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【第342話】両雄迎え撃つ!

シリューは龍脈から10mほど離れた地点に立ち、周りを見渡す。


直人やミリアムたちはもちろんの事、守備隊員たちも全員が武器を携え戦闘に備えている。


ザグナでもベナルートでも、イロウシュットの足跡は龍脈の真上から始まっていた。


ここでも、イロウシュットが現れるならば龍脈上の何処か。


 最も可能性が高いのはシリューの目の前のはずで、今の距離をとっている限り大抵の事態には対処できるだろう。


「換装」


 シリューの身体を眩い光が包み、一瞬で白の装備への換装が完了し、腰に届くストレートの銀髪が風に靡く。


「おおぉ……」


 初めて目にする光景に誰もが目を見開き、驚嘆の声が漏れ聞こえた。


「セクレタリー・インターフェイス、装備を『緋』に変更」



【ギフト『生々流転』発動。白の装備とのリンク確立。能力パラメータを覇力に特化します】



 白の装備に赤いラインが走り、縁取りの金糸部分がより豪華になる。


 加えて銀色の髪が背中ほどの長さと緩いウェーブに変化し、毛先に向かって鮮やかな赤いグラデーションが入った。


「次は、お前が位置につく番だ……」


 シリューは目を閉じてゆっくりと呼吸を整え、『セイラクル』シリューの世界の言葉で、下丹田や第2チャクラと呼ばれる部分に意識を集中させる。


 下腹部に小さな白い光をイメージし、その光を徐々に強く、大きく。


 今回は集中させた覇力を武器や身体に纏わせる必要はない。


 あえて失敗させ、できるだけ広く強く分散させるのが目的だ。


 身体の内に灯した光を、更に大きく、更に眩く。


 そして、その光を一気に弾けさせる。

 


 どん!



