12-7
ネタ会です。
ええ、単なるネタです。
普段よりネタ多めでお送りします。ご了承ください。
伊勢谷を適当にあしらってホテルに戻りマンガに耽る。
明日の朝帰ることを考えれば早めに寝るところだが人外となった俺には必要が無い。元は人間なので気怠さや眠気は感じるけれどそんなものはその気になれば吹き飛ぶ。今がその時だ。
ぶっ通しで読み続けて午前4時半。
今日買ったマンガをようやく消化し終えて読み返しを始めた頃、ドアを誰かが叩いた。
その音を聞いて処理班系登場人物の勘が働く。
どうやら面倒がやって来たらしい。
これが消化途中なら断固として逃げるところなのだが、幸か不幸か区切りがついてしまっている。若干読み返したいところだが今すぐでなくてもいい。読み返しと面倒の総量を下げることを天秤にかければぎりぎり面倒の処理の方が勝つ。
ため息をひとつついてドンドンと必死に叩かれているドアを開ける。
伊勢谷と接触したのだからどこぞの組織が会いに来たのかもしれない。神崎かあるいはザマス眼鏡か。
そう思いドアを開けるとそこにいたのは乱れ髪に目を血走らせた容姿端麗の成人男性だった。
「た、助けてください。助けてください。あなたしか、あなたしか頼る人がいなんです。お願いします!」
なんてことは無い、ただのインテリイケメンだ。
問題はその風格に似合わない金切り声をあげてなりふり構わないその必死さ。
特に目立った欠損もなく面倒な魔力を感知しないことからそういった面倒の類ではないらしい。つまり、あれだ。
「修羅場か」
どうしよう、面倒事なのに俄然やる気が出てきた。
勿論綺麗に処理なんてするつもりは無いし適当にかき乱すか観察者を気取って眺めていたい。
一先ず現段階で起きていることを確認しないといけないので心配するそぶりをして聞いてみる。
「どうしたんですか急に」
「す、すまない。匿ってください。あなたしか頼る人が、いないんです。はやく、あいつが来る前に」
「そういわれてもねぇ、何も知らないで匿えと言われても困るんですが」
イケメンインテリは非常に焦っていて説明する余裕もないらしい。けれどそんな事情など知ったこっちゃないので状況を吐かせる。
加えて下手に室内に招き入れると面倒なのでドア前で会話を続ける。周囲の客には迷惑かもしれないがそこは俺の知ったこっちゃない。
「そ、その、妻と、ユキと喧嘩をして。それで、追われていて」
「単なる夫婦喧嘩なら巻き込まないで欲しいんですが。何か自分と関係することでもあるんですか? 生憎むやみやたらに面倒を見る趣味は無いんですが。面倒なので先に言いますが事情を知っても手を貸すかは分からないですよ。でも、少なくとも事情を知らなければ手を貸すことは無いですよ」
無駄な会話で時間を浪費したくないのでサクッと本丸をつく。
イケメンインテリはこの期に及んで言い淀んだが部屋に戻る素振りを見せると慌てて白状した。
「つ、妻がいない間に、少し、その他の女の子と、その……。は、始めは単なる知的好奇心でそこにはそういったものは無くって、でもその内、はつ子ちゃんの良さが分かってきて。それで、つい」
やはり修羅場か。
まあイケメンインテリはイケメンだしお金持ちだからモテるのだろう。嫁さんも中学生だったころからの青田買いだし手と下半身が早いのだろう。
それにしてもはつ子ちゃんか。実に昔な名前だ。俺はてっきりこのイケメンインテリはガッチガチのロリコンだと思っていたのだが。守備範囲はエリア66並みということだろうか。
この感じなら全てをさらけ出しそうなので最後の一押しをする。
「浮気がバレて修羅場になったと。そんなもの自分に関係ないですが、それだけですか。もういっそ吐き出したらどうですか。ここには男の自分しかいないわけですし。自分は別にそれを聞いてどうこうしませんから」
俺の言葉で決心したのかイケメンインテリの防波堤が決壊する。
「そう、ですね。……もう白状しますよ。私は女の子が好きですよ。仕方がないじゃないですか。妻がいて子供も出来ても俺は男なんだよ。目の前に好みの女の子がいたら手を出したくなるものじゃないか。そうだろ!? ユキなんて身籠ったのがそんなに偉いのか俺を蔑ろにするし、俺の相手をしない。なら他に手を出すしかないじゃないか。俺だって始めはそんな気は無かったさ。でも一緒に研究しているうちに、気付いたら好きになっていたんだよ。そしたらもう手を出すしかないじゃないか。それが、なんでこんなことに。子供が出来る、それは良いことじゃないか。なのに何故俺ばかり攻められる! 俺は悪くない!」
「お、おう」
そんなこと俺に問われても知らんよ。
