうかこれからもよろしくお願いします!
「ん、これは…?」
「どうした?」
「いえ、一瞬ですが、監視映像にノイズが走った気がしまして…」
「ノイズ?…何かの不具合だろう」
監視室で監視員がのうのうと会話する最中──
「まさか特別病棟から研究所に移送されていたとは、戦闘学は何を考えているんでしょうね〜」
灰色の迷彩色で施された戦闘服。
武装は一切無く、あるのはコードや端末などの電子関係機器。
それは潜入のみに特化した装備だった。
「さ〜て、詩織が入院──いえ、隔離されてる部屋を探しましょうか」
とある一室に入り込み、そこに設置されたパソコンにコードを差し込む。
そして手に持った小型端末を操作して、望む情報を探索した。
そして見つけたのは、とある部屋の監視カメラの映像である。
「見〜つけたっと、じゃあ行きますか」
コードを抜いてダクトを開ける。
赤外線ゴーグルを装備し、空気が流れる狭い通気口を匍匐前進。
道を塞ぐ鉄格子や回転プロペラには、持参した解体工具を駆使して解体、そして修理、証拠を隠滅しながら前に進む。
それを数回繰り返して、ようやく目的地の天井に到着した。
「物音無し、呼吸音無し…」
メガホン型探知機で無人である事を確認し、特別な手袋と膝当てを装着する。
「監視カメラは何処ですか〜……っと、見つけた」
ダクトから身体を出し、天井をトカゲの様に四つん這いに進む。
そして監視カメラにコードを繋いでハッキング。
「十分が限界ですね……」
偽の監視映像を流す様に設定し、天井から飛び降りる。
そしてヘッドライトで部屋を照らし見回した。
「うわ〜、改めて見ると痛々しいですね」
監視カメラの映像で分かっていたが、実物を目の前にすると精神に吐き気を催すモノがある。
そこにあったのは、
「詩織……」
巨大な繭を連想させる『巨大ポッド』、その中には何本ものコードに繋がれた少女──姫路詩織が液体に浸っている光景があった。
「少し待っていてくださいね。色々と同時並行で作業しますので」
部屋に備わるパソコンをハッキングしながら、『詩織に纏わる情報』に目を通す。
「高い危険性から治療兼観察状態……DNA分解構築からの生還事例者……被験体の候補……」
悪い部分だけを読んで呟く。
読む側にとっては良い部分を閲覧する事よりも、悪い部分を少ない時間内で確認し、最悪の状況に陥らない手段を模索する方が正解だった。
「利益優先者の思考ですね〜。一人の人生を犠牲にして、大勢の為の研究資料を製作する……まあ正しいですよ」
そうすれば多くの戦闘力者が助かる。
戦闘力による危険性の削減と、新たな成長発展のヒントを手に入れる事が出来るであろう。
だが、それは絶対に叶わぬ事実だ。
──ポチッ…
「でも根本が間違えてるんですよねぇ〜。DNA分解構築ではなく、黒槍出現の暴走なのに。いえ─」
それはDNA分解構築ではなく、『黒槍出現』と言う一種の暴走。私がそれに気付けたのは、一つの原因を手に入れる事が出来たからである。
──ポチポチッ…
「共鳴による遺伝子交換。まさか私の製作した『黒燐』と、詩織の『黒槍出現』が独自に遺伝子情報を交換、最適化と成長を繰り返すなんて……誰も予想しませんね」
それは黒槍出現が故の独自性だった。
長年の能力研究で知り得た『黒槍出現の正体』は、今回のイベントでその本質を大々的に晒した。
黒槍出現の正体は『生きた細胞の集合体』。
無機質ではなく、脈打つ生物。
詩織が今まで生み出して来たのは、生命活動を持った黒い塊なのである。
それが黒燐の中枢コアにある『複製した黒槍出現』と交わり、細胞同士が互いに最適化と成長を繰り返した。
──ポチポチポチッ…
「でも『詩織の身体』と『黒燐の拘束外装』が黒槍出現の成長に耐え切れず、結果として『黒い巨人』が出力された」
あの黒い巨人は黒槍出現の塊。
無機質な黒棘だった姿は、黒燐と交わる事によって本来の性質へと移り変わった。
あれは黒槍出現の本来の姿なのである。
──ポチッ!
「でも、もう黒燐は私の手の中にあるので、もう巨人になって暴走する事は無い。分析結果として、あの巨人の正体は『黒燐の黒槍出現』から生成されたみたいですからね」
広樹が持って来てくれた『中枢コア』、それを分析して理解した。
詩織が持つ黒槍出現は、詩織の肉体に障害が発生しないレベルで抑制され、安定した形状で発動されてきたのだ。
だが、黒燐の方には優先するべき肉体は無い。
抑制を必要とせず、限界の限りの発展を遂げて、巨人の暴走に至った。
それが今回の事件の全貌だ。
──ポチッ……
「もう詩織が持っているのは『今までの不完全な黒槍出現』ではなく、『本来の何か』になってるかもしれませんね」
ボコボコッと、詩織のいるポッド内で泡が増大する。
それは今行った操作によるものだった。
「下準備は整いました。後は博士に口添えしてから再び訪れます。その時に目覚めさせてあげますからね」
「何故だ、何故お前がっ」
「Why ! Why you can use English !」
「Don't worry.」
「気にしなくていい」
負けた。人間的に負けた。
どうして鈴子が余裕で英語を喋れてるんだ。
もう聞きたくないと翻訳機の電源を落とし、上から見下ろす彼女を見た。
「ゲームで覚えた知識……世界大会イベントの時は周囲が英語だったから……やって行くうちに覚えられた」
「チームを組んだ事や、会話した事が無いって言ってなかったか?」
「会話を聞き取っただけ……チームは組まずにオープンチャットで流離ってソロしてた……そしてね──」
ゲームに依存する序列九位は、妖艶な笑みを浮かべて、
「敗退プレイヤーの悲鳴を聴くと……何かが満たされて」
あれ?鈴子ってドS?
「相手の悲鳴の意味を知りたくて……私は英語を覚えたかも……たぶん」
習得動機が不純過ぎてヤバい。
え?鈴子にこんな一面があったの?
「でも、まだ知らない英単語もあるよ……それより行こう広樹……校長との待ち合わせ時間がそろそろだよ」
そう言って鈴子はキャリーケースを引きながら、校長がいる大型ビルに足先を向けた。
読んでくれてありがとうございます!
今話では黒槍出現の正体の伏線を一部回収しました!
詩織が入っているポッドですが、イメージとしては、『バイ○ハザードに出てくるタ○ラントが入っていたポッド』みたいな形です!
今回は説明が多い話になりましたが、次話からはストーリーが進む話にするつもりです!
次話もぜひ読みに来てください!