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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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22/123

5-5

*本日2度目です

 体の調子を調べると特に問題はなかった。

 神崎の言ったように本日は24日。

 2日丸々寝ていたようで寝すぎて気怠いだけだ。


 確認の為に気を失う直前の事を思いだしてみたが多少気分が悪くなるだけでフラッシュバックはなかった。手近なマンガでそれらしい描写を見たが気分が悪くなる程度で終わった。

 たぶん記憶の中でも防衛本能が働いているのだろう。一先ず普通に過ごす分には問題ないらしい。


 諸々の確認を終えリビングに降りると普段通りのチヤと見知らぬ女性がいた。


「おや、やっとおきてきたかいじゅんじゅん。心配したじゃないか」


 本から視線を一切話さずチヤは適当なを言う。いつもの事だ。そんなこと気にならない。

 問題はもう1人。

 当たり前のように家にいて当たり前のように燕尾服を着こなしている女性。


 年の頃は20代後半。背は高く170後半で背筋はピンと伸びており立ち姿には品がある。彫りは深くくっきりとした顔立ちは目を引くほど整っている。東洋風ではないその顔立ちも相まって燕尾服が似合っている。


「起きられましたか、坊ちゃん」


 燕尾服の女性が礼儀正しくお辞儀をして微笑む。その笑顔は実に魅力的で男子高校生的に色々と色々なのだが日本の一般家庭にいるので実に場違い感が強いので色々と残念だ。



「お初にお目にかかります。先日命を拾ってもらったものです。名前はありましたが新たに仕えさせていただく坊ちゃんに頂ければ幸いです」

「一応確認しますが坊ちゃんとは俺の事ですか」

「はい」

「命を拾われた、というのは」

「はい、先日は私は終わりを迎えるところでした。手足も引きちぎられ身動きも取れず唯命が消えていくのを待つだけの存在。そこに通りかかったのが坊ちゃんです。坊ちゃんが『見捨てるのは嫌』と言っていただいたおかげでこうして生きられています。故に次はあなたにお使えしたいと考えています」

「つまりこの前の肉片があなただと」

「はい」

「ですが自分には助けた記憶がもなければ無様に気を失っただけです。あれから生きているという事は助けられたという事なんでしょうがそれをしたは自分ではなくチヤですが。そこのところはどうなんでしょう」

「結果がどうであれきっかけはあなたです。チヤ様にも確認させていただきましたが仕えるのはあなたでいいと。ボクには邪魔なだけだから、と言われてしまいました」



 さて、少し整理しよう。

 肉片を見て気を失いったのだがチヤは俺の言葉を受け取り助けたらしい。燕尾服は俺が「見捨てるのは嫌」といったと思っているようだが正直何といったのか正確には覚えていない。

 その助けられた御仁は2日も寝込むという醜態をさらしたわけだがそれでも好感度が高いらしい。

 仕えると言っていたから好感度とかではなく使命感や義務感、あるいは自分のこだわりで生きている人なのだろう。


 要するに肉片の恩返しというところだろう。

 なんだか友人Aには珍しいことだ。


 とは言え何でも鵜呑みするわけにもいかないので色々と確認をする。


「チヤはどう思う?」



 ダメ生物さんに問いかけてみると視線を本から離し意外そうな表情で見返してきた。


「おや珍しい。流石のじゅんじゅんもあれこれに興味が出来たという事かな。これは嬉しいことなのかな悲しいことなのかな。これからいっちょ主人公様に出も喧嘩を売るかい?」