俺はまだ頭でっかちな童貞坊やなんだから。
それにしてもなんとまあ見事な愚図だろうか。元の性格もあるのだろうがその容姿や金銭などで普段からそういう生活をしてきたのだろう。
それならばこうして制裁を受けるのも仕方がないだろう。
開き直っているイケメンインテリに同情することもなく死刑宣告をする。
「へぇそんなことに。大変ですね、渡貫ユキさん?」
俺は自由だ、とでも言いたそうなイケメンインテリの背後に向けて声を掛ける。
そこには渡貫ユキ、イケメンインテリの妻である人妻女子高生が立っていた。
人妻女子高生はイケメンインテリが色々と白状する前に来ていたのだが面白そうなので待っていてもらっていた。
勿論今の本心もしっかり聞いている。
切羽詰まっているイケメンインテリは全く気付く様子はなかったのだが俺が声を掛けたことで振り返り背後にいる般若にようやく気付く。
「な、ひ、卑怯な。後ろをバックに!!」
「捕まえた、お前の命は今私の手の中に。これが裁きだ! 弾けろ! ロリコンがぁあ!」
人妻女子高生はイケメンインテリの襟首をつかみ、頬をめがけて右腕を振り抜く。
その拳はただの女子高生とは思えない程でイケメンインテリは吹っ飛ばされて廊下を転がる。イケメンインテリは「ぐぇ」とか「ぎゃ」とか「ぽぺっ」とか言葉を漏らし何とも無様だ。
人妻女子高生は俺に微笑むと無言で無様な男のもとへ歩み寄る。
イケメンインテリは腰が抜けているのか立ち上がることもせず這いずって逃げようとする。
無慈悲な人妻女子高生は逃げようとするイケメンインテリの背中を踏みつけて動きを封じる。
「私はあなたの事を、朝も夜も恋い焦がれているというのに。あなたは女遊びばかり」
「は、放せ! クソ! クソ! 普段のつけが、こんな形で頂きましたか。だが、しかし俺は間違っていない。間違っていたのは俺じゃない、世界の方だ。何故愛せる相手が1人などと決まっているんだ!」
「なんたる愚かしさか。私はこんな人を好きになっていたなんて」
未だに諦めず開き直っているイケメンインテリ。
そしてそれを逃がさず何度となく踏みつける人妻女子高生。
何とも面白い絵図だ。
けれどこのまま見物していてもあまり変わりがなさそうなので傍観者から登場人物に切り替える。
イケメンインテリを踏みつけている人妻女子高生に近寄って状況を聞き出す。
「いきなり巻き込まれていまいち理解できないんですが、そこの人が浮気をして怒っているという事でいいんですか」
「……そうよ。それも、相手は既に身籠っているそうよ。私がいるというのにね」
「お、おう」
人妻女子高生は単なる人妻になっているようで俺に対する敬意や恐れといったモノがなくなっている。
別にそういったモノに感心は無いので別にいいのだがそういう普段意識しているものが剥がれてしまっているところを見るとかなり頭にきているらしい。
「それで、相手なんだけれどあなたのところの研究員だそうよ。名前は確か、新島はつ子。私なんかより幼いあの子よ」
「……お、おう」
人妻女子高生に言われてようやくつながる。
新島はつ子。そういえばのじゃ子の本名だ。
という事はあれか、あやつやりおったか。正しく修羅場ったという事か。
それにしても既に懐妊か。出会って2週間も経っていないはずだが、その辺は気にしないでおこう。変に口出しして方向性が変わってしまっては面白くない。
至極真っ当なそぶりに切り替えて人妻女子高生に向き合う。
「こちらに不手際があったのなら出来るだけのことはしましょう。自分とあれとは関係性はありませんが一応上司の様なものですからね」
「それは、大丈夫。私も同じような身だから女の人に対して何かしてほしいとは思っていないから。勿論あなたに対して不満はない。でも、この人だけは、この人だけは許せないのよ。絶対に」
人妻女子高生は随分お冠の様でとめどなく踏み続けている。イケメンインテリは耳障りな男の悲鳴と共に情けない声を漏らして実にうっとおしい。
人妻女子高生にしてみれば鬱憤がはれるのかもしれないが俺にとっては騒音でしかないので昏倒させて大人しくさせておく。
大人しくなってしまったイケメンインテリに人妻女子高生は少し残念そうな表情を浮かべたが気付かなかったことにした。
「許せないことは無いよ。許したくないだけ。ですがそれを自分が言っても仕方がないことですね。自分も男ですから。でもまあ許せないと言うなら手を貸しましょう」
「……へぇ、何をするの?」
「こいつの大事なものを飛び散らせるんですよ。奪うんですよ。それも周りには被害を出さないように。と言っても、この人の趣味趣向をちょっと弄るだけですが。女好き過ぎるところとか幼女趣味とかを消し去ってしまおうかと」
