公園に行こう
土曜日の正午。私は家から近くにある公園のベンチで昼食をとっていた。近くのパン屋で作られたサンドイッチをかじる。トマトとチーズとレタス、そしてベーコンをバゲットに挟んだもので、前々から食べたかった一品。ベンチの後ろの木により影ができており、涼しい流れがとても気持ちがいい。
「しかし、いい天気だなー」
周りを気にせず独り言が言えるのはいいことだ。ここの公園に初めて来た感想は「人気がない」だった。別にここらは田舎っていう訳ではないし、そこそこ遊具もある。たまに人が来たことを気づいても、犬と散歩している老人だったり、友達を探しているような学生だったりですぐに去ってしまうのだった。公園とはこういう場所だっただろうか、私が子供のころはよく公園で遊んだものなんだが。
腕時計を見て、正午から三十分過ぎたことを確認する。
「今回は短い三十分だったな」
私は荷物を持ってベンチから立ち上がり、公園の入ってきたところに行き、無機質に立っているドアを開けた。ドアの先には係の女がいた。振り返ると公園は消え、白い空間になる。
「またのお越しを」
ドア横に移動した係の女が笑顔で言う。私は出口のドアをくぐり、建物の外に出る。相変わらずここは酷い場所だ。治安なんて昔になくなったもので、頻繁に遠くから悲鳴が聞こえる。昔の遺産であるビルなどの建物は崩れかけて、ガレキがそこら中にある。腐臭はもう慣れたが、集ってくる羽虫は好きになれない。振り返ると五十人はいそうな人の行列が、私がさっきいた建物に向かってできている。「公園」と皆から呼ばれている。正式な名前はわからない。客の話を聞き、客が望むその時の場所をコンピュータで読み込み、あの白い部屋に写す。現実から目を背け、過去に帰りたい人が使うものだ。
私は行列の最後尾を探すと、それに並んだ。公園はああいう場所だっただろうか。