表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/221

第106話、天乃「さぁ鈴子ちゃん!勇気を振り絞って表彰式に出よう!」

ごめんなさい!投稿する予定だった時間に眠ってしまいました!投稿が遅くなってすいません!

書きあがりましたので投稿します!

読んでもらえると嬉しいです!

「え?一人で入場?」


「……すいません……いえ、本当に申し訳ありません」


灯花に頭を下げられ、深く謝罪される。

何故かと言うと、そこに鈴子がいない事が根本的な理由だ。


「時間がおしていますので、チームメンバーの一人だけでも、先にでてもらう事に…」


「いや、まあしょうがない……よな。だって鈴子が」


逃げ出した。

序列二位の腕の中で、上着を脱皮だっぴしたかの様に脱いで、スポンと脱出、即ダッシュ。

それを序列二位が追いかけて行ったのだ。


「しょうがない?……いえ、天乃あのひとがこんなミスをする筈……」


「ミス?」


天乃アレは馬鹿でも序列二位です……なので少し不可解で……」


「鈴子を取り逃がした事がか?」


「はい……」


天乃が一度拘束した少女を易々と逃す筈がない。

それが彼を知っている灯花の考えだった。


「それに、天乃あのひとなら能力で即座に捕まえる事も……」


「能力?ハッキングでか?」


「それも天乃あのひとの能力ですが、本領が異なります」


天乃の能力の真髄。

灯花はそれを伝えようとする。


天乃あのひとが持つ能力は──」


──そろそろ入場準備をお願いします。


だが、小型無線機インカムに流れた指示によって、それは中断された。


「すいません。この話は後日、機会があれば」


「いや、気にしなくても……雰囲気で凄いのは分かった」


「ありがとうございます。それではそろそろ扉が開きます。前方にゆっくり進んで、奥にいる誘導員の合図に従ってください」


「分かった」


灯花の簡単な説明を頭に入れて、心を引き締める。


だが、改めて思うと緊張する。

大勢の前を歩くのだ。しかもイベントの入賞者、それも一位としてだ。


それを一人で歩くのは、緊張と恥ずかしさを通り越して、恐怖に感じた。


(俺、本当に何もしてないんだけどな…)


ただ詩織を抱っこして、とにかく全力疾走を尽くした。

それよりも、鈴子と詩織による戦闘の方が、どう見ても評価されている筈だ。


そして、序列者を差し置いて、自分だけが入場するのも重く感じた。


(鈴子、後で覚えてろよ…)


鈴子の悪い部分。

それを少しでも改善しないと、これからあるオーストラリア旅行でも苦労しそうだ。

今回の件を盾にすれば、校長に相談してカウンセラーを予約しても、文句は言われないだろう。


(一人で表彰式か……一人はなかったな……)


戦闘学に転校する前にも、入賞者として立った機会があったが、それはチーム全員で。

一人がこんなにも胸が締め付けられるとは思わなかった。


仲間アイツらは今頃、どうして──)


──扉が開きます。入場をお願いします。


懐かしさに浸る最中さなか、天井の隅に付いたスピーカーから指示が流れた。


鈴子がいない状態での入場。


心臓の鼓動がありえないほど早いが、今は無心で進もう。

それが一番だ。













『では!最後の入賞者の登場です!大きな拍手でお迎えしましょう!』


司会進行役の少女の声に、スタジアムが揺れる。

巨大な扉が開き、そこから一人の男が姿を見せる。


『荻野広樹さんの入場です!』


────!!

