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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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13-6

 大明神に呼ばれて戻ると確かにキャロルは限界寸前だった。

 見た目は相変わらず焔化と言っていい状況だけれど超常的な雰囲気は破裂する寸前の風船の様。

 それは今も刻一刻と膨らみ続けて限界に迫っていっている。


 解決に当たっていたはずの主人公様はといえば、何故か罰ゲームを受ける芸能人の様になっている。

 ヒロインたちに押し出されるように矢面に立っている。



「何であの方々はこの状況下で遊んですんですか。バラエティ番組か何かの撮影ですか」

「それは潤にも言い返すよ。なに、捨て駒拾いに行ったのよね? なんで女の子を拾ってきているのよ。潤もハーレムでも作る気なのかな!?」

「ババアが何言ってんだか」

「バ、ババアだって!? 潤、あなたは言ってはならないことをっ」

「それでどういう状況なんでしょうか」

「無かったことにはならないからね、潤!」



 何となくで会話をしていたらついうっかり本音が漏れてしまった。が、まあ仕方がないだろう。


 美人女子大生ルックな綾香大明神は忘れがちだが実年齢は俺の親世代。容姿は作りモノだし俺の元へ来る前はいい感じの都合のいい女。そして見事に捨てられた使用済みの廃棄品。

 そんな相手にヒロインっぽくヤンデレされても困るというのが正直な感情だ。

 ま、それはどうでもいいとして。



「そんなことはどうでもいいとしてですね。それでこれはどういう状況なんですか。それなりの時間が経ったと思うんですが何かが変わった様子がないんですが」

「どうでもいい!? どうでもいいですって!?」

「……」

「私の言葉は無視ですか。無視ですか潤! そもそもその女どもは何ですか!」



 折角の万能秘書だというのに喚きだしてしまった。

 更年期なのだろう。どうでもいいな。

 いちいちババアの戯言なんかに付き合っていられない。というよりはそんな状況ではない。


 現状遊んでいられる時間は少ない。

 膨れ上がった風船は現時点で既に恐怖や呆れを通り越すほどにまで達している。そしてもうすぐで限界に達する。個人的な見立てではもって10分程。


 あれは限界まで膨れ上がると力が放出されるようになっている。見た感じキャロルの肉体自体にそういった仕組みが施されている。


 見事発射され地上に着弾すれば確かに都市ひとつは余裕で壊滅するだろう。勿論何百万何千万の単位で人が殺せる。フレイヤかなっていうくらいの危険物だ。

 そして見事発射されると余波でここら一帯も死滅するだろう。結界か何かで一般人の立ち入りが半径3キロほど制限されているがその範囲を超えるだろう。


 発射を止めようと下手な外圧がかかった場合はその場でパァンだろう。

 パァンした場合は発射されることは無いがその場で爆発炎上。途中でパァンした方が着弾した時に起きる全体的な被害よりは抑えられるが当然この場での被害は大きくなるだろう。


 たぶんパァンに巻き込まれても俺は何とかなる。発射されたものを圧縮されてピンポイントで俺に向けられたら堪ったモノではないが現状そういった指向性はない。拡散されるのであれば問題はない。

 伊勢谷も涼しい顔で乗り切るだろう。

 一方で綾香や捨て駒たちは塵も残らないだろう。勿論周辺の建物もその他の普通の生命もきれいさっぱりになるだろう。

 生き残るには爆発の範囲から逃げるしかない。

 1人くらいは何とかなるかもしれないが爆発の力も未知数なのでそんな余裕はない。


 当然主人公様もなんだかんだで生き残るだろう。

 ヒロインたちは分からない。純粋な力関係で言えば助からないだろうが主人公様がいるので奇跡が起きる余地はある。


 だが、キャロルはどうやっても助からないだろう。

 今の焔化と言っていい状況は超常的な力の所為ではあるがそれと同時にその回復があってこそ。

 発射なり暴発なりでその力を消費してしまえば回復は出来ない。力を使いきってしまえば焔化も亡くなるわけだが総じてダメージの方が大きいだろう。

 現状ではどうなってもキャロルの未来は決まっている。



 改めて考えると何とも面倒な状況だ。

 この状況を作り出した作者の目的は当然主人公様の打破ではない。

 そもそもと言うべきかこの状況を作り出したのは主人公たちの背後組織。殺すためだけならもっと簡単で正確な方法がある。


 目的はおそらく神崎が言った通り。

 この危機的状況下を経験して主人公様の進化。主人公様にどのような力があるかは知らんが案外本当に主人公様は世界を変えられるのかもしれない。

 勿論そんな大層な能力だと面倒この上ないのだが少なくとも人間爆弾を何とかできるほどの能力ではあるのだろう。


 ザマス眼鏡が介入というか口出しをしてきたのはこの状況を作りたかったからだろうか。

 キャロルの歪な状況は理解していたのでその時対処しておけば救う手立てはあったはずだ。だがこんな状況になってしまったらみんなを救う手はない。少なくとも現在いる登場人物には不可能だ。


 確かにこの状況下で皆を救うには主人公様が一段階昇って見せるしかない。

 それが出来なければ主人公ではないだろうという具合だ。


 仮にみんなが死んでしまってもhuman is dead, mismatch. というやつだ。主人公を作っている組織にとってはひとつの失敗作が増えるくらいなのだろう。


