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友人Aの反逆日記  作者: みくじ


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16/123

4-1

 テスト期間が終わり土曜日。


 日が高く昇って既に落ち始めているであろう時間でもなお泥のように寝ていた。別にテスト対策の疲れとかではない。勿論超常的な非日常の疲れでもない。

単純に不規則な生活で人生を腐らせているだけだ。


 昨日というか今朝方8時に布団に入ったばかりなのだ。そろそろ昼食でもというところだが冬場のお布団は魅力的過ぎるので離れられない。

 普段食事に五月蠅い同居人もいないのでお布団とさよならする理由がない。チヤは今日も今日とて競馬場にお布施をしに行った。あれもあれでいい感じに生活を腐らせている。


 こんな日がいつまでも続けばいいのに。そんな事を思う。切に。


 ピンポーン。


 フラグを回収するかのように言えのチャイムが鳴る。


 一人暮らしの現在、誰かがやってくることはない。友人が来るという事も予定していないしそもそも周りに家の事は話していないので知り合いが来ることもない。

 当然竜泉寺が勝手に来ることもない。

 そもそもあれとは休日に遊んだことは無い。別に嫌いではないのだが面倒を運んでくる奴と誰が好き好んで関わるやら。

 

 偶然出会って偶然事件に巻き込まれることはあったけど。

 コンビニで出会って会話しながら個人的な用事で銀行へ行ったら銀行強盗に巻き込まれたなんてこともあったっけな。今思えばあれも非日常的なあれこれだったのだろうか。受付のお姉さん(勿論美人)は助けた竜泉寺に雌の顔をしていたし。

 それはいいとして。


 あとは訪問販売や勧誘などの可能性くらいだがそれならそれで無視するだけだ。

つまりさよなら現実、ただいまお布団である。


 しかし、来訪者は執拗にチャイムを鳴らし続けた。

 数分間鳴らされたが無視した。始めこそ真面目だなと簡単に考えていたが時間が過ぎるにつれ執拗過ぎて面倒な気配がして断固として無視した。


 だが来訪者の方が一枚上手だった。枕元に置いていたスマートフォンが鳴り出す。

 見ると『神崎楓恋』と表示されていた。

 画面を眺めて暫し。色々と考えた結果、布団にくるまりながら通話ボタンを押した。


「はい、なんでしょう」

『……出るんだ』


 どこか呆れ声だたが気にするのは面倒なので流した。


「用件がなければ切るぞ。生憎俺は用件がなければダメなのかと言う問答に付き合うつもりは無いからな」

『それは良いけれど玄関開けてくれないかしら? チャイムを鳴らしたんだけれど』

「聞こえてる。知っていて無視した。用件だけなら電話でも聞けるだろう?」

『あら斎藤君は女の子を外に放置するの?』

「俺は男女差別しないんだよ。最近女性の権利だとか言うだろう。ならばこういう時だって男性と同じような扱いをしないとな。俺はフェミニストなんだよ」

『フェミニストとはそういう意味では無かったと思うけど?』


 確かにフェミニストは女性に甘い人の事なので意味としては違う。が、それを含めた揶揄なので適当に流す。世間の、というよりは一部の女性の男女平等主義に対して色々と思うところがあったのだが言っても仕方がないので流す。


「で、用件は?」

『本当にそのまま続けるんだ。外、寒いんだけど』

「まあ12月だからな。そんなもんだろう」

『……もしかして外見てないの? あなたこんな時間まで何をしているのよ』

「なにって人生を腐らせているだけだよ。それより、それは用件と関係あるの? ないなら切るけど」

『良いから見なさい』


 何がと問い返したが要領を得ない神崎に渋々布団の外に出る。布団の外はやはり寒くさっさとおねむしたいのでサクッと確認すべくカーテンを開ける。



 そこは白銀の世界だった。


「で、用件は?」

『……それは外を見て言っているの? いや見ていないんだな、さっさと外を見ろ外を』

「いや、見てるぞ? すごい雪だな。この時期にこれだけ降るなんて珍しいんじゃないかな。で、用件は?」


 外は雪が降っていた。既に数センチ積もっており今なお吹雪いていた。一瞬ここは雪国なのかなと思うほどに。まあ数センチで雪国とか本場の人に怒られそうだけど。


 それは兎も角としてこの雪の中神崎は外で待っているのか。

 大層寒いことだろう。可哀想だ。

 だがしかし、だからと言って俺がどうこう思うことは無い。別に俺が呼び出したわけでもないし勝手に来たのだから防寒対策は個人でするべきだ。それに紳士的な対応が欲しければ主人公の方へ行ってほしい。こちらでは受け付けていない。


