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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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99/123

14-2

ただの趣味回です。

あしからず。

 現状を確認し終えた俺は信越地方に来ていた。

 それは何故か。

 特に意味は無く気分転換に競馬を見に来ただけだ。勿論見るだけではなく馬券も買う。今の俺は高校生である『斎藤潤』ではないのでこれは合法だ。


 何故信越地方なのかといえば日本ではここにしかないレースがあるから。最近ではCMでもやっているが千直、1000メートル直線を走るだけのレースがあるからだ。



「キミが好んでいく場所だからとついて来たものの競馬かね。あまりよく知らないけれどそんなに楽しいものかね。所詮は馬だろう?」



 ひとり気ままに楽しむつもりでだったのだが何故か余計なモノも着いてきた。

 今日も今日とてテンガロンにポンチョな伊勢谷だ。相変わらず周囲から浮いている。それについてはもう慣れたので特に言及しない。



「頼んだ覚えはないですしつもりもないので帰って頂いても問題ないですよ」

「とはいえチヤ君が嵌ったのも事実。少しは興味があるのだよね。けれど競馬なんて馬の状態さえわかれば簡単に当てることが出来ると思うのだけれど。特に私たちなんかはそういうことは常人よりは得意だろう?」



 こちらの話を聞かないというのも少し慣れた。真っ当な道を行かない人外なんてもの大体がその程度のモノだ。

 いちいち気にするのは精神衛生上よろしくない。無理に合わせる必要もなければフォローする義理も義務もないので俺も自由にさせてもらおう。


 まあ競馬場なんて基本的にはひとりで回れる。レース中くらいは一緒でもいいがそれ以外はそれぞれによって取る行動も違うので無理に合わせる必要はない。競馬の面白さ難しさはやってみれば分かることなのでいちいち教える必要はない。



「四の五の言わずにやってみればいいじゃないですか。基本的なことは教えるので一先ず馬券を買ってレースを見てからにしてください」

「それもそうだね。ではお金をくれたまえ。生憎私は日本円を持っていなくてね」



 本当に人外というやつは。


 ともあれ今日はそれ程かけるつもりは無いので軍資金に余裕はある。初心者はお金の使い方が馬鹿なので小出しにするとしよう。案の定10万とかの単位でかせと言い出したので蹴飛ばした。

 一先ず庶民らしく1万円を渡して様子を見る。不満そうだったけれど当てて増やせばいいだけの話と諭すとあっさり引いた。

 やはり舐めているのだろう。


 そして第一レース。

 伊勢谷は一先ず軍資金を増やすために手堅く1番人気の馬を単勝で1万掛けをした。力関係がはっきりしているとみなされているようでオッズは2・5倍だった。



「あの馬は良い。実に良いよ。身体の仕上がりが他の馬と違う。それに馬自身のやる気もかなりある。人気があるのは流石は人間も見る目があるというところか。問題があるとすれば見返りが少ないということだろうね」



 伊勢谷はダメ生物と違いしっかりと馬を見て勝っているようだ。それも当てることに重きを置いて払い戻しはそれ程気にしていない様子。

 比較的玄人な視方だ。


 さてそう簡単にいくかな。

 そんなこんなで発走。



「さあてタジミキャノン、その力を見せてみ……おろ? 何故あの一頭だけスタートが遅いんだ?」

「出遅れたんです。それだけですよ」

「それだけとは。やり直しは……無いんだね」

「ええ、ゲートも競馬の醍醐味ですから」



 そんなこんなで一走目が終了。

 出遅れたタジミキャノンだが最期に足を延ばして惜しくも2着。かなりの出遅れで半馬身差の2着なのだから能力はかなりのモノなのだろう。能力がどうであれ2着なのは変わらないが。



「……もう一万貸してくれないか」

「はいはいどうぞ」



 負けた馬券師には何も言うまい。さっきは自信満々だったのにと態々煽る必要もない。

 次は当てると必死になっている姿を見れば競馬を舐めていないことが分かる。


 俺は昨今の転移チート勇者が現世に戻ってきてそのチートで競馬で荒稼ぎというのが気に食わない。競馬はそんな甘いものじゃない。

 確かに相手の状況を正しく見抜くことの出来る所謂観察スキルがあれば馬の状態を見抜くことが出来るだろう。そしてそれは馬券を買うことに有利に働くだろう。

 けれど競馬とはそんなモノだけで語れるものじゃあない。


 そもそも競馬は着差勝負の競技でスピード競技ではない。

 勿論1番にゴールすれば勝利なのだからタイムを出せれば勝てるだろう。

 だがレースは綺麗に整えられた場所を走るだけじゃない。周りの最大17頭の馬と一緒に走るのだ。そこには駆け引きも障害もある。スピードを上げたい時に上げられないこともある。勝ちに行くためには無理しなければならないこともある。

