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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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57/123

9-2

 高野山に到着すると俺は1人キャンピングカーに籠り方策を練った。


 思い立ったが吉日。その場のノリで何とかできるのは主人公の特権だ。

 そしてそれが出来るのは日夜下っ端が頑張っているからである。

 つまり凡庸たる俺は全てを自分でこなさなければならない。


 石橋は自分で材料を集めて作り上げなければ渡れないのだ。

 現実とは厳しいのだ。



 目的はテイラー氏に接触して駒になってもらうこと。

 駒が簡単だが協力関係でも可だ。


 ただ、脅しや力ずくは面倒なので取りあえず会話が出来ればと思っている。

 というか正攻法でなければ後々面倒くさい。



 ならばさっさと会いに行けばいいと思うところだが周囲の状況というものがある。


 現在テイラー氏はどの組織にも属していないという。

 それ故に表立った守りは無いだろうが監視の目はいくつもあるだろう。


 所詮テイラー氏も必須な人物ではない。それ故に必死となって口説くところは多くないだろう。

 殆どのところは是が非でも欲しいわけではないが他所にとられたくないとは思っているだろう。


 既にその方向で暗黙の協定もあるのかもしれない。



 無難にことを進めるにはそういった事情を周囲の監視やらから把握する必要がある。

 本来ならばこういう雑務は駒にやらせるのが普通なのだが生憎現在の周りには使えない奴ばかりなのだ。


 綾香は事務能力に長けているが異能者としては凡人。

 よし子さんは呪術しか出来ないし応用も上手くない。


 つまりこの手の能力は俺が一番優れている。それ故他人に押し付けられない。

 残念だ。


 勿論それは俺が飛び抜けているというわけではなく周りが使えないだけなのだが。



 その使えない奴らは現在昼食を取りにどこかへ行っている。

 折角だから精進料理やらなんやらを食べるのだとか。流石ババアどもだ。


 因みにアッシーは人妻さんの母親。

 家柄というか血筋なのかアッシーさんも若くして生んでいるので30代前半だ。それでも高校生からすれば皆等しく同じ括りだ。

 まあ元ヒロイン少女の母親なのだから年齢不相応なのだが。

 それはいいとして。



 使えないモノは考えても仕方がないので自分の事に集中する。



 山一帯に気配を伸ばすと案の定いくつか気配の集まりがある。

 その集団はそれぞれ陣を敷いているようでそれぞれとは距離を保ち動いている気配はない。当然それぞれの陣営にはそれぞれの斥候らしきものが潜んでいる。


 何もせず距離を保っているあたりやはり何かしらの思惑があるのだろう。



 何故そこまで分かるかといえばその程度の相手ばかりだからだ。

 能力の系統や類似性。そういった情報が垂れ流れているので推測は難しくない。


 やはり所詮メインどころではない。世界トップクラスなどいない。日本最高クラスもいない。

 その程度の相手なら苦労することは無い。


 勿論表向きが雑魚だけで伏兵がいることも考えられるのだが可能性論なので排除する。



 さて、どうするべきか。


 現状からすれば力押しでも何とかなる。

 だが相手さんの背後関係が分からなければ今は良くても後々面倒が流れ込んでくる。


 となるとそこらへんを確認してから行動するのが妥当か。

 この辺は駒に何とかしてもらうとしよう。



 一先ず俺がすることは異能者集団の情報を書き出すのと位置を割り出すこと。

 敵さんの布陣を地図に書き起こしていると人妻さんだけが戻って来た。

 その表情は何処か不満そうで手には何も持っていなかった。



「皆様方と食事に行ったんじゃなかったんですか?」

「お母さんと皆さんは食べてますよ、喜んで。ただ、私にはちょっと」

「まあこういったところですからね。肉っ気は無いでしょうし若者向けの料理は少ないでしょうね。在るかも知れませんが綾香たちは好みませんしね」

「ええ。みなさん精進料理を楽しみに注文していました」



 どうやら人妻さんは所詮現代っ子らしく穀物や野菜だけの料理はお気に召さないらしい。

 まあ体的にもっと栄養のあるものが欲しいのだろうし。


 冷蔵庫にはそれなりの食材が入っておりキャンピングカーにはコンロも設置されているので人妻さんは自分で作ることにしたらしい。

 ついでに俺の分も作ってくれるらしい。

 

 人妻高校生の手料理か。

 グッと来るな。

 それは良いとして。


 料理を待っている間もやることはあるので地図の作成を進める。



「そう言えば呪術師様の名前は潤さんが考えたんですよね。どういう意味があるんですか?」



 人妻さんは無言の空間が苦手なのか話題を振ってくる。

 個人的には黙々とやる方が好きなのだが会話しながらでも出来ないことは無いので話を合わせる。



「特に意味はないですよ。基本適当ですよ」

「そうなんですか? でも呪術師様は大変喜んでいたようなので何か意味があるのだとてっきり。でも意味がないというなら何故、シゲノヨシコなんですか?」



 シゲノヨシコ。


 それが呪術師、改め幽霊少女の名前である。


 かなり古風な名前だが封印されていたので本人の感覚は止まっていたので寧ろ普通に受け入れていた。

というより思ったより喜ばれてびっくりだ。

 嫌がらせと悪ふざけでつけた名前なのだが。


 本人が喜び周囲がそれを事実と認識していると少々気まずいのでここいらで白状することにする。



「色々と悪ふざけですよ。木という漢字にはシゲという読み方があるそうですし伊という漢字にはヨシという読み方があるそうですから」

「ん?」



 説明が分からなかった様子の人妻さんの為に文字に起こして伝えてみる。


 シゲノヨシコ。

 漢字で書くと木乃しげの伊子よしこ

 完全なる悪ふざけだ。



 半笑いで教えたところ、人妻さん、いやユキさんは真面目な瞳が笑っていない笑みで詰め寄って来た。

 主人公様が問答無用で押し切られてしまうあの笑みだ。



「仮にも女の子の名前なんですから真面目に考えてください」



 女の子て。



「いいですか。ちゃーんと考えてくださいね」



 物語チックな展開に笑みがこぼれそうだったがそんな状況では無かった。


 はい、すいません。



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