『ホント寒いんだけど』

「なーんかそんな恨みがましく言われると開けたくないな。面倒だし。眠いし」

『……早くしないとドアを壊して入るわよ』


 実に物騒なことを言う。学校では委員長と言われ真面目でしっかり者のはずなんだが面倒この上ない。いやまあ委員長キャラもそれはそれで面倒なんだが。


 さて逃避していても仕方がないので真面目に対応すべきだろうか、と考えてみる。

 正直なところこのまま無視したところで特に問題はないだろう。家自体にはチヤによって強化が施されているので壊されることは無い。

 一度馬券を外した時のイライラで壁ドンしたがびくともしなかったし。


 クラスの女子を吹雪の中に放置することだって勝手にしていることなので問題もないだろう。このことを広められて周囲から嫌われても問題はない。寧ろ嫌われて主役どもとおさらば出来ればいいのかもしれない。


 ただ問題があるとすればこれを放置したことによって面倒が膨らんでしまうことだろうか。

 主役どころの神崎が休日にわざわざ俺のところに来る時点で可笑しい。好意を抱いている相手の家に押しかけてみた、なんてことは無い。寧ろちょっと困ったから適当な相手を見繕って処理してもらおう、とかだろう。

 なんだろう本当に放置したくなってきた。


 とは言いつつも本当に放置しようと思えないのが不思議なところだ。別に神崎に対して好意があるとかではないし他人に好かれたいとかでもない。おそらくこれも友人Aとしての性だろう。悲しいことだ。


 面倒を避けてより大きな面倒を引き寄せてしまっては面倒。


 そう思う事にしてここは処理班系登場人物として色々と諦めることにしよう。ただ一応少しは抗っておこう。


「ま、家に入れるのは吝かではないんだけど面倒なことは引き受けるつもりは無いぞ」

『大丈夫よ。今日は何も起きていないから』


 大丈夫と言われて簡単に信用するモノではないのだが疑ってばかりでは話が進まないので取りあえず流す。今日は、というところに色々と思うところがあるが今は流す。


 電話を切り上着を羽織って玄関へ向かう。異常な寒さに凍えながらドアを開ける。



 そこにはロックテイストの服装の少女が唇を真紫にして凍えていた。


 何というか何というかである。


 ほぼ真っ黒の服装で他に入っているのが赤のみでそれも少々。委員長とも思えないドクロが入っている服装もそうなのだがピアスもかなりのものだ。耳たぶだけではなく軟骨にもつけているしどう考えても委員長ではない。

 委員長ルックの必需品である眼鏡はかけていない。

 普段下ろしている綺麗な黒髪も左側だけ編み込みがされており委員長然とした姿は残っていない。眼鏡をはずしたその瞳はやや吊り気味できつめな印象も相まってその様相は普通にかっこいいのだが何だかである。


 普通にパンキーな姉ちゃんだ。


 それに吹雪いているのに赤いミニスカートにレギンスという服装をしているのだからめちゃくそ寒いのだろう。体が小刻みに震えているし。


「なによ」


 まじまじと眺めていると険のある表情と棘のある声色でけん制される。

 ここは服装についての感想と共に普段とのギャップを指摘してひと騒ぎするところなのだがあえて流す。目に見えて分かるものを弄っても面白いものでは無いので流す。というか寒いのに玄関で騒ぐとか無理だ。


 何も言わず紳士的な態度で部屋に招き入れる。文句の一つも垂れず暖房と炬燵とホットミルクの三点セットでおもてなしをする。気まずい空気を耐えて神崎の出方を窺う。変に突くと噛みつかれるので大人しく待つ。

