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コテージの雰囲気はがらりと変わった。
家族旅行のついでにちょっとした仕事といった様相から張りつめた状況。
刑事ドラマで見る捜査本部みたいな雰囲気になっている。
言葉が理解できる綾香に怒声が飛び交う状況を確認してもらい説明してもらうとそれ程切羽詰まった状態ではないらしい。
高野山付近に配置していた構成員から交信が途絶えた。テイラー氏を監視していた集団からも一時交信が途絶えた。
しばらくしていくつかの集団には繋がり監視集団とも交信が回復したが、その時にテイラー氏を見失ったとの情報が入った。
それと同じくして静観していた中華系組織の動きが活発になり、末端同士の小競り合いも起きている。
その情報が一度に入り中華系の対応とテイラー氏の安否確認を行っているところらしい。
テイラー氏を確保されたという情報はまだ無いが見失っているので確定情報ではない。
流石組織というべきかしっかりと対応をしているらしい。
ただ少し問題なのは捜査本部が浮足立っているところだろう。
組織としてのまとまりはあるのだが急な状況の変化に追いつけていない様子。
指示を出し終えて待っている幹部風の人物たちはみな落ち着きがない。
もしかすると実戦経験がある人が少ないのかもしれない。
あるいは気を抜いていたところで失態が発覚して大慌てなのだろうか。
これだけ豪勢なホテルに家族連れだ。かなりの出張費になっているだろう。その上で作戦失敗とあればいろいろ問題なのだろう。
昨今出張費は問題になっているし。
単純に短気な人々の可能性もあるけれど。
そんな慌ただしい状況で俺たちは隅で大人しくしている。
少し日本語の分かるご婦人たちとちょっとしたお茶などもして時間を潰している。
一応協力関係のようなものを提案したが、提案しただけ。俺が何かをしてあげる義理は無い。
「いいの? お兄さんなら女男の居場所を把握しているでしょう。あの人たちに教えてあげれば恩を売れると思うのだけれど」
ふらふらと浮かびながら面白くなさそうによし子さんが言う。
よし子さんの言う女男の言葉にはなんだか険があったが流した。触らぬ神に、だ。
確かにテイラー氏の所在は把握している。
最終目的はテイラー氏との折衝。その相手を見失うような下手はしない。
他事をして期を逸するのは阿呆のすることだ。
気配によるとテイラー氏はまだ中華系に捕捉されていない。
その移動にはあまり迷いがなく上手く追ってから逃げている様子からすると協力者を得ているのかもしれない。気配では追えないので一般人が協力している可能性もある。
こういう折衝をしている間に動いてしまうのが主人公様だが、本日は欠勤のはず。となるとそれ擬きが動いているのかもしれない。ちょっと厄介だ。
ちょっとした不安は置いておくとして。
「確かにそうですけど、この状況で出しゃばると怪しまれそうですからね。タイミング良すぎるのはグルじゃないのかと怪しまれるでしょうし」
「でも実際潤はグルのようなものでしょう?」
「さて、何のことでしょう」
「どういうこと?」
有能事務官の綾香様はある程度理解しているらしい。別に有能でなくとも考えはつくだろうが。
どんな組織も他勢力の情報は知りたいので間者や斥候は使っているだろう。
そしてそこから相手組織が不利になる情報を得れば行動を取るのも当然のこと。
よし子さんアタックは基本オセアニアの方が強く影響を受けている。
オセアニアの幹部の中には呪いを受けたものがいるが中華系は皆元気。
これはおそらく双方が知ることになっている。
つまり中華系はオセアニアが組織として上手く機能していない状況を知っている。組織として力がある集団は厄介だがそれ故に上層部が機能していないと大きくバランスを崩す。
中華系にとってこれはかなりの好機だと考えられる。
おまけに俺の襲撃。
どの様に情報を整理したかは不明だが、少なくとも幹部が襲撃されたのだ。中華系が有利だと判断しても可笑しくない。
つまり中華系がテイラー氏確保に動いても可笑しくない。
そしてこの状況は俺にとって都合が良い。
中華系は拉致という犯罪を犯した悪者に出来る。困った状況に陥ったオセアニアに恩を売りつけこちらの力を見せつけることが出来る。
そして何よりテイラー氏には身の危険から守った人として見てもらえる。そうすればこちらの目的である折衝も有利に進めるだろう。
みんな大好きだろう? 正義の味方は。
と言っても全てが俺の思い通りというわけではない。
確かに会話が出来そうなオセアニアに恩を売り協力が取り付けられるように仕向け、一方で中華系が暴走してくれるようにと状況を動かした。
しかしそうなる可能性があっただけで全ては制御していない。それに盤面はまだ動かせる。他から横やりがある可能性も否定できない。
というよりは横槍があるだろうと他のことも考えていたのだが。
兎も角、綾香がグルのようなものと言うようにある程度思惑通りに進んでいる。
とはいえ全てが上手くいっているわけではない。
そしてまだ中盤戦。気を抜かず状況を注視する。
「一先ずは静観ですね。テイラー氏の身が本格的に危なくなるか向こうさんが本格的に調子づくようでしたら介入しますが。それまではオセアニアからの依頼がなければ何もしない方針で」
「んーまたお兄さんが面倒な状態になっているー。さっさと突っ込めばいいのに」
「潤は面倒を嫌がる癖に面倒事をこなすのは得意だからね」
取りあえず何かあれば協力するとだけキッドマンに伝えてのんびりと待つことにした。




