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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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7-9

 結果として思惑通りに行かなかった。


 命さえあればいくら欠損していても大丈夫と言っていたくせに酷い慌て様のはつ子さん。

 ヒロイン少女たちは医療法人にも伝手があるとのことで病院へと行ってしまった。


 もしかしたらこれははつ子さんの策略かもしれない。

 このままでは俺が面倒をすべて引き受ける形になってしまう。

 似非のじゃっ子は策士か。


 なんて思ったが多分違うだろう。

 おそらくだがはつ子さんの反応の方が正常。顔見知りの手足がパージしていたらのんびりなど出来ないだろう。

 多分普通にしている俺の方が可笑しい。



 しかしその辺は気にしても仕方がないので切り替える。

 久しぶりの処理班かと諦める。



 交渉するにあたって邪魔になる老人と野獣くんは簀巻きにして本殿に放置することにした。

 おそらく何もなければ3日ほどは動けないのでちょっとした罰だ。


 と思ったらここぞとばかりに集団内の女性陣が危害を加えていた。

 恐らく老害だったのだろう。止める義理も必要もなかったので見逃した。


 他の人たちも帰ってもらった。

 というより集団の大半は社会人で急な呼び出しに仕事を抜け出していたらしい。大晦日でも仕事とはご苦労様だ。

 一応予定の合う人はいたが交渉、妥協には少数の方が楽なのでお引き取り頂いた。



 そうして残った3人、俺とヒロイン少女とビビり少女はカフェでお茶することにした。

 何故カフェなのかといえば12月の昼前は寒く外での歓談は堪える。

 それにそれなりの時間を外で過ごして体が冷えていたので少し暖まりたかった。


 そんな訳で極々一般的なカフェに移動して俺とヒロイン少女が珈琲を頼みのんびりしたところで話を切り出した。



「さて、何から話しましょうか」

「私たちがどういう組織で何をしてきたからを説明した方が良いでしょうか」

「御話的にはそうなんですが、個人的にそう言うのは興味がないので大丈夫です。協力してもらうにあたって今後の方針とか組織体系とかも別に今じゃなくていいですね。担当の者が席をはずしている状態ですし」



 勿論担当者といえば綾香である。

 今回の一番の被害者だが自分で買って出た仕事なので仕方がない。

 従者というのだから主の命令は絶対だ。

 恐らくそんなことを言わなくても頼めばやってくれる。

 あれはそういう人種だ。



「そうなると私が話すことはなさそうですね」

「となるとこれの話ですよね」

「ですね」



 俺とヒロイン少女はため息がちに目の前を浮遊する少女を眺めた。


 少し考えれば分かることで呪術師は既に人間ではない。

 ならば何かといえば恐らく幽霊。

 では幽霊が何かといえば魔力や妖気、そういったものに思念が残ったもの。

 それが集まり強くなると物の怪になるらしい。


 ナマズさんと出会った時にはつ子さんがそんなことを言っていた気がする。

 とはいえ具体内容は聞き流していたので覚えていない。 



「目障りなのであまりふらふらしないでください」

「ご、ごめんなさい」



 目の前をくるくると泳ぐのが目障りで注意するとビビり少女、改め幽霊少女は大人しく俺の隣に座る。


 何故綺麗な少女の横ではなくモブの横に座るかといえば封印されていたので苦手意識があるとのこと。

 移動中も俺にびくびくする癖にしっかりと服の裾を掴んでそばを離れなかった。


 少女に頼られる。

 残念ながらグッと来ないな。

 それは良いとして。



 和平がなって協力が取り付けられた今俺がしなければならないことは呪術師の制御だ。

 勿論言質だけではなく出来れば能力で縛りたい。

 呪術というのだからそういうこともできるだろう。というかそれが本来の目的だ。


 そうなると呪術師の状態を知らなければならないのだが生憎俺には知識がない。

 ならば変なプライドなど持たず分かる人に尋ねよう。



「この幽霊少女の状態を理解できますか」

「すみません。私にはそういった知識がなくて。それに私自身あまり力を持っていないんです。伊勢谷スケールで言えばFランク相当。あなたが少女とおっしゃるそれも私にはぼんやりとした力の塊にしか見えないんです」



