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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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33/123

5-16

 主人公たちはキャロルを受け取るとその安否を確かめていった。

 相手がクラスメイトなのだからもう少し信用してもいいだろうに、と思うのだが今のところ俺の立ち位置はポッと出のポッと野郎なので仕方がないか。


 それに調べてもらったところで身の潔白が証明されるだけなので問題はない。

キャロル以外にも彼方側の人間がいないとも限らないので気は抜かないが。

 一先ず主人公たちと15メートル程離れた距離に降り立つ。



「……だいじょうぶ。うごかない、いがい、もんだいない。けど、なおす、は、ちょっとめんどう」

 


 キャロルを見ていた早乙女が淡々と告げる。

 その言葉に主人公の雰囲気は幾らか軽くなる。それでもヒロインの1人が攻撃を受けたので少しシリアスが入っている。


 本来であれば強襲を受けたのは俺の方なわけであくまでも自衛しただけなので俺は悪くない。だというのに雰囲気的には俺が悪者らしい。

 それは仕方のないことだ。

 彼方さんが主人公でこっちは単なる雑兵なのだし。


 そんな事よりも正しく所見した早乙女は彼方側ではないだろうということの方が重要だ。

 それもどこまで信用できるか怪しいところだが。



「どうだいレオチャン。俺の言った通りでしょ? ちゃんと傷ひとつもついてないだろう?」

「確かにマリーに傷は無い。乙女の見立てでも問題ないらしい。……でも、だからと言ってマリーに攻撃する必要はなかったんじゃないか?」

「それは見解の相違だね。襲ってきたのはキャロルで俺は自衛をしたまでだよ」

「だとしてもだ!」



 何というか何というかだ。

 主人公的には正しいのかもしれないが、いやこれは流石に正しくないだろう。自分の命を狙ってくる相手に応戦して何が悪い。

 それともあれか俺にはすんなり死ねと。


 まあ主人公がヒロインを大事にするのは仕方のないことなんだろうけど。

 取りあえず気にしても仕方のないことなので流す。



「悪いけど今はそういう話をしている時間がないんだレオチャン。このままだと俺もこのロリっ子も三人娘も危ないんでな。文句は後で聞くよ」

「……潤それはどういう事だ。俺たちに戦闘の意思はない。サンの母親も姉妹にも手を出すつもりは無い。勿論潤にも」



 これでまたひとつクリア。

 とは言えこれは比較的簡単なモノ。俺が何かしなくとも聞けば応えてくれる。そのレベルのモノだ。


 問題はどれだけ疑念を抱かせられるかだ。



「まあレオチャンの言葉は信じる」

「ならっ!」

「けど、逆に言えば信じられるのはレオチャンくらい。要するにそれ以外に命を狙われているってこと。俺もさっき狙われた。勿論キャロルとは別にね。で、どうやらその集団はレオチャンたちがこの子らを捕まえると手を出すらしいのよ」

「そんな奴らに俺たちは負けない。彼女たちは俺が守る、誰にも手を出させない。勿論潤にもだ」



 竜泉寺は高らかに宣言する。

 それはやはり主人公らしいというべきか、強い意志と気迫がこもっている。

 そんな主人公にヒロインたちは少しうっとりしている。

 特に神居は自分の身うちを守ると言われたからか一番うっとりしている。


 流石は主役さん方というべきか。

 主人公も主人公だがヒロインもちょっとちょろすぎないだろうか。

 いやまあどうでもいいんだけど。



「うんうん、俺もそれを期待している。でも、本当に出来るかな。レオチャンたちの仲間に敵がいたとしてもさ。例えばレオチャンたちはこうして会話してくれるのにどうしてキャロルは問答無用で斬りかかって来たんだろうね」

「それはっ!」

「皆まで言わなくても分かっているよレオチャン。別にキャロルが裏切っているなんて言わないよ。ただその背後はどうかなって。キミが信頼を置いている人物とその人が所属している組織は別なんじゃないかな。あるいはその組織にだって色々な派閥があるんじゃないかな」



 物語にはあまり出てこないがどんな組織にだって派閥はある。

 主人公に手を貸してくれる善良組織であっても、あるいは主人公に陶酔しているヒロインが所属する組織であっても。


 主人公と運命を共にしようとする派閥。

 自力で全てを解決しようとする派閥。

 自分たちの利益だけを考える派閥。


 主人公がどれだけ信用しても裏切ることだってある。

 あるいはそもそもからして意見が食い違っていることもある。

 裏切ってはいないが違うこともしているかもしれない。


 派閥には色々な考えがあってしかるべきだ。

 恐らく派閥が存在しない組織があればそれは独裁やワンマン組織くらいだろう。


 主人公が見ていることだけが世界ではないのだ。



「まあ俺が襲われた、なんてのは急に言われても信じられないだろうから取りあえず俺には敵意が無いってことを覚えておいてほしい。なんなら九重に聞いてくれればいい。彼女は俺がこんなんだってことは知っていたはずだしキミらに敵対するモノじゃないってのも分かってくれるんじゃないかな」



