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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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7-10


 その後も色々と聞いてみたがヒロイン少女の化けの皮は剥がれなかった。


 いや、元々皮などなかったのかもしれない。

 それ程完璧な少女だった。


 しかし完璧とはいえ普通の少女なので色々としつこく聞いたので俺に対する目つきが鋭くなった。

 大人しく疑わなければ良かったのにとか思わないでもない。


 これが主人公なら親身になってちょっと微笑めばコロッといくものを。

 そういう空回りをするところも友人Aの定めだ。



 ちょっぴり現実にアンニュイになっていると袖を引っ張られる。



「お、お兄さん、ちょっと」



 引っ張られた方に視線を向けると幽霊少女がプリプリしていた。

 頬を膨らます少女。

 うん、少女です。



「お兄さんはわたしを助けに来たんじゃないの? こんな贅肉ばかりつけた小娘じゃなく私と御話しようよ」



 幽霊少女に指摘されて見比べると確かにヒロインと幽霊では戦闘力が桁違いだった。

 その確認時にヒロイン少女から冷たい視線をもらったが気付かなかったことにした。


 取りあえず俺はそちらの星人ではないので受け流すとして、幽霊少女の誤解はどうするべきか。

 そもそも初対面時との態度の違いも気になるのだが。

 気になるというか変わり過ぎだ。


 高圧系少女から貧弱妹系少女のクラスチェンジ。

 お兄さん吃驚だ。


 しかし気にしても仕方がない。

 口調の違いも見解の相違も、訂正するのが面倒だし変に状況をこじらせてもあれなので流すことにした。



「御話と言っても何を話すんですか?」

「んと、何をしよう?」

 


 あざとくコテンと首をかしげる幽霊少女。

 うん、やはり子どもだ。実に子どもだ。それ以上何もない。


 やれやれとため息をつくと幽霊少女は何故か慌てだした。



「えと、あと、そ、そうだ呪いの御話。そう、呪い。私の力なんだからそんな駄肉に知識がなければわたしと御話すればいいじゃない」



 なんだか処断された某王妃のような話し方。

 相当慌てているのだろう。


 指摘しても慌てるだけなので話に乗ることにした。



「すればいいといいますけど知っているんですか?」

「い、一応自分の能力は把握してます。それに、はつ子ちゃんがごちゃごちゃ言っていたのを覚えているから大丈夫、のはず」



 ごちゃごちゃて。確かにごちゃごちゃだけど。


 説明がもらえるならそれに越したことは無い。

 折角連れてきたのは無駄無価値だったわけだし。


 取りあえず分かる範囲で説明してもらうことにした。


 幽霊は形を保つためには依代が必要。

 一般的には強い感情や場所などがそれに当たるのだが幽霊少女は呪術を操る異能者だったので自由に選べるとのこと。

 また依代が消失してしまうと形が保てず霧散してしまう。

 依代としてミイラは限界だったため早急に代替が必要となる。

 そこで一先ず魔力を結晶化したものに移ったという事らしい。



「それにしてもはつ子さんも都合よくそんなものを持っていましたね」

「なんでもお兄さんの話? を聞いて研究していたらしいよ。他にもなんかいろいろ言ってたけどわかんない。面白くなかったし」



 その辺は何かしらの用途があって持っていたのだろう。

 あるいは無駄話は多いが賢いので事前に準備していたのかもしれない。

 流石はのじゃっ子。



「あ、でも結晶も長く持たないって。こんな用途を想定していたわけじゃないからって。だから、その、お兄さんには私の依代になって欲しいんだけど」



 なんだ事前に準備していたわけではないのか。

 似非のじゃっ子、やはり使えないな。

 それはいいとして。


 幽霊少女の依代になるという事は呪われるという事だが、勿論断らない。

 というかそれ目当てなわけだし。



 さて遠回りしたがようやく目的にたどり着いたようだ。


 というか遠回りしかしてないよな。組織やらと相対する必要もなかったしヒロイン少女とお茶する必要もない。

 無駄に疲れて無駄に評価を落としただけだ。

 流石処理班。不必要が多すぎる。


 なんにせよ目的を達成できれば問題はない。

 達成できただけで十分だ。



「いいですよ。といってもやり方は知らないのでそっちで勝手にやってくれればいいですよ?」

「い、良いの? わたしが勝手にやって」

「構わないですよ。どうせ自分には理解できないですし興味ないです。不都合があればその時対処するだけですし」



 事実を言ったつもりなのだが幽霊少女の表情が強張る。

 確かに脅しにも聞こえないでもないが事実なので訂正しない。


 怯えからか躊躇していた幽霊少女だが決心したようで俺の右手を握った。



「じゃ、じゃあするね。わたしの依代になってくれるだけでわたしはわたしが尽きるまでお兄さんに尽くします。わたしの力は人を呪うしか出来ないけど、わたしの全てお兄さんにあげる」



 目を瞑り祈るように少女は言う。

 自分の全てとは中々重い。

 いやまあもらえるというならもらうが、愛が重い。

 流石は幽霊というべきか。



 それにしても契約には代償がいるとか言っていなかったか。

 別にのろいとか掛けられても問題ないので力を引き出せるようにしてほしいのだが。



「さっきは代償とか必要といってましたが良いんですか?」

「そ、それはっ、それはですね。格好つけというかあまりわたしの力を使いたくないから人を遠ざけるために適当に考えただけで。そ、その騙してごめんなさい。ごめんなさい」



 適当て。適当て。

 まあ代償が不要というならそれに越したことは無いので気にしないでおく。

 下手に突っ込んで長引かせるのも面倒だし。



「別にいい。それで契約を進めてください」

「う、うん。分かった」



 契約が順調にいっているのか幽霊少女の手から力が流れてくる。

 勿論ドロドロとした体に悪そうな力が。

 しかしそのドロドロも体に入ってしばらくすれば馴染む。

 体内で反発し合うこともなく順化した。



 感覚として契約が成立することを理解すると次第に幽霊少女の体が薄れていった。


 一瞬成仏するのかと思ったが違う。

 幽霊少女もまた順化しようとしているのだろう。


 しばらくすれば事は終わる。終わればまた元に戻る。

 それが分かっているのか消えてゆく体に幽霊少女は落ち着いている。



「これでわたしとお兄さんは一蓮托生、死ぬまで一緒だね」



 やはり幽霊、愛が重いな。

 別にどうでもいいけれど。


 返答をするのも馬鹿らしいので受け流す。

 それをどう受け取ったのか幽霊少女はクスリと笑って消えていく。



「それじゃあお兄さん、また後で。あ、そうだ。出来れば次にわたしが起きるまでに名前を考えておいてくれると嬉しいな」



 幽霊少女は俺の返答を待たずに消えていった。

 そしてソファに小汚い石だけが残る。


 なんとも面倒な宿題を残して消えていくのだろうか。

 今度会った時は小言の一つでも言ってやろう。

 あるいは適当な名前を付けてやろうか。

 そんなことを考えつつも目的が達成されたことに安堵して冷めた珈琲を流し込む。




 それにしても、ヒロイン少女は完全に空気になっていたな。

 さぞ暇をしていただろうと視線を向けると面白くなさそうにスマホを触っていた。


 いや、ヒロイン。

 そこは大人しく待っていようよ。



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