第11話、斉木「訪問するときの贈り物はやっぱりメロンでしょ」
お久しぶりです!!
今回もなんとか書きあがりました!!
文章の確認はしていますが、間違い、訂正、アドバイス、文脈の助言などがあれば、貰えると嬉しいです!とても勉強になります!!
感想とコメントも、楽しみに待ってます!!!(^ω^)
これからもよろしくお願いします!
『戦闘学・特別病室』
薬品の香りがする病室。
そこに詩織は入院していた。
戦闘学に戻った際、詩織の腹は大きな激痛に襲われ、診察室に直行となった。
病状は『辛いものを食べたことによる腹下し』と診察されたのだ。
(名誉の負傷と言われてしまった…)
少年心を持つ戦闘学の校長が、見舞いに来た際に笑いを堪えながら言い残していった言葉を思い出す。
詩織にとっては屈辱だった。
(でも、約束は取り付けられた!)
詩織は必死になって勝ち取った結果を噛みしめる。
(これで広樹が戦闘学に転入してくる!そう!わ・た・し・のおかげで転入してくる!)
自分が成し遂げたと、改めて気持ちにする。
今回の任務成功に対し、戦闘学の講師たちの評価は高かった。
校長が危険人物と判断した対象者を、戦闘学の思惑通りに誘導できたのだから。
(広樹を連れてきたのは私だから、きっと、広樹の面倒は私が見ることが出来る!)
戦闘学は、広樹の転入に対し、危険の予防線を引こうと、監視を付けようとしていた。
詩織は広樹の監視に就きたいと思っていたのだ。
(多少強引にでも、私を監視役としてねじ込もうと思ったけど、今回の成功があれば必要はないはず!)
戦闘学には、総合能力によって作られた序列があった。
詩織はそのトップ十に入っている。
戦闘学では、評価に応じて様々な権限を得られるシステムになっている。
十位以内であれば、大抵の希望なら確実に認可をもらえるレベルだった。
詩織はその権限を使って、無理矢理にでも広樹の近くにいようとしたが、その必要がなくなったのだ。
(ああ…これから楽しくなりそう!)
今まで出会った事のない強者が、自分の隣に立つ場面を想像する。
そんな未来が現実になろうとしていることに、詩織は心の高ぶりを顔に出していた。
そんな時、トントン、とドアからノックが鳴る。
(私への見舞い?もう、顔見知りは全員来たと思ったけど……)
「はい…」
詩織の返事に反応するように、ガラガラとスライド式のドアが開く。
入ってきたのは中学一年生を思わせる小さな少女だった。
「………あんたが私の見舞いに来るなんて、どういう風の吹き回しよ」
「…悪い?」
薄い青空色のかかる白髪をした少女に、詩織は質問を投げかけた。しかし、少女は一言で切って捨てる。
そして見舞いに来た少女は『美味しいメロン』と書かれた大きな紙袋をベットの上に置く。
「…切ってあげようか?」
「いや、どうして私の見舞いに来たの?そんなことをする子だった?」
詩織は未だに不可思議な現象を見る目で、少女に視線を飛ばし続ける。
「……気分」
「いつもボーっとしているあなたが?」
「……メロン、勝手に切っちゃうよ」
少女が紙袋から包装されたメロンを取り出し、自前に持ってきた果物ナイフとまな板を準備する。
「葉月…あなたの小さな手で、その大きなメロンを切れるの?」
「余計なお世話」
葉月と呼ばれた少女は、まな板に置いたメロンに、果物ナイフの切っ尖を刺しこむ。
小さな手にもかかわらず、順序よくメロンが切られていく。
そして、サイコロの形となったメロンを皿に乗せて、詩織の目の前に差し出す。
「……はい」
「ありがとう」
詩織が爪楊枝をメロンに差し込む。
「で、私の見舞いに訪れた理由は何?」
一口食べた詩織は、さっきと同じ質問を葉月に飛ばした。
「……だから気分」
「ありえないわ。他人に興味が無いあなたに、人を気遣う心なんてあったの?」
自分の正論を言い続ける詩織。
一方、葉月は詩織に返答をせず、使い終わった果物ナイフとまな板をしまう。
それでも睨み続ける詩織の顔を見て、葉月はあまり喋らない口を開き、途切れながらの言葉で答えた。
