第115話、榛名「私の年齢?何歳に見えますか〜?」
書きあがりましたので投稿します!
よろしくお願いします!
「痛ァっ!?何するんですかぁあ!?」
「自分の胸に聞いてみろ!そして俺が握っている物をよく見ろ!」
「それは折り畳み傘!?私の産んだ作品で私を叩くなんて悪魔ですか!」
「悪魔はお前だ!お前の歌の所為で色々と誤解が膨らんだんだよ!」
俺は榛名の部屋にいる。
そして絶賛お仕置き中だ。
「我が子で親を殴るなんて最低でぇブフォッ!?」
本日二度目のバッティングを食らわせて、ようやく気持ちが落ち着いた。
「これは返す。まだ他にも機能が有りそうで怖い」
「何を言いますか!私のサービス精神で多種多様の機能を付けてっっごめんなさい!」
俺が折り畳み傘を構えたのを見て、榛名は即座に頭を下げた。
正直コイツには遠慮しなくて良いと思える。
言葉よりも物理でのコミュニケーションが一番有効なのだと心底思う。
「あの〜ちなみに今日はどのような御用で?」
両手を洗うポーズを見せながら笑う榛名。
だが、
「いやこれだけだ。本来の用があるのは博士だから」
「ちなみにどういった御用件で?」
「お前に頼みたくないお願いがあるんだ」
ある物が欲しくて博士を訪ねに来た。
榛名はそのついでだ。
もうこの部屋には用は無いと、ドアに向かって歩き出す。
「じゃあな」
「ポチっ」
「ん、ポチっ?」
ガラガラガラガラ──ガッシャン!!と、扉は分厚そうな鉄壁によって覆われた。
その原因は恐らく榛名が持つボタンだろうと思う。
いや絶対そうだ。
「どういうつもりだ?」
「いえ、私の何かが言っているんです。此処で貴方を逃してはならないと」
「その何かに伝えてくれ。直ぐに此処を開けないと後悔するぞって」
「まあまあまあまあ」
腕を引っ張られ、ソファーに座らされる。
「俺の勘と経験が言っているんだ。お前に何かを頼むと絶対にロクな事にならない」
「あ、ドンペリ飲みます?それとも鉄分を多く含んだアレでも注文します?」
ドンペリか武器?
あぁ、この展開は前にもあった。
最後に訪れた時のキャバクラトークを思い出した。
てかドンペリって、コイツは一体何歳なんだ?
「未成年ですよ。ちなみにドンペリと言っても子供用ドンペリです。子供用ビールの親戚みたいな飲み物ですよ」
え、何この娘?声を漏らしたか俺?
「顔に出てますよ〜。私ほどの天才となれば、表情と声質と状況を紐解けば、相手が何を考えてるのかくらい分かります」
「そうか。じゃあ俺が心底お前を信用していない事くらい察せるよな。じゃあ──」
「そうは行きません!」
立ち上がろうとしたが、腕を引っ張られてソファー尻餅をつかされた。
シツコイ女は面倒だと言うが、まさか此処まで面倒だとは…
「で〜、一体何をご所望で〜?当店はお客様の満足と信頼に応えられる品揃えが自慢で〜」
「おい待て、満足と信頼を辞書で調べ直して来い。きっと新しい発見が書いてあるぞ」
満足と信頼に意味とは何か?
榛名だけには絶対に当てはまらない事だけは確かだ。
「まあまあとりあえず言ってみてくださいよ!折り畳み傘の事もありますから、超お安く提供して差し上げますよ!」
「と言っても、お前が作った時点で不安要素の塊なんだが?」
「大丈夫です!ちゃんと博士の検査に通過した製品をお渡ししますので!」
博士の検査と言う言葉で気持ちが揺らぐ。
博士が大丈夫と認めた代物だったら……まあうん……
「欲しいのは……翻訳機なんだ」
「は、翻訳機ですか?」
「近日中にオーストラリアに行く事になった」
「あー、確か言ってましたね。一緒に旅行とかなんちゃらって…」
「それで俺は英語が喋れないから、何かと便利な戦闘学製の翻訳機を貰っておこうと思ったんだ」
前に天草先生に借りた翻訳機は最高だった。
任務終了後に返還してしまったので、旅行前に新たな翻訳機を手元に置きたいと思った。
「翻訳機…ですか」
「もしかして無いのか?」
「いえ、有るには有りますよ。ただ意外だったので」
そう言いながら榛名は立ち上がり、クローゼットを漁り始めた。
「何が意外なんだ?」
「広樹はてっきり英語がペラペラなのだと思ってました……。I wanna lock you up and dissect you to analyze. Could you become my guinea pig? Do you mind?」
「ん?なんだ?」
「Do you mind if I do that?…ok?」
「えぇ…オーケー?」
「…………広樹、旅先には気を付けてくださいよ。特に貴方は危険です。色々と危険です」
「おいちょっと待て、さっきお前なんて言った?」
「新しいモノを生み出す際には、それ相応の犠牲が有ると言いました。犠牲無くして誕生は無いんですよ……本当に気を付けてくださいね」
「え、何っ?怖いよ今のお前!?どう言う事だ!?」
「あ、有りました有りました。これが手頃ですね〜」
「無視か!?さっきの榛名は何処に行った!?」
ギャップ萌えならぬ、ギャップ怖だった。
馬鹿っぽい榛名だが、英語を喋っている間だけ本気で別人に見えてしまった。
そして怖い!危険って何?コイツは何を英語で言ってたの!?
「食べるタイプと、装着するタイプ。どっちがお好みですか?」
「食べるタイプとは?」
恐怖が一転して訳が分からなくなった。
食べるタイプとは?
え、翻訳機を貰いに来た筈だけど?
「これが何か分かりますか?」
「ゼリーだな」
「こんにゃくゼリーです」
「もしかしてソレが翻訳機か?」
いやいや無いだろ。食品が翻訳機とか、イかれた榛名でも言う筈が、
「翻訳食品ですよ。これを食べると脳に特別な遺伝子情報が送り込まれて英語がペラペラに──」
「却下だ!何そのバイオテクノロジー的なこんにゃくゼリー!」
「ハハッ冗談ですよ!」
榛名は笑ってこんにゃくゼリーを机に置いた。
「これは失敗作です。シミュレーターで人体実験したらとんでもない事になりましたから……まあ、いつかは完成させますよ」
冗談って何?
え、とんでもない事?
シミュレーターの中で何が起こったの?
「これが私お手製の翻訳機です!色々と便利なんですよコレ!」
読んでくれてありがとうございます!
榛名が言った「I wanna lock you up and dissect you to analyze. Could you become my guinea pig? Do you mind?」は、日本語訳として「貴方を監禁したい。貴方を解剖したい。私のモルモットになりませんか?いいですか?」みたいな感じです!
よろしくお願いします!