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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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10-8


 長い沈黙がありザマス眼鏡がようやく口を開いた。



「勘違いしているようだから訂正しておくけれどボクらは何も斎藤くんを殺したいわけではないよ。ボクたちが求めているのは協力だけ。我が身大事というのならボクらに協力してくれればそれで終わる話だと思うのだけれど」



 長い間の後に真っ当な普通の事を言われてしまった。


 本当に命が大事というなら長いものに巻かれるべき。

 そんなことは分かっている。


 しかしそれは彼らの都合であってこちらにはこちらの事情がある。

 無駄無意味無価値であってやらなければならないこともある。

 こんなものは茶番だ。



「その口ぶりからすると自分はあたりを引き当てたと見ていいんですかね。そこのところどうなんでしょうか。そろそろまともな話し合いをしたいですが」

「なんの事かなボクにはさっぱりだね、と言いたいところだけどもういいかな。十分時間は浪費したし良い運動もした。うん、もういいかな」



 ザマス眼鏡は何かを納得したようで雰囲気を切り替える。

 先程までの取り繕ったようなものではなく張りつめた鋭いものに変わる。十分に面倒だった雰囲気がさらに膨れ上がり伊勢谷ほどではないにしてもちょっと逃げ出したくなるくらいに肥大する。


 意図せず緊張感が高まったところでザマス眼鏡がクスリと笑う。

 無意識を咎められて癪だが面倒なので流す。



「さて君はあたりを引き当てたと言ったけれどそれは半分正解で半分不正解かな」

「半分、という事は保留期間が延長されただけという事ですか」

「いや一応君の持つ能力と行動方針から導き出される対応は君との協力関係の構築。可能なら引き入れたいところだけれどそれが不可能なら邪魔だけはしないでもらえるように交渉する。というのがトップの判断だ」

「トップの、という事は派閥やら個人によっては物騒だと。それが半分という理由ですか」

「こちらとしてもトップの話を聞かない輩がいるなんて嘆かわしいことだけどね。因みにそこに転がっているのがそういう人たちの一員だね」



 阿呆の上層部は阿呆ということなのだろう。

 勿論阿呆が勝手に騒いだだけという事も考えられるがそんな組織は面倒なので考えたくない。


 阿呆どもが襲ってきたことについては理解できた。

 しかしそれは阿呆たちの仕業というなら俺が死にかけた理由にならない。

 協力関係の構築というなら態々殺そうとしなくてもいいはずなのだが。



「こちらにも都合もあるからね。引き込むなら有用性を示してもらわなければならない。その一方で竜泉寺君の傍に配置しておいても問題ないモノなのか見極めなければならない。そういう意味で言えば斎藤くんの能力を逃げるためだけに集めたことと器用貧乏という特性は確かにあたりかもしれないね」

「その辺は理解したうえで行動を取っていたので無駄にならなかったようで何よりですね」



 取りあえず安堵を見せておく。

 勿論それは演技であり、そうであることも伝わっているだろう。


 彼の言葉がすべて正しいというわけでもないだろう。

 勿論嘘をついている、騙そうとしているとまでは言わないが真実を伝えていないということもある。


 例えばザマス眼鏡のいう都合には組織としてのという意味以外にも彼自身のというモノも含まれていたことも考えられる。

 敵対派閥の人員をぶつけて失態を演じさせることもしていたかもしれない。


 まあその辺は取り立てて指摘する必要もないので流しておく。

 今後も保険は増やしていく必要があるのだが、一先ず今は良いだろう。



 取りあえず今はこの茶番を終息させることにしよう。



「兎も角、自分はあなた方に協力するつもりは無い。けれど敵対するつもりもない。求めるのは妥協と無関心。情報共有や仕事の依頼なら構いませんが強要や強制は断固として拒絶させてもらいます」

「それくらいなら可能だけれど。本当にその程度でいいのかな」

「構いませんよ。自分の願いは自分のあずかり知らぬことに歯車とされることですから。あなた方がどんな物語を作ろうと邪魔をするつもりはありませんが協力するつもりもない。俺の知ったこっちゃない。勝手にやってくれ。というのが本音です。今のところは」

「なるほどね。承った。トップに伝えておこう。こちらも積極的な敵対行動を取らなければ問題ないからね。今のところは」



 中々に中身のない応答だがこれにて茶番は終いだ。


 主人公様が適当になあなあで済ますようなことをよくもまあ地味に真面目にやったものだ。

 面倒をし倒して結局手に入れたのは最初と大して変わっていない。

 少なくとも誰かさんと同じように自分の命を守るためだけの方法は手に入れたが状況は変わらず大勢の気分でどうにかなってしまう存在。


 それでも不安定な状況を楽観視して何かあった時に初めて狼狽えるような阿呆なことになるよりはマシだ。

 友人Aには御都合主義や御約束などないので面倒をしなければならないのだ。

 ホント面倒なことをしているよな俺は。


 兎も角、終いだ。



「では互いの状況が確認取れたところで本題に入ろうか。斎藤くんには元の家に戻って今まで通り竜泉寺君の友人でいてもらいたいのだけれど、どうだろう」



 どうだろう、と言われても少し困る。

 やっとこさ面倒から解放されたというのに直ぐに真面目な話とか辛い。

 もっともそんな泣き言は言っていられないので意識を切り替えて自称事務官と向き合う。



「来週にもなれば普通に学校へ戻りますよ。あなた方とのあれこれも話すのは面倒なので言うつもりもありませんし、一先ず普通の友人Aに戻るつもりです。あれに何か聞かれたらあなた方とは協力関係にない組織に属しているとだけ伝えておきますよ」