「……任務を頑張っているクラスメイトが……入院したら、見舞いに来るのは……当たり前じゃないの?……」
「あなたがクラスに顔を出したことも、誰かの見舞いに行った記憶もないのよね」
「……私はいつも……任務がある……」
「知っているわよ。序列一位」
「……序列十位」
ベットに身を預ける詩織は、お互いの立場を再確認させた。
目の前の少女が戦闘学生徒のトップ。
高等部一年でありながら、先輩たちを差し置いて全生徒の頂点に立った存在。
「本当のことは話してくれないの?」
「……何もないよ……あとは帰るだけ……」
葉月は淡々と少ない言葉で、詩織に自分の考えを伝える。
満足いってないような顔をする詩織は、葉月を見やって質問を変えた。
「もう一つ気になっているんだけど…」
「……なに?」
ボーっとした表情で、葉月はゆっくりと返事をした。
詩織は、そんな葉月の右腕に抱えているものに視線を飛ばす。
「あなたにぬいぐるみを持ち歩く趣味なんてあった?」
葉月が持っていたのは、四枚の羽を生やした、妖精をイメージさせる猫のぬいぐるみだった。
病室に入ってから、ずっと気になっていたもう一つの疑問。
葉月がぬいぐるみを持っている姿を、詩織は見たことがなかった。
「……悪い?」
「全然、むしろ似合っているわよ。」
「……」
「ッ!?」
高等部一年生。十六歳でぬいぐるみを持ち歩いている。その事について嫌味を言った詩織だったが、葉月の顔を見て驚愕に変わった。
葉月が小さな笑みを浮かべていたのだ。
今までになかったことに、詩織は違和感を隠せず、顔に出してしまう。
詩織は思わず葉月に疑問を飛ばした。
「どうしちゃったのっ?」
「……何が?」
詩織の再びの質問に、葉月は笑みを消し去り、いつものボーっとした無表情な顔に戻った。
「いや、私も何から聞けば良いのかわからなくなって来たわ…」
思考の回転がぎりぎりの中、詩織は天井を仰ぎ見る。そして自分の聞きたいことを再整理した。
「そのぬいぐるみはどうしたの?」
聞いたのは、ぬいぐるみについてだった。
「……もらった」
無表情な顔をしながら、質問に答える葉月。
「やっぱり答えてくれるのね……いつもはシカトするのに……」
見舞いの第一声からもそうだった。
葉月は会話の受け答えを滅多にしない。
必要な会話を除いたら、一言も喋らないのだ。
「……あなたには……ぬいぐるみについてなら……知られても良いと……思ったから」
「今日のあなたはすごく可笑しいわ」
「……質問は?」
詩織の中で葉月の印象が滅茶苦茶になっていた。それでも好奇心からか、質問を続けるために口を開く。
「誰に貰ったの?」
「……友達に」
「わかるかぁああ!」
ついに詩織が発狂した。
誰にも興味を示さない少女の口から『友達いました』と聞き取れる言葉が出てきたのだ。
詩織は我慢の限界を超えて、口から言葉となって飛び出した。
「あなたに友達ぃ?想像もできないわよ!友達って言うのはね!一緒にご飯を食べたり、映画に行ったり、放課後どこかに遊びに行く相手のことを言うのよ!」
「放課後……二人で遊びに行ったよ……」
「えっ?……」
予想外の回答に変な声を上げた詩織。
詩織の反応を他所に、葉月は言葉を並べ続ける。
「……一緒にゲームセンターで…遊んだ。……ぬいぐるみも…ゲームで…取ってくれた……」
「……は…はは……はぁ〜」
バタンとベットに倒れる音がなる。
詩織の意識はすでになく、リズムのある呼吸をしていた。
彼女は葉月の放つ途切れ途切れの言葉を受け止めた。そして、ついに処理限界を超えて、意識を手放すことで処理を止めることにしたのだ。
そんな詩織に、葉月は掛け布団を寝ている身体に被せる。
両手に紙袋とぬいぐるみを持ち、葉月は出入り口のドアに手をかけた。
「………ありがと」
小さな少女は眠る少女に、その途中で切ったような一言を残し、外に出ていった。
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