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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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45/123

7-7

 お出迎えは総勢20名程。

 綺麗に隊列をなして立っている。


 誰1人肩を激しく上下させていないあたりのんびり行軍してきたのだろうか。それとも態々どこかで整えてから来たのだろうか。

 前者なら能天気だし後者なら阿呆だ。


 そんな集団を従えるのは3人。


 恐らく首魁は中央に位置を取る老人。

 不気味で不快な笑みが張り付いていて良い感じの悪人風情を醸し出している。

 しかし、それほど面倒そうな雰囲気は無い。



 面倒になりそうなのは向かって右側。

 身長190センチを超えているであろう長身とずっしりと身のつまった恰幅のよい男性。

 某ハンマー投げ選手を彷彿とさせる体型だ。


 ただ、醸し出す雰囲気はスポーツマンというよりは野獣に近い。

 何も考えていなそうでちょっと面倒。



 残る左の人物は良く分からない。

 全身を覆うローブを被り顔もうかがうこともできない。流れ出る気配からすると気にする必要はないのだが少し気になる。


 この手でよくあるのはローブは魔力遮断効果があって実はローブを被る人物こそが支配者、なんてことだ。

 全てを気にするわけにもいかないが見た目や少ない情報だけで判断するわけにもいかない。



 しかし、ローブよりも今は他に気にするべきことがある。



 綾香である。


 封印を解きに行ったはずの綾香は現在野獣に抱えられ、それも髪を無造作に掴まれている。

 どうやら解除に成功したものの逃走は上手くいかなかったらしい。


 そして捕縛された後かなりひどい扱いを受けたらしい。


 なんだかラスボスとの最終決戦で辛くも勝利したロボットアニメの主人公機みたいになっている。

 幸いメインカメラは健在だが色々とパージしている。 


 何とも無残な姿である。

 少しばかり吐き気がする。



 だが、そこは大した問題ではない。

 確かに見るも無残で酷いと言えば酷いのだが命はある。欠損もあるものの命に別状はない。

 ならば問題はない。



 問題なのはそんな状態の綾香を見てもそれ程感情が揺さぶられなかったことだ。


 いつぞやは2日も寝込むくらいだったのだが今では軽く吐き気を催すくらいだったのに。

 あの時はチヤが何やら画策していたから長引いたと言っていたが失神したのは事実。

 それが吐き気だけになるとはやはり人間の適応能力は凄い。


 正直なところこの方面ではあまり適応したくない。

 人は殺したくないし目の前で死なれるのも嫌だ。

 色々と面倒だから。



 綾香もどんな状況であれ生きていれば問題はないが死ぬかも知れなかったと思うと少々何かがどこかに刺さる感覚はある。


 そういった漠然とした死への忌避感はあるもののそれ以外の感情は湧いてこない。



 綾香を無造作に掴む野獣くんに斬りかかろうなんて気は起きない。

 咆哮する気も起きない。

 勿論、涙も出ない。


 やはり俺は主人公ではないのだろう。

 顔見知りが酷い目にあっても酷いことだなという理解以上のモノが沸き上がってこない。


 これが俺の本質なのか人外とやらに堕ちた代償なのかは不明だが人として終わっている。

 ま、そんなことは良いとして。



 やはりこいつらも何とかしなければならないのだろうか。何とかしなければならないんだろうな。どうせ話し合いでは何ともならないんだろうな。

 面倒くさい。


 そんなことを考えていると老人が一歩前でる。



「こやつの主は小僧かな。コウタ、返してやれ」



 老人がそう言うと脇に立っていた野獣くんが綾香を放り投げる。

 それもペットボトルを投げ渡すように適当に。


 モノのように扱われた綾香は空中をくるくると回る。

 なんとも非人道的な扱いだがそんなことで騒ぎ立てる程俺の感情は豊かではない。


 

 くるくると回る綾香を衝撃を殺してしっかりと受け取る。

 大多数の四肢が欠損し、体の至る所に生々しい傷があるが体温は正常にある。

 抱えたことでそれが伝わり、意外にも少し安堵した。



「まあ、ご苦労さん」



 意識があるのか不明だが一応ねぎらっておく。

 勿論そんな言葉に意味はない。感傷もない。


 何となく出た言葉だ。

 それ以上の感情は無いので一先ず綾香を地面に置く。


 そして動くのに邪魔なので上着を一緒に添える。



 その行動が仲間を憐れんでいるように見えたのか老人が馬鹿にしたように言う。



「力量差も戦力差も分からず走るとはやはり子供というべきかな。我らの守りは完璧だ。伊達に長年守り続けておらんよ。どうじゃ今からでも逃げ出してみたら。泣いて詫びれば見逃してやってもよいぞ」