 暫くあり。身体が暖まったところで神崎が切り出した。


「何も言わないのね」


 自分から地雷を踏み抜くあたり厄介な人物である。心底面倒でさっさと本題に入ってほしいところだがそんなことを言うと更に面倒なのが分かっているので言わない。

 取りあえず素直な感情を伝えることにしよう。


「前に行ったと思うが色々と興味がないんだよ。そりゃ驚きはするがそれだけ。個人の趣味や主張に口出す趣味は無いよ」

「……そんなに可笑しいかしら」

「さあ。可笑しいかは置いておくとして普段との差なんじゃないか? その形で委員長は無理だろうし」

「そんなに可笑しいかしら」


 この辺りは本当に個人の趣味なので何も言わない。何を言っても面倒でしかないので断固として言わない。知らぬ存ぜぬで回答を拒絶する。


「……こんな話をしに来たんじゃなかったわね」


 無言の攻防があり、ようやく質問の無意味さに気付いたのか神崎は本題に入った。


「今日はあなたにお願いがあって来たのよ。協力してくれないかしら」

「面倒事は断るといったはずだけど。それに立場上目立つようなことはするなと言われているんだけれど」

「それなら大丈夫。あなたの契約者さんには話を通してあるから。じゅんじゅんなら自由に使っていいよ、と言っていたわ」


 ホントうちの契約者は面倒な奴だ。


「ま、そんなことだろうとは思ってましたが。それで何をやらせたいんですか?」

「面倒は断ると言っていた割にあっさりと諦めるのね」


 そりゃ面倒事は嫌さ。だがこの状況で喚いたところで何ともならないのは経験則で理解している。もっとも経験則で言えばチャイムが鳴った時点で嫌な雰囲気は感じていたのだが。

 それに抵抗できるのならしたいところだがチヤに根回ししているのなら無理だろう。それにあれでも脳無しというわけではない。平穏が崩れるようなことは許さないだろう。


「それで何をさせるつもりなんだ? 生憎俺はチヤのように上手く力を使えないんだが」

「そうなの? 契約者さんはあなたなら大体の事はこなせると言っていたけれど」


 あいつもホント面倒なことを運んでくる。

 大体の事をこなせるなんて発言は信頼でも何でもなく適当に言っているだけだ。厄介ごとをこちらに被せたい思惑が見え透いている。実に面倒なことだ。


「とは言ってもそれほど難しいことではないのだけれど。少ししたいことがあるからその間の護衛をお願いをしたいのだけれど」

「護衛、という事は身の安全を確保すればいいという理解で大丈夫か? 相手を倒さなくとも自分の素性がバレても命さえあれば大丈夫だと」

「その理解で構わないわ。出来るなら敵の排除もお願いしたいところだけどそこまで贅沢は言わないよ」


 神崎の依頼をかみ砕くと、少々厄介ごとをするので用心棒が欲しいということだろう。その厄介ごとがどんなものかによるのだが。

 世界を揺るがす何かとかなら脇役ではなく主人公の方へ依頼が行くだろうし、神崎の仲間なりに頼ればいい話。こちらに来たという事は戦力を割く必要性が出ない程の小規模で地味なものか。あるいは何かほかに理由があるかだがそこについては考えても仕方のないことなので排除する。


 いずれにせよ派手な事にはならないだろう。ならば多少は妥協できる。

 あとはそれをすることで得られるメリットの話だが。


「で、それに協力したことで俺は何が得られる訳で?」

「ここは美少女のお願いに無償で立ち上がるところだと思うけれど」


 こいつもこいつで中々に面倒な奴だ。自らを美少女と称して人差し指を口に当て首をコテンとするあざとくも可愛らしく見える仕草をしてくるあたりかなり面倒だ。

 あるいはこの人も色々と疲れているのだろうか。それなら共感できそうだが。

 取りあえずリアクションなぞしてやる義理も義務もないので受け流す。


「これといって用意していないのなら借りでもいいし手っ取り早く現金でもいいよ。ま、それはおいおい詰めるとして取りあえず準備しますかね」


 面倒なことは避けるのが一番なのだが回避できないこともある。回避できないのなら手っ取り早く済ませるのが得策だ。


「……おい、何とか言えよハズいだろうが」


 勿論回避できる面倒は回避する方向だ。


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