5-17
メインヒロイン様の御遊びにつき合わされること十数分。
死線を何度も越えそろそろ反撃しないとどうにもならないところになってようやく解放された。
途中からロリっ子を放り出して逃げに専念したのだが何故か遊びは終わらなかった。
ホント主役様方の相手には疲れる。
一応本気で殺しに来ているわけではないのは分かっていたのだが心底面倒だ。
意外と早乙女は好戦的で戦闘が途中で終わってしまったことにフラストレーションを溜めていたのだろうか。
あるいはふざけているうちに加虐趣味に出も目覚めたのだろうか。
キャラ的には両方ともありえそう、とりうか有りだ。
もっとも主人公の付属品の立ち位置としては面倒でしかないのだけど。
放り捨てたロリっ子だが意外と回収されていなかった。
俺が早乙女と遊んでいる間は神居が甲斐甲斐しく世話をしていた。その姿は立場が逆転して神居の方が親に見えた。
彼方さんの処理班が強引に奪取することは無かった。
そんなことをすれば俺の言葉に真実味を与えるだけなので当然だろう。
あるいは神居が世話することで守っていたのかもしれない。
いずれにせよ奪取されなかったので善しだ。
戦闘不能にしたキャロルは予想以上に回復が早く遊びが終わるころには普通に歩いていた。
本人曰く斬りかかった時にそれなりに無理をしたので当分は能力は使えないとのこと。
そして意外なことに先程あれだけ好戦的だったのだが斬りかかって来ることは無かった。
敵意を向けてくる様子もなかった。
それは能力が使えないから、主人公が見ているからと処理をしてもいいのだが何とも微妙なところだ。
端的に言えば神崎と同じような面倒くささがある。
取りあえず考えても仕方がないので気にしないで置く。精々そういうことがあったという事実としてとらえておこう。
「やっぱり行くのか、潤」
乱れた息を整えつつ周囲の状況を確認していると主人公様が尋ねてきた。
今更翻意するとも思っていないだろうからこの問いかけにあまり意味はない。おそらく俺の状況を信じたくないのだろう。
流石は主人公様。自分の考え願いが全てだと思っているのだろう。面倒だ。
だが主人公様を雑に扱うわけもいかないので友人Aらしく対応する。
「そう心配するなレオチャン。別に敵になるわけじゃないし命をかけた戦いに出かけるわけでもないんだ。ちゃんと冬休み明けには学校に行く。というよりレオチャンこそ周りに気をつけろよ」
「だからっ、いや、……そうだな、潤にも色々あるんだな。潤の忠告通り気を付けるよ。だから、潤も気をつけろよな」
なんだか今生の別れみたいな雰囲気を出されたのだが、まあ気にしないでおこう。
主人公様は何を取ってもドラマチックにしてしまうのだから。
俺も気を抜いてピチュンされないようにという忠告として受け取っておこう。
竜泉寺との挨拶を終えるとちっちゃなアルビノ少女がやって来た。
「ぼうず、レオにめいわく、わかるよな?」
「怖いなートメちゃんは」
「とめちがう。もっかい、いっとく?」
「冗談冗談、乙女ちゃん。大丈夫だよレオチャンには何もしない。というより俺も面倒は好きじゃないから誰かさんに迷惑がかかる前に乙女ちゃんの手を借りられると助かるんだけど」
「ん、かんがえとく」
早乙女は口調や行動はのんびりで遅いイメージがあるが馬鹿ではない。寧ろ賢いので色々と話をするには楽な相手だ。
出来れば他のヒロインにも話を通しておきたいが立場も分からないので止めておこう。
早乙女は恐らく大丈夫だとは思うが。
これ以上ぐだっていても自分の首を絞めるだけなのでさっさと退却にかかる。
ロリっ子を担ぎ上げていくときに神居は何かを言いたそうだったが無視した。
九重も複雑そうな表情だったが時間の無駄だし俺には特に思うとこともなかったので流した。
足音遮断。
気配隠ぺい。
その他諸々逃走用のスキルを駆使して街を駆け抜けていく。
この辺のスキルはどうしてか自然と活用できているので逃げ出すのは楽だった。
気配探知でちょっと面倒そうな輩が引っかかるが一切を無視した。
変な奴にちょっかいを受けたくないので迅速に走り抜けたいところなのだが荷物がもぞもぞと動いてお荷物過ぎる。
「お荷物さんもうちょっと荷物らしくしていてくれませんかね。もぞもぞ動かれて走りにくいんですが」
「お荷物とは酷い。お主こそか弱い少女を運ぶならそれ相応の格好があるだろに」
「生憎効率重視なんでね。ヒロイックは扱っていません。ちょっとしっかり捕まっててくださいね」
荷物を担ぎなおしてさらに速度をあげる。
異能力者らしく家の屋根を飛んで回るルートに切り替える。
屋根上は見晴らしが良く狙撃を受けやすいのであまりよろしくないのだが今は速度重視で駆け抜ける。
あるか分からない襲撃に身構えて時間を無駄にするのも馬鹿馬鹿しい。
こちらの気配探知に引っかからず致命打を打てる相手がいるなら何も出来ないわけだし。
「それで、さっきの愚行は何だったんだい。私を黙らせてまでするほどの事でもなかったと思うのだが。いや、何がしたいかなぞどうでもいいな。お主は何者だ? どうしてそんなに力を持っている」
お荷物さんが尋ねてくる。おそらく暇なのだろう。
付き合う義理は無いのだが暇なのは同じなので片手間で話を合わせる。
「別にそれ程の力でもないと思うんですけど。仮に俺の力が強いならそれは親が強いだけなんじゃないですか?」
「親、とな。お主は異能の一家か何かなのかえ?」
「いえ、親は無能力の一般人ですよ。親というのは比喩というか何というか」
特に隠すことでもないので如何にして人外なんぞに落ちてしまったのかを語る。勿論チヤの事や細かなところはぼやかしたが。
諸々を話し終えると何やらロリっ子が深刻な雰囲気を醸し出し始める。
「なるほど外道か。それならその力も分かる。しかしそう簡単に外道に落ちるとも思わないのじゃが。お主の親とやらは何か言っておらなんだか」
「そいつは自分を人外と呼んでましたね。で、その人外の芽を植え付けたともいっていた。それが育てば人外の力になるとも。その力を使っていて気になるところは俺の中からそいつの力を少し感じるところですかね」
「なるほど、それはおそらく妖気結晶と呼ばれるものだな。外道どもが使う力、妖気を形にしたもの。それは外道どもの力の源になるが、それで外道を生み出すとは聞いたことがない。それも結晶を自分の力を圧縮したのか、あるいは自身の血肉から作り出したのか。いずれにしても面白いやり方じゃの」
流石は研究所職員のロリっ子というべきか妖気やらなんやらのことについての興味関心が高いのだろう。
それに色々と知っているようで俺がどの様な状態なのか知っているようだ。
「外道は本来人の理を外れて独自に生きる存在。故に様々な恵みや恩恵を受けない。宗教を使う異能者たちの効果も薄い。一方特殊性に特化した力には冗談じゃない程の力がある。だが外れているから色々と欠けている。生殖能力がなくなることや感情の欠落その他諸々。そういった細かいことに目を瞑れば有用なのは確かじゃな。ふむ、そちらを使えばまだまだ研究の余地も」
設定というか辻褄合わせというかそういったものに興味は無いのでどうでもいい。
色々と気になることもあったのだがまあいい。
それよりもさしあたっての懸念が現実と化してしまった。
こちらの行く手を阻むように人影が二つ。
やれやれ面倒な事だ。




