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秋も終わり年の瀬も押し詰まって来た12月。
教師の休みで自習となった教室では今日も今日とて冴えない男子高校生の周りを見目美しい五人の女子生徒が取り巻いていた。
「れお、きょうも、べんきょう、する」
「そ、そうだね。もう一二月だしね。勉強しなくっちゃ」
「ええ、そうですわ。私が落第などさせませんは」
「わ、私も手伝うぞ!」
「お姉さんな私が教えてあ・げ・る」
「い、いや、俺はもう大丈夫だから。大丈夫だから、もう許してぇえええええ!」
今日も今日とて主人公とヒロインズは平常運転だ。
そして我が高校に今年度四人目の転校生が来た。
お姉さん系爆乳美人、神居サン。
身長160後半ですらりと伸びた手足。端正な顔立ちと白くきめ細やかな肌。綺麗な黒長髪。一番目を引くのが曲線がはっきりみえ球にさえ見える程の爆乳である。
そんな爆乳お姉さんは転校のあいさつと共に竜泉寺の妻宣言をした。
竜泉寺に共に生きようと言われ彼なしには生きていけない。
既に色々な初めては捧げて他では満足できないとも宣った。
新ヒロイン登場。
であっても平常運転である。
「クッソォ主人公め、もげろ!」
「お姉たまはずりぃぞ!」
「いやいや、ロリこそ正義」
「はぁ!? 金髪碧眼こそ至高だろ」
「意外や意外、百合の園もありだと思う」
「男子五月蠅いわよ!」
「……大穴で委員長かなぁ」
勿論、親愛なるクラスメイトの諸君も平常運転である。
突然のハレム参入もさっくり受け入れ妻宣言をされた主人公様にも軽い制裁だけで済ましている。どっかの阿呆なクラスの異端審問にでもかければいいのにとか思うのだが現状をすっかり受け入れている。
そしていつものように主人公を囃し立てている。
嫉妬に怒り狂うでもなく陰湿ないじめに走るでもなく愉快なクラスメイトでいる。
流石は主人公のクラスメイトだ。
そんな日常の中心である主人公様とは言うと目下涙目である。
「じゅ、潤助けてくれ~」
乙女の紛争に放り込まれた主人公に立場などない。
精々周囲に助けを求めるくらいしかすることしか無い。
だが男子高校生の、それもパッとしない野郎の涙目など可愛くないので取り合ってやらない。
正直なところ留年してもらった方が俺との縁が切れる可能性があるので色々と楽になれるかもとか思ったりしなくもないのだが。
まあ知り合いが留年とか少し恥ずかしいので出来れば普通に平穏に卒業していただきたい。
普通に進級して普通にクラスが分かれて普通に物語からフェードアウトしたい。
「大人しく教えてもらえ。じゃなきゃ本当に留年になるぞ」
結局のところ、いつもの竜泉寺と仲間たちの異常で普通の日常だ。