 この場は主人公が主人公でいられるかが鍵になる。

 だというのに現状主人公様は何の力にも目覚める気配はない。ヒロインたちと慣れ合っているだけにしか見えない。


 ため息交じりに現状を名が得ているとようやく綾香が説明を始めた。



「潤が駒を拾いに行った後に小娘がなにやらやらせているみたいなんだけど何も変わらないんだよね」

「何かって。どういう目的で何をしているのかは分からないんですか」

「えっと、みんなの力を集めて力に変える、とか言っていたけれどそれ以上の事は私には分からない。ただ客観的に見てやっているのは竜泉寺の背中に女たちが手を添えるという事だけだよ」

「うーん、なるほど。分かりました」



 みんなの力を集めて力に変える、か。

 確かに主人公っぽいけどそこそこ阿保っぽい。どういう理屈で何をしたいのか不明だが客観的に見て何も起きていないのでさらに阿保っぽい。



「斎藤君はなにやら納得しているようだけれどどういう状況なのかな」

「意外ですね。何でもかんでも知ってニヤついていると思ったんですが」

「あくまで私は情報収集家だからね。そんなに性悪じゃないさ。それに彼女らの最終的な目的は知っていてもその詳細は知らないよ」



 この状況を見ていたはずのメキシカンは白々しく尋ねてくる。

 答える義理も義務もないのだけれど特にできることもないので状況整理ついでに感想を述べる。


 現状主人公様の背にヒロインたちが手を添えているが何も起きていない。一応それぞれの手には超常的な力が集まっているようだけれど特に何かが起きることなく霧散している。勿論竜泉寺のもとに力は流れていない。

 皆の力を集めてというからに目的は力の供給だろう。


 個人的な見解だが超常的な力は他者に分け与えるのはかなり難しい。

 それの在り様は個人差があるのでイメージ的には規格の違うモノ同士でのやりとりをしている感じ。jpgかgifかあるいはpdfかとかそういった感じ。

 そういった変換など細かい扱いに長けているモノなら可能だろが少なくともヒロインたちは不得手だ。


 恐らく移譲や供給より奪う方が簡単だ。

 勿論その場合色々と弊害が起きるが。



 超常的なものの流れを知覚出来ていないのか神崎はしたり顔で眺めている。

 あるいは始めから不可能であることを理解しているのだろうか。


 仮にそうだとするなら神崎の狙っているのはプラシーボ効果だろうか。流石にこの状況でそんな遊びは無いと信じたい。



「プラシーボ効果とは何だい?」

「確かプラシーボは日本語で偽薬だったと思います。ざっくり言えば実際に効果が無くてもあると信じれば多少は効果が出るというやつです。超常的な力もノリや雰囲気みたいなところもあるのでそれを狙っているのかと」

「成程ね。確かにイメージは重要だ。けれどどうだろうね。本来魔法や異能と呼ばれるものは規則や規定が強いモノなのだけれど」

「その辺は自分には分かりませんよ。自分は人外、あるいは外道ですからね」

「そうだったね」



 摩訶不思議力の詳細については置いておくとしてやはりイメージ戦略なのだろう。

 出来ると思えば大体のことは出来るというのが俺の感覚でもあるし。


 問題は出来ると思えるかだが。



「因みに伊勢谷はあれが成功すると思いますか。因みに自分は不可能だと思いますが」

「そう思っているなら聞かなくていいんじゃないかな。まあ同意見だけれどね」

「やはりですか。ではこのまま災害が引き起こされるわけですか」

「それは斎藤君次第なんじゃないかな。斎藤君なら被害を抑えるくらいは出来るんでしょう?」

「どうでしょうね」



 客観的に見て主人公様は何も出来ない。

 何というか真剣みが足りない。真面目で紳士ではあるのだけれど必死さがない。

 あれの行動をちゃんと外から見たことは無かったのだがどうしてどうして。


 兎も角あれに期待してもそのまま抱いて溺死するだけだろう。



 では俺に何かが出来るかといえば凡人なりの取捨選択しか出来ない。

 最悪を想定してそれを回避するために行動する。回避できたのならその先でマシなものを選ぶ。

 それくらいしか出来ないだろ。


 問題は俺にそれをする意味や理由があるかということ。


 勿論意味も理由もない。義理も義務もない。

 あるいはこのまま放置して面々が脱落してくれれば俺の平凡な日常が帰ってくるかもしれない。


 だが何故だろうか。何かはしなければならないという気持ちになってくる。

 全てを救うことは出来なくても多くを救うことくらいは出来る。

 ならばやらなければならないのではないか。


 そんな風に思えてしまう。



 そんな俺の葛藤を知ってか文化感破壊男は三日月の様な口でニヤリと笑う。



「なんだなんだ、斎藤君も立派な登場人物じゃないか。私は良いと思うよ。親友やクラスメイトを助けたいと思うのは当然のことだよ」



 実に面倒な雰囲気のテンガロン野郎は無視しておこう。


 取りあえず、現状の問題はキャロルの処理。

 このままではここ周辺が死滅するし北陸一帯も死滅する。当然何万人の人命が失われる。


 これをどうすべきか。

 恐らく俺の考えは始めから決まっていた。それを考えて行動していた。


 そんな自分に少しの情けなさと呆れを覚えたけれど、放り投げた。そんな感傷はいらない。


 自分の使える駒。

 使用済みババアと呪われた一族を前に自分の意志をはっきりと告げる。



「取り敢えずキャロルは殺してしまいましょう」



 その言葉は意外にもすんなりと出てきた。

 いや、意外でもないのか。



 さて、面倒のしどころだ。

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