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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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43/123

7-5


 封印を解かれたミイラは歓喜の声とともに立ち上がる。

 そして自由になったことの喜びが抑えきれないのか踊り回る。


 それはもうクルクルと。


 回転するごとに皮膚や骨が剥がれ飛び散っているのだが、当の本人にそれを気にするそぶりは無い。


 新たな契約者を得たことで今の依代を気にする必要が無くなったのだろうか。

 あるいは力が解放されたことで修復も出来るのだろうか。


 いずれにせよ踊りに踊るミイラ。

 背筋が伸び無駄に姿勢が良く可憐さを見せて踊る。


 踊り手がもっとまともであれば心奪われていたかもしれない。

 そんなことを思わせる程綺麗なものだった。


 しかし現実は骨や皮を飛びちらしながらミイラが踊っているだけ。


 なんかこう、すごい。

 なにがって、こう、兎に角すごい。


 飛び散っているのが顔にあたるし、そしてその骨や皮が舞っている空気を吸っていると考えるとかなりかなりなのだが気にしても仕方がないので諦める。

 現状そういった諸々が飛び交っている空間にいて呼吸していたりするわけだが、考えすぎると精神衛生上まずいので早急に消去する。



 ミイラ舞を邪魔するのも無粋なので自然に止まるまで待つ。

 時間の無駄でしかないのだが精神衛生の為には必要な時間だった。


 ミイラが満足するには数分かかり止まった頃にはゴミがこんもり出ていた。

 うん、これについては考えない方向で。

 全力で見逃そう。



 止まったミイラと自然に目があったのでこれ幸いと声を掛ける。



「気分は済みましたか。今後の事を話したいんですが」

「おや、まだいたのかえ。さっさといね。もうお主に興味は無い」



 わーお、絵にかいたような下衆だ。

 約束とか色々とお構いなしらしい。


 そんな悪態にもめげずに、十中八九無駄になると分かっているが一応聞いてみる。



「確認しますが契約を結びましたよね。協力すると」

「はんっ、そんなもの何故(あて)が守らなならんのだ」

「それでも一度結んだ契約は変更できない、不履行者は権利を失う、じゃなかったんですか」

「そんなもの私の気分で何とでもなるわ」



 勝ち誇った笑みのミイラ。

 俺を見る目はゴミ屑か何かを見ている其れのようだ。

 オヤジはいないけど。


 全ては自分の思惑通り、これで自由だ!