 どの馬も気持ちよくベストに走ることが出来るわけではない。

 だから競馬で勝つには馬の能力だけではなく技術もいるのだ。


 その1つが伊勢谷の引っかかったゲートの問題だ。

 競走馬であれ馬はあくまでも動物だ。どれだけ賢くとも人間の思惑を完全に読み取ってくれるわけではない。だからゲートが開いたら走るということだけでも差がつく。それも人間の陸上競技の様に誰もが意識しているわけではないから余計に。

 そこまで観察で見抜けるかといえば不可能だろう。

 タイミングはその時々で違うし周りの馬の影響も受ける。

 そして何より馬券は発走3分前に締め切られる。


 競馬の問題はゲートだけではない。

 そもそものスタート位置、枠順から考えなければならない。競馬は人間の陸上競技と違いスタート時点で有利不利がある。レーンの外に行けば行くほど走る距離が増えて不利になるのだがそういったことに対する公平性は無い。

 ならば内枠が有利なのかといえば相対的に見ればそうなのだろうが、個々のレースを見れば必ずしもそうとは言えない。その馬の特性によって違う。その馬のレースプランによっても違う。

 開催場所、時期によっても違う。


 勿論これだけではない。他にも競馬には考えなければならないことは多い。

 開催場所は? 距離は? 馬場状態は? 階級は? 相手は? 先行馬が多いの? 差しが多いの? 前残りが多いの? 差しが決まりやすいの? ジョッキーは? 血統は?

 気にするところを上げればきりがない。

 そういった要因をすべて無視して馬を見ればそれだけで分かるというのは暴論だろう。

 競馬を舐めている。


 確かに他馬を圧倒する力を持つ馬もいる。けれどそんな馬でも負けることはある。絶対的なマイル王者が2着に終わった安田さん処の重賞は記憶に新しい。


 勿論競馬の楽しみ方なんて自由だ。

 自己破産をしない程度に健全に楽しめばいい。


 ただ知っておいてほしい。

 そんなに甘くねえぞ、と。



 さてそんなこんなで伊勢谷さんはというと意外に頑張った。

 2レース目からは幅のある買い方、複勝やワイドでコツコツと積み上げた。けれど色気を出して穴につぎ込んで全てを溶かすなんていうよくあるパターンで楽しんでいた。


 残念ながら今日は千直の重賞ではなかったのだがそれでも見る価値はあった。カーレースほど速さは無いけれど動物が間近で本気で走っているのを感じられるのは見ていて楽しい。千直は他のレースと違い外ラチ沿い、観客の近くを走るので余計迫力がある。


 そんなこんなで本日のメインレース。

 ここでようやく馬券を買う。というよりはこのレースを買うためだけに来たのだ。

 買い目は3連単の5頭BOXを1000円の計6万円。上位人気を抜いたので100円でもかなりの配当になるのだが、軍資金があるっていいよね。



「キミはかなりの冒険をするんだな」

「まあ数倍数十倍の配当じゃ面白くないですからね。それに勝ちそうな馬が普通に勝っても楽しくないでしょう?」

「どうだろうね。私は楽しむことより当てることの方が優先だと思うけれど」



 その辺は個人の主義主張の話なので何も言わない。


 伊勢谷はお情けで渡した1万を手堅く上位人気の馬連を買っていた。


 そうこうしているうちに発走。



「よしよし、出遅れは無いようだね。そうそう、良い位置だ。よーし掛かってないな、いいいぞいいぞ」



 伊勢谷も一日で立派な競馬っカスに成り下がったらしい。



「よしよし第3コーナーから第4へ、徐々に徐々にスピードを上げて……何故だ! 何故そこからあがらない。おい、ちょまっ」

「よし、よーし、よし。いい、いい、かなりいい。さあ最後の直線だ。おーし、おし、先頭5頭全部買ってる。誰が来てもいい、誰が来てもいい。よし、よし、よし、いや、ちょまっ」



 2人そろっての捨て台詞で決着。


 伊勢谷の本命の上位人気の馬は最後の直線に行く前に集団に呑まれてそのまま後方へ。

 1番人気は12着、2番人気は14着という惨敗。


 一方で俺は買った5頭すべてが最後の直線で先頭を走るという奇跡。しかも中位人気だから配当も美味い。もう誰が来ても問題はない。そう思っていましたよ。最後200メートルであいつが、11番人気のあいつが飛んでくるまではね。

 結果、買った4~10番人気の5頭すべてが6着までに来るという奇跡。

 ただ、ただ、最後にここ1年以上3着にすら入っていない11番人気が飛んできて2着に入ったおかげで唯のゴミ屑に。


 そうつまりは仲良く外したってことですよ。


 あーもうクッソつまらん。

 競馬なんてクソだね。

 もう二度とやんねー。


馬券に関しては実体験だったりします。

(どうでもいいことですが

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