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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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91/123

13-5

 誰かの思い描く通りにしてあげるつもりは無いけれど。

 なんて大層なことを呟いてみたけれどそれで何かを変える気は無い。そんな主人公の様な大層な決意はない。唯の妄想という名の現実逃避。

 結局はいつものように地味に物語の本筋を離れてわき道を進むだけ。


 それにしても俺は我が身大事、阿呆なんてどうでもいいと思っているはずなのだがどうしていつも通りに行動してしまっているのだろうか。

 確かに行動した方が面倒は少なくなるのだがなんだか釈然としない。

 釈然としないが考えても仕方がないので気にしないでおこう。


 一先ず演劇の方は綾香に鑑賞してもらうとして俺は駒の回収に向かう。

 万能秘書綾香大明神によると上司と部下は竜泉寺に討ち捨てられていたところを襲われたようで無抵抗のまま連行されているようだ。



 上司と部下の回収は意外にも現代的で現実的なトラック輸送だった。

 現実的というよりは人員の削減をしているのだろう。トラックの方が簡単ではあるが魔力とか妖気とかの非現実的な力を使った人力の方が早いし恐らく安全。それをしないということは、そういうことなのだろう。


 やはり視た通り運転手や乗り合わせには大した人物は関わっていないようで適当にあっさりと処理が出来た。

 簡単に処理でき過ぎて少し気になるがそういうモノだろう。脇道への人材なんてこの程度なのだろう。

 周囲に怪しい人々が隠れているようだけれどほとんどが大したことない。現状最も面倒で厄介なのはやはり伊勢谷だろう。あれについては考えても仕方がないので一先ず放置。


 長時間の路駐もよろしくないのでさっさとことを済ましてしまおう。


 トラックの荷台に放置されていた上司と部下は酷い扱いだった。頭陀袋を被せられ簀巻きにされて転がされていた。

 上司は自分たちも歯車のひとつと言っていたようだけれど随分な扱いを受けている。本人の言う通り所詮は部品のひとつということなのだろう。仕事が終わったその場で処理されないだけまだましなのかもしれないが。


 一先ず4人を回収するとトラックから退避する。別にトラックの中で会話していてもよかったのだが狭い空間というのは少々面倒なので移動した。

 野郎を抱えるなんて苦痛でしかないので近くの公園まで運んで放り捨てる。


 非日常系組織も馬鹿ではないのでちゃんと尾行はつけてきている。護送する人物たちだけではなくそれを見守る人員もしっかり確保されている。

 その為多少場所を変えた程度で何とかなるものではない。勿論観察者のもとへ直接出向いて排除することは出来るが襲撃者が俺だとバレている時点で排除は無駄でしかないのでしない。



 公園に転がした4人についていた拘束具の類をあっさりと解く。

 頭陀袋などにも律儀に超常的なものが付与されていたが適当に壊した。簡単に壊せたので恐らく廉価品なのだろう。


 拘束具が着いた状態での方が会話しやすいかとも思ったが面倒なので全て壊した。既に主人公様にボコボコにされて雑兵に捕まる程度になっているので何をされても特に問題はない。

 加えて上司と部下はそれ程優れているという雰囲気はなく力ではなく巧さで勝負する雰囲気を持っている。ボロボロ且つ力の差が歴然とあれば何も出来ないだろう。

 それに何故か上司と部下は力が衰える系の呪いを持っていたので特に怖くない。


 上司と部下を解放してしばらく待つ。

 色々と急な展開に思考が追い付かない様子の上司と部下。説明するのは面倒なので向こうが自発的に理解してくれるまで待ちたかったのだが色々と都合があるのでこちらから行動することにした。



「やあどうも。自分があなた方の新しい飼主ですよ?」

「子どもが偉そうに何をっ」

「取り敢えず飼い主としてあなた方にかかっている邪魔な呪いを解いてしまいましょうか」

「ふざけた事を言うな、小僧が!」



 結局は喚きだしてしまった上司を取り押さえる。部下も喚きだそうとするので黒刀を出してまとめて切り捨てる。

 なんで皆さんはこうなのかね。

 このまま捨ててしまった方が楽じゃないかとも思ったが態々かけた面倒を捨てるのももったいないと思い返して真面目に解呪をする。



 呪いは背骨を核としているようなのでそこに黒刀を突き立てて力を弱める。

 一度では簡単に弱まらなかったので何度も繰り返す。十分と弱まったところでこちらから呪術を流し込み制御を試みる。呪いの巧さがよし子さんとは段違いなので少々厄介だったが黒刀とのごり押しで何とか制御を奪い取った。


 制御を奪って分かったのはこの呪いは遺伝するもので色々と面倒な仕様になっているということ。

 例えば呪いの核が何故背骨にあるのか。正しくは背骨の中でも骨髄に呪いがかかっていた。恐らく特定の誰かの『血』を呪ったのだろう。

 血を呪いさえすれば特定の誰かだけではなくその子どもたちまで不幸に出来るというかなり病んでる思考だ。それも単純に殺すことを目的とせずに力を奪いただ衰えさせてそれでも生かし続けるという鬼畜仕様。

