7-11
期せずして美少女と2人きりになったが、特にすることもないので移動することにした。
何でものじゃ子についっていた集団から綾香の治療が終わったと連絡があったらしい。
先ほどヒロイン少女がスマホを触っていたのはそのやり取りの為だとか。
真実は不明だが特に気にすることでもないので流した。
スマホを触る手が一筆書きで何かを書いているようだったが、流した。
連れてこられたのは日本海を一望できるようにそびえ立つ高層の病院。
医療以外にも充実させたワンラク上の総合病院を標榜しており、治療とリハビリを兼ねて長期滞在する患者を受け入れているらしい。
連行される間、運転をしてくれた人が説明していた。
恐らく無言の空間にいたたまれなかったのだろう。
何もしない空間に耐性のある俺は終始無言だった。
美少女と2人きりともなれば舞い上がったり格好つけようと思うところだが、残念ながら美少女と2人きりという事だけなら慣れている。
それに美人美女にテンションが上がったとしてもそれ以上の事は無い。
おべっかを使ってご機嫌を伺ったりペルソナを使って良いように見せたりするなんてことはしない。
何故なら面倒だから。
一方ヒロイン少女も特に口を開かなかった。
場をつないだり会話を盛り上げるのは男の役割とでも思っているのだろうか。
美少女たる自分がそんなことをする必要はないとでも思っているのだろうか。
流石にそれはひねくれすぎた推測だろうか。
いずれにせよ運転手が1人空回りする空間が続いた。
たどり着いたのは病院の最上階。
室内に美術品らしきものが並べられており部屋の雰囲気は面倒くさい。
下手に汚したらいくらかかるのやら。
恐らくVIPルームなのだろうがお金持ちの感覚は俺には理解できないらしい。
その一室で面々が揃っていた。
「あ、潤。話し合いは終わったの?」
患者である綾香とのじゃ子。白衣を着た男性が2名。
始めに口を開いたのはベッドに座る綾香。
口調こそ普通だが顔色はあまりよくない。
というより見える範囲内で左腕の欠損が治っていない。
もしかすると布団で隠れている足の方もまだなのかもしれない。
命があるのは分かっていたので特に感慨はないが取りあえず使えない奴に戦力外を通告しておく。
「おい似非のじゃ子。何が命があれば大丈夫だ。何も変わってないじゃないですか。ホント使えない人ですね」
「ふ、ふざけるな! 誰が使えないじゃ。ちゃんと治すわ」
「現に治ってないじゃないですか」
「今の科学技術でも欠損した部位は補えん。じゃが私ならそれが出来る。だがそれでも数十分なぞで出来るかっ!! この状態の綾香を命を守るだけでも現代医療ではできんことなのじゃぞ」
戦力外通告が相当堪えたのか憤慨するのじゃ子。
のじゃ子を慕うように立つ医師風の男性は加勢するように頷いている。
おそらくのじゃ子が言ったことが事実なのだろう。
綾香の命があるだけでも医学的には奇跡。
だがしかし、だがしかしである。
現在俺たちは非日常で生活しているわけで日常の尺度と比較されても困る。
医療で、現実で出来ないことをするのが異能なのだ。
たぶん欠損を補わず命をつなぐだけなら俺にも出来る。
チヤなら片手間で修復までやってのける。事実一度やってのけたし。
「まあいいんじゃないの? 数日すれば治るというのだから。それとも潤は私がそんなに大事なの?」
半人前どもに呆れていると綾香が小馬鹿にしたように言う。
確かに今の流れで言えば俺は綾香を心配して過度な注文を医者にしているようなモノだ。
戦力外は所詮戦力外。気にしても時間の無駄だろう。
切り替えることにしてため息がちに綾香の言葉を肯定した。
「そうですね。今回の事で痛感したんですが自分は面倒な事は苦手のようです。なので色々としてもらうためには綾香が必要なようです」
「それはそれは。私も体を張った甲斐があるのかな?」
「それで早速ですが幽霊少女、今回の目的だった呪術師はどうにか出来たので他の諸々をお願いしたいんですが」
「いや、ちょっと待て!」
打ち合わせを始めようとすると戦力外された人物が邪魔をする。
なんだかすごく困っているような怒っているような表情をしている。
「言ったじゃろ今後欠損を補うために治療すると。そんな人間に仕事を頼むのかお主は」
「そうですけど、それが何か?」
「うん。別に私は問題ないよ? どうせベッドにいるだけだし、仕事が無い方が落ち着かないかな。それに潤がそんなに頼ってくれるなら頑張らないといけないし」
やはり戦力外は使えないな。というか使えないから戦力外なのか。
それにしても流石は綾香だ。
優秀な駒だ。
ドクターストップなどお構いなしに働いてくれる。
ちょっぴりわざとらしいアピールは、いやかなりウザいが使えるので気にしない。
使えるものは使い倒す。
医者団困惑したが患者本人が働くと言っているので問題ない。
後は事務官に放り投げて物語を終えるとしよう。
というかこれカフェでの会談ほとんど意味がなかったよな。
始めから綾香の意識回復を待って仕事を頼めばよかった。
それか、もとより綾香と共に組織に対して交渉に行けばよかったのかもしれない。
というかその方が確実に楽だったよな。
気にしたら負けな気がするので気にしない。
兎も角終わりだ。