 シリューを中心に衝撃を伴った風が巻き起こり、戦場全体を振るわせて突き抜けた。


「ひゃあっ」


「ちょっと、何これ!?」


 スカートどころではなく身体まで持っていかれそうになり、ミリアムとハーティアがよろめきながら思わず叫び声をあげる。


「これ程とはね……」


 予想を遥かに上回る威力に、師匠であるクリスは満足そうな笑みを浮かべた。


「すっげ……」


「爆発じゃん、コレ……」


 直人と有希が乱れた髪を撫でる。


「台風みたいですね……」


「子供は飛んじゃうよねぇ……」


 恵梨香とほのかの、素直な感想だった。


「ですが何か、確かに特殊なものを感じました」


 パティーユはそこに、シリューや直人の持つ異世界人の特質を感じ取ったようだ。


「これが、明日……シリューの言ってた、災厄級を引き寄せる異質で強力なエネルギーか……」


 直人は独り言のように呟いて足を踏み出し、シリューの隣へと並ぶ。


「ん?」


「二人なら、効果は倍だろ?」


 首を傾げるシリューにそう短く答えたと思うと、直人の覇力が誰の目にも明らかなほどの高まりを見せ、次の瞬間シリューと同等かそれ以上の威力で爆発した。


「こんなカンジか?」


 直人が横目でシリューを見る。


「上出来です。流石は勇者様」


 元々は失敗から転じた技術でありそれほど難しくないとはいえ、詳しい説明もないまま一度見ただけで覇力の応用ができるのは、やはり勇者としての才覚だろうか。


「で、この後はどうする?」


「しばらく様子をみます。それで現れるならよし、現れなければ、何度でも繰り返すのみ」


「何度でも、ね。ってか、何か話し方変わってね?」


「この装備の影響故、お構いなく」


「ああ、そういう……」


 直人は口元を隠してくすりと笑ったきり、それ以上の事を尋ねたりはしなかった。


 それから、何の反応もないまま数分が過ぎる。


 もちろん、最初から一回で済むとは思っていない。


「もう一度いきます」


「オーケー」


 シリューに続き、時間差で直人も覇力を爆発させる。


 お互いに一度目よりも、更に威力を上げて。


「今度はどうだ?」


 先程と同じくらいの時間を空け、直人が尋ねた。


「そうですね……」


 景色の中に、変化らしきものの兆しは見えない。


 だがその時、並列思考で行っていた探査が反応し、セクレタリー・インターフェイスの警告が響く。



【魔素の収束を感知しました。12時の方向、距離10.2m。出現予測、8秒後】



「皆、構えろ!」


 シリューは双剣を抜きながら叫ぶ。


 全員が武器を構え、戦闘態勢に入る。


 恐ろしい程の静寂と緊張。


 永遠とも思える数秒。


 そして。


「来るぞ!!」


 それは突如として姿を現した。


 まるでスイッチを入れた瞬間、ライトの光が壁に映るように。


 シリューでなければ、予兆にも気付かなかっただろう。


 体長20mを超える巨体。


 鎧竜のような先端の尖った外殻に覆われ、太く短い二本足には四本の鉤爪。


 一本角の生えた頭頂部の下には、青いレンズのような一つ目が不気味に光る。首も肩もなく、頭頂部から伸びた二本の腕の先端は蟹の鋏に似て、その鋏の間に射出口が覗く。


 全体的にずんぐりとしていて、鈍い灰褐色と渇きかけた血の赤。


 ブラエタリベルトゥルバーもそうだったが、どんな生物の定義にも当てはまらない異様な姿。


「見て、あっちも!」


 有希が指差す。


 二体目のイロウシュットが、30mほどの距離に出現した。


「ちっ、初っ端から二体か。随分豪華だなっ」


「こちらも、オールキャストで迎えようじゃないか」


 直人の目の前でシリューの姿が変わる。


 赤いグラデーションが消え、銀髪のストレートへ。


「なあ、こんな時にだけど、聞いていいか?」


 直人がどんな疑問を抱いたのかは、考えるまでもない。


「これはまあ、基本フォームってトコかな? 攻守のバランスはこれが一番なんだ」


 力や覇力に特化したままだと消耗が激しく、長時間を戦い抜く事が極めて難しい。


 基本の『白』で戦いながら敵の特徴を探り、弱点を見つけ特化型でとどめを刺す。


「ま、強敵を倒すためのフローだね」


 話し方が変わっている事について、直人はもう尋ねなかった。


「じゃあ皆、作戦通りいくぞ!」


 直人の掛け声と共に、パティーユが支援魔法の呪文を唱える。


 先ずは反射反応速度を高め、体力の消耗を大きく抑える聖魔法の一つ。


「闇を晴らす夜明けの煌めき、目覚めの時の祝福を祈りここに捧げん。玲瓏の(エヴァンジール)福音(センテュリオ)!」


 続けて、光の幕を纏い魔法及び物理的ダメージを軽減する防御魔法。


「深緑を見守る天空の瞬きよ、勇気ある者に静寂の加護を与え賜え。星光の(アステリア)守護(フィラーフト)!」


 光の加護を受けた者たちが、二体の災厄級へ挑む。


 シリューたち『銀の羽』は向かって左。


 直人たち勇者パーティは向かって右。


 それぞれが直接攻撃を行い、彼ら以外の守備隊はイロウシュットが生み出す翼竜を迎撃する。


 直人たちが持つ固有スキルは、敵の攻略法が分かるまで温存しておく。


「ガトリング!」


 シリューは右のイロウシュットに向かいながら、牽制のメタルバレットを撃ち込む。


 だが毎分6000発の弾丸は、硬い甲羅の外殻に傷を付ける事さえできない。


烈咲斬(れっさざん)!」


 クリスの振り抜く剣先から無数の風刃が発生し、次々とイロウシュットを斬りつけるものの全てイロウシュットをすり抜けた。


「やっぱりね……」


 直人たちから聞いていた通り、こちらの攻撃は当たったり当たらなかったりと、効率が悪く効果も薄い。


 問題は、イロウシュットがどうやって攻撃を躱しているのか。


「シリューくん、上!」


 クリスの声に、シリューは顔を上げる。


 解析を掛けるため、正面のイロウシュットにばかり気を取られてしまい、上から迫る翼竜に気付かなかった。


「くっ」


 翔駆を使い一瞬で横に飛び、翼竜を躱す。


 目標を見失い空中で急制動した翼竜に、守備隊の射掛けた数十本の矢が突き刺さり、地上へと墜落させる。


 綿密に打ち合わせた甲斐もあり、連携はかなり上手く機能しているようだ。


「次は、私たちの番ね」


「はい」


 ハーティアとミリアムが、イロウシュットに狙いを定めた。



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更新有り難うございます。 ……同一作品内なのに、別作品コラボっぽくなってるw
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