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第105話、コアラ子「賞品、何を選ぼうかな」

書きあがりましたので投稿します

これからもどうかよろしくお願いします!

「いぃやぁだぁあああ!!」


「そんな事言わないでよ鈴子ちゃ〜ん。皆んなが君の入場を待ってるよ〜」


「待ってない!広樹だけで十分だよぉお!!」


「「…………」」


此処、控え室では、


絶叫しながら壁に付いた鉄パイプにしがみ付く鈴子。


それを満面の笑顔で引っ張る天乃。


沈黙する広樹と灯花。


この四人がいた。


「広樹ぃ!コイツなんとかしてぇえ!!」


「いや、これは完全に鈴子が悪いだろ」


「ほう広樹くん!分かってるね〜!ほら鈴子ちゃん!彼もこう言ってるんだから、早くその鉄パイプを放したまえ!」


「裏切り者ぉおお!!」


内気だった鈴子がこんなにも感情と声を荒げるのは珍しい。


どうして鈴子が此処まで激しく抵抗しているのかと言うと、これから表彰式なのだ。

その大勢の前に姿を見せる事を嫌い、控え室から出ようとしなかった。


最初の開会式の時とは違い、今回は入賞者少数で舞台の中心に立つ。つまり目立つ。

それが鈴子にとって嫌だったみたいだ。


それを天乃が無理矢理連れて行こうとして、今も引っ張ってる。


「鈴子ちゃ〜ん。ちょっと鉄パイプさんが悲鳴を上げてるからさ〜。そろそろ放してくれないかな〜」


「じゃあアナタが放してよ!この変態!」


「君が放してくれたら、僕も放すよ〜」


ギギギギギギ──!!

と、本当に鉄パイプは悲鳴を上げていた。

気付けばその一直線だった筒棒が弓の如く曲がりを見せて、果てには繋がっている天井と床のコンクリートにひびが広がり始めていた。


てか、人体強化すげぇ。

そして怖い。二人の腕力がこの控え室を壊せる程までに強いものなのだと、今改めて気付いた。


「鈴子」


「広樹!」


一言名前を呼んだだけで、鈴子は救いの光を見た様な瞳を向けてきた。


はい、勘違いしてます。


「脇ちょん」


「ヒグッ!?」


「ナイス広樹くん!やるねぇ〜!」


脇に人差し指でチョン突いただけで、鈴子は呆気なく鉄パイプを放した。

そして天乃はその機を逃さず、鈴子の両腕と胴体を片腕で難なくと抱えた。


「広樹ぃいい!!」


「いやいや、これはどう見ても鈴子が悪い。お前が参加を望んだ訳で、その表彰式に出る責任もあるだろ」


「広樹くん。君程常識的な人間はそうはいないよ。僕と連絡先を交換しないかい?」


「え、ああ、いいですよ」


「よし!……はい!交換を済ませたよ!」


「え?」


まだ何もしてない。

端末は今もポケットの中に入ってる。


「僕の能力でね。手に触れなくても、周囲に機械があれば操作出来るんだよ。ハッキングに近いかな〜」


「広樹気をつけて!この変態は本当に酷いんだよ!人の迷惑を考えないで好き勝手に──」


「はい鈴子ちゃん!レッツゴー!」


「放してぇええ!!」


鈴子が言おうとしていた言葉が凄く気になる。

え、この人そんなにヤバイの?

詩織以上にヤバイ事はないと思うけど、どれくらいヤバイの?


