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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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9-4


 一先ず無難にお坊さん方に挨拶に向かうことにした。


 何事にも礼節というモノは大切だ。

 なんていう日本人的な発想ではなく理論武装するならその土地の所有者が一番強いからだ。

 中華系にしろオセアニアにしろここはよそ様の国、よそ様の土地なのだ。



 挨拶に伺うにあたってお偉いさんの場所を探す必要がある。

 当然誰かが簡単に教えてくれるはずもない。タイミングよくお手軽な情報屋などでてこない。

 伊勢谷とか出てこない。

 出てこないよな?


 一応気配の探知で異能者の所在は把握している。

 集団の本陣らしき場所も特定している。

 しかし異能者の所在が把握できたとしても組織としての中枢がどこにあるかは分からない。

 戦闘の本陣が組織の中枢とは限らないし戦闘力が高い人が即ち上層部とは限らない。


 加えて坊さん方はここ一帯の管理者。

 いくら弱小とはいえ上層部はしっかりと隠れているはずだ。



 ならば高野山の範囲を出てからという事も考えられるがそれもそれで良し悪しがある。

 外には他の集団が根城にしている可能性もあるし、待機している陣営が策を練っているかもしれない。

 情報が少ないこちらとしては状況が変わると情報が更に減るので得策ではない。

 結局、地道に調べるしかない。


 よし子さんの時は目的が固定されていたのである程度時間を使えたが現状テイラー氏がどれくらい滞在してくれるかは未知数。

 坊さんとの折衝が本来の目的ではないわけだし、綾香に潜り込んでもらって状況を整える時間は無い。

 多少リスクはあるが下っ端と御話するしかないだろう。



 こういう時に呪術は便利で助かる。

 単純に会話で聞きだすのではなく能力で強制的に引き出せるので信憑性も高い。

 流石の器用貧乏でもそこまでの能力は持っていない。


 と言ってもよし子さんにやらせるとピーキー過ぎるので俺がやらなければならないので少し面倒だ。

 俺が依代になっていることやよし子さんが許しているため呪術を殆ど自分の力のように使えるので何とも言えないが。



 取りあえず組織に所属していそうな人に声を掛けて情報を聞き出す。

 危害を与えず、それでいて応えてくれるようにお願いする。


 厄介だったのはお坊さんの殆どが異能者としての自覚が無かったことだ。

 そのあたり異能について疑問に思うところだが今のところ必要はないので流した。

 俺の探知は客観的で正確という仕様ではないのでそう言うこともあるのだろう。

 面倒なので気にしない。



 情報がなければ見知っているお偉いさんを紹介してもらい、そこでさらに情報を聞くというちまちました方法を繰り返してようやくお偉いさんのところにたどり着いた。

 というよりは探している途中、ようやく尻尾が見えてきたころに向こう側から出迎えが来た。


 そのお出迎えにこちらには戦闘の意思がなく話し合いがしたいと伝えたところ意外にも了承された。



 出迎えさんに連れてこられたのは町役場。

 高野山の異能者集団の中枢は町役場らしい。


 物語的には有名どころ、例えば奥の院なんかに大量の僧侶たちがいて、などと考えるのだがどうやら違うらしい。

 綾香曰く今時どこもそんな程度とのこと。

 雑居ビルの一室を借りて拠点にしている、なんてこともあるらしく秘密組織らしく地下に祭壇とか作らないらしい。

 何とも夢のないことだ。

 それは良いとして。



 小さな町役場の小さな会議室に通されるとそこにはよれた作業服を着こんだ好々爺という言葉がしっくりくる老人がいた。



「どうも態々すいませんね。私がここいらの管理をしております桑原くわばらと申します。表向きは町役場の総務部長をしております」



 落ち着いた様子の桑原なる老人をじっくりと観察する。


 管理をしている、という事は組織の上層部なのだろうが醸し出される雰囲気はかなり弱い。

 情報収集に声を掛けた下っ端坊さんよりも弱く一般人と大差無いように感じる。


 よほど隠ぺい上手なのだろうか。

 そうであるならばかなりの高位能力者だと考えられる。



 冷静に油断なく身構えていると桑原は声を挙げて大笑いをした。



「あっはっはっは。そう身構えないでください。私にあなたほどの力はありはしません。そう険呑な雰囲気を出されますと心臓が止まってしまいますぞ」



 そう言ってみせる桑原だがのらりくらりと言ってみせるあたり怪しい。

 しかし一般人程度しか力が見えないのは事実なので警戒を緩める。



「失礼しました。自分は斎藤潤。しがない異能者をやっています」

「これはどうもご丁寧に。ですが私たちも仕事をしている身。手短にお願いしたいのですがよろしいか?」

「構いませんよ。こちらもその方が楽ですし」



 桑原は椅子を進めてきたが長話をするつもりもないので辞退して続ける。



「現在高野山に比較的高位の異能者がいます。自分としてはその人にちょっかいを出すつもりなのであらかじめご挨拶に来ただけですので」

「挨拶、というのはどういう事ですかな」

「異能者以外に色々な人物もいますので面倒事が起きてしまう可能性があります。その場合許しを得るべきはここら一帯を管理している人だと思いますので、その挨拶を」

「回りくどい言い方をする。要するに私らに手伝えと言うのですかな」



 回りくどくいっているつもりは無かったのだがどうやらうまく伝わっていないらしい。

 ならば仕方がない。端的に伝えよう。



「ちょっとよその国ともめごとを起こすので事後処理の時に自分たちの味方をしてほしい。その代り出来るだけあなた方の望むような動きをする。という提案なんですが如何でしょうか」

「それはなんとも。因みにですがそれを私が断った場合どうなりますかな」

「断ってもそれだけで何かはしませんよ。自分はお願いをしている立場ですから」



 とは言っても断られたら最低限の配慮しかしない。

 勿論そこまで言わないが。


 ひとつ息を吐いた桑原は腕を組み考え込む。

 唸りながら思案すること暫し。



「こちらの知らないところで動かれるよりは会話できるだけでもマシですかな。それで具体的に私らは何をすればいいのでしょうか」



 どこか観念したように桑原は了承した。

 その態度は正直意外だった。自分の話術が下手なことは知っているので色々と説明やらがもっと必要だとは思ったが。

 

 兎も角、了承がもらえればそれだけで十分だ。

 だが口頭による了承だけが全てではない。

 色々と事務的な打ち合わせは必須。

 その辺は俺の担当ではないので他人に任せる。



「一先ずはここら一帯の詳しい情報の提供。細かい折衝については担当者と話し合ってください。こちらで出来る範囲の事はしますので何でも言ってください。今回の件だけじゃなくても大丈夫ですから」



 そう伝えると残りは綾香に任せた。

 するべきことはこれだけではないのだ。


 ホント、戦うだけの主人公様が羨ましい。



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