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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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7-1

 大晦日の朝。

 海岸沿いの地方都市でのんびりと朝食を取っていた。


 正直なところ最近食欲というモノが薄れているので不要といえば不要なのだがどうも視界に入ると食べたくなる。

 魚市場直ぐの直営店。ちょっと頑固そうなオヤジがやっている食堂。

 そういうところも高評価だった。


 まあババアどもが勝手に入っていったという事もあるのだが。

 それは良いとして。



 何故こうものんびりとしているかといえばそれが普通だからだ。


 主人公のように頭ごなしで勝手気ままにで何とかなるのはやはり主人公だからだ。

 あるいは主人公の為に周りが動いてくれるからだ。


 主人公につき合わされる身としてはそれが良く分かる。

 何事も行き当たりばったりでは無い。主人公からの視点だけで見れば運や御都合主義で何とかなっているように見えるけれどその裏では多くの人々が支えているのだ。

 主人公が何とか上手くやっているように見えるのは最後の最後で帳尻合わせをしているだけでしかない。

 そこに持っていくまでには大勢の人物が必死に駆けまわっている。その人たちがいなければ逆転なんて生まれない。

 それは良いとして。



 主人公でもない俺には動き回ってくれる裏方などいるはずもないので自分で色々とやっていくしかない。

 そしてその色々には時間やタイミングもあるので思い立ったが吉日ではない。


 それ故に海の幸豊富な朝食をのんびりと食べているが致し方のないことだ。

 勿論、食事だけでのんびり終わるなんてこともしないけど。



「それで首尾の方はどうですか」



 なんて格好つけると俺も出世したなと思う今日この頃だ。



「予定したとおりに。少し違ったこともあるから説明するね」



 俺の問いに答えたのは明細柄のコートを着たウルフカットの女性。短い髪が似合う快活そうな女子大生という風貌の今宮綾香だ。


 顔も体型も普通に好みなのだが如何せん中身が……。

 ま、そんなことはどうでもいいな。



 今回この港町はとある人物に合うために来た。

 名前は知らない。ただ能力や特性はある程度知っている。

 と言っても見聞きしただけでどの程度正しいは不明だが。


 伊勢谷ランクによれば戦闘力はF、魔力量はA、総合評価B+。特記として呪術がAAA+判定。

 その人物に出会い協力を取りつけるのが目的だ。


 おそらく総合評価Aでは主人公やその周りには敵わない。

 その部下相手でも厳しいかもしれない。

 本来なら最低でもS判定以上の仲間が欲しいのだがそんな贅沢は言っていられない。


 主人公様なら敵としてやって来た絶世の美女とかを絆すのだろうが当然友人Aにそんな美味しい話は回ってこない。


 というよりそんな高ランクの人間が簡単にいるはずがない。

 世界でも数十人しかいないのにそれが日本にばかり固まるはずもない。

 そこまで世界は都合よく回っていない。



 イレギュラーな竜泉寺や早乙女を除くとして現在日本最高峰は九重。

 その九重もランクはAAA+。Sに届いていない。

 そんな状況下でフリー且つ友好的なSランクが残っているはずがない。


 ならばどうするか。

 当然、既に様々な組織が出来上がっている状況で楽な協力者など残っていない。


 勿論既存の組織や集団に協力を仰ぐという事もひとつだがそれも力がなければ埋もれるだけだ。

 現状俺が必要とするのは面倒を排除できる力なので組織の平社員として庇護をもらうことではない。



 となると出来るのはじゃじゃ馬かゲテモノかそういった偏りに偏ったものを扱うしかない。


 そこで今回狙いを定めたのが呪術師。

 それも性格や能力がピーキー過ぎて数百年前から封印されている少女(?)だ。



 ホントに俺の周り、決してヒロインではないのだが、がカオスすぎる。

 いやまあどーでもいいんだけど。

 どうでもいいのだけれど。



 兎も角、ピーキーな呪術師に協力を求めるのが目的。

 問題は相手が封印されているという事。


 今のところ封印されている場所は確認できたがその解除方法が不明。

 ただ、何やら代々守り隠している集団があると分かったところだ。

 そしてその解除方法を綾香に探ってもらっているところだ。


 綾香の変身はこういった情報収集に大いに役立つ。顔や姿を変え色々なところに潜り込んで情報を集めている。

 そういう秘密を探るのが好きなのかやけに上機嫌だ。



「封印本体は街中の神社に隠されている。けれどそこに行っても何も出来ない。本体はあっても封印されているから声を掛けても意味はない。向こうには聞こえているかもしれないけれど意思疎通が出来ない。というのが昨日確認したことだね」