「後はそうだね、竜泉寺君の周りで彼に不都合になりそうなことがあれば協力してあげて欲しいのだけれど、問題はないよね」

「それには返答できないですね。自分は自分の判断で行動しますんであれを必ず助けるともいいませんし必ず助けないともいいませんよ」

「そんなに気をつけなくても言質を取ろうという気なんてないよ。頭が回るのは好ましいけれど考えすぎも会話が進まないから困ったものだね」



 へらっと笑い呆れて見せるザマス眼鏡。

 当然そんなことでは腹を立てないし気も緩めない。


 ここで下手に頼まれたことを承諾してしまえば協力関係にあると思われかねない。

 別に俺は騎士道とか道徳を持っているわけではないので言質を取られたところでさして問題はない。

 しかし事実というのは自分以外にも影響を出すので気を付けるのは当然だ。


 竜泉寺やその他諸々に事実を継ぎ接ぎにして情報操作されても困る。

 まあこんなところから面倒に発展しないだろうし友人Aにそこまで面倒を使わないだろうけど真面目で真っ当というアピールは必要なのだ。



 ザマス眼鏡のポーズに対して特に反応せず冷ややかに眺める。

 しばらくするとザマス眼鏡も諦めたようでもう一度ため息をつき真面目な表情を作った。



「ここからは情報共有だけれど、斎藤くんは竜泉寺君のことについてどこまで知っているのかな」

「どこまでも何も知りませんよ。なんか面倒に巻き込まれて、周囲を巻き込んでいるというくらいですよ」



 一応伊勢谷アタックによって竜泉寺さん家のハーレム計画については知っている。

 しかしその背後で何が起きていて何に向かっているのかは知らない。聞けば解説をしてくれただろうが聞いていない。

 自分自身にまつわることだろうが取り立てて気になることでもないので聞いていない。



「そんなものかな」

「そんなもんですよ。それに他人から聞く情報なんてものは何処かしら可笑しいモノですからね。直面していないものに対する判断材料としては不適格。自分で考えて判断すればいい。ならば聞くのも面倒というモノですよ」

「ボクからの情報は必要ないと」

「ええ」




 情報とは何かを通せば必ず変わるものだ。そこに変えようという意図がなくとも。

 ザマス眼鏡の様に何かの組織に属し目的のある組織の情報など偏っているに決まっている。

 こちらの危機を煽り御大層な理由を並べてたばかろうとする。耳あたりのいい言葉だけで操ろうとする。


 そんな情報を態々知る必要が無い。

 目の前に何かが起きていれば情報も必要だが何もないなら邪魔でしかない。

 というか知りたくない。面倒だから。



「まあ今はいいかな」



 ザマス眼鏡としては何かしら思惑があったようだが俺の反応を見て諦めたようだ。

 

 自分たちは世界の破滅と戦っている。

 自分たちは世界を救おうとしている。

 そういう理想を押し付けようとしたのかもしれない。

 どうせ彼らの謳う目的などそんなものだろう。



「ではこれくらいにしてボクもお暇しようかな」

「ええ特にないのでご自由にどうぞ」



 消化不良気味だが最低限を終えた様子のザマス眼鏡は気配を緩め終わりの雰囲気を出す。

 こちらとしてもこれ以上の面倒は求めていないので警戒を緩める。


 ザマス眼鏡は警戒を緩めた隙をついて攻撃、などすることもなく地面に散らかっている役立たずを回収していく。

 十分に巻いた数センチ大の蜘蛛の糸を容易に引きちぎりそれを利用して9人をひとまとめにしていく。


 俺ならばその手間を数瞬で出来るのだが当然黙って見過ごした。

 こんなところでかける義理などない。



 大きな荷物を抱え、遅刻した赤服オジサンのようになったザマス眼鏡は面倒で意味深な言葉とともに消え去った。




「情報がいらないと言ったからこれはボクからの忠告。君は自分がしたことを普通のことのように言ったけれどそれは違う。少なくとも人間は自分を魔力に、霊体にすることなんてできない。出来たとしても自我を保っていられない。君がそうしていられるという事は君は既に人外になってしまっているのだろう。人外となった人間はこの世界でも少なくない。人外となったモノの多くは望にあった大きな力を得る。けれど次第に人間性をなくしていき最後は発狂し化け物に成り下がる。そして害悪として討たれる。君はいつまで君でいられるのだろうね」



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