 ここで九重の名前を出すのは彼女にとって厳しいものなのだが仕方がない。

 九重が「は、謀ったなぁ!」的な表情をしているがこれも俺が助かるためなだ。


 何か弁明をする前に主人公に問いただされて、というよりは責められているが仕方がない。どんまい。


 だがこのまま放っておくのも後々面倒なのでフォローを入れる。



「そう九重を追い詰めるなよレオチャン。俺としてはあんまり表立ったことをしたくなかったんで黙ってもらっていたんだよ。キミらだってそんな力があるって他の奴らに言いふらさないだろう?」

「それは、そうだけど」

「その辺の追及も今度ちゃんと受けてあげるからさ、許してあげてちょうだい」



 なんだか口調も崩れているがこれも仕方がない。

 主人公の相棒というような立ち位置の御仁は大体軽薄なのだから。それが御約束というモノだ。

 この辺もいつかはどうにかしたいものだ。


 それにしてもこうもすんなりと会話できるとは思わなかった。

 キャロルの突貫もあったし面倒な登場人物が増えることも想定していた。

 最悪組織の上層部がやってきて武力で圧倒され有無を言わさず丸め込まれるところまで考えたが、杞憂だったらしい。


 まあ友人Aにはそこまでの役者は必要ないというところだろうか。

 気は抜かないが。



「取りあえず俺たちを見逃してもらうとして、レオチャンには色々気を張ってもらいたいわけ。信頼している人が本当に信の置ける人物なのか。その周りは大丈夫なのかもう一度見つめなおしてほしい。じゃないとキミの知らないうちに事を進められているかもしれないよ? 俺が困難だったなんてのも知らなかっただろう?」



 主人公様への助言はこんなところだろうか。

 何ひとつ証拠を見せていないのだが多分大丈夫だろう。

 主人公様は。



「そんな話を信じろと言うのかしら。お母様に手を出しておいて」



 案の定反論は別のところからやってくる。

 神居は竜泉寺や早乙女たちと違い一人ずっと気を張っていた。

 敵対していたとはいえ自分の肉親、といえるのかは怪しいが、を人質にされては心穏やかじゃないだろう。



「そこは見解の相違だね。キャロルで分かってもらえたと思うけど俺は傷ひとつつけていない。仮に傷つけていたとしてもキミたちよりはるかに少ないと思うけど? それに俺が手を出さなければロリっ子や三人娘はもっと傷ついていたんじゃないかな。この子たちも諦めるつもりもなかったようだし結果的には双方いい落としどころになったと思うけど?」



 まともに取り合うのも面倒なので事実を告げて相手の痛いところをついて終わらせにかかる。



「まあ、って、のわっ」



 追い打ちをかけようとしたところで高速でがれきが飛んでくる。

 大きいものから小さいものまで洒落にならないものが洒落にならない速度で迫ってくる。

 

 そのすべてをぎりぎりで躱す。

 ぎりぎりで躱すなんて言うと余裕があるようだがそんなことは無い。

 避けられそうな速度で避けられる道を作った上での攻撃。

 端に踊らされているだけだった。


 作られた道を上手くたどって数分間。

 そこでようやく石礫の軍勢が終わる。


 息を切らしても次の攻撃を考えて構えていると攻撃の首謀者が問いかけてくる。



「なかなか。もっとやる?」



 無感動で無表情の早乙女。

 何を考えているのか想像が難しい。だが糸口はあるので適当に取り繕う。




「これ以上はちょっと勘弁してほしいね。トメちゃん安心しなって。別に俺は竜泉寺に何かやらせたいわけじゃない。ちょっとしたアドバイスをしているだけだよ」

「とめ、ちがう。乙女」

「な、あっ、わ、分かった悪かったから、これ以上はマジヤバいから」



 立ち位置から分かるように早乙女は本妻、メインヒロインだ。

 ならばその行動の理由は大体主人公にある。ならばその不安を取り除いてあげればいいだけの話だ。


 もっとも主人公とは扱いが違うので色々と大変なのだが。



「レオ、にめいわく、なら、もっと。どう?」

「どうする? じゃなくってもう飛んできてるんですけどぉ? レオチャン何とかしてくれませんかねぇ!」

「あーほどほどになぁ?」

「え、ちょ、まっ」



 お仕置きとばかりにがれきを飛ばす早乙女に苦笑いする竜泉寺たち。

 シリアスから急にほっこりするあたり主人公らしく色々とどうかと思うのだがまあいい。

 これでどうやら方向性は決まったらしい。


 取りあえず石礫の軍勢が面倒なのだが。

 これも仕方がない、か。




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