 といった様子。



 本来ならここで「裏切ったな! 俺を裏切ったな!」と信じることを止めて魔王になるところだが生憎俺は主人公ではない。

 というかミイラは幼馴染の親友でもない。


 ま、阿呆の相手も面倒なので一先ず放置する。



 取りあえず気絶した幼女を放置しておけないので背負う。

 幸か不幸か幼女は肉が少ないので重みがない。

 今はそういうことを言っている時でないので普通に軽いことは幸運だろう。


 しっくりくる幼女の位置を探っているとゴトッと音がする。


 その音に直ぐには反応せずしっくりくる場所を見つけるのに時間をかけてから地面に横たわる哀れなミイラに視線を向ける。



「さて、どうしますか? 交渉します? 諦めます?」

「な、何を」

「何をって封印を一時的にしか解除していなかっただけですよ。当たり前じゃないですか相手の言葉なんて鵜呑みにするはずないじゃないですか。あなたも同じでしょう?」



 確かに俺は長刀で封印をきったが生憎俺の刀は万能ではない。

 出来るのは耐久力を減らすだけだ。


 刀で封印や呪いも斬ることで効果を限りなくゼロまで減らせるが解除は出来ない。


 勿論そこまで詳しいことを言う必要はないので言わないが。



 それに呪術師は封印されるような人間だ。

 自分が不利になるような情報を態々言うはずがない。

 相手を騙そうとするのも当然だ。


 そもそも、簡単に絆されない交渉で何ともならないから封印されたのだろう。

 ならば何かあると考えるのが普通。

 嘘をつくくらいはこちらも想定内。


 というか言質だけで信じてしまうのは主人公くらいのモノだ。

 言葉なんてそうそう信じられるものではない。


 俺の場合、主人公様が善意でしか生きていないのでそういったひねくれた見方をする癖がついてしまっただけなのだが。

 これも処理班系登場人物の悲しい性だ。



 裏切るあるいは騙す可能性を始めから考慮していたので刀には少ししか力を込めていない。

 それも完全に封印が解けるように見せて時間が経てば戻るくらいに加減してある。


 本当に一時的に解除してぬか喜びさせただけだ。


 世界は甘くない。

 これも仕方のないことだ。



「馬鹿なっ!! お主はしっかりと私の呪いで縛ったはず」

「それはお互い様というところです。あなたが色々隠したように色々あるんですよ」



 勿論契約、呪術にも対策はしてる。

 対策というかごり押しだが。


 ミイラは日本最高峰の呪術を扱う。

 そこには自信があっただろう。封印されるという失態があったにしても真正面からの能力のぶつかり合いなら負けないと信じていたのだろう。

 呪術評価AAA+は伊達ではない。

 普通に生きていれば王に出もなった気分だろう。



 だが、所詮日本最高峰。


 世界とはレベルが違う。


 主人公様とは格が違う。



 勿論日本最高峰でも使い方によっては対抗できるだろうし日本最高峰が世界最高峰ということもある。

 けれど主役様方に巻き込まれている俺からすると所詮その程度。


 直接能力がぶつかり合う契約など主役様相手でなければ何とでもなる。

 こちらに都合のいい契約を結ばせるところまで圧倒はできないがあれこれ画策くらいは出来る。


 それに今回は向こうが色々としているところに合わせて切断しただけだ。

 勿論そこまで言わないが。



 さて、哀れ哀れに横たわるミイラだがどうしよう。

 我が儘で傲慢な考えだが面倒な相手は扱うのも面倒だ。

 綾香に労力を割いてもらったのだが飛ばしてしまうのも仕方がないかもしれない。


 とはいえ折角使った労力を無駄にするのももったいないので一応問いかけてみる。



「さて、最後通告です。別に全てを縛るつもりは無いですが勝手にされるのは面倒ですのでせめて話し合いがしたいです。先にも言いましたが是が非でも協力が欲しいわけでもないので好き勝手したいと言うなら止めません。それでどうしますか」



 おそらくここで改心くらいはして見せるだろう。

 そして改心して今度こそ信じられるだろうと安心させて再度騙すのが王道。


 自分の言った言葉を守る人間や言質に縛られるのは少数派なのだ。



 一応本当に改心する可能性もあるのだがその程度の人間なら初めから騙したりしないだろう。

 あるいは理想を捨てて妥協を選ぶということならあるかもしれない。

 その場合いつでも出し抜く機会を探る気で入るだろうけど。



 いずれにせよ協力を得られるかはもう一度騙されてみるのが簡単だろう。


 騙される前提で行動すれば面倒を最小限に抑えられるだろうがやはり面倒だ。

 とはいえこれ以上時間を無駄に出来ないので十全は諦める。



 さてどう出るやら。


 と、身構えているとまさかの展開。



「うわぁああああああああああん」



 ミイラ号泣である。

 いや、涙は出ていない。というかそもそも目玉もないので泣いているのか定かではないが子供のように泣いているように見える。

 おそらく気配から俺が勝手にそう読み取っているからなんだろうけれど。


 そんな急展開を冷静に眺めて分析する。


 泣き落としか。

 ミイラに懇願されても感情など揺さぶられない。

 だからその考えは無かったな。


 見た目は置いておくとして、自分の身の上話を説明して同情を煽るという可能性もあるのか。

 今更事情を説明されても困るのだが。



 いずれにせよ泣かれても困るだけだ。

 いや困っているというのも相手に隙を与えるだけなので何事も無いように淡々と告げる。



「そういうのいいんでどうするか答えてくれませんかね」



 効かないと分かりあっさりと止めると思い気や鳴き声は酷くなった。

 

 なんかもう騒音でしかない。



 これはつまりどういうことだろうか。


 まさかのマジ泣きなのだろうか。


 いや、まさか、そんな、馬鹿な。


 なんて現実逃避しても現実は変わらずミイラが泣き続けるだけだった。



 やれやれ面倒だ。




 ホント、どうしよう。



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