「あの…広樹さん」


「あ、えっと」


「申し遅れました。私の名前は黒衣灯花こくいとうかと申します。そこにいる青年の保護者です」


「灯花ちゃん?ちょっと紹介おかしくない?」


「ほんっっとうに、ウチの光崎天乃こうざきあまのがご迷惑を」


「え、お母さん?いつから僕は君の光崎天乃になったんだい?」


「それと第九位、内守谷さんが言っていた事なのですが、十中十じゅっちゅーじゅうは本当です」


「それ回りくどく合ってますって言ってない?せめて十中八九じゅっちゅーはっくにしないかな?」


「その連絡先はすぐに拒否リストに入れる事をおススメします。その上で新しい連絡先を作成して、以前のものは削除した方が得策です」


「灯花ちゃ〜ん、僕の評価をズタボロにするのはやめてくれないかい?完全に引かれてるじゃないか」


引いてる。

顔に出るくらい引いてる。


え?この人そんなにヤバイの?

鈴子が詩織とまともに会話していたけど、この天乃と言う青年に対しては極端に嫌悪的だった。


つまりそれは、詩織よりも天乃の方が…


「黒衣さん」


「灯花でいいですよ。同い年ですから、それと呼び捨てでも」


「じゃあ灯花……」


──早めに再設定した方が?


コソっと言い放つ。


──ええ、やっておいた方がいいです。なんなら今廊下を歩きながらやってもいいです。


「ねぇ二人とも?僕のいない所で、僕の事で盛り上がって、僕に最低の評価を付けるのはやめてくれないか?別に何もしないよ」


「「「…………」」」


天乃以外の三人が、魂の無い瞳で凝視する。


「三人揃って!?今知り合ったばかりの広樹くんまで!僕はそんなにイかれた人間じゃないよ!他の序列者と比べてね!」


へ?他の序列者?


──灯花、今の序列者って?


──ああ、広樹さんは転校して来たばかりで知りませんよね。あの馬鹿は何を隠そう


「戦闘学が認めた序列第二位!光崎天乃だ!つまり戦闘学の学生の中で、総合的評価で僕は二番目の実力を持った存在だね」


──え、本当に?


──残念ながら…


天乃と名乗るヤバイ人が序列者…

あれ?ちょっとおかしくないか?


序列十位、姫路詩織。

序列九位、内守谷鈴子。

序列二位、光崎天乃。


うん?


姫路詩織、不法侵入とその他諸々。

内守谷鈴子、ゴミ部屋と引きこもり。

光崎天乃、鈴子と灯花がヤバイと言う人。


え、序列者って何?


──さっき天乃このひとが言っていた『他の序列者と比べてね』の意味って、もしかして…


──いえいえ!確かに少し目立つ方もいますが、真面目な方もいますよ。例えば序列三位の…


「いやいや、彼もおかしいからね。僕と同じで周囲には見えないけど、序列者と教師陣にはお見通しさ」


──と、言ってるが、実際どうなの?


──すいません。確かにこの馬鹿も、周囲から高い評価を勝ち取っているので、なんとも言えなくなりました…もし本性があれば、その可能性も…


「普通に暮らしてる分には、序列者の本性は見えないさ。観客達は僕を外見でしか見てないからね」


──納得した


──こんな馬鹿でも、超人並みの仕事量をこなせるので、イケメンと出来る男を足した存在と認知されてるんです。本当に周囲から評価が高いんですよ…


仕事が出来て、イケメンで、馬鹿…

何このアンバランスな人?

