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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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27/123

5-10

 室内に響いた炸裂音とともにやって来た爆風を受けて綺麗に吹き飛ぶ。


 勿論そんな爆風で飛ばされるのはモブくらいで主人公とヒロインはしっかりと耐えている。ただ、ヒロインとは言え一般人の御幸さんは綺麗に飛ばされている。

 そのまま壁にぶつかれば大けがだろう。


 それを見過ごすわけにもいかず偶然を装い飛ばされている中で捕獲して二人まとまって飛ばされる。そしてヒロイン様のクッションとなり壁へと激突する。

 気を失いかすり傷はあるが御幸の無事を確認すると意識を失ったふりをする。

 処理班系登場人物にはこういったヒロインを助けるという日常業務があったりする。


 さて女の子を抱えて役立たずとなり果てた俺はひっそりと様子を伺うことにした。

 洋館の外壁が崩れて夜空が見えている。その夜空には4つの人影が浮いている。

 そこから安直に推察すると攻撃らしきものを受けたらしい。流石は主役様方だ。


 空に浮かぶ人影と主人公たちは顔見知りのようで何やら言い合っている。残念なことに飛ばされてしまった俺には上手く聞き取れない。

 その気になれば聞くこともできるが自重する。今のところ主人公様には一般人となっているので力を使うわけにはいかないので仕方がない。


 取りあえず様子から分かるのはどうやらバトルパートに入るらしい。

 処理班系登場人物には関係のない展開だ。

 これはもうモブとして結末まで寝ていていいだろうか。いいよね。



 そう自己完結して女子の香りと共に意識を手放そうと目を閉じたところでそれを邪魔するかのように肩に強い衝撃を受ける。

 それはまるで抱える少女から剥がす蹴りのようだった。


 だが、残念ながら剥ぎ飛ばされることは無い。モブのようである俺だが一応一般人ではないのでそうそう簡単に飛ばされない。

 決して女子から離れたくなかったとかではない。


 取りあえず衝撃を受けたという事は誰かが近くにいるということだろう。

 バトルパートの流れ弾とも考えられるがまずないだろう。あれらはなんだかんだで因果に守られている。不意に人は傷つけないだろう。面倒なことだ。

 欝々とした気分で目を開けると足を抱えている神崎がいた。

 何となく事情は察したが御約束の言葉をかける。


「どしたの?」

「どうしたこうしたもないわよ。あなたの体どうなっているのよ。風で飛ばされる癖に蹴ってもびくともしない、寧ろ足の指が折れたかもしれないじゃない」

「そりゃまあ残念でしたね」


 恨みがましい神崎の問いを適当に流す。


「それで何か用? パトルパートは戦闘狂がしてくれる。非戦闘員のモブには何もすることはないのだけれど」

「それも、そういうわけにはいかないのよ。今回の相手は少々厄介なのよ。事の発端は先月竜泉寺が神居を救いだしたところからで……」


 涙目で脚を擦る神崎は滔々と説明を始めた。

 ことの発端から現在まで表部分だけではなく裏側まで。


 しかし、そこは俺には全く関係のないことなので聞き流した。主人公の活躍なんて興味ないし裏方の苦労も関係ない。


 必要な現状の情報をまとめると以前主人公様が壊滅に追いやった組織の生き残りが報復に来ただけの事。

 少々厄介なのはその報復者が非合法研究の実質主任であり神居の親であるという。

 そのため相手側は本気で殺しに来ているのだが主人公様は本気での迎撃が出来ない。あまつさえ他のヒロインを妨害し決定打を防いでいる。


 おそらく敵を倒さず誰にでも優しいエンディングを願っているのだろう。

 流石は主人公。面倒くさい。


 だがしかしである。



「それならやっぱり俺の管轄じゃないな。被害が出るのは気分が良くないがあれらが行動して出るんなら俺にはどうしようもない。ましてや勝手に踊っている阿呆など俺には関係ない」



 これは俺に関係のない出来事だ。

 既に物語は主人公を中心に回っている。今後物語がどう転ぼうとモブはお呼びではない。彼ら彼女らが勝手に走らせるしかない。

 彼らが何かをしようとするならば彼らで解決するべきものだ。そしてそこから被害が出るならば彼らが責任を持つべきだ。

 彼らと関係のない俺の出番ではない。


 しかし、そんな俺とは対称的に神崎はいつになく真剣だ。



「今はふざけた事を言っている場合ではないの。このまま放置しておけば確実に被害が出る。彼女たちの誰かかあるいは全員か。そしてここで止められなければその被害は私たちだけじゃすまないのよ」


 何やら不穏なことを言いだす神崎。

 被害がここだけですまないなど聞いていない。だが神崎の様子ではそのことを俺も理解しているはずと訴えている。どうやら関係ないと聞き流したところに重要な情報が有ったらしい。