 ヒロイン少女、まさかの戦力外。


 俺としてはヒロイン少女との会談は俺の知らない知識の補完の為なのだがこれでは意味がない。

 元をたどると、本来こういう時の為のはつ子さんなのだが、使えない奴だ。


 さてヒロイン少女が使えないと手詰まりな感じがする。

 どうにかしてことを進めなければならないのだが。


 そこまで考えて、考えが切り替わる。

 いや、別に今すぐする必要もないのではなかろうか。

 何事も出来る人がすればいい。

 無理にする必要はない。

 何せここには周囲をかき乱す主人公様がいないのだから。



 それに力の強化は急務だがこの程度で何とかなる問題ではない。

 仮に幽霊少女と弱小組織だけでも何とかなるのであれば途中で邪魔が入っているはず。

 見逃されている今ならば多少まごついても大丈夫なはずだ。


 そう納得するとあっさりと諦めることにした。



「分からないことは分かる人にお願いすることにしましょう。別に自分たちがしなければならないわけでもないですから」

「それで、そんなことでいいんですか」

「いいんですよ。気に食わないってことで反抗してくる人がいれば御話すればいいだけですし」



 全く他意は無いのだがヒロイン少女の表情が強張り幽霊少女がビクッとする。

 他意はないのだが、怯える少女たち。

 グッと来る。

 それはいいとして。



 何もしないなら本当にカフェでお茶をしただけになってしまうので気になっていたことを尋ねることにする。



「失礼ですが自己紹介してもらってもいいですか?」



 かなり不躾で失礼だとは思うがどう聞いても変わらないので気にしない。

 少し戸惑った様子のヒロイン少女だったがそれも少しで完璧な笑顔で答えた。



「改めまして、渡貫わたぬきユキと申します。気比けひ女子高等学校に通う1年生。7月に誕生日でしたので16歳です。能力者としては異能を感知できる程度しかなく未熟ですが組織の中では第三席として活動してきました。組織の中での立ち位置は」



 現在組織での立ち位置などどうでもいいので情報は削ぐ。

 女子高という事は見た目がこれで「だが男だ」ということは無いだろう。

 それでも昨今の学校事情は分からないので一応尋ねる。



「女子高という事は女性ですよね。身も心も」

「そう、ですが?」



 ヒロイン少女はかなり困惑した表情になる。

 自己紹介を強要されて性別を疑われたのであればそういう反応も当然だ。

 これも仕方のないことなので気にしない。


 ヒロイン少女の体つきは自身の申告通り女性としての形をしている。

 勿論詰め物や偽装の可能性もあるが。


 分かりやすく性に問題がないという事は内面的に問題があるのだろうか。

 初対面の相手に内面に問題があるとか考えるのはかなり失礼だがこれも仕方がない。

 外面が良すぎるのだ。


 ちまちま聞いても仕方がないのでバッサリと斬り込むことにする。



「失礼を承知で聞きますが何か特殊性癖とか特殊な事情ってありますか。LGBTだとかストーカー気質だとかヤンデレだとか自傷癖があるとか加虐趣味があるとか二重人格だとか中二病だとかショタ属性だとか枯れ專だとか腐女子だとかその他諸々」

「えっと、その、すみません。あなたが何を言っているのか分からないです」



 ヒロイン少女は質問の意図が分からずはにかんでいる。

 恥ずかしそうに申し訳なさそうに笑みを浮かべる様子はどう見ても文句なしの美少女。

 それも困っている表情の笑みは心を持っていかれそうな程可憐だ。


 ヒロイン少女には何かを隠している素振りは無い。

 勿論完璧に嘘を見破る術があるわけではないので確かなことは言えないが普通の美少女に見える。



 これはどういうことだろうか。

 ヒロイン少女は本当にヒロインだとでも言うのだろうか。

 いや、別にゲテモノとか色物を望んでいるわけではないのだが。



 終にヒロイン登場なのか。

 いやしかし。



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