第101話、鈴子(私の能力はとても万能)コアラ子(く、苦しいっ!息がっ)
書きあがりましたので、投稿します!
ぜひ読んでもらえると嬉しいです!
昨日の夜(今日の日付の深夜)に投稿していますので、忘れずに読んでくれたら嬉しいです!
それは自然に逆らった摂理の集合体。
本来の事象のことわりから外れて造られた、鈴子による製造現象。
太陽からの熱と紫外線を集約したのか、空間に漂う放射線と僅かな風を凝縮したのか。
それが何を誘導し改変して造られたのかは、鈴子のみしか知らない。
だがそれは、確かな破壊をもたらす未知の一撃だった。
「生物に撃ち込むのは始めてだけど」
──ッッ!!
空気の幕を突き破る音が鳴り響く。
集合体は鈴子の手から離れ、一直線に巨人に向かっていく。
『GAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
「っ!?」
叫びと共にもたらされた衝撃音。
黒き巨腕を振り下ろし、波飛沫と衝撃波が湖を打ち上がる。
「それに何の意味があるの?」
『GAAAAAAAAA!!』
波飛沫と衝撃波を自分から逸らしながら、鈴子は攻撃の行く末を見守った。
そして巨人が取った行動の末に、
『AAAAAAAAAッッ!!』
「これで両腕は無くなった」
胴体を庇った両腕が、沸騰したかの様に爆散した。
ブシャァとドロドロの液を噴出させ、巨人は大きく叫んだ。
「次こそ胴体を─?」
巨人の両腕の切断口に、黒い泡がグチュグチュと音を鳴らすのが見えた。
そして、
「両腕が生えた……肉体再生?」
何もなかったかの様に、巨人は二対の巨腕を取り戻し、それを大きく振り上げる。
「不明点が多過ぎるのは、少し厄介」
──ッッ!ブシャァ!
二度目の攻撃によって、振り上げられた巨腕は再び落とされる。
だが、また巨人は再生を繰り返した。
「再生限界があるのかも分からない。先に私の体力が尽きる可能性もある…」
いくら群を抜いた戦闘力の持続力を持っていても、巨人の再生構造が分からなければ、攻撃を続けるは愚策である。
だが、今の二回の攻撃で、気になる疑問点が思い浮かんだ。
「目が見えないのにどうして」
船で覆われた顔面。それ故に視覚は使えない筈だ。
さらに、
「胴体を守った?」
放った二回の攻撃は、どちらも胴体を狙ってのものだった。
それを巨人は二度も両腕を上げて、それを防いだ。
「……生存本能?」
出てきた答えは、生物なら誰しも持っている本能。
それは、巨人が最低限の意思を持っている事の証明だった。
「胴体が弱点?……でも」
能力による攻撃の一手の作成。
巨人の驚異的な速度による再生。
弱点の疑いがある胴体に攻撃を加えようにも、作成と再生との完了時間は僅差に近い。
もし戦闘力のクールダウンに陥れば、何も出来なくなる。
そんな賭けは、鈴子の選択肢には無かった。
故に選ぶ手段は、
「広樹、縫いぐるみを預かるね」
「へ?」
広樹がアホな声を上げるも、何も示さずただ縫いぐるみを奪う鈴子。
そして片手に捻れた空間を生み出して、それを水面に近付ける。
「広樹は此処から逃げて。両手が空けば、何らかの手段できっと逃げられる」
滅茶苦茶な事を言う鈴子だが、それは広樹の情報を知っていたからこそ言えた事だった。
複数の能力を自在に操る多重能力者。
その力があれば、飛ぶなり、潜るなり、水上スキーなり自由である。
「私は此処で、戦ってくる」
「お、おう?」
「じゃあね。少しだけお別れ」
「あ、あの〜、鈴子さん?」
「なに?広樹」
「俺が逃げられるとは?」
「?言った通りだよ」
「……え?ごめん、ちょっと意味が分からない」
「広樹は此処から逃げて」
「どうやって?」
「何らかの方法で」
「その何らかの方法とは?」
「何らかの意味も分からないの?」
「何らかだから分からないんだけども?」
「「…………」」
シリアス感がぶち壊しである。
噛み合わない言葉の連鎖に、お互いが沈黙し合う結果となった。
だが、その沈黙を消し去る存在が、水飛沫と共に轟音を鳴り響かせた。
『GAAAAAAAAAA!!』
大波を生み出しながら、巨人は広樹達に歩き出した。
「広樹、ふざけるのもコレでお終い。私は行くよ」
「え?ちょっ!?ふざけてるのは」
「じゃ─」
ザブッッ!!
「へ?お、おぃいい!?」
鈴子は水面に片手から飛び込み、行方をくらました。
『GAAAAAAAAAAA!!』
「え、やっぱり?」
そして残るのは、巨人に迫られる広樹だけだった。
読んでくれてありがとうございます!
これからも頑張っていきます!