そして巨大な喝采に包まれる。










(やばい、鈴子が出たくない気持ちが分かった)


とにかくデカイ。

過去に出た表彰式とは規模が違う。

例えるなら、フリーマーケットとオリンピックくらいの差がある。


(無心で歩け。感情を顔に出すな)


視覚をボヤけさせて、聴覚の感覚も鈍らせる。

ぎりぎりまで五感から意識を離し、ただ普通に歩く事に集中した。


そして真っ直ぐ向かう先には、黒スーツを着た女性がボヤけて見える。

きっとそこが終点地点なのだと、感覚で分かった。


『内守谷鈴子さんは、もうじき準備が整うとの事です。もうしばらくお待ちください』


無心でも、司会進行役のその声だけは耳に入った。


捕獲ほかくされたな鈴子。お前もこの恥ずかしいレッドカーペットの上を一人で歩いて来い。俺はその先で待ってるぞ)


自分の苦しみを仲間に与える。この喝采を同じ様に浴びる。

同じチームとして至極当然の分け合い。

あの対人恐怖症には良い薬になるかもしれない。

だったら、俺はその光景を静かに傍観ぼうかんしよう。



「広樹くん。お疲れ様」



聞き覚えのある声が聞こえた。

それは目の前に立っている女性の声。

ボヤけさせていた視覚を取り戻して、ようやくそれに気づいた。


「天草先生。お久しぶりです」


「うん久しぶり。今は誘導員として此処にいるから、何か体調が悪くなったら言ってね」


「はい」


自分の担任である天草先生。

その姿と声に、この場の苦しさが少し和らいだ。


(さて、次は何を)



「ねぇ広樹くん」



それは突然と響いた暗い声音。


あれ、今近くにいるのって、一人しか…


「しっかり白状してね…」


「な、何をですか?」


怖い!なんかとても怖い!

ポジティブだった天草先生が消えて、そこにいるのは禍々しい雰囲気を持つ天草先生だ。


今の天草先生を隣にしたら、スタジアムの喝采がかすんで感じられる。

それに何を白状させるんだ。

此処まで声音が変わると、余程の事ではないと直感に鳴り響いた。


「私はね…まだ早過ぎると思うのよ…」


「だ、だから、何がですか?天草先生」


「出会って一ヶ月も経ってないでしょ…それなのに…」


「い、一ヶ月?」


「私は教師。だから、否定する側の人間なのよ。本人達の気持ちを無視してでもね」


「本人達の気持ち?」


何を言っているのか分からない。

そしてとにかく怖い。

今までの天草先生からでは、考えられない恐ろしい雰囲気がそこにあった。


『内守谷鈴子さんが御到着しました!では!入場してもらいます!』


「あ、天草先生。鈴子が来たみたいですよ」


少しでも気をらせたい為に言い放った一言。

だが、天草先生は、


「あのにも、しっかり白状させないとね…」


そう呟いて、これから開かれる扉に視線を伸ばした。


(え?鈴子も何かしたの?)


自分だけではなく、鈴子も何かやったらしい。

でも引きこもりでゴミ部屋を作る少女だ。

きっと何かあるのだろう。


(鈴子……でも今は)


それも気になるが、今は鈴子の姿を見ようと気持ちが優先した。


(さぁて鈴子さん?俺を一人で歩かせた罰として、俺と同じ様に一人で歩いてもらおうか)


ちょっと『ムフフフ』な気持ちになってしまう。


詩織と激闘を繰り広げた鈴子でも、その内面は引きこもり。

つまり、恥ずかしさのあまりに失神する可能性も……


え?なんか見たい…

顔を赤くして倒れる鈴子って、……あれ、可愛くない?


『暖かい拍手でお迎えください!では!入場ぉお!』


拍手喝采の中で、大きな扉が徐々に開かれていく。

そして自分の時には流れなかった入場音楽が響き渡った。



パパパパ〜ン、パパパパ〜ン

パパパパン、パパパパン

パパパパン、パパパパン

パッパ〜パ〜パパ〜


そう、その音楽は誰もが人生で必ず聴いた事がありそうな──


まるで白い教会で流れる感銘かんめいな──


フェリックス・メンデルスゾーンの『結婚行進曲』の様な曲に聞こえた──



ちょっとまて

え?何あれ?


なんでウェディングドレス?








(わぁぁ、凄く綺麗)


広樹から少し隣にいるコアラ子は、その姿に瞳を輝かせていた。

読んでくれてありがとうございます!

シリアスが終わって久しぶりにコメディーに突入かもです!

次話もぜひ読みに来てください!


今話では、フェリックス・メンデルスゾーンの『結婚行進曲』を書きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