第112話、鈴子(だ、台本もないのに、いきなりそんな事)
書きあがりましたので投稿します!
よろしくお願いします!
「ちょっと彼女とお話がしたいんだ。少しの間だけ離れてもらっても良いかな?」
「うぇっ!は、はい!」
「ありがとう」
カメラを持った少女を下がらせ、天乃は輝かしいドレスに視線を寄せた。
「治癒しないの?……」
「治癒したら、またお仕置きを受けそうだからね」
目端を吊り上げた私の隣で、ボロボロ顔の天乃は瞳を細めて笑う。
「この姿だったら、殴って来ないかな〜って」
「……」
「もう何もしないよ」
私はその言葉に対して、油断ならないと口元を引き締め、
「次やったら、その時は確実に…息の根を」
「それは無理だ。君じゃあ僕は倒せないよ」
「ムッ」
「ボコボコにされるのは良いんだけど、さすがに息の根まではね」
余裕の声音を吐く天乃に、私はゆっくりと片手に能力を、
「此処では止めようかぁ」
バチッ!と光が走る。
天乃の能力が手首を襲ったのだと分かった。
「その代わり、一つ良い提案をしてあげるよ。迷惑料としてね」
天乃は背筋を曲げて、小さな声で囁き出す。
「君は本当に今回の賞品でオーストラリアに行けると思うのかい?」
「っ!?」
その呟きに疑問が咄嗟に浮かんだ。
どうして自分の狙いを知っているのだ。
どうしてオーストラリアに行けないのだ。
それらを問いただすよりも先に、天乃は言葉を続けた。
「序列者を国外に出すのはかなり大変なんだよ。それも世界中の研究機関が欲しがっている内守谷鈴子の場合は、益々難しいだろう」
「っ、聞いてないよ。そんなの」
「序列者は例外なんだよ。他は普通に出られるんだけどね」
頭が真っ白になる。
考えていた自分の計画がパーなのだと、天乃の言葉によって浮かび上がる。
だが、
「でも一つだけ良い方法がある。校長に阻止されない方法がね」
怪しい笑みを作った天乃は、ゆっくりとマイクを持ち上げ、
「認められないのなら──」
──認めざるをえない状況にすれば良いんだよ
「とにかく無理だっ!簡単に君を退学には出来ない!頼むから考え直してくれ!」
「俺も無理ですよ!羞恥しながら学園生活を送れと?絶対嫌ですよそんなの!」
「噂だったら最善を尽くして取り消させる!正しい情報を伝播させれば、まだやり直せる!」
「もうやり直せませんよ!此処から出て行く以外には!」
俺と校長との弾丸トークは続いていた。
もう逃げたい。その一言しか頭になかった。
此処で負ければ、これからの約三年間は地獄と化す。
それだけはなんとか逃れようと、声を熱くさせる。
「とにかく辞めます!元の学校に編入し直させてください!」
「だから無理だと言っているだろう!既に君の価値は世界中に─」
『はぁーい!どうも二人の会話が長そうなので!次に進んじゃおっか!』
「「っ!?」」
スタジアム中に響いた声によって、俺と校長は首を回した。
そこにいたのは、顔に眼帯と湿布に包まれた序列二位と、顔をうつむかせた序列九位がいた。
『ではでは!第一位入賞チームのリーダー!序列九位の内守谷鈴子ちゃんからコメントを貰おうと思います!』
ワァッーーーー!と観客席の歓声が上がる。
巨大モニターにドレス姿の鈴子が映し出され、誰もが彼女の言葉に耳を傾けた。
『では鈴子ちゃん!まずは今回のイベントに出場しようと思ったきっかけを聞こうかな?』
天乃の質問は、鈴子を知る者達にとって興味を引いた。
引きこもりだった彼女が、どんな理由で外に出られたのか。
それが天乃の質問によって明らかになる。
『さぁ鈴子ちゃん。君の気持ちを聞かせてくれ』
天乃の問いかけに、
『っ、わ、私は…』
顔を赤くさせた鈴子は、
『──広樹と、二人で、オーストラリアに行くために』
取り返しのつかない発言を放った。
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