「そんな事、出来るの? いや、出来るから言っているのよね」
「ただ趣味趣向だけの削除は難しいですからそこに付随する記憶とかもある程度消さなければならないでしょう。なのであなたとの思い出も消してしまうでしょうが」
人外の力と言っても万能ではない。イケメンインテリと俺との差からいけば人格の書き換えは簡単に出来る。だが下手に記憶を残すと誤差が生まれて壊れる可能性がある。壊れても構いはしないのだがそれはそれで面白くないなので多少手間をかける必要がある。
おそらく性的趣向を書き換えればイケメンインテリの中で人妻女子高生は消え去るだろう。
もっとも、浮気に対する罰ならば単純に去勢でもいいのだろうが。
俺の提案に人妻女子高生は少し考え込んだだけであっさりと承諾した。
「それで、お願いします。私はもうこれに未練はありませんから」
「分かりました。これの処分はこちらでするとしてあなたはどうしますか。仕事や住む場所とか。うちのところはまだまだ新興勢力なので人手不足でしょうから色々と用意できるでしょうが」
「お願いします。何から何まで」
人妻女子高生は憑き物が落ちたように大人しくなった。
「さようなら」
人妻女子高生は気を失っているイケメンインテリを憐れむとその場を立ち去った。てっきり趣味趣向を奪うところを見届けるかと思ったが復讐心はもう無かったらしい。
一応未だに怒りはあるだろうがこれ以上哀れな男に関わりたくないのだろう。元々人妻女子高生は手練手管を使われて妻になっただけなので一度醒めてしまえば修復は不可能なのだろう。
この後に無理に付き合わせる必要もないのでそのまま見送る。あとで綾香に口添えだけしておこう。
元人妻女子高生を見送ると気配を消していた人物がやってきた。
「茶番は終わったかの?」
「茶番て。いやまあ茶番っちゃ茶番ですが。そもそもその茶番はあんたが用意したものでしょう?」
「うむ。お主も楽しんでくれたじゃろ?」
人妻女子高生と入れ違いでやって来たのは今回の騒動の根源新島はつ子、もといのじゃ子だ。
のじゃ子は人妻女子高生が来た時からいたのだが気配を消していたので流していた。のじゃ子程度の隠形など簡単に分かる。
そのことについては指摘しても意味がないので意味のないことはしない。
取りあえずこの茶番の全容を聞くとしよう。
「それで、これはどういう遊び何ですか? ことと次第によっては色々と考える必要があるんですが。まあいい感じの見世物でしたが」
「お主も大概な性格をしておるのう」
「あ、あと似非のじゃ語もなしでお願いします」
しっかりと母娘で会話していたのだろう。のじゃ子の口調がのじゃ語に変わっている。
サブカル能からすればのじゃっ子というのは好物の範囲だがのじゃ子はアウトだ。こいつの場合完全にキャラだしな。
のじゃ子本人ものじゃ語を面倒に思っているのか特に拒否反応を示さない。というより元々のカミングアウトはのじゃ子からだし、もういっそそのキャラ辞めればと思うのだが。まあどうでもいいな。
「ん、んんっ。そうだね、どこから話そうか。あらかじめ弁明しておくけれど面倒なことは一切ないから安心して。というか罰しないで、私を」
「ことと次第によるので最初から説明してください」
面白い展開になっているので特に罰する気は無いのだがそれを言っては面白くないので飲み込む。その後のじゃ子からの説明は取り立てて予想外のことは無かった。
のじゃ子は研究に従事している中でイケメンインテリを助手として使っていたらしい。
始めは単なる助手としての付き合いだったが接する時間が増大するにつれて関係性が変わったという。
問題はイケメンインテリとのじゃ子の間に感情の齟齬があったという点。
のじゃ子の実年齢は3桁に迫っているので既に女の子は終わっている。のじゃ子自身の技術を使えばどうとでもなるのだがそこまでの感情は持っていない。精々研究の息抜き、日々のスパイスでしかなかったという。
だが、イケメンインテリからすれば可愛らしい幼女。それも自分の及ばぬ知識を持っている尊敬できる相手。欲情の対象でしかなかった。
それには気づいていたがのじゃ子にとっては日々のスパイスとしてはうってつけなので野放しにしていた。
が、イケメンインテリの感情が暴走した。
人妻女子高生と分かれてのじゃ子についていくと言い出した。
妻も子供も知ったことではない。邪魔なら排除するだけ。
とまで言ったそうだ。
そこで流石ののじゃ子も呆れて芝居をうったという事らしい。
「だから私の妊娠というのも嘘。こいつを陥れるための狂言。実際色々と終っただろう?」