 そう意外なことにピーキーな呪術師は街中の神社に奉られていた。

 物語のイメージだと山奥だとか洞窟だとかさびれた神社とかを想像するが呪術師のいた神社は街の中にある。

 それも神宮などの大きいものではなく街の小さなもの、家と家の間にある一軒家程度の敷地の神社にいた。



 何でも科学技術が発展した昨今は秘密裏な場所というモノが日常の直ぐそばにあるらしい。

 昔であれば山奥など人が滅多にやってこない場所を選べばやっていけれたのだが航空写真や衛星写真、人間の行動範囲が広くなったためそういう場所が隠れ家に適さなくなった。

 それならばとして考えられたのが街中に引き込むことらしい。

 隠す必要性が増えたなら態々奥地にする必要が無い。という事らしい。


 そんな事情通ごとく説明したのは現在シラス丼を幼児のような箸の持ち方で幼児のように慌ててきたなくかき込んでいるはつ子さんだ。

 勿論幼児なので俺と綾香の難しい会話には入ってこない。



「それで封印についてだけどどうやら別の施設に要があるらしい。そこは幾重にも警備が施されていてBランク程度の異能者数人ではどうにもできない。以前10人程度の襲撃者があったみたいだけど苦労なく撃退してしまったらしい」

「それはまた面倒な。となるとここは飛ばした方が良いですかね」



 綾香の話ではここは飛ばした方が良い気がする。

 勿論出来るだけ早く戦力の増強をしたいがその為に駒が減っては意味がない。

 飛車角を取るために金銀捨てるなら構わないのだが呪術師がそこまでの価値があるかは不明だ。

 綾香自体も金銀程の価値は無いだろうが現状としては抜けられると大変困る。


 ここで強行するなら俺1人でやった方が気楽に出来そうだ。

 自分だけなら気兼ねない。

 失敗した時は失敗した時でその後の事は考えなくて済むので楽なのだ。



 そんなことを考えていると少し声を弾ませて綾香が否定する。



「そうでもないみたいだよ。やりようによっては何とかなるかもしれないよ」

「なんとかなるならしてもらいますが、大丈夫なんですか」

「潤が私の事を心配してくれるのは嬉しいけどもう少し頼ってほしいな」



 あれ、何故だろう。なんかイラッとする。

 普通なら可愛らしく微笑んでくれるヒロインにドキリとするところなのだが。

 なんだろこの感情。


 まあ主人公とヒロインではないから仕方がないのだろう。


 そんな感情は無意味なのでさっくりと切り捨てるとして真面目に問いかける。



「何とかなるというのは本当ですか。当たり前ですが綾香の命を捨て駒に、というのは無しですよ」

「いやー私も愛されてるなぁ。良い主を持ったものだよ」



 あーうん、面倒なので切り捨てよう。

 体をくねくねさせている阿呆は放置して他を当たる。



「はつ子さんの方はどうですか?」

「ん? ああ、おかわりか? そりゃ勿論欲しいぞ」

「いや、そうではなくてですね。いや、まあいいです」



 結局ダメ生物がいなくなっても面倒なのを処理するのは変わらないのか。

 なんだか大勢にすんなり従っていた方が面倒が少なかった気がする。


 いや、うん、気にしても仕方がないな。

 何事も諦めが肝心だ。



「やっぱり年を取ると魚がベストじゃなぁ」

「あーそれ分かります。私も最近お肉が重いんですよね。あと無性に苦いものが食べたくなることがあります。ゴーヤチャンプルーとか山菜とか」

「そうじゃな。脂身はどうしても残るのう。外見や見た目は変えられてもやはり中は衰えるからな。あ、そうそう私の方も準備は出来ておるよ。どれだけ欠損しても生きた状態で持ってこれば何とかできるはずじゃ」



 ホント大丈夫かな。




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