 大変面倒な事態に陥ったわけだが聞き返すわけにもいかない。面倒だから。


 一先ず考える。襲撃者は何やらやばいらしい。能力的になのか持っている兵器なのかあるいは別物か、いずれにせよ大規模な被害を生み出せる何かがあるらしい。

それにもかかわらず主人公様は中途半端で甘ちゃんな行動をしている。


 そうであれば確かに大変なことだ。主人公様の所為で被害が拡大してしまう。ならば周囲が何とかしなければと使命に駆られるのは推測できる。

 大よそ神崎と同じ理解に至るのだが。



「何度も言うがこれは俺の管轄外だ。知らない大多数なんて関係ないし暴走しているあれらだって俺の責任じゃあない。何とかしてやろうという興味は湧かないな」


 何度も言っているが俺は主人公の親友や相棒ではない。

 ただの友人、あるいは知人なだけだ。


 だから彼の窮地を救ってやらなければという気概は無いし彼が大事にしているものを守ってやろうという気骨もない。

 所詮は我が身大事で事なかれ主義の一般人だ。


 今までだって自己犠牲にあふれていたわけじゃない。そうしなければ余計に面倒になるだけだからやっていただけで好き好んでいたわけではない。

 みすみす危険に送り出すのが不安で手伝ったこともあるがそれはあくまでも相手が自分と同等の一般人だと思ったからだ。

 力ある主人公様と分かった今モブである俺が助けてやろうなんて気は起きない。

 寧ろ面倒を運んでくるなとうんざりしている。


 精々沸き上がるのは不運にも巻き込まれてしまった一般人への同情。それも自分の把握できる範囲で、自分の手の届く範囲のものに限る。



「御幸くらいは何とかしてやらんでもないが他は勝手にしてくれ」

「それは本気で言っているのかしら」

「ここで嘘をつく意味もないんじゃないかな。ま、別に邪魔をするわけじゃないんだから気にしないでくれ。どのみち俺はいてもいなくても変わらないんだからさ」



 それに神崎は何とかしなければといったが俺たちは所詮脇役。出来ることは限られている。そしてその数少ない出来ることをしたところで力あるものに簡単に覆されてしまう。

 ならば始めからするのも無駄というモノだ。

 そんなあきらめにも似た境地でいると神崎は憐れむような表情で俺を見る。



「やはり、そうなのね。あんたは変わってしまったのね」



 勝手に納得して見せた神崎はフッと近寄るとポケットからモノを取り出して突き付けてくる。するとビリビリッとした尋常ではないしびれが体を襲う。

 それは普通であれば耐え切れない様な悲鳴をあげ泣いてしまうほどの威力だった。


 だが今の俺では特に大したものではなかった。


「これはどういう事かな、神崎」

「流石は一部でも人の道を外れているものねこんなものじゃあ無理か」


 そう言って神崎は手にしていたスタンガンを何でも無いように放り投げた。その行動には罪悪感などは一切なく寧ろ自分の行動に正しさを見出しているようだった。


 自己完結している様子の神崎。

 何を尋ねても無駄かと黙って応戦の構えを見せると神崎はまたしても滔々と説明を始めた。



「あんたは変わってしまった。人外なんてものに関わってしまったから。本来のあんたはこの状況下で関係ない、興味ないなんて言う人間じゃない。あんたなら竜泉寺やマリーの為に必死に走り回るはず。力を得てもあんたがあんたでいたならば私は見逃した。上層部は竜泉寺の周りに異物は少なくした方が良いというけれどあんたなら上手く出来ると思っていた。でもそうじゃなかった。自分の記憶から家族を消し家族から消したのもそう。全ては人外なんてものに関わったから。だからこうするしかない。でも安心して殺しはしない。ただ数カ月前に戻るだけ。普通の生徒として竜泉寺零王の親友に戻るだけだから」



 神崎の言葉に俺は反論しなかった。

 図星をつかれたからではない。

 戸惑ったからでもない。


 ただ、反論しても無駄だと理解していたからだ。

 神崎には既に自分の答えがあり俺がどうあがいてもその答えは揺るがない。暴れれば暴れる程その答えは強固となるだけだ。


 一先ず冷静を心掛け、口が緩くなっている神崎に確かめていく。


「つまり俺から異能や超常的な力をはく奪すると」

「ええ」

「そして今までかかわった非日常をすべて忘れてただ人になれと」

「ええ、それが本来あるべき姿でそれがあんたにとっても幸福よ」

「なるほど」


 神崎の答えに自分でも意外なことに腹は立たなかった。

 特別感情も起伏しなかった。


 それは恐らく理解できなかったのでも拒絶したのでもなくすんなりと受け入れていたのだろう。神崎がそう言っている時点で俺にはどうすることもできない状況になっていることを。

 自分の感情がどうであろうと現実は何一つ変わらないのだと理解していたのだろう。


 そう理解していたので新たに登場した人物に驚きもしない。

 普段の調子で声を掛けた。



「その感じだと今日も負けたんですね。相も変わらず下手だな」

「うっさいよじゅんじゅん。それに今日はちゃんと黒字で終えたっての」



 男性とも女性とも思えない人物、チヤが登場した。


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