3話 皆さんは親に説教したことありますか?
えっ誰って?
冗談だよな?
「俺だよ、俺!」
「いやいや、家の息子はこうなんと言うか丸いというか……」
「デブって言ってんのか?」
「まぁそうですね……だから貴方みたいなイケメンな子は、家の息子じゃないと思いますよ?」
イケメン……!!!
そうか、やっぱり俺はイケメンになれていたんだな。
でも、息子を見間違える何て事あるか?
そんな疑問を胸に、僅かな希望を切り開こうと、必死に口を開く。
「いや、だから俺だって拓未だよ拓未!」
俺はつい熱くなってしまって、母親に詰め寄る。
目をかっと見開いて母親を見つめると、母親の顔がほんのり赤らむ。
え?なんか顔赤いんだけど……
すると、何を勘違いしたのか、顔を真っ赤にした母親が叫ぶ。
「ごっごめんなさい……私、夫と子供もいるの……」
その衝撃発言に、俺の体が強張る。
しかし、はっと割れに反った俺は叫ぶ。
「は?なぁにいってえええんだよ母さん!!」
息子にときめいている母親を見てついイラッてしてしまった。
すると、奥から父親が出てきて…………
「誰だっ!はっ、俺の冴子にちかずくな!」
「おおおまええもかよおおおおお!!!」
この後、説得と説教に3時間かかった。
親に説教する子供って(笑)
両親を説得&説教して入浴と夕食を済ませた俺は、ポスターやラノベを処分するために、自分の部屋に向かった。
中学時代、友達がいなかった俺は、暇な時間をアニメを見て過ごしていた。
気が付くとラノベは本棚一杯に収納され、今では壁一面にポスターが張られている。
アニソンのライブにも行ったし、抽選で当たる、声優さんの直筆サイン入りの缶バッチだって持っている。
つまり、俺は結構なオタクだったわけだ。
俺は、本棚から一冊のラノベを手に取る。
それは、俺のお気に入りの一冊で、パシられていた間の「友達」みたいな物だ。
その「友達」を俺は捨てられるのか?
俺は唇を噛み締め、ため息を吐く。
「無理だな……俺には捨てられない」
じゃあ、どうする?
高校デビューした時に、オタク的な物は結構不味いよな……
いや、待てよ!
ポスターは外して、ラノベは普通に置いておいても大丈夫じゃないか?
オタクじゃない人にラノベなんて分かんないでしょ
よし!そうしよう。
そう決意した瞬間、俺は眠気に襲われて、ベッドに倒れ込む。
「疲れた……」
無意識に出た言葉と共に様々な思いが頭の中を飛び交う。
伊藤さんに恋をしたあの日から俺はあらゆる修行を行ってきた。
そのお陰で、学力や武力も信じられない位向上したし、ある程度のコミュニケーション能力もついた。
だけど、その疲れもピークに達していた。
ここで燃え尽きてしまったら何の意味もない。
明日は入学式だ。
主席の挨拶もあるし、初日の大イベント、自己紹介もある。
明日からがスタートなんだ。
……
……
……
……
……
ピピピっピピピっ
……
ピピピっピピピっ
ん?
ピピピっピピピっ
うるさっ……バシッ