 そう莫迦にされて思い直す。

 人に聞いたところで真実など分かるわけもない。見分けられるわけもない。何事も自分で判断して納得するしかない。



 大前提として俺とチヤは友人でも知人でもない。

 一方的に利用されているだけでしかない。

 だからチヤが俺に遠慮することは無い。チヤが問題と判断すれば処断されているはずだ。俺の希望要望がどんなものであってもチヤが本気で否だと判断したらどうにもならない。

 そういった事情を考慮すると肉片が助けられこうして家にいる、あまつさえ俺に仕えるという言っていること自体が答えなのだろう。


 故にチヤに何かを聞く必要はない。後は俺自身がどう判断するかである。

 莫迦にされたのは癪だが事実莫迦なのだ。


 別に潔癖であったり倫理感が強いわけではないので使用人がもらえるというのなら断る理由は無い。

 炊事洗濯家事などなどやってもらって困らないことは多々ある。その他諸々男子高校生的妄想もないことは無い。


 ただ問題は仕えるというならば関わりを持たなければならない。

 勿論仕事だけさせて極力関わらないという方法もあるがそれはそれで面白くない。お掃除ロボットと思えば特に感慨もないのだが流石に人を人と思わないのは無理だ。

 取りあえずはボロ雑巾のように使うとしてもどういった人間、どういった主義主張なのかくらい知る必要があるだろう。



「拾われたから仕えるという事だけれど、そういった技術は持っているんですか?」

「はい。カムイ研究所というところの副主任に仕えておりました。仕事内容は主に炊事洗濯家事など身の回りの事。ただ副主任さんが私を重用していたのは別にあります」

「というと?」

「私の特性は人を真似ることです」


 そう言って執事服は右手を頬に触れるとその形が変わっていく。

 数瞬にして彫りの深い西洋人から日本人らしいのべっとした顔になった。



「ある程度イメージをすることで自分の容姿体躯を変えることが出来るのが私の特異能力です。その為影武者として利用されていました。勿論声質も変えられます」

「因みに容姿の変更に制限はあるんですか? 見たことのある人しかダメとか。触れたことのある相手じゃないとダメとか。あとオカマとか」

「いえ基本的に自分のイメージだけで十分です。勿論見た人の顔を真似るのも可能です。正直に申しますと顔に触れて容姿を変えるのはパクリです。私の能力はイメージが大事ですからそういうものを見て印象付けられてしまいましたから。ただ相手に触れる必要はないので私の方がハイスペックです。因みに元の性別も女性ですのでオカマではありません。まあ性欲的にはバイセクシャルではありますが」

「あ、そですか」



 流石チヤが認めた相手というべきだろうか。ネタを振った俺も悪いんだろうがこの人も色々とダメ気がする。

 同類っぽくて若干好感は持てるがちょっとバイはな。いや、うん、そんなことはどうでもいいな。


「で、その前の主を離れることになった理由ですけど、いや、それはどうでもいい」


 それもどうでもいいな。そんな過去の事、俺に関係のないことはどうでもいい。問題は別だ。

 もっとも既に家に転がり込んでいる時点で問題なのだが。


 少し真面目な雰囲気を作り問いかける。



「あんたは何を持って行動をしますか。何のために、何を大切にして生きていますか」

「何の為に、ですか」

「言いたくなければ言わなくてもいい。嘘をつきたければ騙しても構わない。勿論真実でも構わない」

「それで宜しいんですか」

「いいんです」


 何事も真実とは限らないし信じられるとも限らない。人が勝手に納得するだけだからいい。少なくとも自分はそれで構わない。

 ならば聞く必要もなくなるのだがそれは一応というところ。

 言わなくても察するというのは心底嫌いだが聞く努力をしないのも嫌いだ。聞いたところでそれを汲み取るとは限らないわけだが。



「そうですね、私は自分が正しいと思う事ではなく自分の決めた道を大事にしているつもりです。格好つければ美学に生きる、というところでしょうか」

「美学ですか。つまり倫理や一般論より己が理論で生きると」

「はい。坊ちゃんはどうでもいいといいましたが以前私が仕えていた主は良い主ではありませんでした。都合よく使い都合よく切り捨てる。人ともモノとも思わず自分の為にあるナニカのように使っていましたから。それでも私は彼に仕えるべきだと一度思ってしまいましたからお仕えしました。やはり最後は他のモノたちのように主が生き残るための道具として切り捨てられましたが恨んでいません。寧ろ満足しています」

「だがこうして離反しているわけですが」

「仕えると言っても私は妄信しているわけではないという事です。以前の主とは主が十分だと判断するまでという事ですから私を使い捨てた時に『十分だ』と頂きましたので契約は着れたと判断しました」



 なるほど。美学の人か。

 残念だ。何故なら面倒だからだ。


 自分の美学を守ると、それを貫くと言えば聞こえは良いかもしれないが要するに自分勝手な御仁だ。それも自己陶酔に浸る手におえないタイプである。

 もっとも感情論よりは幾分マシだ。

 個人的な規則で生きているだけなので折り合いを見つけ理解出来れば共存も可能だろう。


 人物としては何とかなりそうだとするとあとは身辺の問題か。

 以前の主とやらが関わってこないとも限らないしそもそも関係が切れているという保証もない。主の命令で接触してきたという可能性もある。


 だがこれもやはり悩んでも仕方がないので割り切る。この手は俺の得意分野だ。割り切ることが、だが。




「分かりました仕えてくれるというのであれば使い倒しましょう。使える駒は多いに越したことはありませんから」


 了承の言葉を受けた燕尾服は仰々しく首を垂れた。


「畏まりました。不束ながら仕えさせていただきます。では第一のご命令をお願いします」


命令をと聞かれて自分の状況を思い出す。


「そうだな。さしあたっては何か作ってくれお腹が空いた」


丸二日も寝ていたのだ、生理的な反応も起きるというモノだ。


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