勿体ないオバケが出るよ。


そして気になる。

他の序列者がどんな人間なのかも…

















「なんとかバレずに助けられましたね」


「うん……」


そこは暗いトンネル。

その壁で体育座りをする少女は、考え込む顔をして額に指を押し当てていた。


「何を考えているのですか?葉月」


「…………ねぇ、さやか」


「はい」


「広樹が来てからの情報………間違ってない?」


「…………やはり」


「どこかに誤りがある……じゃないとおかしい……」


「詩織ちゃんを救った行動ですね」


「おかしい……だって……もしそうなら……広樹は私を……」


動揺の色が声音に浮かぶ。

どの情報が間違って、正しいのか分からない。

真実を確かめるなら、直接本人に聞けばいい話だ。

だが、


「直接……駄目、気付かれる……」


「天乃様ですね。次に会えば、確実なさぐりが入るでしょう。そして全てを知られれば」


「全てじゃない……知られるのは、私だけ……」


そう。

だから、油断していた。

故に考えなければならない。


「広樹には……────……筈だった……」


「そして今回の件で、矛盾が生じたと」


「……分からない……でも、もしそうだったら」


「会いに行きますか?そして確かめますか?」


葉月の心の内を、さやかは微笑みながら言葉にした。



「彼が、葉月の知っている広樹であるかを」



その言葉を聞いて、葉月は立ち上がった。

そして、


「表彰式、もうそろそろ」


「三十分後になります。葉月なら飛ばせば余裕で間に合うでしょう」















「コアラ子ちゃん!凄いよ!二位入賞だよ!」


明るい友達に両手を握られて、大きく振られて喜ばれる。

それは他の五人も同様だった。


「くぅぅ、私達なんて、廊下でいつの間にか寝てたのよ」


「痛かったけど、気付いた時には死んでるって、あんな感じなのかな」


それは見回りをしていた二人の言葉だった。

彼女達はビル内での見回り班として仕事をしていたが、すぐに序列十位に倒された。


そして生き残った私達四人が、彼女に戦いを挑んだ訳だ。


「それにしてもコアラ子。よくあんな危険な場所にいて能力を解除しなかったわね。途中から湖の中に潜ってたけど、大丈夫だった?」


「何度か気絶しそうになったよ…」


「おぼおぼおぼって、言ってた感じしてたもんね!縫いぐるみになっていても、やっぱり呼吸してるのかな?」


僅かに呼吸はしている。


でも違う…

本当を言えば、溺れそうになって気絶しそうになったんじゃなくて、黒い巨人を間近に見て……とにかく怖かった。


「水泳とか習ってたりしてた?」


「うん?……ちょっと違う……」


私の場合は、


「友達に誘われて、親にいいじゃないって言われて……」


「言われて?」


「水泳と料理、書道、裁縫……それと合気道……と」


「ごめんストップ。頼みを断れない性格なのは知ってたけど、ちょっと多過ぎるよ」


小学生の時につちかった経験に、戦闘学で作った友達が驚いた顔をする。


それに断れないじゃなくて、断らなかったの方が正しいかも。

何かの為になればと思うと、楽しく続けられたから。


「まぁとにかく!みんなでおめでとうだよ!賞品はみんな何を選ぶ?」


話題を切り出した明るい娘に従って、それぞれが考えを言い述べ合う。


私はまだ決めてない。

だって入賞するとは思わなかった。


「本当に入賞したんだ…」


「何言ってんのさ!コアラ子ちゃんが頑張ったからだよ!あの多重能力者の両手にいながらも、よく耐えきったね!」


「うんそうだ……ね?……」


…………あっ


「どうしたのコアラ子ちゃん?」


「…………ねぇ、予備の着替えとか、持ってない?」


「え?もう制服に着替え直したじゃん。どうして?」




ああ、どうして忘れてたんだろ……

こんな大事な事…

読んでくれてありがとうございます!


そして報告です!

久しぶりに『アクション』ジャンルランキングで1位になることが出来ました!たぶん半年ぶりです!

18位くらいまで下がった事もありましたが、また1位に戻って来られて泣きそうなくらい嬉しいです!

これもいつも応援をしてくれる読者様と、アドバイス、誤字報告してくれた読者様のおかげです!本当にありがとうございます!

そして評価をつけてくれた読者様にも本当にありがとうございます!


そろそろコメディーか、激戦区のローファンタジーに挑戦したい思いました!

もしかしたら、このどちらかのジャンルに移動するかもしれませんが、アクションにも顔を出します!


いつも読んでくれてありがとうございます!

今後も楽しくて面白い物語を目指して頑張りますので!これからもどうかよろしくお願いします!

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