 挑発なのか自慢なのかよく理解できなかったので流すことにした。

 年を取っているからなのか元よりそういう人物なのか不明だが老人はどうやら面倒な人種らしい。


 それにしても集団と言ってもこの組織は独裁なのだろう。

 良くも悪くも誰も主張してこないあたり関係性がうかがえる。

 普通の組織なら阿保で声だけ大きい噛ませ犬が出てくるものなのだが。

 いないものはいないで仕方がない。



 さて、御話的には老人たちがどういう組織なのか何故封印に携わっているのかなど説明を聞く場面なのだが面倒だ。

 相手の事情や身の上話ほどつまらないものは無い。

 さっさと終わらせることにしよう。



「一応尋ねますが自分はあなた方が長年縛られてきた呪術師をもらい受けに来たんですが協力してくれませんかね」



 俺の提案を老人は鼻で笑い答えもしなかった。


 それも仕方のないことかもしれない。

 何年封印業に携わっているか知らないが今までやって来たことに自負があるだろう。今回も侵入者の1人である綾香はあっさりと撃退している。

 そんな中で子どもが何を言っても戯言と思うかもしれない。


 もしかしたら引き連れてきた集団も戦闘の為ではなく解かれた封印をかけ直すためのものかもしれない。


 こればかりは仕方がない。

 問題があるとすればあっさりやられた綾香が悪い。



 とは言えそんな相手の事情を理解してやる義理は無いので交渉がだめなら実力行使に移る。



 長刀を出し老人に接近して薙ぐ。

 気配を消しそれなりの速度を出したつもりなのだが刀の軌道上に邪魔が入る。


 野獣くんが綺麗に妨害に入る。

 野獣くんにも予知やあるいは直感のようなものがあるのだろうか。

 あるいは俺の力はそれほど高くないのか。それとも分かりやすい癖でもあるのだろうか。

 兎も角、今後の課題として気にする必要があるかもしれない。


 そんなことを数瞬で考えながらも長刀を振り抜く。


 しっかりと間に合った野獣くんだが老人を逃がすではなく刀を受け止めようとしている。

 前回の秘書さんもそうだったが刀の形をしていることが幸いしているのかもしれない。

 やはり日本刀は正義だな。



 止めた気でいる野獣くんと守られた気でいる老人だが残念。

 俺の刀は物理現象では止められないので老人ともども貫通する。


 恐らく主人公やそれ以上の相手では効果を発揮できないが野獣くん程度なら気にならない。

 老人に至っては障害を感じなかった。



 さっさと次の段階に進めたくなっていたので手加減せず振り抜いた。

 その為振り終えて距離を取ったところで2人は地に伏せた。



「ば、かな。なに、を」



 わずかに残る体力で老人が声を挙げる。


 ここは自分の能力をひけらかして状況を説明するところだが、そんなことはしない。


 というか何故創作の敵さんは御喋りなのだろうかと思う。

 俺の力はと説明したり、お前の状況はと理解させたりと主人公の逆転を手伝っているようにしか思えない。

 自分の凄さ素晴らしさを示したいのは分かるのだがそれで覆されては世話がない。



 勿論俺はそんなことをしない。

 下手に遊んでこれ以上面倒が起きては馬鹿らしいので無駄なことはしない。



 首魁と剣が行動不能になっているのを確認してその他に声を掛ける。



「他に会話できる人はいないんですか。こちらとしてはあなた方に危害を加えるつもりは無い。封印されている呪術師を自分の管理下に置ければ問題はない。寧ろあなた方は封印だなんて面倒なものに縛られなくて済む。これはお互いにとって妥協できる提案だと思うんですが如何でしょうか」



 独裁組織で末端が声を挙げられるとは思っていない。

 老人は切り捨てられた形なので解放されたと誤解してもいいところだが難しいだろう。

 独裁組織に慣れてしまえば自分の意見は言えなくなる。


 ならばこんな問いかけも無意味なのだが聞かないわけにはいかない。

 協力してくれるなら願ったりなのだ。そちらの方が楽なのだし。



 しかし、集団からは誰1人声を挙げなかった。

 数人顔を動かし周囲を窺っているようだったが意見を主張してくる人はいなかった。


 これも仕方のないことかと諦めかけたところで置物になっていたローブが口を開いた。



「本当にそんなことが出来るのでしょうか。呪術師を暴走させず管理下に置くなど」



 声色は若い女性だった。それも比較的可愛らしい。


 しかし、俺は直ぐに考えを改める。

 所詮は俺だ。

 期待してはいけない。


 顔も体型も隠れているのだからその中身がどうかは分からない。

 それはこれまでの経験が物語っている。

 何せ今回近くにいるのがロリババアとギャルババアなのだから。



 そんな葛藤はさておき会話が出来るのは願ったりなので交渉を始める。



「どうでしょう。そのつもりで動いていますが確約はありません。だから協力してほしいと言っているんですが」

「あなたに協力して成功した場合私たちはどうなるのでしょうか」

「その辺は考えてないですね。呪術師対策以外では特に強制することはありませんからね。何かあれば話し合いで妥協点を探ればいいんじゃないですか?」



 力のない俺にとっては弱小でも組織が手に入ることには越したことは無い。

 だからと言って無理に従わせるのも面倒なので考えていない。


 今は組織の形成は目的ではない。


 交渉事としては色々と探ったり不安を煽ったりするところなのだろうが面倒だ。

 伝えるべき情報はすべて伝えたしあとはローブの判断に任せよう。


 ダメだったらその時は武力行使すればいい。

 そんなことを考えて待っているとローブはそれ程時間をかけず決心した。



「分かりました。長老とコウタさんを圧倒できる力を持ちながらも情けをかけて頂けるあなたを信じましょう」



 そう言ってローブはローブを脱ぐ。


 ローブの下から現れたのは集団と同じ統率された衣装を着こなした妙齢の美少女がいた。



 普通に、文句なしの、見た目10代後半の美少女だ。



 そんな少女を見て柄にもなく思った。


 終にヒロイン登場か。



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