 そこまで恨まれるなんてこいつらのご先祖は誰に何をしたんだって話だが。

 そんなことは俺にとってはどうでもいいが。


 思ったより解呪が面倒なので上司だけ済ませることにした。血を媒介にしているということは今後の面倒な展開も予想されるのでちょっとした予防策でもある。


 制御さえ出来ればあとは簡単。念じるだけで消え去る。

 そうやって見せると反応は劇的だった。


 50代男性くらいに見えた上司はみるみるうちに若返り、というかトランスフォームして大学生くらいの好青年になった。結果にコミットするというレベルではない変化。もはや別人になっていた。

 それでも好青年から発せられる雰囲気は先程までの上司のモノと同じなので恐らく同一人物なのだろう。彼らにかかっていた呪いはそれほどまでに強固だという事でもある。

 ホントご先祖さん何をしたんだよ。


 激変は上司の体型だけではなく彼らの態度もだ。

 まず上司はわんわんと泣いた。気持ち悪いくらいに相貌を崩して泣いた。余程禿げ上がったオッサン姿は辛かったのだろう。

 他の3人はかなり期待した視線を向けて来る。そして完全に平伏状態だ。

 すぐさま自分も解呪しろと迫ってこないあたりは少し好感が持てた。ただ期待感が嫌というほどわかったので面倒だと思いつつも3人の解呪もした。


 そして解呪して改めて驚かされた。

 部下3人は全員女性だった。

 呪われた状態では疲れ切った30代社畜に見えたのだが解呪してみれば20代の普通の可愛らしい女性。絶世の美少女、とかでないあたりが俺らしいのだが普通に綺麗な方々だった。


 何でもこの呪いは急激な老化を引き起こすらしく男性は16歳を迎えると突然50歳くらいの容姿になり女性は14歳で30代の男性の容姿になるらしい。

 ホントご先祖さん何をしたんだよ。


 各々が感傷に浸る時間を暫し設けて真面目に戻る。



「さて、自分があなた方の新しい飼主になるんですが異存はないですよね」

「ええ、感謝します。これで私たちは救われる」



 俺の問いに答えたのは元部下の1人。4人の中では彼女がリーダーとのこと。


 どこか浮かれている様子の4人。

 別に俺は善意で行動しているつもりではないのでそこのところを伝えることにする。未だに鏡を見て泣き笑いしている青年に向かって呪術を使う。そして先程消し飛ばした老化の呪術を復活させる。

 するとあっという間にいけ好かない上司が出来上がった。



「自分はあなた方を救うつもりは無いですが、その辺は理解できていますか。自分が飼う方であなた方は飼われる存在です」

「……」

「自分があなた方に接触したのは都合のいい駒を得るためです。駒ですので使い捨てる気満々です。勿論本当の意味で捨てるのであまり良心的な期待しない様に」



 自分で言っておいてなんだが随分と酷い人間だな俺は。まあ主人公様の様に無償の愛で出来上がっている空虚な人間ではないので仕方がない。


 青年の断末魔の様な悲鳴をBGMにリーダーさんの返答を待つ。

 リーダーはかなり苦々しい表情を作ったけれど肯定を示した。



「元々今の組織も解呪を条件に付き従っているから変わらないのよね。こうして解呪してくれるだけまだ良心的、かな。他の人、私たちの家族も解呪してくれるのよね」

「自分に使われるための条件というのならしましょう。ずっと駒がいるわけではないので必要なくなったら解放してあげましょう。勿論解呪した状態で。ま、現状口約束でしかないですが」

「それでも十分良心的よ。それで十分頑張れるわ」



 どうやら彼女らはかなり酷い扱いを受けているらしい。解呪をした感じではかなり厄介なので出来る人間も少ないはず。もしかしたら解呪を条件に使われて結局解呪してもらえなかったという事があったのかもしれない。

 ま、そんなことは俺には関係ないのだが。精々話が簡単に流れてくれて好都合だというくらいだ。



『潤! 潤!』



 何とか駒の入手に成功したところに名前を呼ぶ声が響く。それは耳や神経から伝わるモノではなく感覚に直接語り掛けて来るもの。綾香大明神からの通信だ。



「はいはい、どうしましたか」

『潤、多分ローズマリー・キャロルの限界が近い。そして多分竜泉寺零王は何も出来ない』

「了解です。すぐに戻ります」



 どうやら物語が佳境に入ったらしい。そして主人公様には悪い展開が続きそうである。となるとこちらにとってもかなり面倒な事にないそうな予感。早速駒を使い捨てなければならないかもしれない。



「さて、早速ですが使われてください。家族の為と言うのがどの程度か見せてください」



 哀れな呪われた一族にそう嘯く。悪役感が身について来たのか一族の方々は俺に少々の畏怖を覚えているようだがそれでも命令は聞くらしい。

 面倒ひとつで他のいくつかの面倒片付くのなら面倒のし甲斐があるというものだ。


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