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爆風に巻き込まれ吹き飛ばされた俺は空中で姿勢制御して身を守る。
人が吹き飛ばされ建物が倒壊するような風に巻き込まれて平然としていられるはずもない。身体が浮き上がるような風圧で吹き飛ばされ壁に叩きつけられれば怪我をする。瓦礫に埋もれてしまえば圧死する。
不幸中の幸いでや奇蹟的にで平然としていられるのは主人公様やその周りだけ。俺のような一般人にはその加護は貰えない。
実際暴風で飛ばされたことで体の節々が痛い。瓦礫と共に吹き飛ばされているので手足も擦り傷だらけ。擦り傷やむち打ち程度で済ませてしまえる俺も大概なのだろうけれど。
姿勢制御で空中に着地した俺の傍にはロジィ。吹き飛ばされると同時に腕に戻ったロジィだったが状況が状況で直ぐに表に出て来た。
「これはどういう事ですの?」
「まあ、恐らく予定通りですね。勿論あちらさんのという事ですが」
「……どういうことですの?」
はぐらかしたつもりはないのだけれどロジィはご立腹の様子。
本当にはぐらかしているつもりはない。単純に情報が少なく明確なことが言えないだけだ。下手な推測で視野狭窄にしたくはない。
ひとまず分かっているのはこれがあちらさん、百合師匠たち物語のフィクサーによるものである事。そしてフィクサーたちの目的は主人公様の開花。奴らにとって早乙女も特に重要なモノでは無く使い捨ての駒でしかないという事。
そこから妄想を巡らせて何が起こっているのか考えてみる。目の前で起きているのは能力の暴走。それはまるでローズマリー・キャロルの最期に似ている。
違うとすれば暴走を起こしているが未だ早乙女が制御しようとしているという事。いや、制御が出来てしまいそうだというところ。
恐らく制御できてしまうのはあちらさんの望むところではないのだろうが。
そんな妄想を抱いていると再び突然の人影。
俺とロジィの認識を掻い潜っての登場。
それは先程のフィクサーの使いだった。
「それで、そちらさんは自分に早乙女の弱体化をお望みですか」
「流石は斎藤君。随分と私たちの事を理解しているのね」
俺やロジィだけではなく早乙女の認識をすり抜け攻撃を放ったのは委員長こと神崎楓恋。
委員長といっても本日も黒と赤を基調とした髑髏柄の服を着こなしたパンキー姉ちゃん姿。それはそれで様になっているのだが普段との違いが凄すぎる。それは兎も角。
神崎の行ったのは至極単純、早乙女の首に注射器をたて液剤を注入した。それだけのこと。注入した液剤が何かは分からないが早乙女の暴走が引き起こされたという結果が分かればどうでもいい。
神崎は当然フィクサーの使いでしかない。そのため彼女の行動には誰かの思惑がある。けれど部外者である俺にはその思惑がつかみきれない。何となくで推測は出来るものの確証が欲しい。それだって推測でしかなく単なる気休めでしかないのだが。
神崎はそんな俺の心内を知ってか魅力的な笑みを浮かべた。
「じゃあ、後は頼むね斎藤君。私は主人公様をお迎えに行かなければならないから」
「さいで」
色々と思うところはあったのだけれど全てを飲み込んだ。面倒な相手に縋ったところでいい結果はない。与えられるものが良い物とも限らないのだし。
凡庸で平凡であったはずの神崎が音もなく追跡が出来ない程上手く消えてしまったことを深く考えず目の前の事に思考を切り替えた。