確かに色々と終って色々と面白い。この展開はある種望んだようなものだ。
けれど態々俺が巻き込まれる必要があるほどの事態でもない。
特に気分は損なっていないが一応忠告しておく。
「ですが被害が大きすぎますよ。ここで自分が介入するからいいですが。つまり俺に面倒を押し付けたわけになるのだがそこはどう責任取りますか?」
「い、いや、ほら。サイトーが介入するからあの可愛らしい小娘はサイトーになびくだろう。こ、これは良い展開じゃないのか?」
「女体に意味はありません」
生憎ここの所性欲がさほどないので人妻女子高生になびかれてもどうという事もない。
そりゃ来るものは拒むつもりは無いがどこまでも追いかけるつもりは無い。なくても特に困らないし。
正直どちらでもいいのだが。人妻女子高生が捨てられてなびいてくる。それはそれでサブカル能としてはグッと、……ゲフン。
忠告はこれくらいにしておこう。のじゃ子もむやみやたらに面倒を起こすとことはないだろうし。
今日の事は我慢しよう。遊びにかかる手間を面倒だと言わないしな。
「色々と面白い展開で満足しているので特に罰するつもりは無いですが。それでここからどうやって幕引きを図るんですか? ここに来たという事は何かあるんでしょう?」
「ああ、うん。なんだかんだで私も迷惑を受けたからな。私の手で幕をひこうかと」
「ま、少しは期待してますよ」
話を切り上げると床で伸びているイケメンインテリを室内に引き入れて椅子に座らせる。そして軽く拘束してから起こす。
目を覚ましたイケメンインテリは始めこそ慌てていたが人妻女子高生がいない事を確認すると安堵した。
そして俺の傍にのじゃ子がいることに気付くと喚き始めた。
「は、はつ子! 俺を迎えに来てくれたんだな! 俺にはお前さえいれば何もいらない。あんな年増なんていらない。俺と、俺と一緒になろう」
何というか、何というか。見事なまでの愚図。
高校生を年増とは。かなりの真正だ。
ここですぐに介入してもいいのだがのじゃ子が自ら幕をひくという事なので静観する。
のじゃ子は幼女らしい可愛らしい笑みを浮かべてイケメンインテリの頬に手を添える。そこからしばらく見つめ合い甘い雰囲気を醸し出して、急に凄絶な笑みに変えた。
「ざーねんでした!! あなた騙されちゃったの!!」
そこからはのじゃ子劇場だった。
どれだけイケメンインテリを嫌っているかどれだけの憎悪を抱いているのかつらつらと述べてプライドをシュレッダーしていった。時には笑い時には微笑み時には蔑んで。のじゃ子百面相だった。
イケメンインテリはすべてを聞き終えると項垂れた。まさに茫然自失、という状態。
けれどお遊びはここで終わりではない。のじゃ子が満足したようなので俺が介入を始める。
項垂れるイケメンインテリの髪を掴み上げで起こす。
「さて、この現実はあなたにとって辛いでしょう。ですから自分が全てを忘れさせてあげますよ」
「な、何を」
「何を、ってあんたの記憶と人格を弄るんですよ。あんたの幼女趣味という趣向を矯正する。勿論女好きというのも。その副作用であんたは下半身事情の記憶を全て消え去ることになるんですが、仕方がないですよね」
イケメンインテリが言葉を意味を理解出来るようにゆっくりとしっかりと伝える。勿論冗談ではない様に真剣にを乗せた口調で。
俺の言葉と意味を理解したイケメンインテリは喚きだす。
「やめろ! ふざけるな! そんなことが、そんなことが許されるか! 私は、俺は、何も悪くない。何も悪くない。なのにっ」
「世界はの、お主だけに優しいわけじゃないのじゃぞ」
「くそっ、はつ子、はつ子! 裏切ったな、俺を裏切ったな!」
「じゃからさっき言うたじゃろ。お主は始めから騙されておったと。裏切るも何も始めからお主など好いてはいない。さっさと現実を理解せい」
のじゃ子はノリノリだ。生き生きしている。内面はババアなので加虐趣味なのだろうか。
いい年こいた成人男性が幼女に罵られる。これはこれで見ていても面白いのだがそろそろ幕引きだろう。十分に楽しんだのだ、ここらで終わらせるのせめてもの情けだ。
まあ情けなんてものはなく単に飽きてきただけだが。
「ま、要するにあんたは世界からはじき出された。あんたの願いは叶わない。諦めてください」
「ふざけるな! 俺は、俺は!」
「さあ、全てを忘れ唯人となるが良い。大丈夫、今の不安も怒りもなかったことになるさ」
「やめろ!! うわああああ!!」
画して悪逆インテリイケメンは討たれたのだった。
新作続編決定!!
ヒャッハー (੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾




